シャッフル(おやすみ・おはよう編) |
「はい、少し長風呂でしたから、冷たい水をどうぞ。」
にっこり と、コンラートが レモンとミントの入った 冷たく冷やした水を渡してくれた。 お風呂の前に 頼んでおいたのだろう?相変わらず ソツのない男だ。 と、改めて、他の三人は思った。すると、小瓶とタオルを持って、コンラートが有利ではなく、 その体である 村田の方によってきた。 「スミマセンが猊下。お願いが・・。」 「なに?ウェラー卿?」 「はい、髪を拭かせて貰えませんか?」 「・・・・はい?」 にっこりと、今にも タオルで 拭き始めそうなくらい近づいてくる。 「こんらっどぉ?なんで、村田の髪を?おれのは?」 「ですが、ユーリ。それはヴォルフの髪ですよ?このヘアオイルはユーリ専用でしょう?」 「だったら、俺がやりますよ。」 ヨザックが、名乗りを上げて、二人の間に体をすべり込ませた。だが、コンラートもこれは譲れないらしい。 護衛氏は、乾くか乾かないかの微妙な時に 薄く延ばしてだの、うんちくを熱く語り始めたのであった。 「コンラート…ユーリの髪に、そこまで こだわりがあるのか?」 些かげっそりとした顔で、ヴォルフラムが兄につぶやく! 「でも、これにしてからユーリの髪が 余計にツヤツヤになったんだよ?」 小瓶片手に、力説するコンラート……自分の髪は、ガシガシ拭いちゃうくせに・・・。 「たいちょーー、変わりましたね、アンタ・・・ガク」 ばかばかしくなって、ヨザックが相手をするのを止めた。すると、許可が下りたものと思って、コンラートが 早速 有利の髪を拭き始めた。といっても、中身は村田だが・・・。 「お!?」 肩にふわりと大きめのタオルをかけると、別のタオルで全体的な水分を取る。そして、タオルの上から 大きな手が揉みこむように頭皮をケア…どうやら頭皮マッサージも兼ねているようだ。その後、小さなタオルを 用意し ……と、いいますか、何で こんなに サイズの違う用途別 タオルがあるんだ!? 村田は、コンラートの過保護ぶりに、つい本来の この体の中身である親友を 呆れた目線で見た。 だが、逆に、コンラッドをとったーー!という、非難がましい視線がビシバシ返ってきた。 ひくっ!一瞬 本気で殴ってやろうかと 思った 村田さんであった。 その間もコンラートは、何枚ものタオルを使って、ポンポンポンと 丁寧にタオルドライしていく。 拭くというより、優しく叩いて包み込む。ある程度 乾かすと、小瓶を手にとって 一房ずつ毛先にだけ丁寧に つけてゆく。その後、再び、頭のツボを押してマッサージを初め、首、肩まで念入りにほぐしていった。 「ひゃぁ〜、ごくらく〜、ヨザも上手いけど、ウェラー卿も上手いねぇ〜。」 ほえほえと、村田は 気持ちよさそうに 伸びをした。もう眠そうだ。 「全体的な血行を 良くしておかないと、髪の栄養には なりませんからね。」 コンラートは、小瓶やタオルを片付けながら、村田にお礼を言う。 ちなみに、有利の髪はヴォルフラムが拭いた。村田の髪を拭く コンラートが面白くなく、ガシガシ拭いて、 体の持ち主である彼に 抗議されたのだ。 「それにしても、渋谷は毎回、こんな事をウェラー卿にやってもらっていたのかい?通りで サラサラのツヤツヤだと思ったよ。この髪は、ウェラー卿の 「愛情―(〃д〃)―゚.:。+゚」 ちょーと、友人の機嫌を直そうとリップサービスしたのだが、思ったより効果があるようだ。 何やら はにかんでいるが、喜んでいるらしい。頬を染める美少年は、コンラートを ぽやんとした瞳で見つめている。 「ぎゃぁぁ、ユーリ!僕の姿でコンラートにウットリするな!怖いだろう!?」 その様子に、滂沱の涙を流すヴォルフ……たしかに、ビーレフェルト卿としては怖いだろう?でもね? 「僕の姿で、目と同じ幅の涙を 流さないでよ・・・。」 号泣する 自分の姿を 突きつけられる、村田も気分は複雑だった。 「では、皆さん。髪も乾きましたし、今日は ここで一緒に寝てくださいね?」 「へ、なんで?」 「警備上、そうしていただかないと。さすがにバラバラになられると、こちらも守りきれません。」 「だよね?わかったよ。仕方ない渋谷、今日は三人で寝るか?