シャッフル |
おはっおはっおははははーーーーー!! 珍妙とも独特ともいえる笑い声を上げて、いつものようにいつものごとく・・赤い厄災は突然振ってきた! 「あれ?アニシナさん?」 「げげ、あにしなぁぁ〜〜!?」 「あれ、フォンカーベルニコフ卿?」 その厄災に、城の廊下を曲がった所で出くわしたのは、血盟城年下組みであった。 じ・・・っと、ヴォルフラムは執務室の扉の陰からその人を見つめた。 い・・言うぞ! ごきゅりと、つばを飲み込んで、ヴォルフラムは 扉の陰から出ると、まっすぐにその人を目指して歩き始めた。 ずんずんずん!!っと、その人の前まで一直線に歩いていく。 その人は、彼を認めると、柔らかく微笑み、どうした?という 視線をむけてくれた。 ピタリ!目の前まで来ると、ヴォルフラムは その人を見上げて、口を大きく開けた。 「お・・おおおお・・・じゃない・・ここここ・・・・」 なんだろうと?執務室にいた、長男・王佐・お庭番は、真っ赤になっているヴォルフラムを見つめた。 「コンラートおにいちゃん!!」 あぁ〜〜まちがえた!!!Σ(ΦωΦlll)←正しくは、コンラート兄上 「「「・・・・・・・・おにいちゃん??」」」 不信そうな長男・王佐・お庭番の声が重なる。いや、確かに、コンラートは ヴォルフラムの兄なので、 そう呼んでもおかしくはない・・おかしくはないのだが・・兄などと言う敬称を、この弟が次兄である彼に つかったのは、かれこれ40年以上前だ。 とくに、イキナリそう呼ばれたコンラートは、固まったまま動かない。真っ赤になって自分を見つめる ヴォルフラムを凝視したまま、口をあけて見つめるばかりだ。 やがて・・・・ かぁぁぁぁぁあああ!!! 顔どころか、全身真っ赤に染めたコンラート! 今度は その反応に、ヴォルフラムが驚いた。いや、ヴォルフラムだけではない、そこにいた全員が彼の そんな反応に驚きを禁じえなかった。 いつもの彼なら、爽やかに笑って、なんだいヴォルフ? と、いつもどおりに返すと思っていたのに! 「こらーー!こん・・・ウェラー卿、何をそんな恥ずかしい反応を返すんだ!」 そこに突然、真っ赤になって怒る村田大賢者が乱入し・・。 「まちたまえ、せっかく兄弟仲良くしているのを邪魔しちゃ悪いだろう?ねぇ、コンラッド?」 まるで新しいおもちゃを見つけたかのように、面白そうに口だけで笑っている有利が村田を止めた。 「そんなこと言ったって、ユーリがお兄ちゃんなんて呼ぶから・・さすがに、お兄ちゃんは、照れるよ?」 と、村田に向かって、コンラートは もごもごと言い訳をし。 「しかも、ヴォルフラム閣下の姿ですからね〜、流石の隊長も、鉄壁のポーカーフェイスを張り損ねましたね〜 さすがは猊下?隊長のあんな顔見れるなんて、いや〜面白いものを見せてくださって有難うございます。」 と、ヨザックは 有利に向かって礼を言った。 「な〜〜んだ、わかっていたの?」 つまらないね、キミタチ・・と、有利は 皮肉な笑みを口元に浮かべると ヨザックのほうに歩いていった。 「えぇ!何でわかっちゃうの?せっかく コンラッドに喜んでもらおうと思ったのにぃ〜〜。」 ぷく〜〜とふくれたヴォルフラムは、コンラートに飛びついて文句を言った。 「こら〜〜このへなちょこの尻軽!僕という婚約者が居ながら、どうしてそう他の男に抱きつくんだぁ〜!」 と、村田はヴォルフラムの首根っこを掴むと、イキナリゆすり始めた。 「あぁ、だめだよヴォルフ。体はお前のだから、そんなにゆすったら、戻った時に頭がパー!だぞ?」 「う!?」 パッと、手を離した村田から、コンラートはヴォルフラムを取り戻すと、大丈夫ですか?といって、 腕の中に抱きしめた。 「これは・・つまり、アニシナだな?」 長男は、ぷるぷると、震える指先で三人をさした。すると、 ヴォルフラム(中身有利) は、たはは実はそうなんだよ〜と、頭をかいてみせ 村田(中身ヴォルフラム) は、申し訳ありません兄上と、神妙な顔をしてみせ 有利(中身村田大賢者) は、まぁこうなったからには仕方ないねと、達観してみせた。 「な・・なんですと?