観用少女・Plant Doll 漆黒の魔王・黒曜の賢者 4 |
その日、国連総長の自宅に、二人の青年が迎えられた。
「Mr・ジンデル、この度はお力添え有り難うございました。」 出迎えた白髪交じりの金髪の男性に、茶髪の青年が握手をしながら御礼を述べる。 「いやいや、おかげで2つの国が救われ、世界的な美術品を回収もできました。Mr・ウェラーの 功績に比べれば、私のしたことなど、微々たる物ですよ。」 にこにこと、笑みを浮かべながら、青年の業績をたたえる。その顔からは、打算と言う物はなく 彼が心底そう思っていると言うことが窺える。 「Mr・ジンデル、彼が私の副官で、ヨザック・グリエと申します。」 「はじめまして、Mr・ジンデル。お会いできて光栄です。」 「はじめまして、私のほうこそ、あの賢者に見込まれた方にお会いできて、嬉しいですよ。」 ささ、中へと通された先には、小さな少女が待っていた。三人が入ってくるのを見ると、真っ直ぐに コンラート目掛けて走って来て、ぎゅむ〜〜と腰の辺りに抱きついた。 この反応は・・・^^; 「隊長、もしかしてこの子、魔王と賢者のお姉さんだという観用少女ですか?」 「そうだ。こんにちは、ジュディス。」 コンラートが、頭をなでて声をかけると、キラキラとした目でうっとり微笑かえした。 そういえば、自分は賢者と波長が合うだけらしいが、コンラートは観用少女自体に波長が合うタイプ らしいという事を思い出した。 「いや〜、びっくりしましたよ。私以外懐くはずのないこの子が、空港で彼を見た途端に、一目散に 走っていって、この調子ですからね〜。」 「あははは^^;」 ちょっと、複雑な様子のジンデル国連総長。それはそうだ、観用少女は本来、ただ一人のものにしか、 その美しい微笑を浮かべはしない。それが、あっさり、目の前の好青年(美形)に懐いているのだから。 そう、コンラートは、最初集めれるだけの傭兵を雇い、自国へ戻るつもりであった。それが、乗り継ぎの 為に、この国の空港に降りたら、彼女に捕まったのだ。それからは、あれよあれよと言う間に、自宅に まで連行・・いや招待され、そこで彼らが何者であるか聞いた。 「君が、ユーリ達と同じ作者の観用少女?」 「はい、賢者から聞きました。彼の大事な人を助けに行って下さるそうですね。」 「彼は、俺にとっても大事な幼馴染だから・・ところで、賢者に聞いたって?どうやって?」 「それは追々ですわ。それより私のパパが、貴方のお力になれると思います。」 少女に、ね?そうでしょう?と、目で促されて、ジンデル氏は、自分が国連総長であることを明かした。 そこから、彼のネットワークを使い、コンラートが集めたかった傭兵を集め、その動きを知った美術 関係者が、そこに加わり、ついでに国際警察までが彼の手足となってくれた。必要な情報と・スポンサー 大義名分までを彼は手に入れて、シマロンへと乗り込んだのであった。そのあとは、ヨザックも知る とおりである。そして、彼は期待以上の働きをし、戦況が泥沼化する前に二つの国を救ったのであった。 「しかし、君等も欲がないね〜。」 そういって、ジンデル氏は、お茶を飲みながら二人を見やった。それに、青年たちは苦笑を浮かべる。 コンラートとヨザックは、中心的な働きをした二人である。望めば、二つの国の監視官として国連軍を 指揮して、駐留することも出来たのだ。当然色々な特権と特典が尽くし、貯め様と思えば私服も肥やし 放題なのだが・・二人は揃ってその地位を蹴った。 彼らが望む事は、ただ一つ。 「ですが、早く帰って、ユーリにミルクを温めてあげないと。」 とは、コンラート。 「そうそう、俺はまず、賢者ちゃんに名前をつけてあげないと。」 