といっても、一人は自分の体だし・・三人って 気がしないけどね?」 「いたしかたない!今日は大賢者も一緒に寝かしてやろう。」 「・・・・キミね・・ここ魔王部屋。今、魔王の見た目は僕。出て行かされるとしたら、君等の内どちらかだよ。」 「にゃにおう!?」 「こぉら、ヴォルフ。猊下に突っかからない。はい、おやすみ。」 コンラートは、弟を捕まえると、そのままベットに寝かせる。瞼の上に大きな手を覆うと、やさしく頭を撫でる。 「わーすごい、僕の体なのに……独特の鼾をかいているよーー;」 村田が感心して手を叩いている。そう、わずか3秒で眠りについて、鼾をかくという自分を見てしまったのだ。 夜っぱりで日付が変わらないと、いつもは寝ない体なのに、これは中身のせいか?コンラートの技のせいか? 「では、陛下・猊下おやすみなさいませ。」 上機嫌のコンラートが出て行こうとして……はたっと、そのまま 居座ろうとしていた 幼馴染を見つけた。 ぐい!! 「イタ・・イタタタ!たーいちょ!耳引っ張らないで!わかった・・出る!でますから! 猊下ー!朝迎えにきますから!」 無言の笑顔で、コンラートに耳を引っ張られたヨザックと共に、二人は魔王部屋から出て行った。 「うんもう、隊長たら、ヤキモチ焼きなんだからぁ〜。」 「うるさい黙れ。」 「それにしても、いつもは猊下のお供で、もっと遅くまで起きているのに、今夜は暇だな〜♪」 「何が言いたい。」 「今夜、相手してくれよ。」 「・・・・・・ちょっとだけだぞ。」 「まぁまぁ、そう云わずに、久々なんだから、じっくり味わっせろって。」 そういいつつ、護衛二人組みが魔王部屋の警護を衛兵にまかせて、コンラートの部屋に向かっていくと、 その会話を聞いた衛兵達が、思わず固まって囁き始めた。 「…今の会話聞いたか?」 「あの二人、ルッテンベルク時代から、付き合っているという噂があったが…まだ続いていたのか!?」 「今夜はって、こ・・このあと、二人は・・・ごきゅり・・!!」 『コンラッド、久々なんだし、じっくり味わってやるぜ。』 『…ッ……んっ…ばか……しつこい…ッ!』 『相変わらず、感度のいい身体だぜ。』 『……ぁん…な‥ァ、…そろそろ……くれよ…!…』 「やべ・・俺、閣下に強請られたら、絶対 からっぽになるまであげちゃうぞ。」 「あの、色気のある声で、名前を呼ばれるだけでも…昇天するな。」 「「「いいな〜、グリエさん」」」 ぎん!!!(<●>_<●> ) 「…今、コンラッドで、なに妄想してたのかなぁ?」 ひっ!! 「「ヴォルフラム閣下!!」」 緑の目が下から上目遣いで睨んでいた。衛兵達は、ビシッと敬礼しつつ、背中に冷や汗をかいた。 しまった、今、彼の兄上の話題で、思いっきり 不埒な妄想をしていたのを 気取られてしまったか!? 「云っとくぞ、コンラッドは おれのだ!例え妄想でも、手出し禁止!」 ひぃ、ばれてるーー!? 「「はい!!もうしわけありません!!」」 こわい・・まるで魔王陛下を相手にしているように怖い!!妙に迫力のある、三男閣下の睨みに、衛兵達は 縮こまって謝るしかなかった。 「う〜〜。」 そのまま、なぜか枕を抱えた三男閣下は、廊下を てこてこ歩いていってしまった。あれ?そういえば、何で あの三秒で眠って朝まで起きないという三男閣下が起きているんだ?? 「はっ!まて、今、ヴォルフラム閣下は何と言った?」 「たしか、コンラート閣下は自分のものだと・・?」 「そういえば、夕方 いちゃついていた という話だぞ?」 「って、ことは、マジで・・こここコンラート閣下とヴォルフラム閣下が、禁断の恋!?」 「まて、そうしたら、どっちがどっちだ??」 「ナニがだ?」 「だから、可愛い弟に、コンラート閣下が手を出してしまった場合・・・。」 『コンラート兄上ぇ〜のおっきい』 『ふふ、可愛いヴォルフ・・・大丈夫、ヴォルフは昔から欲張りだから、これくらい食べれるよね?』 『・・・ッ・・・・ら・・らめ・・・ッ・・・そんなの・・・入ラナイ・・・』 「↑と、なるだろう?」 「うぉっ・・・そ、それは、夜の帝王と噂された手管で、まだ何も知らない弟閣下を陥落か、さすがだ。」 