読む前に注意。
こちらは、今日からマ王とコードギアスのW現代パロとなっています。
え〜Wパロなんて論外!というかたは、回れ右してブラウザバックしてください。
設定は、年下の彼です。チビーズにコードギアスから枢木スザク・ルルーシュ・ナナリーのヴィ兄妹
が参加しています。相変わらずの捏造ビシバシ!入りまくりの小説です。

では、どうでもバッチコーーイ!という方のみ、進んでくださいね〜。










年下の彼・特別番外編 
ヴァレンタインチョコは、ビターORスウィート? 











そして、決戦の日曜日。2月14日のセントバレンタイン当日。




靴を履いて玄関に二人の少年が立つ。黒髪の少年と薄茶の髪の少年は、互いの服装をチェックすると、
手作りしたプレゼントをしっかりともった。コンラートは、生成りのシャツにブッラックジーンズ、
首元には細い黒皮が何重にも重なった先にシルバーのライオンが揺れている。靴は黒のブーツで、
ちょっぴり背伸びした服装である。
逆に、ルルーシュは、淡い黄色のシャツの上に、白い大き目のセーターをだぼっと着て、下はデニムの
ショートパンツ。紺色のハイソックスをはいて、足元はスニーカーで可愛らしく仕上げた。

これは、前日、二人でコンラートの服をとっかえひっかえして、互いにコーディネートしたのだ。多少、
ルルーシュのほうが細身だが、身長差がなかったので着回しが出来た。普段は逆で、コンラートは
淡い色を身につけていて、ルルーシュはモノクロを好むのだが、今日はターゲットにあわせてあえて
いつも違う服にしたのだ。年上である有利に近づきたいコンラートは、大人っぽく。同じ年のスザクに
素直な好意を伝えたいルルーシュは、可愛げにというわけである。

「ルルーシュは、スザクを悩殺するんだから、可愛く仕上げなくちゃね」
「ののの、のうさつ〜〜??」
「自分の武器は使いなさいって、父上も言っていたし、ルルはいつもは美人系だから、可愛くすれば
普段と違うギャップ萌え(←勝利の入れ知恵)で、イチコロだとおもうんだけど」


【いちころ】
 一撃でころりと倒れるの意〕きわめて容易に負けること。 (大辞林 第二版より引用)


「イチコロ…―(〃д〃)―゚.:。+゚」
「だから、明日はかわいめで攻めようね?」
「あ、あぁ、わかった、イチコロ目指す」

コンラートの助言に、ルルーシュは真剣に返す。そうだ、国の違うルルーシュと彼は、母親が
単身赴任を終えれば、また会えない日々が始まるのだ。その次に会った時、彼の隣に別の人間が
いないと、どうしていえよう?だから、このイベントで勝負をかけてやる!

意気込むルルーシュに、コンラートも負けてはいられないと、告白の準備に燃えたのであった。
おかげで興奮したのか?朝から二人揃って、やけに早起きで笑えた。その分念入りに用意をして、
互いを元気付けて、告白の勇気を奮い起こさせた。


朝の光の中、マンションの前で二人は固い握手を交わすと

「ルルーシュ、健闘を祈る」
「君もな、コンラート」

そして、彼らは互いの健闘を祈りつつ、左右に分かれた。



いざ!出陣!(?)








朝の冷えた空気がルルーシュの気を引き締める。今頃、先ごろ戦友(?)となったコンラートも、
敵陣(←渋谷家のもよう)に着いた頃だろうか?

『約束だよ。告白をして結果は月曜日に報告しあおう』

そういって、背中を押してくれた友人の声も、告白をする緊張に震えていた。

昨日、スザクへ恋心を始めて他人に話した。今まで誰にも話せなかったこともある為か?それとも、
聞き手のコンラートの話術が巧みなためか?気がつけば、それまで頑なに己の中にだけしまい込んで
いた想い人の事を、よくアレだけ話せたと思うくらいに饒舌に語ってしまった。

いや、アレはコンラートに引きずられたんだ。なにせ、あのコンラートという友人は、もうこっちが
赤面するくらいに、相手への恋心をあけすけに話すのだ。ついつい、こちらまで釣られるように話し
てしまった。

そこで、二人して驚いたのは、彼と自分の相手は、恐ろしいほど共通点が多かった。
相手は共に親友で同性で(この時点で、共通する人間を探すのが難しい)笑顔の眩しい人で、
可愛くって男気があるという。ついでに声までそっくりだった。二人で話していて互いに驚いた
ものだ。それで、話が弾んだのだが。

彼は言った。本当は怖いのだと。今の、温かな関係が壊れるのが怖い。相手は優しいから、自分の
気持ちに答えられなくても、きっと今までどおりにしてくれるけど、心の奥底は見れないから怖い
のだと。それでも、好きな気持ちはなくせない、相手の一番になりたいという欲を捨てれない。
そういった彼は、とても暗い目をしていた。おおよそ、自分の年の子供が持つような目ではない。

