現代パラレル・年下の彼 SAYONARA 4 |
家に帰りついたら、ヨザックはピンクのいつものメイド服でソファーの上で胡坐をかいていた。
なにやら色々と不満らしい。勝利は、あーーぁ、と小さく肩を落とした。 仕方ない、これは兄たる自分の役目だ。 ダンさんは、お袋と親父と一緒に、難しい顔で話し込んでいる。すると、トントンとパジャマを 着た村田が2階から降りてきた。 「あー! おにいさん、お帰りなさーい。」 「・・・・・なんだ、お前も泊まっていくのか?」 「えへ?お世話になりまーす。今、有利とコンラートが一緒にお風呂に入っていますから、 先にご飯にしますか?」 「・・・・なんで、お前に嫁のようなことを、聞かれなくちゃいけないんだ・・・。」 「えー、僕ではご不満ですか?じゃあ、グリエちゃーーん、お兄さんに給仕してあげなよ。」 「・・・・勝利兄・・・アイツラと 何、話してきたんだよ。」 ぶっすーーと、ふくれっつらのメイドに、どう説明しようか悩む。ヨザックの立場としては、 今更 母親方のコンラートの兄弟なんて、冗談ではないんだろう? 「あー飯はいい、向うでご馳走になってきた。」 「へーー、いいな〜、今度僕も食べたいな〜。豪華フランス料理?」 「あほか!味どころじゃねーよ!」 村田に付き合いきれないと、勝利は天を仰いだ。のーてんきめ!! 一方、一緒にお風呂中の二人は、洗い場でお互いを洗いっこしていた。 有利はピンクのウサギの、コンラートはネコのボディースポンジを、アワあわ泡だらけにして、 変わりばんこで 背中を流すと 向かい合わせになって、洗うというより、いつの間にかどちらがより 多く相手につけられるか という遊びに発展し、最後は泡の雪だるまが二体 出来上がっていた。 「こらーー!おまえら!出てこないと思ったら、こんなに 洗い場中泡だらけにしやがって!!」 そこにタオルを腰に巻いた勝利と、ひっぱられてきたヨザックがいた。 「あ、しょーちゃん。」 「ショーリ兄さん。」 顔だけ出た泡だるまが、へらっと笑ってごまかそうとしている。仕方ないなーと、勝利は肩をすくめると、 ヨザックをつかまえたまま、頭からかけ湯をして泡だるまの前に座らせる。 「そこまで泡だらけなら、ヨザもあらってしまえ!」 「げっ!!ショーリ兄! (*`ロ´*ノ)ノシ」 冗談ではないと暴れ始める前に、にやり!と、いたずらっ子の目が光った! 「コンラッド!わきを攻めろ!」 「了解!ユーリ泡をかけてしまって!」 「ま〜〜かせろ!」 「ぎゃぁぁ!!コンラッド!脇をくすぐるな!いやぁぁ、坊ちゃんまで石鹸つけすぎです、ヌルヌルするぅ!」 泡が飛ぶ様子を尻目に、勝利はゆったりと風呂に浸かる、どうせこの後 この泡達を流したりするのに、お湯の 掛け合いに発展するに違いない。泡だるまに 犠牲者を一人渡しておいたから(←ひでー)ゆっくり浸かれる内に 一人湯船を堪能しようという魂胆だ。 「ふ〜、やっぱり、湯船は一人で浸かるに限る。」 外野の五月蝿いのもなんのその!最早、慣れている勝利は、悠々自適にお風呂を堪能した。 その横では、三体目の泡だるまが着々と製作されていた。 「ふーv いい湯だった。あ、お袋、親父、あいつ等には今、浴室掃除させているから。」 「しょーちゃん、一体何を騒いでいたんだ?」 「あ〜〜?? 泡だるま製作?? おかげで、洗い場中泡だらけ。お袋ー!新しいボディーソープあったか? あいつ等が殆ど使っちまったぞ。」 勝利は冷蔵庫を開けながら、リビングにいる母親に報告した。 「え〜〜うそ〜〜〜!だって、今のまだ半分は有ったじゃない!」 「俺が使った時は、既に殆ど残ってなかったぜ。なにせ、泡だるま三体分の泡を作ったからな・・あいつら!」 くつくつと笑う長男の様子に、どうやら子供たち三人とも元気を取り戻したらしいことを知った。 美子も、今回だけは大目に見てあげるかと、階段下の物置に新しいボディーソープを探しに行くのであった。 「ショーリ、その様子では大丈夫そうだな。」 