では、プーの中に陛下が入られて、陛下の中に猊下がお入りになり、猊下の中にプーが 入り込んだのですかぁー!?」 理解した途端に、王佐が事の重大さに、慄いた!! 「こら、ギュンター!プーとは何だ!」 「おだまりなさい、プーだからプーといったまでです!」 「……ギュンター おれ、ユーリなんだけど?」 ギュンターは、つい口答えされていつものように、『ヴォルフラム』に向けて文句を言い返したのだが・・ それは中身が有利であった。 ではと、改めてプーに文句をと思って向かい合ってみれば、見た目は村田猊下である。 さすがに、村田に向かって不遜な事をしようものなら、有利の中の村田に何をされるか?いやはや・・。 結局、青くなった王佐は、何もいえないままに口をつぐむしかなかった。 や・・やりづらい! 「ところで、陛下、流石にヴォルフラムの姿で、執務机に座るわけには いきませんね?」 「え?なんで?」 有利は、きょとんと緑の瞳をまるくした。 「だって、魔王の席にヴォルフラムが座っていたら、知らない兵士や、まして貴族に見られたら 大変ですよ?フォンビーレフェルトに謀反の疑いアリってね?そんな事言われたら困るでしょう?」 「え?そーなの?だったら、村田にやらせる?」 「それもだめだよ、何せ中身は僕だからね。筆跡が変わってしまうよ。」 知的な微笑をうかべる有利というものに、賢そうな陛下もステキと、王佐がうっとりと見つめた。 「わるかったな、いつもは、馬鹿面で・・・。」 ぷくっとふくれた ヴォルフラム姿の有利の頬をつついて、コンラートが慰める。 それに、背すじに悪寒を走らせる村田姿のヴォルフラム。 「お・・おまえら、僕の体で イチャツクのだけは やめてくれぇ〜!」 まるで自分がコンラートに甘えているようで、ヴォルフラムはその薄ら寒さに震えた。 「そう?俺はどんな姿でも 有利だから平気なんだけど?」 「僕が嫌なんジャリ!!」 「ちょっと、ビーレフェルト卿・・僕の姿で泣かないでよ!それと、ジャリもやめて。ウェラー卿、 僕にまで被害が来るから、速やかにやめてよね。」 「えーと、だったら俺はどうすれば?あ、そうか?」 何を思ったか、コンラートは有利の体のほうに歩いて良いくと、よしよし と 頭を撫でた。 「うぇらぁ〜〜卿……中身は、僕なんだよ〜〜?」 「えぇ、でも、体は有利なのでしょう?だから、有利を褒める時は、有利の体の方を褒めればいいんですよね?」 「あほかーーー!!!」 「えぇ〜〜?なんでですか〜?」 村田に・・というか、陛下の体に思いっきりどつかれて、コンラートは眉根を下げて、悲しい顔をした。 それはまるで、主人に怒られた飼い犬(大型犬)のようだ。 「隊長・・・おれ、アンタの発想がわからないっすよ。」 「おれも、どこからツッコんでいいか?さっぱりぽんだ。」 幼馴染と名づけ子に同時に距離をとられて、コンラートは益々項垂れた。そういえばこの人(魔族だが) この中で一番の天然ボケボケだった……。 「でも、本当にどうする?これじゃ、執務が出来ないよね?」 ちょっとだけ期待を込めて、有利はヴォルフラムの姿で、摂政におねだりモードで聞いてみた。 が・・弟の姿が逆に災いしたか、確かに可愛いが長年見てきた姿で、しかも中身は可愛い弟ではない。 摂政閣下は、ヴォルフラム(中身有利)を予備の机に座らせ、そこに決済書類をどーーん!!と置いた。 そう・・要は、魔王机に座らないで、片隅でしていれば良いだけなのだった。 「これなら、ヴォルフラムに、いらぬ疑いも掛かるまい。」 そう言って、インク壷を羽ペンも所定の位置においてしまった。 「うぁ〜〜〜〜い。」 しくしくと泣きながら、有利はヴォルフラムの身体で働き始めた。 「さて、では僕は、魔王机に座っておくよ。一応、これなら陛下が仕事しているように見えるでしょう?」 「ではぼくは、応接セットでお茶でもしよう。ダイケンジャーがいつもしているしな。」 どうやら二人も、互いの姿に合わせた役割を演じるようだ。 すると、魔王机に座った有利姿の村田と大賢者姿のヴォルフラムに、ヨザックがお茶を入れた。 