それまで、教室で人の輪の中心にいて、いつも穏やかに笑う姿しか見てこなかったから、ルルーシュ
は戸惑った。

「それでも、失えないと思ったから、手に入れるしかないよね?」

だが、次の瞬間、そういった彼は、いつもの彼で――

「だから、約束しよう」


朝一番、想い人に会ったら、チョコを渡して告白をすると。


戸惑うルルーシュに、だってルルは、色々考えて告白できそうになそうだし?と、素晴らしい笑顔で
痛い所をクリティカルヒットしてくれた。

コンラート・ウェラーまったく、容赦のない奴だ・・。

その上、だから告白は朝一番、相手にあったらその場でと決めておけば、逃げられないだろう?
と、念を押した上に、もちろん、月曜日に報告しあおうね?と、ご丁寧にも、逃げ道まで塞いで
くれた。あの時は、ちょっと泣こうかと思ったルルーシュであった。

でもわかっている。あれは、素直になれないルルーシュへの、後押しに他ならないと。

「ちょっと強引だけどな。でも、約束は守るよコンラート」

苦笑を一つこぼすと、ルルーシュは、枢木家の立派な門をくぐりぬけていった。







「ただいまー」
「おかえりなさいませ、お兄さま♪」

枢木家に戻ったルルーシュを、妹のナナリーが迎える。満開の笑顔に緊張に強張っていた顔から、
ムダな力が抜けてゆく。あぁ、ナナリー、お前は僕の天使だよ。(←超シスコン)

「お兄さま」
「なんだい、ナナリー?」
「コンラートさんとのお話は弾みましたか?」

妹の言葉に、ルルーシュは昨晩の盛り上がりすぎた会話を思い出してしまった。ボボッ!っと、顔が
赤くなるのを止められない。

いやん、お兄さま、お可愛らしいv

ナナリーは、いつもと違う感じの兄に、思わず頬を染めた。わりと体にフィットする服を好む兄が、
今日は見た事のない服をだぼっと可愛く着こないしている。これは、コンラートさんという方の、
仕業に違いない。

グッジョブ!です。コンラートさん!

ナナリーは、会った事のない兄の友人に、心の底から感謝した。(←こちらも負けず劣らず超ブラコン)


「よっ!おはよーさん、その様子だと、そっちは楽しめたようだな」
そういって、片手を挙げたのは、ルルーシュと入れ違いに枢木の家に遊びに来ていたヨザックだ。
心なしか、疲れているようなのは、なぜだろう?

「あら、グリ江さん?こちらも楽しく盛り上がりましたでしょう?」
「えっ!ええーっと、ソーデスネ」
若干引き気味の友人の様子に、ルルーシュの目が細くなった。

「せっかくナナリーが愛らしい笑顔を、お前にも向けたというのに、なんだ?その乾いた
笑いはっ!?ナナリー、こんな失礼な奴には、もうお前のスマイルをくれてやる事はないぞ!」
「ハハハ、ルルーシュさんって、聞きしに勝るシスコンなんだなー」
「なんだと?ますます、失礼な奴だ!」

ルルーシュは憤慨するが、ヨザックとしては、昨晩の事を思うと乾いた笑いしか出ないのは当たり
前だ。この、天使のように愛らしい外見から想像も出来ないが、ナナリーは中々の食わせ者の性格
保持者だった。ルルーシュが重度のシスコンなのは知っていたが、彼女も筋金入りのブラコンだった
のだ!!


わたくしのお兄様は、世界一素敵なお兄さまなんです!!


から始まったのは、小姑ナナリーによる。世界一ステキで、美しくって、愛らしいお兄様の正しい
扱い方講座であった。

最初は恋バナだったはずなのだけれど、気がつけばそんなこんなな内容の話シフトされていたのだ。
何が原因かといえば、スザクのあまりに鈍感な態度であろう。

ルルーシュから、恋心を向けられている彼は、自分と彼は親友!と信じ込んでいるのだ。

「まぁ、そんな子供みたいな事をおしゃって」
と、ナナリーは呆れてみせたが、正真正銘、7歳児である自分達はお子様だ。ついでにいうなら、
幼稚園児の彼女はもっとお子様なはずだ!そんな、心底、呆れられるのは心外だというスザクの
意見は最もだとおもう。だが、それは、この妹には通じないだろう?

人間観察には自信のあるヨザックが思ったとおり、ナナリーはそれで引き下がるという事を
しなかった。というか、こともあろうか、 大いに前に出てきたーぁぁ!!

「お兄さまは、野生児のスザクさんと違って、繊細なんですのよ?」

ニッコリ微笑んだ彼女は、それから3時間にも渡って、正しい取り扱い方講座は続いたのだった。
ヨザックとしては逃げたかったのだが、ルルーシュの夫としての心得をみっちり叩き込まれている
スザクが大きな目で助けを求めるものだから、逃げそびれてしまったのだ。なんというか、子犬を
見捨てる気分にさせられるのだ。おかげで自分までみっちり講座を受けてしまった。

これが、乾いた笑いしか返せない理由である。だが、そんな事を知らないルルーシュは、ヨザックの
態度がおきに召さないらしい。まだ何か文句を言おうとルルーシュが口を開きかけたのだが、そこに
丁度現れた人物を目に入ったことによって、文句は永遠に彼の口の中へと消えた。



「ルルーシュ」
この家の嫡男、枢木スザク。ルルーシュの幼馴染で親友で想い人である少年だ。

「す、すざく!」


朝一番に、告白する事 ☆ (oゝД・)b

あ、今、ニッコリとイイ笑顔付きで念を押す友人の声が聞こえた気がする。

って、まてまてコンラート!こんなギャラリーが多い中で、何をしろと?
脳内で再生された声に、思わず反論したルルーシュ。反論しても無駄な事なのだが、それだけ彼の
混乱振りがわかるというものだ。

ぎゅっと、鞄を握る手に力が入る。顔に血が上ってきて、寒さに白くなっていた肌が、あっという
間に桜色に染まった。早くチョコを渡さなくては!しかし、人前で渡すというのも・・って?あれ?