「えぇ、ダンさん、なにせ、うちの弟がついていますからね。三人そろってじきに元気な顔を出しますよ。」 「では、話は明日がいいか?」 「えぇ、あれだけ風呂で暴れたんです。しかも、罰として掃除をきちんと言いつけましたし、湯船に浸かり なおして体を温めてから出てくるように釘をさしておきましたから、でてきたら疲れであっという間に 眠れますよ。」 片手にコップ4つと、もう片方にスポーツドリンクを持って、ちびっ子三人の兄暦4年の勝利はリビングに もどってきた。 「さすがは、お兄さんですね。お風呂は浸かるだけでも体力を消耗しますからね?今夜は余計な事も忘れて ぐっすり眠れるというわけですか?」 村田が、紅茶を飲みながら、勝利の目論見を解説してくれた。 「お〜〜、さすがは、しょーちゃん、我が家の長男は、しっかりものだな〜。」 「ありがとう、ショーリ。今夜は、うちの息子達を頼む。」 「ダンさんは、これから仕事ですか?」 「あぁ、放り出してきてしまったからね。明日の昼までには、戻ってくる。」 どうやら、話は明日ということらしいと理解した勝利は、まかせてくれと頷いた。 そこに、がやがやと、三人組が姿を現した。 「しょーちゃん、掃除終わったぞ!」 「ちゃんと体を温めなおしたか?」 「はい、ちゃんと肩まで浸かって、100数えました。」 「おかげで、俺ってば、ふやけそうだ。」 最初に真っ直ぐ兄の所に向かってくる三人組に、ダンヒーリーと勝馬は苦笑する。どうみても、こちらの方が 普通の兄弟に見える。それも、とても仲の良い。 「いいから、これを飲んで、水分補給をするんだぞ。」 「「「はーい」」」 三人は、コップを手に取ると、ゆっくりとスポーツドリンクを飲み始める。折角温まった体に急激に冷たい 飲み物を入れると冷えるし、それに必要以上に水分を取りすぎてしまうのだ。 ゆっくり体にしみこませるように飲む。 「コンラート、ヨザック、ちゃんと髪を乾かせよ。」 ダンヒーリーが、手近にいたコンラートの頭をぐぁしっ!!とつかむと、わしゃわしゃと乱暴にふく。 「うわぁぁ!父上!乱暴!!」 「あっはっはっは!男はこのくらいでいいんだ!(。-∀-)b」 コンラートが拭かれる度に、揺れているような気がする。 そーーと、ヨザックがコンラートから離れる。自分も巻き沿いになるような気がしたからだ。 捕まる前に、髪を良く拭いた方が賢明とみた。有利も反対側に逃げる。やはり自分できちんと髪を拭こうと 思ったのだ。 けれども? 「じゃぁ、ゆーちゃんの髪は、パパがふいてやろう!」 これまた、面白がった勝馬に、がっしりと捕まって、ダンヒーリーほどではないが、がしがしと拭かれてゆく。 「じゃあ、僕は、グリエちゃんの髪を乾かしてあげるよ〜(・∀・)ニァニァ」 それをみて、村田までもがヨザックをつかまえに来る。しかも、いつの間にやらムースだ櫛だドライヤーに 髪ゴムまで持っている。しかも、勝利までもがおもしろがって、ヨザックを後ろから羽交い絞めにした! 「よし!いけ!ムラケン!」 「さすがです、お兄さん!そのまま、つかまえていて下さいね♪」 「わぁぁ!健さん、何でカーラーまで持っているんですか?わっぷ!ムースをつけないでーー!」 二人に弄られ始めたヨザックをみて、ダンヒーリーも勝馬も面白がっているので、助けは期待できない。 では、コンラートはといえば、父親に手荒くされたおかげでぐったりしているし、有利はといえば、 よーーし、次はゆーちゃんだ!と、こちらも犠牲になることが決まってしまっている。 かくして、寝る頃には三人ぐったりとして、そろって爆睡することになったのだった。 「いや〜、お兄さんの思惑通り、ぐっすりデスネー、でも、僕・・・試験勉強を教えに来ているんですが?」 「・・・あー、まー、それは悪かった。明日からスパルタで頼む。」 「いいですけどね?」 村田もいるので、今日は客間で布団を並べて4人一緒に眠ることとなった。文句を言っている割には、 先に眠った三人を見つめる 村田の目は優しい。 