コンラートは、当然というように、ヴォルフラム姿のユーリにお茶を差し出し、その斜め後ろに陣取った。 「あ、駄目だよ二人とも。まぁ、お茶はいいとして、ウェラー卿は僕の後ろ、そこに立って いちゃおかしいだろう?」 たしかに、護衛が陛下を放って、弟にかまうのはおかしい。 「・・・・うーーん、だったらこれでどうです?」 コンラートは、有利の真正面に座り、紙を手元に置いた。たしかに、そうしていれば、コンラートと ヴォルフラムが、グウェンダルを手伝っているように見える。 「まぁいいだろう。だが、だったらしっかり手伝ってもらおう。」 そういうと、グウェンダルは 本当にコンラートに書類を回し始めた。 「・・・・・・いいですけどね?」 コンラートは、ちょっと薮蛇だったかも?と、思いつつも、ふっと目を上げると有利と目が合って、 にぎにぎっと手を振ってよこした。 「何? ユーリ招き猫ですか?」 「え?・・えへへv」 二人して微笑みあって、たまにはこういうのも新鮮で良いな〜なんて、ほんわかとした空気をかもし出して いると・・・・わなわなっと応接セットでお茶を飲んでいた大賢者こと、中身ヴォルフラムが震えた。 「お・・お前等!何人の体で、気色悪いことしてるじゃりかぁぁ!!」 「あぁ、だめだよ、ヴォルフ。猊下姿でジャリ口調は?」 「なっ!!」 すると、すぐ上の兄に、注意を受けた。 「それと、急に叫ぶのも村田らしくないぞ。村田ならホラ・・そこで、静観しているだろう?」 「うっ!!」 そう、自分姿の有利にまで駄目だしだ。 「いや〜〜、僕のは、静観というより・・呆れかな?」 ひらひらと、手を振って有利姿の村田が答える 「でもプー閣下。やはり二人の言うように、あまり猊下の姿で短気な行動は、猊下の印象が変わりますし、 お控えくださいね〜?」 「す・・すまない。」 でもって、コンラートの定位置に変わりに居座るヨザックからは、厳重注意だ。 「おわったーー!」 サクサクと仕事が終わると、ユーリはウキウキとコンラートを誘った。 「キャッチボールですか?いいですけど、それはヴォルフの体ですし、酷使して筋肉痛にしないでくださいね?」 「なに!?まて、ユーリ。僕の体でコンラートといちゃつくのは許さんぞ。」 「え〜〜、キャッチボールじゃんか?そんなことを言うなら、ヴォルフだって村田らしく眞王廟に行けよ。」 「な・・なんだと!?僕を追い出してその間にな・何をする気だお前等!!」 「ヴォルフ・・俺にお前の体と何をさせる気だ・・・。」 げんなりと、コンラートが言う。 「ふん、僕の体でも中身がユーリなら、何をするかわからないから、僕がついていいとな。」 「あ〜〜らら、信用ないね?ウェラー卿?」 すると、あからさまにムッとしたのが、有利だ。いきなり、ぐいっとコンラートの腕を取ると、 「コンラートお兄ちゃん、一緒に散歩にいこう!」 「ぎゃぁぁ!!何をするジャリ!」 ヴォルフラムがわめくのは無理ない。自分の姿で有利がコンラートと腕を組んで、甘えるように擦り寄ったのだ! 「もう、ダイケンジャーはうるさいな。おれ・・いや、僕がコンラート兄上と仲良くして何が悪い! 兄弟なんだからな!」 つーーん!! 「あーあ、渋谷が怒っちゃった。しかし・・渋谷にしては、中々面白い報復方法だ。」 くすくすと笑いながら、村田が三人を眺める。 「あ、ビーレフェルト卿?それ僕の姿なんだから、くれぐれもわめかないようにね。じゃないと、すぐに ビーレフェルト卿をめぐる、僕とウェラー卿とのイザコザ!なーーんて、おっそろしい噂が立つから!」 「ぐうぅっ!!」 村田の姿では、いつものように出来ないとに理解しているヴォルフラムは、二人に嫉妬の炎を燃やしながらも、 流石にそれは嫌らしい・・二人を追いかけようとした足を無理やり止めて、ひたすら己の衝動に耐えている。 その間にべーーー!!っと、可愛らしい舌を出すと、有利はヴォルフラムの姿のまま、外へと飛び出していった。 当然、その腕はしっかりと、コンラートの腕に絡まっている。コンラートはといえば、何せ中身は有利で、外見は 可愛い弟だ。すっかり、上機嫌でいつもの三割り増しの笑顔で、どこに行こうか?