とは、ヨザックだ。 彼らの帰りを待つ、大事な観用少女の元へと、無事帰る事だけであった。 そんな彼らだから、あの『白の魔女の最高傑作』と謳われる観用少女を手に入れられたのだろうが・・。 いやはや、もったないないな〜。 すっかり、この青年達を気に入った彼は、是非とも手元において色々助けて欲しいのだが? くいくいっと、そんな彼の心情を知るジュディスが、服を引っ張った。その顔は、無理を言っちゃ いけないわよ?と、弟を叱るような姉の顔をしていた。彼は、は〜と、深いため息をつく。 仕方ない、諦めよう・・。何せ自分は、この観用少女に甘いのだからーー。 シャワワワワ〜〜〜。 朝一番の花壇の水やり。小さい少年は、大きなジョウロは持ってないから、小さなジョウロで何度も 水を汲んでは、花にかけてあげる。ゆらゆらと揺れるのは、彼の大好きな人が好きだと言っていた花。 綺麗な青い花は、彼と一緒に種をまき、少年が一生懸命世話をして育てたのだ。 この花と一緒にいると、まるで彼の大好きな青年と一緒にいるようだ。 いや、この子達は、二人の愛の結晶(?)なのだから、それもあながち間違いではないはずっ! 「愛の結晶って・・・随分と子沢山だね〜魔王。」 「うわっ!賢者か・・・人の思考読むなよ〜。」 「《読んだ》んじゃない、《聞こえた》んだよ。こんな間近で、あんなに大きな声で考えていたら、 僕らの間では筒抜けだよ。」 僕だってキミのノロケなんて聞きたくないよ〜。 そう、観用少女は、普通は話さない。買われて訓練された者や、元から歌う様に出来ている者、 また育って自由に話せるようになる者、それ以外に自由に言葉を話す者はない。 現に二人も、話している訳ではない。思念波を互いに飛ばして受信しているとでも言うのであろうか? 白の魔女とよばれる、名人は自身の創り出した観用少女に、色々な機能を付け加えることで有名である。 いや、能力と言うべものか? その中で、割合初期の少女(プランツ)からついていたのが、思念で主と決めた人間と話すことである。 他にも、少女(プランツ)によって色々能力差があるといわれるが、賢者の能力はその名の通り頭脳である。 その頭脳には、あらやる歴史や知識が詰め込まれていると言われている。 そして、高い思念波・・テレパシー能力だ。かれは、その能力を使い。自分達の姉妹の観用少女達に 助力を願い出たのであった。彼らの末弟・・魔王の為に、彼の大事な人の力になって欲しいと。 また、同じく白い魔女の作品である魔王の能力・・・それは、未知数であることだ。 魔王自体も、それを知らない節がある。ただ、王と名付けられたように、無条件で白い魔女の 観用少女を従わせる何かを持っていた。 すぐさま、姉たちは、二人のために、各自のご主人様に働きかけたのであった。特に、一番上の姉は、 張り切った!創造主を同じとする可愛い弟の大事な人のピンチ!となれば、自分のパパを説得しようと! 「大丈夫よ、賢者。直ぐにでもパパを説得して、そのコンラート様をお助けするわ!うちのパパは 最高に素晴しい人なのよ。きっと、事情を話せば力になってくれるわ。」 「ありがとう、ジュディスおねぇちゃん。」 「きゃ〜、おねぇちゃんですって、てれちゃうわ♥ じゃぁ、また後で連絡するわね。」 「あら、賢者。うちのダーリンだって、力に慣れるわよ。だって、私のいる町は世界の芸術の中心ですもの。 色々な話が、集まってくるのよ?その国の噂なら聞いているわ。なんでも、世界中から盗品で、出回っている 美術品を数多く所有しているらしいわ。ダーリンの勤める文化庁でも、1世紀前に盗まれた名画を取り 戻したいと何度も掛け合ったって。ねぇ、賢者?どうおもう?」 使えると思わない? 