「い、いない!?Σ」

なんと、気付けばナナリーとヨザックはいつの間にか消えていた。となると、残されたのは、当然
自分と彼の二人だけ。これでは、渡せない理由もなく。ごくっっと、小さく息を呑むと、ルルーシュは
意を決して鞄の中の箱を取り出した。

「こ、これ、スザクに」
「………。」
「ヴァレンタインのチョコなんだが」
「………。」

無反応?おかしい、食欲旺盛なスザクがお菓子を目の前にして、なぜ反応をよこさないんだ?
いつもなら――。

『チョコ!?中身何だ?食って良いんだな?ルルーシュありがとう!』

と、大きな目をキラキラさせて(カワイイ奴だ)、すぐにでもあけて食べ始めるというのに?
さっきから、俯いて顔をあげようともしなければ、差し出された箱を、受け取ろうともしない。

それに、なんだか、スザク怒っている?

そこで、ハッと気がついた。スザクは、このチョコの意味がわかっていて、だから受け取りたくない
のではないだろうか?男からの本命チョコなど、普通の少年である彼にとって、きっと汚らわしい
ものなのだ。

あぁ、これはフラれたなとルルーシュは泣きたくなった。それでも、泣くなんてことはプライドに
かけて出来はしない。きゅっと唇を噛んでこみ上げてくる衝動をやり過ごす。どうしよう?このまま
彼が気にしないように、たまたま覚えていたから作った事にしてしまおうか?

「ホラ、お前、まるごとケーキをワンホール食べたがっていただろう?」

気がつけば、勝手に口がそんな台詞をはいていた。泣きたいのに、口元には笑顔まで貼り付けて、
なんて素直じゃないんだろう?コンラートのようにせめて好きだと素直に言える人間だったら、少し
はスザクも考えてくれたかもしれない。

「………。」
「だから、その日ごろの礼だ、深い意味はないから…」

だから、友チョコとして受け取ってくれと、続けたルルーシュに、スザクがいきなり怒鳴りつけた!


「お前、自分がなに言っているかわかっているのかよ?」
「…ッ!」



わかっている、スザクは男で、自分も男だ。なのに、親友で幼馴染の彼に、好きだと告げようとして
いたのだ。やっぱり、誤魔化そう。枢木家には、これから世話になるのだ。その嫡男と揉め事を
起こすのは良くはないだろう。

「な、何のことだ?これは、コンラートがヴァレンタインに手作りケーキを焼きたいというから、
手伝ったついでに作ったものだ。だから・・あっ!?」
むりやり笑顔を作って、そう釈明をすれば、スザクは箱をひったくった。その時、反動でひらりと
はさんであったカードが落ちる。

「あ!まて、それは拾うな」
だが彼は、言いつけに背いて、そのカードを拾ってしまう。ルルーシュは蒼白になった。
あのカードには、自分の気持ちをしたためていある。
カサ・・と小さな音がして、カードが開かれてしまった。あぁ、もうだめだ!

「ルルーシュ、ここには俺の事が『LOVE(すき)』だって書いてあるけど」
「………」
低く抑えられた声に、今度はルルーシュのほうが黙り込む。プイッと顔を背けた彼に、スザクの
頭に血が上った。

「お前、いい加減にしろよなっ!?昨日は散々ナナリーに、ルルは俺の事を好きだからとか、
夫の心得とか訳わかんないこと叩き込まれるし!」


は?な、何をしているんだナナリィィ!!?


「えっと、それは、妹が迷惑かけたな・・?」
スザクの剣幕に、おもわずルルーシュは兄としてナナリーの所業を謝った。

「大変だったけどいいんだよ!相手はルルーシュなんだし、そのくらいがんばってやる!」
「あ、ありがとう??」
謝るなと怒られて、ルルーシュはとりあえず礼を言う。真っ赤な顔で、ぐぬぬと唸るスザクに、
ルルーシュは完全におされてしまって、受け答えの珍妙さに気がついていない。

「なのに、肝心のお前は、最近コンラッドとばっかり遊んでるし、俺は放置だし、そのうえ昨日は
コンラッドの家に突然泊りに行くし、なんか楽しくやっていたみたいだし!その服もコンラッドの
だろう?なんで、他の男の服を着ているんだよ!?その上、可愛いしっ!何でドキドキしなくちゃ
ならないんだ!なのに、チョコは友チョコだとか言うし、逆にカードには好きって書いてあるし、
あーもう!いったいどっちなんだ!?」

どうやら、前日からの講義によって、元来体を動かす方が得意な彼は、頭脳労働のしすぎでオーバー
ヒートしてしまったらしい、ぐるぐると考えばかりが渦巻いて、兎に角ハッキリさせたいと思った
のだろう。直球の問に、ルルーシュは、少し黙り込んだ。

どっちって、

「…っ!どっちがいい?」
「聞いているのは俺だ!答えろ、ルルーシュ!」
気の短いスザクは、ルルーシュの胸元を掴んだ。目の前で怒鳴られて、ルルーシュの貌がゆがむ。
どっちだって?そんなの決まっている。出会った瞬間に、その瞳の翡翠の強さに惹きつけられた。
お日様みたいな笑顔に、なんども救われた。毎年、彼に会う事をどんなに待ち望んでいたか?