と有利と散歩の相談をしていた。 場内は騒然としていた。というより、呆然か?? あのヴォルフラムが、コンラートをお兄ちゃんと呼び、 腕を組んで甘えた仕草をすれば、コンラートも飛び切り甘い笑顔で応じている。 あれでは、まるっきり・・可愛い恋人のわがままを聞く彼氏に見える。 「まさか!禁断の恋!?」 「えぇ、閣下たちが?でも、ビーレフェルト卿には陛下という婚約者が?」 「それをいうなら、コンラート閣下だって、護衛につくはずの陛下がおられるのに、何故弟閣下と 出かけるのかしら?」 「いやん!ということは、陛下という傷害で燃え上がった恋なのかしら?」 「乙女の想像力をかきたてるわvv」 それをいうなら、妄想だろう・・? メイドたちのウキウキした声に、近くの衛兵が、心の中でツッコミ。声にする勇気はない・・・。 「あぁ!俺、陛下ご寵愛トトで、ヴォルフラム閣下にかけていたのに!!」 「おれだって、コンラート閣下一点買いなんだぞ!」 その様子で、目を白黒させている兵士達もいた。彼らは、給料をトトにつぎ込んでいるらしかった。 「あの二人がくっついたとなると、どの株を買うか・・?」 「俺・・グウェンダル閣下を買おうかな?」 「お・・おれは、猊下にしようか?」 「穴場で、ヨザック株にいってみようか?」 「いや、ヨザックは猊下と仲良いぞ?」 おい!あれをみろ!と、促された先には、噂のヨザックと陛下と猊下・・だが、様子がおかしい。 なんと、陛下の護衛をヨザックが勤め、並んで楽しげに話しながら廊下を歩いてゆく。 その後ろを、鬼の形相の猊下が ブツブツなにかを呟きながら、後を歩いているではないか!? これは一体どういうことだ?いつもなら、陛下と猊下が並んで歩かれ、ヨザックがその後ろからついてゆくのに? 「まさかのヨザック株の、大穴か!?」 「みろ、あの猊下の二人を見る嫉妬に狂った顔!きっと陛下をヨザックに取られてお怒りなんだぞ?」 「いや、ヨザックを陛下に取られてお怒りかもしれないぞ。」 兵士達は、興味津々に廊下を消えていく三人を見送った。 「うーーん、二強がそろって落ちて、猊下株も微妙、ヨザック株が上がって・・なぁ、ギュンギュン閣下は・・?」 状況を分析中の兵士が、ふと、今上っていない株の存在を口にした。 「「あーーそれは、ないない!」」 が、どうやらこの株だけは、扱いは今までどおりでよさそうであった。 「コンラートお兄ちゃん、今日はどこ連れて行ってくれるの?」 「クスクス、ユーリ、それ どこまでやるの?」 「駄目だぞコンラッド、今は俺はヴォルフラム。いいじゃん、折角だし兄弟仲良くしようぜ?」 「はいはい。」 くしゃりと、その金の柔らかな髪の中に指を滑り込ませる。ここでいつもなら、手を払われる所だが、中身が 有利なので、気持ちよさそうに擦り寄ってくる。 「昔は、ヴォルフも同じように甘えてきたんですよ。」 少しだけ、コンラートは懐かしそうに目を細めた。それは、40年以上前、彼の父親が人間とわかる前だが・・。 「そうか?今だって、甘えたそうにしていることもあるぞ。」 「うーーん、それは、貴方を俺に取られると思って中に入ってくるのでは?」 「・・・・そうか、アンタ天然だったか・・?」 たしかに、有利にヤキモチを焼いてはいるが、あれはなんというか、半分は兄を取られたようでつっかっかって 来るのだと思う。ときに、最初の頃はその傾向が強かった。といっても、当時はそれが解からず、あとで 思い返して、あぁ、そうか!と、解かったことだ。こういうものは、どうも第三者のほうが見えるものらしい。 コンラートは、まったく気がついてないらしいのだ。 まぁいいか!だったら、ヴォルフラムの体に入っている間、自分が甘えればいいのだ! そう、見た目は兄弟だ。なーーんの問題もないはずだ。 が・・この時の有利は知らない。これだけ見目麗しい三兄弟が、普段どう見られているのかということを、 そして自分達のこの行動が、どんな混乱を巻き起こすかということも・・・。 5月24日UP シャッフルはその名の通り、人格が入れ違ってしまう物語。ただ単に、ヴォルフラムに コンラートおにいちゃんと呼ばせて、照れる次男が書きたかっただけです。 