「・・・・・村田も悪いな、色々巻き込んじまって。」 すると、村田は勝利の言葉が意外なのか?振り返って背の高い高校生を見た。 「お前も、一緒に寝ろ、風呂上りにおきていると、湯冷めしてしまうぞ?」 「いいえ、僕は・・・それより、お兄さん・・・シュピッツヴェーグの動きですが、グウェンダルさんから母親に 連絡を入れさせるだけではダメだと思います。彼女の夫と兄が事実上暗躍しているとしたら、彼女では 止められないでしょう。」 これが、有利と同じ中一の言葉とは思えない。相変わらず、頭脳の回転が速い奴だ。 「・・・あぁ、わかっている。だが運のいいことに、あと少しで夏休みだ。それに当分、学校の送り迎えは・・・。」 そこで、勝利は天を仰いだ。村田も何が言いたいか わかったのだろう?たははっと眉毛を下げた。 「だ・・大丈夫ですよ、いくらママさんだって、往来で人を殺めるまではしませんから・・・。」 「半殺しでも問題だぞ・・・・。」 そう、これから毎日、学校の送り迎えは、渋谷家の影の実力者、美子ママこと、濱のジェニファーがつくのだ! 最初は、勝利がつくつもりであったが、小学生の登校時間にあわせていたら、確実に一時間目の授業に出れは しない。そこで、却下されてしまったのだ。しかーも! 「大丈夫v ママが剣を持っていくからv (ノ∇〃)ウフ」 「わぁぁあ!! だめだって!嫁さん!銃刀法違反で、ふつーに捕まるから!!」 職質されたら、一発だ! じゃぁ、木刀でv という事で決まったのだが、フリフリワンピの人妻が 木刀を持って笑顔で 登校に付き添う。 「コンラート・ヨザック・・・二人とも、強く生きてくれ・・・。」 「あーー、あははは ^^;」 週明けから 付き添われるだろう小学生に、思わず同情してしまった二人であった。 う〜〜ん、といいながら、真ん中のコンラートが 有利のほうに転がってゆく。 それに、うっすらと目を開けた有利が、腕を伸ばして抱き込む。暑いだろうに・・・二人が離れるそぶりは無い。 「彼らを引き離すことは出来ない。」 村田の声が静かに響く。そっと、襖をしめて二人はリビングへと戻った。ダンヒーリーは既に会社に戻った。 勝馬は風呂で、美子はリビングで風呂上りに飲むだろう、夫のビールの準備をしている。 「勝利さん、僕は・・・渋谷を有利を守るためなら、どんな手でも使います。必要ならば、ここに・・・」 といって、村田は頭を指さした。 「眠っている記憶を使っても・・・・。」 「村田・・・お前、それはっ!」 「健ちゃん・・・。」 村田は、ソファーに身を沈めると、大丈夫だというように笑った。 「前に話しましたよね?僕のここには、前世のみならず、数代にも渡る魂の保持者達の記憶がある、と・・。」 そう、彼はとんでもない秘密を持っていた。本来あるはずのナイ、自分になる前の同じ魂の保持者達の記憶を 持っているだのだ。おかげで、難解な数式も、医学知識も、幾多の言語も教えられてもいないのに理解でき ていた。 彼は、とても聡い子で、両親にすらこの事実は受け止められない事を知っていた。 小さい時は、何もわからずそんな事を話してしまい、両親を困惑させたものだと、彼は笑った。 やがて、その記憶の話をするたびに、気味悪がられたり、おかしいと言われる内に、これは話すべきことで はないと識ってゆく。 だから彼は、ちょっと頭のいい子供を必死に演じてきたのだ やがて話さなくなった息子に、あれは幼児期の変わった現象か何かだと、思った両親がほっとし、やはり 両親でさえも受け入れられない事なのだと、悟ったのだと言う。 だが、フッとした時にその仮面がはがれてしまったことがある。 両親は慄き、あわてて世界中の医者に診せた。普通じゃない!この子は一体どうなるのかと? そんな中で、有利が村田を訪ねてきたのだ。三ヶ月以上学校を休み、家を訪ねても中々いない彼を心配して。 そして、村田の状態を知ってしまった。偶然だった、丁度、アメリカの小児科医に診せて帰国したばかり だったと思う。冷蔵庫にも何もなくって、食糧を買いに両親が出かけていった。