年下の彼 青年編プロローグ |
年下の彼・青年編プロローグ
桜舞う季節・・この季節になると思い出す。
彼と出会ったのが、この季節だった。今は遠い異国の下にいるだろう、おれの幼馴染で親友で・・一番大切なヒト。
「渋谷!何してるんだい?早く行かないと入学式に遅れるよ〜!」
「あぁ、今行く!」
おれと親友の村田は、この春から同じ県内の私立高校に通うことになった。おれは死に物狂いで勉強して
レベルをアップして、村田は涼しい顔でレベルを下げて、この学校にきたのだ。
おれはどうしてもこの学校に入りたかった。ここは、県内で唯一アメリカのボストンの学校と姉妹校提携を
していて、なおかつ校内での選抜試験に合格すれば、交換留学生として向うにいけるのだ!
そう、アメリカ!マサチューセッツ州・州都ボストン!おれの大好きな彼のいる街へ!!
「コンラッド!おれ頑張って、お前のいる街まで行くからな!」
「おーい、しぶや〜もどってこーい!天下の往来で拳を突き上げて何、自分の世界に入っちゃっているの〜。」
「へ?」
その言葉に現実に返ってきて見れば、しらけた眼差しの村田と、くすくすとしのび笑いながら、おれを見ている
新入生の皆様の視線が・・。しまったぁぁぁ!・・つい・・。
「まったく、君もコンラートの事となると、周りが見えなくなる癖、いい加減なおしなよ〜。」
この村田も、幼馴染の一人。だもんで、おれ達の事は良く知っていて、中一の時コンラッドが帰国して
しまった後、沈んでいたおれを支えてくれたのは、家族とコイツだ。
特におれを心配した兄貴の勝利が、色々調べてくれてこの学校の事を教えてくれた時、喜んだのも
つかの間、おれの頭ではレベルを3つも上げないと入れないと、真っ青になったおれに、
『僕らはまだ中一だろう!三年生になるまでに、上げればいいんだよ。諦めるなんて君らしくないよ!』
そう激を入れて、頭脳筋族の俺の勉強を、親身になってみてくれた。少々スパルタで泣きそうに
なったが・・・まぁ、それもいい思い出だ。
「えへへ、ムラケン〜ありがとな。お前がいてくれたおかげでここまでこれたよ。」
おれは、あらためて親友に向き直ると、心からの感謝の言葉を向けた。
「なにいってるのさ、まだこれから入学して、一年勉強して、推薦もらって選抜試験に受からないと
いけないんだよ?その言葉は、向うについた時に聞くよ。」
「だよな、お前もヨザックに会いたいだろうし。」
「・・僕は別にヨザなんて・・!僕は君みたいな純朴少年をゲイの本場のアメリカに送り込むなんて
心配なだけだよ。あーぁ、僕ってなんて親友想いなんだろう。」
ゲイの本場って・・お前ね・・。たしかに、ボストンでは同姓カップルでもが結婚できるけど。
「あ〜、ハイハイ、村田大先生には、感謝感激雨あられでゴザイマスー。」
少しだけ赤くなった顔をごまかすように、わざと怒ってみせる村田に、おれも軽く返してやる。
あまり、つっこむと、その何倍にもなって、からかわれるから気をつけないと。
それでも、浮かれる気持ちは抑えられない。
『いつか』なんて、曖昧で偶然ものではなく、自分の頑張り次第で手に入れられるかもしれないのだ。
彼らとの再会を!その第一歩を、おれ達は今日、確かに踏み出したのだ。
6月29日UP
青年編・プロローグ。青年編に行くための、導入部分です。ただ、これを書いている時点で、
少年編が終わってないんだよ〜。あははは。(←こら!)