「好きだ!でも、お前は困るだろうっ・・!?」

叫んだルルーシュの言葉は、柔らかく重なったもので封じられた。大きく見開いた紫の瞳が移すのは、
至近距離にある一番大好きな翡翠だった。

やがて唇から温もりが離れると、そこには真っ赤になって怒ったようなスザクの顔があった。

「枢木スザクは日本男児だ!責任は取る!」
「え?え?」
「お前を嫁に貰ってやる!お前も俺が好きなんだから文句ないなっ!」
「え、ええ??」
「まかせろ、既成事実はバッチリだし、誰にも文句は言わせない」
「ス‥ザク?」
「ただし、俺は毎朝ご飯と味噌汁を食べるからな。俺の嫁になるからには、和食が作れるようになれ!」

胸を張ってふんぞり返るスザクだが、全身真っ赤になっている所を見ると照れ隠しで偉そう物言いを
しているだけだろう。フワフワとうれしい気持ちが、胸に広がっていく。

「和食・・」
「な、なんだ!?」
「和食作れるようになったら、本当に嫁にしてくれるんだろうな?」
「あぁ、もちろんだ!日本男児は嘘は言わない!」
そう笑った彼の笑顔は、大好きな太陽のような笑顔で、それをみてルルーシュも華のような笑顔を
浮かべる。


「なら、君が唸るような、美味しい和食を作れるようになろう」


そして毎日、美味しいごはんで、彼を全力で幸せにしてあげるのだ。



ほら、冷えるから!そういって、スザクが温かな手でルルーシュの冷えてしまった手を取った。
指を絡めて、しっかりと握られた手から、彼の温もりが伝わってきて、ルルーシュを幸せな気分に
させた。昨日までは、告白なんて考えていなかった。だから、こんな展開だって予想できてない。

それもこれも、不思議な瞳をした友人のちょっと強引な後押しのおかげだ。月曜日にあったら、報告
と共にお礼を言わなくては。ルルーシュは、おいしそうにケーキをほおばるスザクを眺めながら、
コンラートの恋もうまくいっているといいな〜と、思いを馳せるのであった。







時はちょっと前に戻って、こちらは渋谷家。


ピンポ〜〜ン!


「おはようございます。ユーリは、起きていますか?」
「あら、コンラッド君。朝早いのね。ゆーちゃんだったら、まだ部屋で寝ているわよ」

勝手知ったる渋谷さんの家というわけで、コンラートは美子ママに挨拶をすると、トコトコと
有利の部屋のある2階へと昇っていった。

カチャリ・・と、ドアノブをまわせば、すぅすぅと小さな寝息を立てる少年が眠っていた。

そっと近づくと、その寝顔を覗き込む。

「よく寝ている」
くすりと笑うと、その気配で有利が目を開けた。

「う〜?こんらっどぉ?」
「はい、おはようございます」
「はよ〜」

くしくしと目をこする仕草が可愛いな〜と、コンラートが眺めていると、どうやら本格的に目覚めた
らしい。

「あれ?コンラッド?なんで、朝からここに居るの?」
たしか、彼の所には昨晩から友達が泊まりこんでいるはずだ。なのに、こんな朝早くから、何故に彼が
ここに居るのだろうか?いくらなんでも、こんなに朝早く、友達も帰らないんじゃないか?

「今日一番に、ユーリに逢いに」
「??・・・は?」

ますますわからない?今日は、野球の練習も午後からなので、午前中は家にいる予定だ。そんなに
慌てなくても、お昼前にゆっくり来ればいいのに。

「だって、そしたら、ジェニファーに先を越されそうだったし」
「おふくろ?さきこされるって??」

有利は、もそもそと着替えを済ましながら、コンラートに向き直った。それを見計らったように、
コンラートが持っていた紙袋から、はい!といって青い包みを有利に差し出した。

「これ、おれの 愛の 気持ちです。受け取ってください!」

思わず反射的に受け取ってから、有利は己の手の中の物体に、なんだろうと首をかしげた。

「今日は、St. Valentine's Day だから」
「バレンタイン・・」

確かに本日は2月14日バレンタインで間違いない。しかし、なんでそれで、コンラートが有利に
チョコをくれるのだろう?

あぁ、そうか!義理チョコだ!ピーン!と、有利はひらめいた!

義理堅いコンラートの事だ。日本の風習である、義理チョコの事を知って、きっと用意してくれた
んだろう?

「あの、初めて作ったんで、お口に合えばいいんですけど」
おずおずと、言い出した台詞に、この中身がコンラートの手作りだと知った。

「作ったの!?コンラッドが?」
「はい」
流石にそれには驚いた。有利など、やかんで湯を沸かすぐらいしか出来ないのに、二つも年下の
コンラートがお菓子作りをしただなんて。

「ありがとう、コンラッド!すっげーうれしいよ!」

と、満面の笑みで返せば、コンラートの顔が ぱあああ!!っと、光り輝いた。

うわー、かわいー!