「いや、確かにコンラートは、上王陛下のフェロモンを継いでおられるというが、実は閨での房術は、長男閣下 が引き継いでおられると言う噂だ。昔、コンラート閣下もお小さい頃に、房事を長男閣下から教わったという 噂もあるぞ。そのせいで、あの色気が開花したとも・・・。」 「おお〜、さすがは、長男閣下、三兄弟で一番長けているというだけはある。」(←?) 「だからコンラート閣下の色気にまけて、直情的なプー閣下が手を出した場合・・」 『コンラート・・・僕はもう、お前を兄とは呼ばない!』 『・・・んっ、ヴぉるふぅ〜。』 『今日からは、コンラートは僕のモノだ!』 『・・・っ!・・・アァ・・・!イキナリ・・・・んッ・・・そんなに、腰を使っちゃ・・・コワレちゃ・・ッ!』 「↑と、このように押さえがきかかくなった、プー閣下がイキナリ襲うのかもしれない!ハァハァ」 「なるほど、魔性の男だからな、コンラート閣下は。その上可愛いがってた弟閣下だ、逆らえないだろうな?」 「そこを無理やり強引にか?いや、若いね〜、プー閣下も v」 扉の前で、上司達を捕まえて、よくもまぁ、そんな事を話せるな〜? その扉をはさんで、内側にいた村田は、そう感想をもらしたが、その手にはちゃっかりメモが・・・。 「それにしても、知らなかったな〜。あの摂政殿にそんな噂があるなんて、それにしても魔族に魔性の男と 思われているウェラー卿もすごいな・・魔力ないのに。でも一番ツボったのは彼だな、ププププ・・・ッ 」 ぐぐぴぐぐぴぐぐぴ 独特な鼾と、独自の寝相を展開している自分の身体を見る。 「若いねー v だって、ビーレフェルト卿・・・クスクス、本人が聞いたら、さぞかし面白いだろうな・・。」 有利がヴォルフラムの姿で、コンラートにひっついているせいで、この先 この噂には 真実味が帯びるだろう? 陛下トトも、コンラートとヴォルフラム株を もっていた連中が、賭けかえるかと あわてて いるらしい。 「元に 戻った時が 楽しみだよ。」 その時、どんな反応をよこすだろうか?自分の・・・というか、有利の頭をさすりながら、村田はにやりと笑う。 そこには、プックリ膨れた たんこぶが一個。 どうやら、ヴォルフラムは、恐れ多くも ダイケンジャー様の身体で、その中身である本人を 足蹴にしたらしい。 クツクツと 笑う大賢者(本人)の中では、イカに面白く尾ひれをつけてやろうか画策中である。 「健ちゃんは〜、寝ているのをぉ叩き起こされるのがぁ、いっちばーーんキライなんですぅー。」 と、後日、尾ひれが付き捲った噂を 耳にしたお庭番の話だ。 が、後でそんな事情を聞かされても、どうすることも出来ない三兄弟+陛下であった。 テコテコテコテコ・・・。 有利は、枕を抱えて一路コンラートの部屋に向かう。だが、さっきの衛兵達の言葉がよぎる。 「二人が、ルッテンベルクから付き合っていたなんて嘘だ。コンラッドはそんなこと言わなかったし、 グリエちゃんは村田の恋人だし!!」 めずらしく、早々と寝付いた親友は、今は 変則的な寝返りを 打ち始めた己の身体(中身ヴォルフ)と 一緒に寝ている。 「ちっくしょー、ヴォルフの奴、何で村田を避けて、おれだけ蹴るかな〜?自分の体なのに。」 痛む後頭部をさする。足蹴にされた頭が痛い。(その後、村田さんも 蹴られたことを知らない) ピタリと、止まったのは、毎度 御馴染み、自分の護衛の部屋の前。 「・・・・・・・。」 いや、さっきの会話を気にしている わけではないぞ!ないけど、そうだ!寝ていたら悪いし〜。 だから、こそーーと、近づいて、扉に耳をつけて中の様子を探る。 すると中から、二人らしき会話が聞こえてきた。 『なんだ、ヨザ・・・久しぶりだから、しゃぶりつくす気か?』 ええ!?な・・ナニを? 『いいじゃねーか、お前の・・・味わいつくしてやるから・・な?だから、もっと出せよ・・』 な・・なんだってぇぇーーー!?? 大変だ!こ・・コンラッドが、グリエちゃんに、しゃぶりつくされちゃう!?あんな体力絶倫なヨザックに 迫られたら、さっきの衛兵さんの話じゃないけど、コンラッドが干からびちゃう!(←陛下・・) たすけなきゃ!! ばたーーん!! 「ちょっとまたーー!グリエちゃん、コンラッドを枯らすのは止めてぇぇーー!!」 