お風呂編 *注意・今回、風呂シーンにてお下品な表現あり。きらい人はすっとばしてください。 さて、遠乗りから帰って来たコンラートと有利(外見ヴォルフ)は、そのまま魔王部屋へと戻った。 そこには、有利姿の村田と村田姿のヴォルフラム、そして二人の護衛をしているヨザックがいた。 「ヨザ、夕食だが。」 「は〜〜い、こちらで取るように手配しといたわん。グリエってば、手抜かりなしよ〜〜ん。」 幼馴染コンビは、相変わらずツーカーだ。 「なに?コンラッド。今日のご飯は、魔王部屋なの?」 有利は、緑の目を護衛に向けた。 「はい、この状況ですからね?色々面倒でしょ?」 「なにが?」 「まぁまぁ、坊ちゃん方、遠乗りをしてこられたんでしょう?まずは、お茶をドウゾ〜。」 「わー、有難うヨザック。丁度喉が渇いたなーって思ったんだv」 「はい、坊ちゃんの分のケーキです。」 「うわぁ!残しておいてくれたの?サンキュー大好きグリエちゃん!」 有利は、ヨザックの手を取ってブンブン振り回しながら礼を言う。そのフレンドリーな様子に、ヨザックは微妙だ。 「・・・・中身坊ちゃんってわかっていますが、プー閣下に素直に褒められるって・・。」 「こらーー!グリエ!なんだそれは。」 「・・・でもって、中身がプー閣下とわかっていても、ああいう素直なツッコミが猊下から来るって言うのも。」 「・・・キミ、それどういう意味?」 「・・極めつけは、坊ちゃんが、皮肉気に哂ったぁ〜〜〜!」 ついに さめざめと泣き始めるヨザック。 「ね?こういう混乱が起きると面倒でしょう?被害は最小に、ね?」 コンラッドがこともなげに言い切った。 「な、なーるー」 なんで、自分達が、災害扱いなのか分らないが・・・確かに被害はあるらしかった。 結局、5人で食事を取り、一服した所で・・・さぁ!風呂に入るぞ!といった所でまた問題が。 「じゃあ、僕が一緒に入ろう。」 と、村田が言ったからだ。 「なんだと!何で大賢者が一緒に入るんだ?」 当然のごとく噛み付いたのは、ヴォルフラム。 「だって、魔王専用風呂に、ビーレフェルト卿が一人で入ってどうするんだい?」 といって、指差したのは有利・・・そう、有利はいつものように自分の風呂に向かおうとしたが、今の姿は ヴォルフラムである・・・魔王専用風呂に、堂々と浸かるヴォルフラム一人・・確かに不審だ。 「と、いうわけで、渋谷の体である僕が一緒なら問題がないわけだ。」 「あ、そうかー!さっすが、村田様。じゃあ、行こうぜ。」 「ちょっとまて!」 「まぁまぁ、いいじゃないかヴォルフラム。見た目は、陛下と婚約者のお前が一緒に入るわけだし、同衾に続いて 風呂まで一緒ってことで・・ね?」 「ふむ、なるほど、また一つ既成事実が深まるわけだな?」 弟を丸め込む兄と、丸め込まれる弟の会話を聞いて、驚いたのは有利だ!! 「ぎゃぁぁ!!それは困る!そうだ、コンラッドたちも一緒に入ろう!そうすればただの銭湯と一緒だし!」 「えぇ、別にいいですが。」 「本当?有難うコンラッド!」 結局、有利のたっての願いで、皆一緒の風呂となったのだが・・。 ずーー―(-ω-。ll)―ん 「何を落ち込んでいるのか、わかるけど・・うっとおしいからやめてくれない?」 有利姿の村田が、頭にタオルを乗せながら、湯船の端っこで落ち込むヴォルフラム姿の有利に声をかけた。 「あれ?どうしたんですか坊ちゃん?」 「ユーリ?一体どうしたの?そんな所で小さくなって?」 そこに遅れて入ってきて、体を洗い終わった護衛二人が並んで湯船に入りに近づいてきた。 「小さい言うなーー!あー、何並んでいるんだよ!?アンタ等!どうせおれは小さい男さ。でも、一応平均は 有るんだぞ。アンタ達が規格外の大きさなんだからなーー!!」 「「??」」 なぜか、涙目で怒っている主に、二人はそろって首をかしげた。だが、とりあえずは、落ち込む陛下を 慰めなくては。ジャブジャブと湯船を歩くと、コンラートが優しく濡れた金髪の頭を撫でた。 「確かに有利に比べて俺達は大きいですが。」 