「コンラッド、大好き!」
おもわずその可愛らしさに、有利は目の前の小さな体をギュウギュウに抱きしめた。ついでに、その
スベスベな頬にスリスリしたかったが、まだ寝起きで顔も洗っていないので、それはやめておく。

「え?え?え?ほ、本当?」

うわっうわっ!ユーリから、大好きって抱きつかれた!?これは、もしかして、恋人になって
いいということか?いやまて、確か返事は、日本では一ヵ月後のホワイトデーというものでする
事になっているって聞いたような?コンラートの頭の中は、ちょっとパニックであった。
どうやら、中途半端に日本式ヴァレンタインを聞きかじったらしい。

「もちろん!そだ、あける前に洗面所で顔と歯を洗ってくるな」

先にリビングに戻っていてくれといわれて、コンラートは素直に従った。そして、リビングに戻れば、
先に起きてきた勝馬パパと、美子ママ、それに休日は遅くまで寝ているハズの勝利までもが揃っていた。

「なんだ?コンラッド、来ていたのか?」
「はい、おはようございます」
「おはよーさん、コンラッド。なんだ?お友達が泊ったんじゃなかったのか?」
「えぇ、彼なら朝一番に帰りました」
「こんな朝早く?何か用事でもあったのか?」
「はい、チョコを渡して告白するそうです」
「おおー!逆チョコといやつか?うんうん、青い春だね〜」
「逆チョコってアレでしょ?男の子から女の子にチョコを渡して、ホワイトデーに返事を貰うのよね?」
乙女心を何時までも失わないと豪語しているだけあって、美子さんは恋の話にキラキラと目を輝かせた。
「逆チョコ?に、なるんでしょうか?」
ルルーシュの場合、普通のヴァレンタインでも通りそうな気がする。黙って立っている姿は、幼い
ながら、絶世の美少女で通る容姿だ。それに渡す相手は、ガキ大将のスザクである。それより、
どちらかといえば、有利に渡した自分のほうが、逆チョコなのではないだろうか?

「あ、そうだ!これ、俺が初めて作ったので、お口に合えばいいのですが」
そういって、コンラートは紙袋から、3つの包みを取り出した。
「俺から、いつもお世話になっている渋谷家へのヴァレンタインです」

「おお、コンラッドが作ったのか?」
「まぁ、コンちゃんが自分で初めて作ったのをくれるなんて、ママうれしいわー」
渋谷父と母は、まるで娘の初めての手作りを貰うように、はしゃいでそれを受け取った。
勝利も、よくがんばったな?と、コンラートの頭を撫でて受け取った。その横では、すでに
父と母は包みを空けて中身の確認をしている。
「おい、お袋達、朝食の後に開けろよ」
「まだ食べないわよ。ただ、コンちゃんが初めて作ったっていうから、見てみたかったのよ」
すっかり浮かれた両親は、朝食の用意もそこそこにコンラートに貰ったものを開けていた。

「コンラッド、朝食は?」
「はい、済ませてきました」
「そうか、だったらコーヒーを入れよう、先に座っていてくれ」
「ありがとうございます、ショーリ」

コンラートは、既に自分の指定席になった有利の隣の席に座ると、美子が自分からだと包みをくれた。
中はやはり、チョコレート。そこに、コトリとコーヒーカップが置かれた。
「?」
いつもなら、マグカップに並々とカフェオレがそしであるのに、今日はカップに生クリームが浮いていた。
それに湯気から香るのは、チョコレートの香り。一口飲んでみれば、やはりチョコシロップが
入っていた。それに、ほのかに塩味がアクセントになっている。
「甘すぎても、苦手だろう?カフェ・ブラジレーニョっていうんだ」
「あ、ありがとうございます」
どうやらそれは、コンラートへのバレンタインチョコのようだった。ちょっと照れ屋な勝利らしい。
さりげないプレゼントだ。

「おはよー」
そこに、有利が身支度を終えて席に着く。

「おはようゆーちゃん、はいこれ、ゆーちゃんとしょーちゃんにもママからのチョコよv」
ウキウキとピンクのラッピングの箱を手渡す母親に、お礼を述べて受け取る二人。

「なんだ、コンラッドも貰ったのか?」
「はい、おいしそうなトリュフですね」
「あ、コンちゃん、ヨザちゃんとダンさんの分も預かってくれる?」
「はい、わかりましたジェニファー。あぁ、でも、ヨザックだったら午後から来ると思います」
「そ〜お?だったら、ダンさんの分だけお願いね」
「はい」
「うん、いい返事だな〜こんりゃっとむはっ」
「親父!クッキー食いながら話すな!何話しているか解からないだろうがっ!あぁ、もう、クッキーは
朝食くってからにしろよ」
「いいじゃないか、一枚くらい。せっかく、コンラッドが初めて作ったものだぞ。その場ですぐ
食べたいじゃないか!美味しくできていたぞ〜初めてとはおもえないな」
「コンラッド、親父達にまであげたの?」
「はい、いつもお世話になっていますから、皆さんにも渡したかったんです」

みれば、勝馬の手には、四角い箱が開けられていた。それをちゃっかり味見しているのは、美子で
あり、勝馬に自分の分を食べろと抗議されていた。なお、美子と勝利はリビングのテーブルの上に
おいてあり、食後に食べるつもりだったようだ。

「義理堅いな〜コンラッドは、親父達にまで義理チョコをあげるなんて」
「ぎりチョコ?」


女性から好きな男性にあげるのが、本命チョコ。
逆に男性から女性に上げるのが、逆チョコ。
友人に上げるのが、友チョコ。

では、ギリチョコとは?