「あれ?ユーリ」 「んぐんぐっ!プハッ! ごほごほっ・・坊ちゃん?」 「こらヨザ、意地汚くラッパ飲みなんてするから、こぼすんだ。」 コンラートは、むせて咳き込む幼馴染の背をトントンっと叩いてやる。 「だって、俺はしがない一兵士よ?お前の所にでもこなくちゃ、こんな上等な酒なんて飲めないでしょう?」 「だからって、俺の酒を全部飲む気か?もう出さないからなっ!」 「えっとー?」 有利は、勢い込んで入ったはいいが、自分がとんでもない勘違いをしていたことを理解した。 二人はただ単に、酒を飲み交わしていただけ・・・というより、コンラートの部屋にある上等な酒を目当てに、 ヨザックが たかり に来ていただけと言うのが正解らしい。 有利が入ったとき、ヨザックはいかにも高そうなラベルのついたお酒を、瓶に直接口をつけて、ぐびーー!!と 飲み込んでいたのだ。 さて・・・・どうやってごまかそう? 「ところで、俺が枯れるってなんですか?」 「え・・えーー?あ、おれ、ねぼけていたみたい、あははははー?」 「つーか、俺がコンラッドを 枯らすって おしゃってましたよね?」 ヒデ(゚ ∀ ゚):;*。ブッ こらーー、グリエちゃん、余計なコトいわないでーー!! 「ヨザックが?俺を枯らす?・・・って、懐のことかな?お前、高い酒ばかり出してきて。」 よかった!コンラッドがズレタ性格で!(←最後の砦といっているわりには・・・) 「こんな酒の一本や二本で枯れるような、懐具合かよ?」 「え・コンラッドってば、けっこうお金持ち?さすがは元プリ!」 「というか、こいつは仕官ですし、軍にいたころの給料なんて全然手をつけてないんで、けっこう 貯めているはずです。」 「馬鹿か、飲み会のたびに、お前ら俺に出させていただろう?おかげで、殆どそれに消えていったよ!」 「あ、そうなの?そりゃ悪かった。でも、陛下の護衛で給料いいだろう?」 「・・・・・・・おごらないぞ。というか、お前だって猊下の護衛の時に給料が入っているだろう、俺とは違って 特別手当てが出ているはずだ!そっちこそおごれ!!というか、今度仲間内全員におごれ!!」 「いやん、そのお金は、新しいドレスを買おうと思っていたのにぃ〜!」 「ふん、死に金か。」 「きーーいったわね !! ヾ(`Д´*)ノ」 「えっと・・。」 ふっと、テーブルの下に転がっている酒瓶が有利の目に入った。10本はある・・・というと、まさかヨザックが この短時間に ここまでは飲まないだろう?・・・このうち数本は、自分の護衛が飲んだものだ。 「もしかして、二人とも けっこう酔っている?」 さっきから、有利の前だというのに、コンラートの口調が けっこう乱雑なのは、どうやら彼も酔っ払っているらしい。 現に、べーーと舌を出しているコンラートというのは、はじめて見た!? ヨザックはヨザックで、幼馴染の首に腕をまわして、拳骨で頭をグリグリしているし・・・こんなじゃれ合いして いる二人は、有利は見たことがない。 「二人って・・・・けっこう、子供なのな・・・。」 ピタリ・・・・!! 有利がそう つぶやくと、二人の動きが止まって・・・そーーと顔を見合し、ばつが悪そうな顔になった。 「うわー、そんなところまでそっくり、さすがは幼馴染だよね。」 ぽりぽりと、頬を掻く動作まで一緒だ。もしかして、三兄弟より似てないか? 「あ、それよりユーリ。どうしたんですか?寝たのではなかっ・・・・・ハッ!?ユーリ、もしかしてここまで 一人できました?警護もつけずに?」 しまっったぁぁ〜〜!コンラッドが護衛モードになってしまった! 「だ・・だって、ほら、おれ今、ヴォルフだしさ?お・・おかしいだろう?」 えへ?っと、笑ってごまかしてみると、はぁ〜〜〜〜〜〜〜とすッごく長いため息をつかれた。そんな〜ぁ。 「それで?枕を お持ちということは、もしかして うちの弟ですか?」 「あったりー!きいてくれよ、村田の体でも、アイツ寝相が悪いの!」 そういって、頭をさすれば、すかさずコンラートが 頭を見てくれる。あぁ、たんこぶがと、小さく つぶやかれて、そこに ちゅ♥ っと唇が落とされた。 「うわっ!」 「痛くないように、おまじない。」 