Σ(;゜д゜)ガーン 大きいって自慢された!? まさかの コンラートの発言に、有利は 更なるショックを受けた! 「ユーリだって、成長期なんですから これから育ちますよ。」 だが、次の言葉で有利は復活した! 「え?これって成長期あるの?まじ?おれも大きくなれる?」 キラキラと期待に満ちた目に、コンラートは首をかしげる?成長期だって、ご自分でいつも言っていたような?と。 「ねぇ、ウェラー卿って・・解かって会話していると思う?」 村田は、隣で湯船に使っている自分の体・・というか、中にいるヴォルフラムに聞いた。 「見てわからないか?・・コンラートめ、まったくわかっていないぞ!・・仕方のないへなちょこ共だ!」 「あ、プー閣下、今、その口癖禁止ですよ。それいったら、坊ちゃん、心の傷になりますよ〜〜。」 「えぇ、きっと大きくなれますよ。でも、俺としてはもう少しそのくらいでいて欲しいですね?可愛いですから」 「「「あ・・ばか!・・」」」 か・・かわいい??Σ(O_O;)Shock!!←何やら過敏になっている魔王様 「可愛いって・・お・・おれのサイズが?」 「…?はい、可愛いです。正直このくらいが好きかな?」 好きって・・え?え?え? コンラッドが好き?? 「今、ウェラー卿ってば、名づけ子の中に 変態疑惑 を植えつけたよね?(≡ω≡)」 「・・隊長・・あんたって人は・・。。゚(゚っд´゚)゚。」 「もう見てられん!こら、ユーリ!男はモノのサイズじゃないぞ!」 「そんな事いったって、ヴォルフってば、おれと同じくらいの体格なのに、結構りっぱなんだもん!」 「ぎゃぁ!貴様!人の物を何じろじろと見ているんだ!!」 「あ、本当だ。ビーレフェルト卿って、やっぱりウェラー卿と兄弟なんだね。渋谷と比べて大きいや。」 そこに、村田が有利横に並ぶ・・・といっても、体は有利とヴォルフラムだが…自然と皆の視線が 二人の体格を見比べ・・・・。 「あぁ、それの大きさですか?」 ぽんっと、コンラートが 手を打った。やっと意味が解かったようだ。 わなわなわな・・・・・ 「見比べて納得するなーーー!!!」(←号泣) 哀れ、魔王陛下の絶叫が、浴室いっぱいに こだました。 でもって・・・当然、魔王陛下は いじけた。 壁に向かって、体育座りで落ち込んでいる。 「ユーリ、ユーリってば、ごめんね?」 必死にコンラートが謝るが、拗ねた魔王陛下は、うんともすんとも返事をしない。 コンラートが、自分の方に向けようと、肩に手をかけた時だった。 「ゆー・・「おれにさわんな!!ウェラー卿のばーか!」」 「!!!!」 ぱくぱくぱく・・・と、コンラートは、声を出せずに、口だけ動かすと、そのまま俯き押し黙った。そして、 …ふらりと湯船から出て行った。 「おい、隊長!?」 そのまま、浴室さえも出ようとするコンラートの様子に、ヨザックが村田の背中を流していた手を止めた。 何やら、足取りがおかしい。 「はっ!!まて、コンラート!」 何かに気がついたヴォルフラムが、すかさずコンラートの手を取った。そして、目の前に回りこむと、 ガラスのように、何も映さない目を覗き込む。 やっぱり!! 「いいか、あれは僕じゃない。」 言い聞かせるように、ヴォルフラムはコンラートにゆっくりと言葉をつむぐ。 「僕はこっちだ、わかっているな?」 「………。」 駄目だ反応がない。ヴォルフラムは、すぅーーと息を吸うと、しっかりとコンラートの目を見た。 「僕は、こっちだ!わかっているな!?コンラート兄上!!」 「!!」 ぱちり…と、まるで夢から覚めたように、コンラートが瞬きをした。 「…あ…?……あぁ…ヴォルフ?」 「そうだ、僕がコンラート兄上の弟だ。」 どうやら、トラウマから戻ってきたらしいコンラートの姿に、ほっとする。ヨザックは、過去に何度かあの状態に 陥ったコンラートを見ている、あれは心に負った傷だ・・。過去に、ヴォルフラムから手痛い拒否を受けてから、 彼にはそれがトラウマとなって残っている。多分、ユーリの存在にめぐり合えたおかげだろう?ここ最近は なかったので油断していた。 それにしても、あんな簡単な拒絶で引き起こすなんて…今のは勢いで言われたことぐらい、常のコンラートなら 軽くいなして終わりなのに。