その際に、鍵をかけ忘れたのだ。 「ムラケン〜!いるのか?」 こそっと入ってきた有利の声を聞いた時、久し振りに聞いた友人の『いつもの』声に、思わず飛び出して しまった。ずっと、色々な機械をつけたり、同じような質問をされたり、まるで研究用のサンプルのような 扱いを受けてきた。長く非日常の中にあった彼にとって、日常そのものの有利に、思わず縋ってしまったのだ。 「もうやだ!医者になんて行きたくない!」 何だかんだ言っても、村田は当事10歳。あっちこっちの国内外を連れまわされた挙句のモルモット扱いに つい、友人に泣きついてしまったのだ。 「村田!?病気だったの?」 「ちがうよ、僕はいたって健康!だけど・・・前世の記憶があるって、そんなにいけない事なのかな?」 「前世?村田そんなの覚えているの?」 しまった!!と思った時には、村田はポロリと自分の秘密を話してしまった。急いでごまかさないと!! だけれども、焦れば焦るほど言葉が出ない。早く否定しないと、気味悪がられる!はやく・・・!! 「そっかー、お前記憶力いいもんな〜、他の人より、そんなことまで覚えていられるんだ〜。」 が、渋谷有利は、そういうと別に気味悪がる事も、変な羨望を向けることも、興味本位で聞いてくることも なかった。 「渋谷?・・・キミ、僕の事気味悪くないの?」 「・・は??なんで?」 いたって普通だ。いまだかつて、そんな反応をもらったことがなかった村田は、ついつい念を押してしまった。 「だから、僕は自分の前世どころか、数代前のも覚えているんだよ?」 「へ〜、よくおぼえていられるな?おれなんて、昨日ならった数式も忘れるのに〜。」 小学生の数式って、台形の求め方とかそんなものだろう?同レベル!?それと同レベルなの!? 「で?お前、何で医者に行っているの?どこが悪いんだよ?」 「・・・・きみ、ここまで言ってつながらないのかい?あのね?僕は、過去の魂の保持者の記憶を持っているんだよ?」 「うん。」 「普通持ってないよね?めずらしいよね?」 「うん?」 「だから、小児精神科とか、脳外科の医者に診せられているの?」 「診て・・・それって、どうにかなるもん?」 「さあね?物忘れとかはどうにかなるかもしれないけど、覚えているほうだからね〜?」 「ふ〜〜ん。それで、そこに行くのは、村田はいやなんだよな?」 「だって、皆同じ事を聞くし、それに僕のこと実験台みたいにするし・・。」 「なにーー!!実験!?実験って、村田!改造されちゃうの?それって、バッタみたいな正義のヒーロー?」 「きみ、テレビのみすぎ・・・」 「よし、村田逃げるぞ!とにかくおれの家に行くぞ!」 思い立ったら即行動!脳みそ筋肉族の彼は、悩むということを知らなかった・・・。 あ・・・という間に、渋谷家に連行された僕は、そのままママさんいお茶を入れてもらい少し待つ。 有利一人ではいい案が浮かばないことを知っていて、中学生の兄と年下だが頭の回転のいいコンラート達を 待とうというのだ。 やがて、コンラートとヨザックがそろって帰宅し(夜、ウェラー氏が迎えに来る)、ヨザックは、そそくさと ピンクのメイド服に着替えて夕食作りの手伝い、コンラートは自分のコーヒーをもって、リビングで宿題を広げた。 当然のように、有利の横を占拠しつつも僕達の空気が微妙に違うのを感じ取って、口出しをしてこないのはさすがだ。 やがて、中学より兄勝利が帰宅してきた。 パパさんは、帰宅がおそいので、これで全員集まったことになる。 「あのさ〜、しょーちゃん。おれ相談があるんだけど?」 「お兄ちゃんといったらのってやる。」 「・・・・・・・・なにそれ?」 弟の足元をみるような要求の仕方に、有利の声が低くなる。 「と、言うのは冗談で・・・で?なんだ?」 弟の機嫌の具合を察知した兄は、軽口が通じないと見るや、急いで相談にのるぞっ!と言う姿勢を見せる。 「うん、あのね?ひどいんだぞ!村田な?実験台にされちゃうんだって!改造人間にされちゃったらどうしよう!?」 