にこっと、可愛らしい笑みで微笑む彼を見て、ヤッパリ酔っているんだと再確認・・・だって、妙に可愛い 感じがするしねー。新発見、この人酔わすと可愛いんだ。へ〜〜〜ぇ ♥ 「さぁどうぞ、俺のベットをお使いください。 ・・ヨザ!」 「へいへ〜い、じゃあ、俺は健ちゃんの様子を見てから寝ます。もしかして、蹴られているかもしれませんし、 起きていたら さぞかし怒っているでしょうね?・・・ちょっと怖いけど、心配なんで〜。」 ひらひら〜と手を振ると、また明日〜。と、陽気に言い置いて ヨザックは出て行った。 「では、どうぞ。」 コンラートはそういうと、有利をベットに寝かしつけた。 「コンラッドは?」 「俺はまだ風呂に入っていませんし。お酒臭いですからね?ソファーで寝ます。」 「えぇ〜〜、せっかくだし、一緒に寝ようよぉ〜。ほら?おれ今 ヴォルフの体だし、兄弟仲良くね?お兄ちゃん?」 「でも・・・・。」 「おれ、お風呂出てくるの待っている!早く行っていって!」 ぐいぐいと、コンラートの背中を押すと、風呂場へと押し込む。そして、自分は窓を開けると、空気を入れ替えて 転がった酒瓶をベランダに片付けておく。こうしておけば、出てきたコンラートとすぐに寝れるしな。 父 勝馬の酔っ払いぶりに、意外に こういったことは 慣れていた有利であった。 一方コンラートは、主を待たせてはいけないが、酒臭くて嫌われるのも困る。そこで、以前有利がいい匂いだと 喜んでいた美香蘭入りのシャンプーとセットの石鹸を使った。これは、当時魔王であったツェリが開発させた だけあり、美肌効果もさることながら、殺菌成分配合、また匂い消しとしても 優れているのだ。 いつもより 念入りに体中を洗うと、歯も磨いて ついでに におい消しのハーブもかじる。 これで、大丈夫だろうか? 少し心配だが、コンラートは 待っているだろう主の下へと戻っていった。 「おかえりー!」 かくして主の少年は、満面の笑みで迎えてくれた。いつもと同じ笑顔、ちょっと違うのは、姿が弟のものだと いうことだが、その表情は やはりユーリのものであった。 「お待たせしました。」 コンラートが、ベットの端に腰を下ろすと、えい!とばかりに、有利が飛びついてきた。 すぅーーと息を吸うと、お花の匂いに混じって彼の匂いがする。うーーん、なんか安心する。 あれ?なんか、動悸がしてきたぞ?それに、この匂い・・・どこかで嗅いだ事があるような? 「ユーリ、酒臭くないですか?」 「ううん、すっげーいい匂いがする。」 「あぁ、これは、ユーリが気に入っていた美香蘭の香りですよ。混血には媚薬効果は効かないみたいだし、 におい消しに丁度いいかな? と おもって、気に入った?」 なにやら、コンラートの胸に顔を埋めて、くんくん嗅いでいるユーリの姿に、子犬のようだな〜と、 柔らかな金髪を撫でてあげる。 「なぁ〜な〜〜んか、ふわふわする、でもって〜どきどきする?」 「え?」 ぽや〜〜んと、有利がコンラートを夢見るような目で見た。気のせいか潤んでいる緑色の瞳。 「まさか・・・。」 そういえば、今、有利はヴォルフラムの体に入っている。純眞魔国産魔族である弟の・・・!? 「もしかして、美香蘭の効果が出てしまったのか!?」 美香蘭の効果・・・それは魔族に反応する。その香りを纏った者に少しでも好意を持っていれば、より情熱的に愛し! その逆ならば、効果のその真逆にと発生させる、媚薬だか激(←w)薬だか微妙な効果だ。 有利は、当然コンラートに好意を持っている。と・・なると?その感情が増幅されて? 「コンラッドぉ〜好き vv」 「あぁ、やっぱり。」 まずい!有利にせまられたら、さすがに困る! 焦るコンラートに、有利がウットリと微笑みかける。 「こんらっどぉ〜。」 妙に、熱のこもった目で彼を見上げると、にっこ〜〜と笑い? べったぁぁ〜〜!!と、有利はコンラートに 引っ付いてきて、ぐりぐりと 額を胸にこすりつける。 「えっと??これって、マーキング?」 よくネコが飼い主に、この人間は俺のだぞーー!と、額をこすりつけて匂いを移すものだ。ごろにゃん v と、 確かに いつも以上に甘えているが、あまりいつもと変わらない気がする。 やはり、中身が有利だから、効果は薄いのだろうか? 