「流石です、ティファニーお姉ちゃん!彼らならその盗品達も一手に回収してくれるでしょう。」 「わかったわ。うちのダーリンに、後ろ盾のなるように頼んであげる。きっと、ダーリンも喜ぶわよ。」 「あら、うちのご主人様だって、大統領ですもの!役に立つわ!」 「えぇ、お願いします。ナターシャお姉ちゃん。」 こうして姉達が、各自働きかけたおかげで、その数時間後、コンラートはとある空港で、突進してきた 美しくもゴウイングマイウェイな、観用少女に拉致られたのであった。 ・・・ただの、末っ子を可愛がるお姉ちゃんたち・・という関係かもしれないが? なにせ、魔王について、明確に判っているのは、植物と会話ができるらしいと言うことだけである。 今のところは・・・ 「それより、メイドさんがミルクの用意をしてくれたよ?朝食に行こうよ。」 「ミルクか・・・・おれ・・コンラッドの温めてくれたミルクのみたいな。」 「大丈夫だ、彼らは無事であることは、姉さんたちが教えてくれた。もうすぐ帰ってくるよ。」 「ほんと?」 「なんだい、僕が《嘘》をつくとでも?」 「ううん、賢者はおれに嘘はつかないよ!」 にこっと、満面の笑顔を向ける。この笑顔を向けられるのは、半身とも言うべく生まれた賢者と、彼が 選んだ、ただ一人の人のみ。 そう、彼は嘘を言ってはいない・・・ただ少し、隠し事があるだけだ。ジュディスがくれた、二人が こちらに向かったと言う連絡を、教えないでいるだけ。何分、彼らが行った功績は大きい。それに よって利益を得れたものもいれば、全てを失ったものもいる。この家に帰ってきて、その存在を 確かめるまで、賢者は魔王をまもらねばならない。 それが、あの自分の大事な人のために、戦場へといってくれたコンラートへの恩返しだ。 ヨザックは、賢者のために戦場へと戻った、だけれど、コンラートと魔王は、二人仲良くこの家で暮らし ていけることも出来たのに・・コンラートは、ヨザックを助ける為に戦場へと行き、魔王はしなくても いい寂しさを味わっている。 自分はコンラートに、行かなくても良いと言わねばならなかった。 でも、言えなかった・・・ 賢者にとって、半身である魔王はとても大切な者。だから、彼が目覚めると同時に自分も目覚め、彼が 選んだ人の中から、適当な者に買われるように仕向ければ良いと思っていた。 なのに、隣の魔王が目覚める気配を察知し、自分も目を覚まそうかとした時に、突如として強い力で 惹き付けられた。目を開けた先には、きれいな夕焼け空の髪。そのまま、気付けば彼の服のすそを 引っ張っていた。 驚いた目の色は、綺麗な青空の色。二つの空の色を持つ彼・・・彼が唯一自分が選んだ相手。 お金もなければ、自分達を買う気も無い男達。・・彼らを選んだ自分達。 自分を買う気になってくれたヨザック。とてもうれしかった。でも・・そのせいで、彼は大金を必要とし 危ない仕事へと向かった。待っていてくれと言い残して・・待つ間、寂しかったけれども、ヨザックが 画策していってくれたおかげで、コンラートが店に顔を出すようになり、魔王の為に彼を篭絡させると言う 新たな楽しみのせいで、だいぶ寂しさを紛らわすことが出来た。 だけれど、コンラートが魔王を買う気になってくれた時点で、同時にヨザックの窮地を救いに行くと言う 事も知ってしまった。 大事な魔王が選んだ男。 彼が失われ、魔王が枯れる事態を避けるためにも、賢者はその必要はないと。なんとしても、彼の 出兵を止め、自分は彼の周りにいる者の中から、新たな主人を探せば良いだけと・・そうしなくては! 理性はそういっている。そう言っているのに・・それが出来なかった。 心は何より、彼を助けてと叫んでいたから! 