短編SS 突発ユコン




「ユーリ。」
あ・・見つかっちゃった。
茂みから、ぴょこぴょこ見え隠れする頭は黒。この血盟城にて黒髪といえば、自分の名付け子以外いない。
案の定、声をかければ、ばつが悪そうに出てきたのは、我らが魔王陛下だ。
「何で隠れていたんです?」
「だって、ヴォルフが煩いんだよ〜。今日こそは、式の日取りを決めるとか息巻いちゃってさ〜。」
ツキンと、胸の奥が痛んだが、そんな事おくびにも出さず、コンラートは、まあまあといって主を宥める。
「じゃぁ、コンラッド、どこか連れて行ってよ!どこか、二人っきりになれるところがいいな。」
ね?といって、黒曜石の瞳が悪戯を思いついた子供の様に輝いた。


「ふっ・・・ぅ・・・ん・・・。」
ぴちゃ・・濡れた音を立てて、唇が離れた。コンラートは自分にのしかかる少年王の体を軽く押し返した。
「ユーリ・・・そろそろ、執務に戻りましょう・・・。」
「え〜〜やだ。」
「ゆーー・・・ん!。」
コンラートは再び吸い付いてきた唇に、息を絡めとられながらも、受け入れる。どういうつもりか、この少年王は、コンラートと
二人きりになると、こうして求めてくるようになった。彼は女の子が好きだといっているにのに・・自分は女の子ではないし、
やわらかくもない。成人した男なんだから、骨ばって固いだろうに。今もこうして、ユーリは自分の上に乗りかかって、唇を
合わせ、夢中で口内を犯してくる。彼の指が、コンラートの軍服の合わせ目から入り込み、素肌に伸ばされると、コンラートは
彼の腕を掴み、押しとどめると、再び帰るよう促した。
「ね?ユーリ・・・誰か来たら困るでしょう?そろそろ戻ろう?」
これはウソだ。ここは、使われていない北の塔の屋根裏にある部屋。 昔、子供の頃偶然発見した、自分の秘密の場所だ。
ここを知っている者は、そうはいないだろう。それでも、ここで物音をさせれば、この部屋に誰か気づく可能性はある。

じゃぁ、夜になったら部屋に行っていい?

「それは・・・・。」
彼は、時折こうして俺を困らせる。口ごもった俺にどう思ったのか。有利は、体を離すと立ち上がった。
「ごめん、冗談。」
背を向けたユーリの顔は見えない。
「ほら、執務に戻るぞ!コンラッド。」
そのまま、扉を開けて廊下に出て行ってしまう。俺はあわてて、後を追い彼のすぐ後ろに控える。

前を歩く・・・彼の顔は見えない。


アンタは卑怯だ。俺の口づけを受け入れはしても、心は決して受け入れてくれない。
それを知っていても、求める心は止めれなくて、今日も俺は二人っきりになると、彼を求める。甘い声で、濡れた唇で俺を
夢中にさせるのに、その瞳は、決して俺を写してはくれない。俺が、名付け子だから、甘いのか?それとも、仕えるべき主
だからか?多分、後者なんだろう。今日も、彼は自分の後ろに控えるように歩く。決して隣には歩いてくれない人。


でも、一番の卑怯者は俺。そんなアンタを知っていて、それでも甘えて貪らずにはいられない愚かな俺。




5月22日UP
突発性ユコン・・・ちょっと前に、ボツになった話です。キリ番でユコンのリクが入ったので
とりあえず、書けるかどうか書いてみた、お試しストーリー。いきなり、襲っちゃったんでボツ
ふっ・・若いね。ゆーちゃん。