多分、あの姿が原因なのだろう?コンラートの様子に、立ち尽くす有利は、今は ヴォルフラムの姿だ。あの姿のユーリに、お兄ちゃんと呼ばれて甘えられ、多分コンラートの中の気持ちが 昔に少し戻っていたのだろう。ヴォルフラムと仲の良い兄弟だった子供時代に・・・。 それゆえに、コンラートの傷までが、過剰に反応したのは、皮肉である。 それにしても、ヴォルフラムがまさかコンラートのそれに気がついて、救い上げるなどとは思わなかった。 「おや?閣下も成長しているんだね〜。」 どうも、あの弟閣下は、ご自分がしでかしたことを、ずっと後悔していた節がある。高いプライドが邪魔で中々 表に出せないが、今の様子を見るとすぐ上の兄を好いていることだけは確かだ。 そのヴォルフラムが、ぎゅっとコンラートの両手を握る。 「ヴォルフが…」 「なんだ?」 「兄上って呼んでくれた……。」 「!?」 「うれしいな」 *:.。..。.:+・゚ ふんわり゜゚・*:.。..。.:+・゚ と、コンラートが微笑むと、ぶわっ!!とヴォルフラムというか、 村田の体が全身真っ赤になった。 「あ・・兄を兄と呼んで何が悪い。それに、兄弟なんだから、別に触ったって悪くもないからな!!」 照れた82歳の弟は、再び湯船へとだかだかと歩き出し、ずるっとすべって! 「危ないヴォルフラム!」 咄嗟にコンラートが彼を掴むが、足元がすべる風呂場では、支えきれなかった!! バッシャーーンン!! 派手な水しぶきが上がったと思えば、二人して湯船にダイビングしてしまった! 「コンラッド!ヴォルフ!!」 有利が、あわてて二人に駆け寄ると、ぶはっ!!と、お湯の中から二人が起き上がった。 ごほごほと、咳き込む二人に、駆け寄っていこうとした有利の足が止まる。 「ヴォ・・ヴォルフ大丈夫か?」 「あぁ、兄上が庇ってくれたから……。」 有難うと言おうとして、ヴォルフラムの台詞が途切れた。滑って湯船に落ちる瞬間、コンラートは弟を庇って 胸に抱きこむと、自分が下敷きになって落ちたのだった。 当然、体勢はそのままで・・・気がつけば、ヴォルフラムがコンラートを押し倒した形になっていた。 でもって、ここはお風呂・・・二人は全裸。ちなみに、ヴォルフラムの姿は村田の体だ。 「うわぁ〜、僕がウェラー卿を押し倒しているよ、あははははー。」 思わず、有利姿の村田から、乾いた笑いがもれる。だって・・・背中を洗ってくれていた、自分の護衛(恋人)の 気配がスゥーーーと黒くなったのだ。(←やっぱり、幼馴染) 寒い!!風呂なのに寒い!! 皆が固まって、動けないでいるときに、ふいにコンラートが動いた。濡れた前髪が降りてきて邪魔だったのだ。 片手で前髪を書き上げると、ふと自分の上で(←w)固まっている弟に気が付いた。 「ヴォルフ??」 すっと、その手を弟の頬にのばして、どうかしたのかというように、コテンっと、小首をかしげた。 ずっきゅーーーん!!と、そこにいた全員に、フェロモンの矢が突き刺さった!! 思わず反応しかける体を叱咤して、ヴォルフラムが あっ!!という間に、風呂の反対側まで飛びのき! 有利は、その真反対にバシャバシャと水しぶきを上げて逃げ去った!! ヨザックは、冷たい水を頭から被り、村田は何やら泡をあき集めていた!! 「あれ?一体いつの間に、そんなに遠くへ?ユーリも??・・ヨザ?それ水だぞ、ところで猊下の背中は 流さなくっていいのか?泡だらけのままだぞ?」 「い・・いや、心配無用だ。泡で体を洗った方が、肌の負担も少なくっていいんだよ!」 「そうそう、お肌にはお風呂に入ったら最後は冷水で引き締めるのがいいのよ。」 主従はナイスな掛け合いで、コンラートの質問をかわした。 「ヨザ・・お前は洗っていた方じゃ?」 「あ?あぁ、お・・俺はちょっと、湯辺り気味で・・」 あわてる村田とヨザックに?へぇ〜〜そうなんだ?と、素直に感心するコンラート。 よかった!!根が素直でよかったぁぁ!!(TдT) 「あ、だったら、おれが続きを洗って差し上げますよ。有利の髪はよく洗ってあげていますから。」 