「あはははは・・・」 つい、身構えた自分が馬鹿らしい。 「さぁ、ユーリ、一緒に寝ようか?」 「うん!コンラッド抱っこ!」 いつもと違い、自分から抱きついてくる愛しい子に、コンラートは少し幸せを感じて、その腕の中に収めた。 そして、朝・・・ コンラートは、いつものように目覚めると、目の前に光がちらついた。 あぁ、そうか?ユーリがヴォルフの中に入っていたんだっけ?目の前の金髪は弟のもの、昔はいつもこの金髪を 眺めて起きたものだった。 そっと、その金髪を撫でると、気持ちがいいのか?有利が擦り寄ってくる。そろそろ起こさなければ・・。 「ユーリ、朝ですよ?起きてください。」 「うう〜〜ん?」 しかし、有利は嫌々というように、首を横に振る。 「くす、かわいー。ユーリ、起きて・・ユーリが起きてくれないと俺も起きれないんだけど?」 「うーーん?」 「いい加減、俺の上から降りてくださいってば。」 「うえ??」 その単語に、おかしなものを感じた有利は、もそもそと自分が寝ている場所を確認する。弾力のある堅い? さすがに、いつもと違うマットレスの感触に、有利の目がちょっとだけ開く。 そこには苦笑した、コンラートの顔が、すぐ近くにあった。 「おはようユーリ、起きたら退いてくれる?俺も着替えたいんだ。」 「どく〜〜??」 そこでようやく、己がコンラートにしっかりと 抱きついて眠っている事に気がついた!! 「コココ・・コンラート!?」 「はい、なあに?ユーリ?」 「ゆーり? 何を云っている?僕はヴォルフラムだ!?」 「ヴォルフ? では戻ったのか?」 「もどったって、いったい?」 その時ふわりと、鼻腔を花の香りがくすぐった。 なんだ?急にドキドキしてきた?それに、なんだろう?コンラートって、こんなにキレイだったか? パジャマが寝乱れ、ボタンの隙間から匂い立つような肌が見える。鎖骨のくぼみはすっきりとしたラインで、 首はやわらかそうで、ヴォルフラムが食いつくのを待っているようだ。 「コ・・コンラート!」 いきなり首元に、ちくりとした感触があって、それが弟が吸い付いたからだとわかるまで、数秒を要した。 「え?なに?ヴォルフ?」 「コンラート・・・。」 なぜか、顔が近づいてくるし、それになぜか熱っぽい瞳!その時やっと、コンラートは、美香蘭のことを思い出した! そうか、ヴォルフが元通りになって、美香蘭の効果が現れたのか!? だが、遅い、あと少しで、ヴォルフラムの唇が、コンラートの唇に重なるという所で!? ざっぱーーーーーん!!! 突然ふって沸いた水により、ヴォルフラムは、あっという間にコンラートの上から、壁際まで流されていた! 「ま・・・間に合った!無事かコンラッド!」 「ユーリ!」 みれば、息せき切って駆けつけたのは、正真正銘コンラートの愛しい子、漆黒の髪に瞳を持つ魔王ユーリであった! ユーリは、2番目ざましと共に起き上がり、そして自分が元に戻っていることと、昨晩、コンラートと一緒に 眠ったことを思い出し、彼が美香蘭を纏った状態でヴォルフラムと抱き合って眠っていることの危険性に 気がついたのだ! 着替えもせずに飛び出して、彼の部屋に飛び込めば、今まさに食べられそうになっている、有利の護衛の姿が 目に入った!すると、イキナリ魔王が発動し、あっという間に、水が不埒モノを退治したのであった。 「迂闊でした。すみませんユーリ。」 自身も濡れながらも、コンラートは ユーリの そばまでやってきた。 「あぁ、ごめん、アンタまで濡らしちゃって。」 「いいんです、これで美香蘭の香りも抜けるでしょうし、それより無事 戻ってよかった。」 「そりゃ、こっちの台詞だよ。無事でよかった。」 「あまり無事とは、言い切れないんじゃない?」 そこに、珍しくも 朝早くから起きた 村田健ダイケンジャーさまが。 「村田・・・珍しいな・・そういえば、ヴォルフもおきていたな?」 「どうやら、魔道が抜けると同時に 身体に戻った反動で 起きたみたいだね?」 なるほど?それで、朝の弱いこの二人が 同じ時間に起きたのか? 「うわ〜このへや、すごいですね?びしょびしょ・・・。」 たしかに、ベットから床やらじゅうたんやらが、水でぐっしょり濡れている。