えっと、勝利と勝馬と美子さんにあげたチョコのことだから、ハッ!そうか!?


将来の義理の父母と兄ってことなんですね♪(# vv)o ポッ (←早とちり)


色々なチョコがあるとは聞いていたが、義理の家族にあげる物まで名前がついていたのか?
日本のヴァレンタインは、種類豊富だな〜と、コンラートは心の底から感心した。(←間違い)

「それに、おれにまでくれるんだものな〜義理チョコって多くて大変だろう」

あれ?

だが、有利の次の一言で、コンラートは再び首を傾げる事となった。有利はコンラートのお嫁さん
なんだから、ギリではなく本当の家族になるはずだ。だから、コンラートは、オカシイなと思いつつ
口にした。

「ユーリのは、ギリチョコじゃないですよ」
「へ?」
有利は、きょとん?と、小首を傾げた。

どゆこと?

「ゆーちゃんのは、ちがうだろう?」
「やだ、ゆーちゃんは、違うでわよ」
「有利、お前のは違うぞ」
しかも、その途端に、テーブルを囲んでいた家族からも、異口同音で指摘されてしまった。

一体、自分の貰ったチョコは、なんだというのか?その様子に気がついたらしい勝利が、ため息を
深くつくと、リビングにおいてあったまだ開けていない自分が貰った包みを持ってきた。

「おれ達が貰ったのは、全員コレだ」
それは、シンプルに包装紙で包まれた長方形の箱。父のそばにあるクッキーの箱と同じ形からして、
兄の言うとおり同じものなのだろう?対して、自分が貰ったのは、なにやら凝った包み方をしている
きれいなハート型の箱である。

大きさも、有利のほうが二まわりは大きい。

自分の貰ったものが、特別なのは、さすがに鈍い彼でもわかったようだ。

あれま?親父達の箱とおれの、ちがうよな?
うーーん?あぁ、そーか!?

「わかった!おれのだけ特別なんだな!」

今頃わかったのか?とは、渋谷家両親と勝利の偽らざる本音だ。

「もちろん、ユーリは特別です!」

うんうん、やっとわかってもらったみたいで良かったなコンラッド。
だがしかし、それと嫁にやるのとは、話は別だからな!



「だよな?おれ達、親友だもんなっ!」


あれ?×4


晴れやかに言い切った弟に、悪気はこれっぽちもない…筈だ。

「わぁ〜、中身も親父達とは違うんだな?あ、中はジャムだ」

いや、弟よ。拘る所は、はさんであるジャムではなく、クッキーの形ではないだろうか?ハートだぞ?
ハート!ハートといえば、愛を表す形だろう?俺達のは、花形なんだぞ?それはそれで愛らしいけど。

「おれも一個だけ味見しよ。あ!おいしい!なに皆?おれの事じっと見て、あ!これ?コレが欲しい
の?じゃあ、そっちのクッキーと交換な?」

って、このっあんぽんたん!!俺達がお前の事を見ているのは、呆れて思わず凝視しているんだっ!

「ゆーちゃん、交換はまずいと思うぞ」
見兼ねた親父が、有利にそれとなく注意する。

だよな?そのハートクッキーは、コンラッドの愛そのものだ。それを、本人の目の前でを交換を
しちゃダメだろ?

「は?なんで?」

何でと聞く前に、お前の横を見てみろ!すっかり、コンラッドが魂抜けた状態になっているじゃ
ないか?大丈夫かな?アイツ。

「ゆーちゃん、そのクッキーには、コンちゃんの好意(←本人の前なので控えめな表現)がつまって
いるのよ?それを本人の目の前で交換ってことはないんじゃない?」

「そんな大げさな、同じクッキーだぞ?」

「「「絶対に、ちがいます!!」」」
「うわぁ!!」

三人同時に叫ばれて、有利が驚いて悲鳴を上げた。

「お前、自分と俺達のクッキーの違いがわかっているか?」
「失礼な、おれだってわかっているぞ」

そのくらい、知っているぞと胸を張る弟を、勝利どころか両親も信じてはいない。

「親父達のが義理チョコで、おれは親友だから、『友チョコ』だ!!」


ほら、わかってないじゃないか!!!


がっくりと、勝利たちは肩を落とした。鈍い、鈍すぎる。済まないコンラッド、こんなお馬鹿チンで。

そして――


「そうだ、コンラッド!ホワイトデーは期待してろよ。ちゃんとお返しはするからなっ!」

その言葉に、魂が半分抜けていたコンラートの意識が戻ってきた。お返しという事は、ホワイトデーに
返事をくれると、いうことである。

「もちろん、手作りで返すからな」


ユーリの愛情がこもった手作り!?


瞬間、ぴこん!とコンラートの頭に元気よくたった犬耳が見えた気がした渋谷家の面々。
コンラートの銀の星が散ったような瞳が、期待でキラキラと輝いている。気のせいでなければ、
勢いよく振られるしっぽまで見てきた気がした。

「うーんとおいしい、クッキーを作ってみせるからな」

くっきーー??