「えぇ!?」 それには、さすがの村田もあわてた。どうも、有利の体に入っているせいか?いつも以上に、コンラートに 反応してしまいそうだ。この体、ウェラー卿に反応する回路でも出来ているのだろうか? と、思わず体に八つ当たりをする。 すると、バシャバシャバシャッ!!と、水音が近づいてきて、ざっぱーーーん!!と、有利が戻ってきた!? 一瞬海坊主か?海からあがったゴジラかと思ったよ・・・内心村田は一人ごちた。 「コンラッド!!おれの髪洗って!!」 分りやすく嫉妬に燃えた魔王陛下が、コンラートの前に立ちふさがった!! 「あ…でも……。」 いつもなら、喜んでといって、有利のお願いを聞くコンラートが、珍しく躊躇した。そして、ヨザックを呼ぶと 自分が有利の体(でも、中身は村田)を洗うから、有利のほうはヨザックに洗うように頼んだのだった。 ゴ――ン(ll=д=ll) 「ソソンナ」... 男の沽券に(というか、こか○)こだわったばかりに、よりによって名づけ親で、バッテリーで、最後の砦である コンラートに避けられてしまったぁ!! 本日最大のしょーーく!! いつもなら、この魔王が一喜一憂する様子を、面白がって遠くで眺めるばかりの村田も、今回ばかりは、 助け舟を出すことにした。今、コンラートに近寄られたら自分が困るのだ! 「まぁまぁ、ウェラー卿、渋谷が髪を洗って欲しいって言うんだから、素直に洗ってあげれば?ほら、渋谷も 早く彼に謝っちゃいな!キミがさっき、勢いで心にも無い事を言うから、彼も困っているだろう?」 あ!! ようやく、自分が言ったひどい言葉を思い出した! 「コンラッド、さっきはごめんなさい!おれ、勢いに任せて酷い事言った!」 ぺこりと、魔王陛下は、コンラートに向けて頭を下げた。 「あの・・じゃぁ、俺のこと怒ってないですか?」 「うん!というか・・あれは本当に勢いだけだから!」 おれ、コンラッドに、さわってもらうの好きだからな! -- オイオイ、ちょっと、渋谷・・今の発言、危ないよ・・。 -- ですね〜、坊ちゃんもあれで、天然ですから・・コンラッドの発言も、所々アブナイですが、坊ちゃんのも、 まるで天性の誘い受けのようですねー。(←おいおい) なお、この発言に、ヴォルフラムは噛み付いてこないと思いきや・・・長らく湯船の中にいすぎて、湯あたり していた。急ぎ、ヨザックが救助に向かう! ほっと息をつく護衛氏に、有利もほっとする。例え自分の体でも、中身が違う以上そう接近させるわけには いかない。なにせ、フェロモン女王のフェロモンを受け継いでいるのは、この次男だ!その上、複数の証言から 父親であるダンヒーリーも、実は男のフェロモンをかもし出していたという。それが合わさった息子は、 すでに男女両面に言い寄られていた経歴を持ち、今でもストレート嗜好の皆さんを、コンラートに限っては、 お嫁さんに欲しいなんていいやがる男共がうじゃうじゃいるのだ。 有利は、コンラートの指が頭皮を優しくマッサージしてくれるのを、うっとりと身をゆだねる。 これは自分の特権なのだ。そうそう、他の男になんてくれてやるものか! それに、いつもは自分がお世話になっているのだ。せめて、自分の肩書きが彼を魔の手から守るのに役にたつなら とことん利用しなければならない。 「名づけ親は、おれがまもる!!」 決意を新たにする有利に・・・男の魔の手から、魔王が護衛を守るって変だよな〜〜?と、湯船に並んで 入っているもう一方の主従は思ったが、懸命にもつっこまなかった。 なぜなら、それは それで面白いからだ。 そう、自分に被害さえなければ、毎度、この愉快な友人達が織りなす、悲喜交々は見ていて飽きない 最高の楽しみなのだ。なぜなら? 「いや〜平和だね〜、グリエちゃん。」 「平和ですね〜健さん。」 かっぽ〜〜〜〜ん これこそが、この国が平和な証拠だからであろう---。 ねっ? 2009年5月26日UP お風呂できゃあvどっきり?編です。ところで、これコンユなんでしょうか?ヨザケンであることは確か しかしながら、コンラッド総受けとも取れる。よくわからんが、お昼にコッソリ更新です・・^^; |