「渋谷、だから改造はないからっ!!脳をしらべられたり、精神鑑定にまわされているだけだからっ!!」 仮○ライダーから離れろーー!! 「なんだ、弟のお友達?脳味噌壊れたのか?」 「ちがいます!」 この兄弟は!この兄弟わぁ〜〜!!! 「で、実際何があって、そんな目にあっている?」 「村田ね?前世の記憶とか、数代前の魂保持者の記憶があるんだって。」 止めるよりも早く、有利は兄に訴えてしまう。 「前世の記憶?・・・ちなみにどんな?」 対して兄、勝利の反応は冷ややかだ。まぁ、そうだろう?大概はこんなものだ。きっと嘘だと思っているのだ。 「・・・・信じてないくせに。」 「だから、どんなものかって聞いているんだろうが?弟のお友達。」 腕を組んで、言って見やがれ!という、勝利にヤケになって村田は話し始めた。ちなみに、他のものは口を出さない。 この中で一番明確な頭脳を持っているのは、この長男だからだ。脳筋族の有利はもちろん、美子も黙って聞いている。 同じく、コンラートとヨザックも、この渋谷家ルールは身についているので、右に同じ状態だ。 「一つ前は香港でAV女優をしていたクリスティン・・ちなみに、ビデオのタイトルは、修道女クリフティンの甘い罠です。」 「「「「AV女優!?」」」」 「その前は、フランス人医師で、第二次大戦で従軍し、戦艦諸共海に沈んで溺死・・・。」 「「「「うっ」」」」 「その前は、10歳で死んだので、記憶はあいまいかな?」 「「「「・・・・・・。」」」」 「・・・・・・なぁ、村田・・・前世の記憶って、持っていてイイコトってある?」 「・・・フランス語とか英語とか習わなくても話せることかなー?」 「へー、健さん。そういえば俺らとも、普通に英語で話しますよね・・・。だったらグリ江は、お徳かもぉ? 健さんと色々話せるしv 今度、内緒の話は英語でしましょうね?きゃ!」 だが、有利以外は、この家では英語が通じるのだ・・。余り意味はないのでは?と有利以外は思った。 「それで村田、お前その記憶で 混在することはあるのか?」 「小さい時は、まだあいまいにしか思い出していなくて、自分と混ざることもありましたが、割とはっきり 思い出した今では、感情移入の強い映画を何本も覚えているという感じです。あくまで、僕は僕ですから。」 -- そう、僕は僕だ。あの、可哀相な人生を送った人たちではない! 「そうか、なら、医者に掛かる必要はないな?」 「そうねー、別に健ちゃんが頭がいいのは、いつものことだし、記憶が人よりちょっと多いだけで、 病気じゃないんだしぃ〜。うん!いいわ、ママから健ちゃんのママに言ってあげる。」 「だな?物覚えが悪いより、良いほうがいいんだし、村田が【彼らと自分】に線引きが出来ている以上、 問題はないな。できれば、そのもの覚えのよさは、ゆーちゃんに少し貸して欲しいくらいだ。」 「うるせーー。いいんだ!野球は体で覚えるものだから!」 脳筋族である弟は、兄の言葉に傷ついたようだ。ポカポカテーブルを叩いて悔しがる。 「ユーリ、そんなに叩くと手を傷めますよ。」 コンラートは、有利の手を両手で包み込むと、ちゅっv と、手にキスをする。 「こんらっどぉぉ〜〜?」 真っ赤になった有利は可愛いな〜と、コンラートは、睨まれているにも かかわらず ニコニコだ。 「では、あとは、二人に任せましょう。 と、いうわけで、あそびましょうか?」 といって、コンラートが取り出したのは、人生ゲーム・・・・・・君?僕に喧嘩売っている?? 結局、4人で人生ゲームをしていると、電話で連絡した両親が駆けつけ、その場でママさんと、勝利さんに 説得されてしまい、僕は医者通いを止めさせてもらえた。 我が子の秘密を知っても、いつもどおりに遊んでいる子供たちを見て、どうやら両親の中にあった不安も かき消されたらしいというのが、本当のことらしい。 これは、脳の専門医でも精神科医でもどうにも出来ないこと。ならば本人が嫌だと言うなら、医者になかる 必要はないだろう?