今、ユーリはクッキーといったか?ホワイトデーにお返しされるものには、バレンタインでの告白に
対する意味が付随している。
「キャンディー」ならば、交際OKの意味であり、「マシュマロ」ならば、ごめんなさいというお断りの
サインだ。そして、問題のクッキーといえば?


お友達でいましょう!?


という意味である、コレはコンラートにとっては、現状維持に他ならない事であり、告白そのものを
なかった事にされたようなもの。


ズガーン(゚□゚;)


「ゆ・・ゆーりの」
プルプルとコンラートの肩が震える。声も心なしか、涙声である。

「うん?なにコンラッド?」
しかし、相手は有利。そんなコンラートの変化にも気付かずに、クッキーをもしゃもしゃ食べている。
そんな様子に、渋谷家の面々が頭を抱えた。この後の展開なんて、大体さっしがつくというものだ。

案の定、涙をたたえたコンラートがガタン!と、椅子を蹴り倒す勢いで立ち上がる。
渋谷家の両親と兄は、朝から近所迷惑だと思うが、この少年の心情を思うと致し方なかろう?彼らは、
後で近所に謝ろうと心に決めると、さっと、自分達の耳を押える。

皆に何しているんだ?と、一人状況を把握していない有利の耳元で、すぅーと息を吸う音がした。

そして―――



ゆーーりの、ばかぁぁぁああああーーーーーー!!!



閑静な朝の住宅街に大音量が響いたのが、その1秒後。パタパタと小さな足音をとどろかして、
一人の少年が走り去ったのは、その20秒後であった。



後には、リビングの床に倒れ付した有利と、大きなため息をつく渋谷家の面々がいたという。



こうして、コンラート・ウェラー少年の最初のヴァレンタインデーは、幕を閉じた。











【おまけのヨザックさん編】



メキ・・。

なにやら不穏な音が、ヨザックのすぐ隣でした。

「ふふふ、貰ってやるだなんて、いいご身分ですわね、枢木スザク」
柱の影に隠れてスザクとルルーシュの告白劇の一部始終を見ていたのは、ヨザックとナナリー。
その視線の先には、真っ赤になった二人の少年が、たったいま想いを交わして、親友から恋人に
代わったところだ。

「ナ、ナナリーちゃん、柱から変な音が出ているわよ」(いやーん、グリ江こわぁい)
「ふふふ、大丈夫です。こわれても、枢木の家ですから」(うふふふv)

いや、家が壊れたら、誰の家にでもまずいんじゃね?

「まぁ、いいですわ。今回は、お兄さまに免じて見逃してあげましょう」
「はははは、そうかい」

あぁ、よかったなスザク。王女様が見逃してくれるそうだ…。

「ですが、お兄さまを泣かしたりしたら、わたくしのルルーシュ講座をみっちり受けてもらいますわよ」
おほほほほ、と朗らかな笑い声を上げる少女に、昨晩の苦行を思い出してブルブルっと、体を震わせた。
始終緊張を強いられた、あの辛い数時間。ナナリーの気迫は、正直、剣道の師範と向き合うより怖かった!

スザク、ルルーシュを泣かせる事だけは、何が何でも避けろ!死ぬ気でって、泣かせたらマジしんじゃい
そうだから、とにかく避けろ!!

ヨザックは、箱の中身のケーキを見て喜んでいるスザクにむけて、そっと手を合わせた。
コレは早々に、家に帰ったほうが安全だ。(←巻き込まれるのは一回で十分!)彼は荷物を
持つと、家人に挨拶を済ませ、そっと二人に気がつかれないようにマンションへと戻ていった。

「さて、今頃コンラッドは、いとしの坊ちゃんに手作りバレンタインチョコを渡せているかな?」

ふっと、頭によぎるのは、義理の弟にあたるコンラート。
ごそごそと、戸棚から真っ白な包み紙に金と銀とのリボンで飾られた包みを取り出す。

「俺も作ったんだけどね?本命チョコ・・・」

だがこれは、そう(本命)といって渡す事が出来るものではない。コンラートの好きなのは別の人。
困らせるとわかっているから、渡す事は出来ない。

「あーあ、未練だね〜」

日の目を見ない自分の恋と、このチョコを重ね合わせて、ヨザックは一人呟いた。


ぼ〜〜〜ぉと する事、数分という所か?

ばたばたばた!

カチャカチャ がちゃっ!バタン!!

パタパタパタパタパタ〜!

なにやら音が近づいてくるとおもいきや、突然現れたのは、渋谷家にいるはずのコンラートだった。
しかも、目には涙をたたえている。これはまさか!?

「ふられたのか!?」

ばきーーーーィィ!



ヨザックの失言に、コンラートの拳が頬にめり込んだ!あぁ、哀れヨザック。

「空気よめ!KYって呼ぶぞ!」(←最近覚えた言葉)
「うわぁああ、すまなかったってばっ!で?どうした?」
本気で怒るコンラートに、流石に直球過ぎたとヨザックも非を認めた。そして、何があったのか
聞き出そうとすれば?