これでは、しばらくの間、 この部屋は使えそうにない。 「ごめんコンラッド、部屋がめちゃくちゃで・・・。」 「いいですよ。俺は客間でも使うから。」 「だめだよ!あ、俺の部屋に こいよ!元々俺のせいだし。」 そう、彼の部屋に潜り込んだのも自分だし、彼に抱きついて眠ったのも自分だ。でもって、部屋を めちゃくちゃにしたのも、もちろん自分。 「でも・・・。」 「ね?そうすれば、いつでも野球談義できるし〜。」 「おやおや、渋谷はそれが目的かい?」 「それに、虫除けも出来るしな!」 そっと、有利はコンラートの首に手をかざして、今さっき『虫に食われた』首のうっ血痕を消した。 「おや?坊ちゃんったら・・・。」 ヨザックが、彼の嫉妬を見抜いて小さく笑う。 「??」 一人、コンラートだけが わかってないようだった。 「ね?いいだろう?コンラッドは俺と一緒はいや?」 「いいえ、光栄ですよ。陛下。」 「陛下って呼ぶなー!名づけ親!」 「つい、ごめんね、ユーリ。」 かくして、騒動は終わったかのように見えた。 しかーーし!! シンニチスクープ、気になる陛下のご寵愛の行方!? 「って、なんじゃぁこりゃーー!?」 魔王の側で巻き起こる禁断の愛!麗しの三兄弟、その愛の行方!と、題したその日の朝刊は、既に各地で 売り切れ続出だという。そこには、 「なにこれ!コンラッドとヴォルフが、魔王を放り出して二人で空き時間にデートしていたとか、 ヴォルフがコンラッドとの恋人宣言!?しかも、魔王が寝静まった後にコンラッドの部屋に夜這い・・。」 まさか・・・? 「え〜?何々?ヴォルフラム閣下は、婚約者が寝静まるのを待つと、兄であるコンラート閣下の部屋へと 夜這いに出かけ、その晩二人は褥を共にし、朝になって魔王陛下に現場を押えられた。いや〜すごいねぇ?」 でも、これ ぜーーーんぶ、君の行動だね? 「ゆううりぃぃ〜〜〜!!!」 地を這う美少年の声! 「きさまぁぁ〜〜!僕が寝た後、コンラートに夜這いだとぉ?」 「むっ、お前がおれを蹴ったから、コンラッドに泊めてもらおうと!だいだい!ヴォルフだって朝、 コンラッドを襲おうとしていたくせに!!」 「あ・・あれは、美香蘭のっ!」 「あ〜あれは、こわかったです。あと少しで、ヴォルフに貞操を奪われるかと思うと・・。」 「コンラーート!きっさま!何を いけしゃあしゃあと、貞操だと!?貴様にそんなものがあるかーー!」 「ひどいなぁヴォルフ。」 「全然ひどくないジャリ!それより、貴様とユーリのせいで禁断の愛に仕立てられた僕の身になってみるじゃり!」 それを言うなら、コンラートも当事者の一人なのだし、被害者はこちらとて同じ、しかも? 「でも、俺なんて、いつの間にか、グウェンに房事の授業を受けたことになっているし?」 「しらん!私は、そんな授業など 誰にもしていないぞ!!」 「コンラッド?ボウジってなに?」 「ユーリが、もう少し大人になったら、教えてあげるね?」 にこっと コンラートが笑うと、ユーリも にこっと返す。 それだけで納得したらしい。 相変らず、彼の笑顔は『技』だ!! 「何故?私が、お前等のじゃれあいに巻き込まれるのだ?」 「でも、俺は心当たりがありませんよ?グウェンは?」 「あるわけなかろう!」 不機嫌MAXの声で、グウェンダルは声を荒げる。ホントウに? --- 横から覗き込むように、コンラートが グウェンダルの瞳を見つめる。その顔がやけに近い・・・・。 「心辺り・・・ナイのですか?」 -- なんだろう?この意味深な問いかけは?ドキドキ(((´゚艸゚`)))ドキドキ 「コンラート・・・そうやって、私をからかうのは止めろ。ほらみろ!猊下とヨザックの目が好奇心に輝いているぞ!」 「「え?」」 じとーーーと、コンラートの目が二人を見て細まった。 「まさか、二人の仕業ではないよね?」 と、確認しつつ、どうやら確信してしまったみたいだ。さすがは、獅子!野生の感か?と、いうより、今の グウェンダルへの艶っぽい謎かけは、罠だったらしい!うっかり乗せられたヨザックは、舌打ちしたい気分だ。 「なるほど、さすがはウェラー卿、でもね、僕が考えたんじゃなくって元々あった噂だよ。