それよりも、このまま研究材料のように扱われて、子供の気持ちが傷つく方が怖いと、 同じ母親である美子に諭されて、両親も色々考えたらしい。 「それに、イイコトもあるじゃないですか?語学がぺらぺらで語学学習代が浮いちゃうし、ほら、医者になるの だって、経験知識があるのだから 他の子と比べて お徳じゃないの?」 「ママさん、僕、医者になるとは言ってません (ーー;)」 「そうなの?でも、健ちゃんは、向いていると思ったんだけど?まぁ、いいわ、これから、好きなものになれば いいのだし、健ちゃんは健ちゃんの人生をこれから作っていくのですものね?」 「作ってゆく・・・健の人生・・・」 つぶやいた両親に、美子ママがニッコリと微笑んだ。何分、母親としては、長男が一人多い分、彼女の方が経験が 多い。先輩ママである美子に、大丈夫だと太鼓判を押されて、母親はかなり気が楽になったと後で言っていた。 かくして、僕はそのまま普通の生活に戻ることが出来た。 中学は、僕の希望で名門私立ではなく、地元の中学へ行くことが許された。 いわく、健は他の子よりもスタートラインが早い分、少し回り道するくらいで、丁度いいんだそうだ。 母親は、休業していた仕事に戻り、相変わらずバリバリ働いている。父親は、出張が多く家を空けることが多いが、 メールのやり取りをしているので、そんなに遠くは感じない。両親のいない日は、渋谷の家にコンラートたちと 泊まる事も多い。有利の友人の健ちゃんというポジションを、変わらずに与えてくれるこの環境がとても愛しい。 これが僕の日常、戻れたのは、まちがいなく この渋谷有利という友人の行動のおかげだ。 「僕はね、彼に感謝しても仕切れないんです。僕をそのまま受け入れてくれた有利に、両親を説得してくれた あなた達に。僕が僕として、ここで暮らせるのは・・・あの時、有利が僕をそのまま受け止めて連れて逃げて くれたから・・・だから、彼の為ならば、ここに眠っている記憶や経験、知識を総動員して戦います。」 二人は、離してはいけない。 ならばコンラート、僕は君の力にもなろう。 「健ちゃん、お気持ちはとても嬉しいわ、でも、無理だけはしないでね?中には嫌な記憶もあるでしょう? それを無理に思い出して貴方が辛くなる必要はないのよ?私たちにとって、貴方は大事な健ちゃんなのだから。」 そっと、美子に抱き込まれて、村田は少しだけ照れくさそうな表情をする。 「ママさん、ありがとう。」 でも・・・有利にとっても、コンラートにとっても、お互いは唯一なのだ。 それが解かっている以上、多少の無理も通してやる。その覚悟を村田もまた していたのだった。 その覚悟がなくては、ただの子供がシュピッツヴェーグという財閥などと戦えるわけがないのだから。 やがて、村田も三人と共に寝付いた。4人の子供が眠る様子は、まだまだあどけない。 起きている時は、何かと大人びる村田健でさえ、こうして眠る姿は年相応・・というより、もう少し幼くなる。 有利ほどではないが、村田健も幼い顔立ちなのだ。しかも、二人揃うと背格好も良く似ているせいか、 随分愛らしい。 だが、二人とも、見た目とは違い、中々男前の性格をしている。 村田がここまで腹を決めるということは、やはりシュピッツヴェーグ財閥には何かあるのか? だとしたら、高校生・渋谷勝利では、この子供達を守りきれないかもしれない。 いや、大人である勝馬やダンヒーリーがついているのだ。そう悪いことは怒らないと思うが・・・・。 勝利は、頭脳明晰な少年である。よって、自分の力を過信はしない。かといって、卑下もしないが・・・。 「ここは、一つ、アノヒトの力も借りるか?」 勝利は、階段を上がって二階の自分の部屋へと戻った。そこにあるパソコンで、とある人物に連絡を取るために。 2009・6・8UP 後一時間で今日が終わる。そんな時に、こそ・・とUPしています。SAYONARAの4です。健さんの設定話?? 泡の雪だるまチビーズ。可愛いだろうな?子供の時にやりませんでした?泡で遊ぶの? |