「よざ…(くすん)」
スンスンと鼻を鳴らしながら、コンラートの目から大粒の涙が流れ落ちた。

「どうした?まさか、渡せなかったとか?」
「渡せた。 なぁ、ギリチョコって何の事だ?」
「義理?もしかして、ギリチョコだと思われたのか?って、告白しなかったのか?」
「したに決まっているだろうっ!」

だろうな?コンラートに限って言えば、こういったイベントで乗じてのチャンスを逃がすとは
思えない。めいっぱい、好意を伝えたのだろう?
と、なると…??つまり、したけど、本気に受け取ってもらえなかったかってことだ。

「まぁ、義理チョコとは感謝の気持ちや、コミュニケーションの円滑化を目的としたチョコの
ことだな。職場とかで主に配られるやつだな。日本人の感覚だとお歳暮と同じニュアンスかな〜?」
「お、お歳暮!?そんな〜」
へなへな〜〜っと、その場に座り込んだコンラートに、座り込みたいのはこっちだと心で嘆く。
何が悲しくって、目の前の本命に、こんな事を言わなくてはいけないのだ?

「だいたい、本命チョコを渡してすぐに、皆にチョコを配るなよ〜。坊ちゃんがいなくなってから
配ればよかっただろう?だから、同じだと思われたんじゃないのか?」


ぴくり!

小さく肩を揺らして、目が泳いだコンラートは、今その事に気がついたのだろう?ばつが悪そうに
そっぽをむく。

「で?告白の言葉は?きちんと、恋人になってくださいとか、直球で言っただろうな?いっとくが、
坊ちゃんに変化球は通じないぞ」
「わかっている!」
「だったら、なんていったんだ?」

「『バレンタインだから、おれの 愛の 気持ちです。受け取ってください!』
って、チョコ渡した。」

「あほかっ!もっと具体的な言葉にしろよ。嫁にきてとかなんとか」

付き合うを通り越して、いきなり結婚話までとんだ某カップルを見習って欲しいと、この時は
本気で思った。変な所で、抜けているんだから。もう、へたれ!と呼んでやろうか?

「うううう、直球だったんだけど…」

あ、自分でもまずったと思っているな?コンラートの言葉に、いつものキレがない。
まったく、早くくっついて、自分を諦めさせてくれないものかと、他力本願な願いを心で呟く。
まぁ、そんな事を思う時点で、俺もヘタレなんだろうが。多少の自嘲を苦くかみ殺すと、ヨザックは
キッチンに立つと鍋をつかんだ。

やがて、コンラートに前には、湯気を立てるミルクの入ったカップが置かれる。

「ヨザック・・」
「ほら、それと、これもやる」

ぽいっと放られた箱を反射で受け取れば、ヨザックは何食わぬ顔で、自分もミルクを飲み干し
ている。今日渡される箱の中身なんて決まっている。コンラートが開けてみれば、小さなチョコ
マフィンが色とりどりに入っていた。

「甘いの食べると、落ち着くぞ」

ぶっきらぼうに言われたが、それが彼の優しさだと知っているので、コンラートは素直にそれを
口に入れた。

「美味しい」
思わずその優しい味に言葉が漏れる。

「当然、俺が作ったんだから」

あぁ、たしかに、癒される。だけれど、素直に礼を言うのもなんだ。コンラートは、持っていた
バックから包みを取り出すと、それをヨザックに放り投げた。

「甘いものたべると、癒されるぞ」
きょとんとしたヨザックの顔が愉快で、くすりと笑みがこぼれる。クサクサしていた気分が浮上してきた。

「はは、そうだな」

どさくさに紛れてではあるが、コンラートへのチョコは渡せたし、彼からのチョコも貰えた。
枢木家も概ね(?)楽しめたし、まぁ、悪くないヴァレンタインだったな。


そうヨザックは、締めくくろうと思ったのだが…。


「よし、こうなったら毎年、チョコを渡し続けてやる!」
と、突然立ち上がったコンラートに思考をぶった切られる!

ネバーギブアァァアっぷっっ!!!

いや、だから、コンラッドさん?いきなり、叫ばないでくれ!ご近所迷惑だからっ!!

「だから、次こそユーリが俺に惚れ込む様なチョコを作るんだ!」(←きいちゃいねぇ)

くるりと、ふりかえった笑顔は、満開で・・・あぁ、なぁ〜〜んか、嫌な予感が・・・。


ヨザ、もちろん教えてくれるよな?(ニッコリ)


あぁ、かわいい・・。その笑顔が可愛い。ひくりと、顔が強張ったのはいた仕方ないと思いたい。

あぁ、何で俺、コイツに惚れちゃったんだろう?


本命に、別の男にやる本命チョコの作り方をおしえる不毛さ加減に、ヨザックは力なく肩を落とした。




前言撤回!!!




バレンタインなんて、だいっきらいよーーーー!!!

(グリ江泣いちゃう、だって乙女だもん くすん)





2010年3月15日UP
初のコラボ小説・後編です。でもって、おまけのヨザック編。
時間かかったな〜。本当は、未来編もくっついていたんですが、そこまでギアスを引っ張るのも何だと?
ここは、マ王だしね〜。で、結局、ヨザの不毛なバレンタインは次の年まで続き、その後、眼鏡の少年に
恋してやっと、うれしはずかし(?)バレンタインを満喫できるようになります。
まぁ、肝心のコンラートの方は、毎回玉砕です。その度に、渋谷家から泣きながらかえるコンラートが
近所の名物にに、なっちゃったりしてw つーか、WDも超えて更新だわ。(T△T)