それが、今回の 渋谷の交際宣言から発して、ついた尾ひれの中に入っていただけでね?」 「わかりました、つまりは、尾ひれのついた噂を聞いた猊下が、ヨザックを使ってシンニチに情報提供をしたと?」 「なんだって、村田!!そんなマネを!」 有利の非難に、村田はニコニコと相好をくずさない。 それを見たコンラートの脳裏に、昨日の幼馴染との会話が甦った! 「そういえば、ヨザックが、猊下は起こされるのが一番キライだといっていましたが・・・まさか?ヴォルフ?」 「ぼ・・僕がナンだって言うんだ?」 うろたえるプーに、有利も心当たりを思い出した! 「あーー!まさか、ヴォルフ!おれを蹴り落とした後に、村田まで蹴り落としたんじゃ!?」 「なっ!ぼくは、そんなこと!」 「だったらなんで、朝起きたらおれの頭に、瘤が二つもあるんだよ!」(←一つ多い、もう一度蹴られたもよう) 「う・・・。」 「ぴんぽーーん!さっすが、隊長と陛下。坊ちゃんが蹴り落とされて隊長の部屋にきたので、俺も魔王部屋に いってみたんですよね?そしたら、寝ていたはずの猊下が たんこぶ作って起きていたので、こわかったわ〜〜。」 ぶるぶると、その時の様子を思い出して震えて見せた。 「だから、ちょっとした意趣返しさ。なに?そういった噂があるってことを、教えたまでさ。」 それに、僕一人の情報ではなく、城の幅広い人から取材をして記事にしたみたいだし、君らの行動の賜物だね? そのわりには、昨日の昼間、有利姿の村田とヨザックのうしろで、村田姿のヴォルフラムが睨んでいた等という 部分はカットされている。 「なぜ、ヴォルフラムの寝相の悪さで、私までが とばっちりを・・・。」 「だって、おにいちゃんじゃないか?」 「私が育てたわけでもないし、第一寝相にまで、責任はもてない!」 「うーーん、俺も確かに幼少時に子育てはしたけど、寝相までは・・・。」 長男次男が、そういうと、三男はしゅーーんと項垂れてしまった。 ついつい、かわいいな〜と、コンラートは、ヴォルフラムの頭をナデナデする。 そこに、メイドがお茶お運んできて、目ざとく次男三男の様子に、目を光らせた! 「「あ・・・」」 「きゃぁ!失礼致しましたvv」 あわててお辞儀をすると、メイドは走り去ってしまった。きっと、この後、他の仲間に吹聴するに違いない! 「コンラートぉぉ!お前のその無意識な行動が、事態を煽っているということをいい加減自覚しろ!!」 キャンキャンと吠え始めた弟に、コンラートは首をかしげる? 「なんで?俺はお兄ちゃんだよ?弟が落ち込んでいたら、慰めるのは当たり前だろう?」 つん・・と、膨れたヴォルフラムの頬をつついて、コンラートは当然とばかりに主張する。 「だからって、その際に、頬をつつくだとか、恋人のような仕草をするなーーー!!」 「えーー?恋人だったらキスするよ?」 だめだ!!まったくわかってなーーーい!! 「兄上!一体、コンラートにどういった教育を施せば、こんな無意識のたらしになるんですか!?」 「それこそ、私の責任ではないわ!!それは、コイツの父親と、母上に言ってくれ!あの似たもの夫婦の 影響に決まっておるだろうが!?」 「二人ともひどいな、俺はタラシでは・・・。」 「たらしだ!」←ヴォルフ 「タラシだな」←兄上 「タラシですね」←ギュンギュン コンラートは、些か憮然として、最後に名づけ子を振り返った。 「コンラッド」 にっこりと微笑んでくれた名づけ子に、コンラートはやっぱりユーリだけは違うと、思ったのだが・・。 「おれはもちろん、アンタが たらしでも、好きだからなっ!」 ΣΣガーン! 全員一致でタラシと断言されたコンラートは、ショックのあまり誰とも口を利いてくれなくなり、 シンニチには、コンラートとヴォルフラムの破局騒動が載った。 おわったれ!! 5月30日UP はい、シャッフル完結です。ただ皆で騒ぐのを書いてみました。自分的には、ヴォルフラムに兄上と 呼ばせたし、イチャコラできたし、幼馴染はじゃれ合わしたし、微エロな衛兵さん達の妄想も入れた。 けっこう色々遊べたと思います。世の中インフルエンザだと大変な時は、お話くらい楽しいものにしたいな〜っと。 思って書いたものです。楽しんでいただけましたか? ^^b |