「いってきます。賢者、ユーリを頼むね。あぁ、そうそう、帰ってきたら、アイツにキツイ御小言を たのむね?もう、無茶をしないように、君が言った方が効力があるからね?」 言外に、約束をくれた人。 そうして、魔王の大事な人は行ってしまった。 行かせてしまった。 死ぬかもしれない危険なの中へと・・。 せめて彼の助けになるように、彼なりに色々働きかけはしたけれど、それがどれ程の力になろうと、 最終的には危険がなくなることはナイ。それがわかっているからこそ、迂闊に喜ばせることさえ できない・・・こんな不安は自分一人抱えればいい。 ふと、ミルクを飲んでいた魔王の動きがとまった。 「魔王?」 「しぃ〜ッ!!」 なにやら、彼は集中して耳を澄ませている。 「花が・・あの青い花たちが呼んでいる、早くお出でって、いいことがあるよって言っている。」 いいこと・・いいことってもしかして!? 魔王は、ミルクを一気にくいーー!と飲むと、一目散に庭へと飛び出た。 そこには、青い花をしゃがんでみている人がいた。見慣れない背広をピシッと着こなし、美しく のびた背中のライン。その人が、ゆっくりと振り返った。 「−−−−!!」 魔王の漆黒の目が、大きく見開かれた。 少しだけ伸びたダークブラウンの髪先を、風が軽くもてあそべば、その下からユーリの大好きな琥珀が みえた。銀色の星をたたえた・・綺麗な彼の瞳。 その星が嬉しそうに瞬く。 「ユーリ!」 その人だけが呼ぶ、自分の名前。その音を耳が拾ったら、体が勝手に動いて気付けば、その逞しい 胸の中へと飛び込んでいた。 その胸からは、久々に嗅ぐ彼の匂い。それを胸いっぱいに吸うと、体中に生気が漲るようだった。 コンラッド? 「ユーリ、元気そうで良かった。」 コンラッド、おれね、ちゃーんと花の世話したよ! 「うん、ユーリは育てるのが上手だね。とても綺麗に咲いている。」 それと、ちゃんといい子でお留守番していたよ! 「あぁ、そうだね、おかげで俺は安心して、家を空けられたよ。」 それと・・それと・・ あぁ、どうしたんだろう?おれ?コンラッドが帰ってきたら、色々お話しようって、一杯一杯考えたのに、 全部言葉が胸の辺りに、突っかかちゃって・・全然出てこないよぉー ユーリは胸を押さえた。何かが込み上げてくるけれど、それがうまく出てこないで、苦しいのだ。 そっと、その小さな手の上に、大きな彼の手が重なる。優しい琥珀が、ユーリの漆黒の瞳を覗きこむ。 「ユーリ」 ー ただいま その優しい声を聴いた瞬間、もう駄目だと思った。 ポロポロと両目から涙が零れ落ちた。コンラートは、指で涙を拭うおうと伸ばすが、その涙は流れ 落ちる前に、小さな宝珠となってコロコロと、コンラートの手の上に落ちた。 「これはー?」 それは、天使の涙と言われる、最高に愛された観用少女が流す涙が結晶化したものであった。 「へぇ・・とても・・きれいだ。」 ユーリの流した涙は、とても綺麗な青に琥珀と銀が散りばめられている綺麗な宝珠だった。 賢者は、玄関から動けないでいた。 その視線の先には、魔王を一生懸命宥めているコンラートの姿。庭には二人しかいない。 一人で帰ってきたコンラート・・まさか・・まさか!? 渦巻く不安に、動揺を隠しきれない賢者。 その時、ふわりと後ろから気配がした。肩の上から逞しすぎる腕が伸びてきて、自分の首に冷たい 金属の感触が走った。 「はい、できた。これは、待たせちゃったお詫び・・・あれ?隊長は?先に戻ってきているハ・・ズ」 見れば、ピーピー泣いている魔王を、一生懸命宥めている。天下のルッテンベルクの獅子も、泣く子と 観用少女(プランツ)には、勝てないと見える。 「賢者ちゃん?」 ・・・遅い 「あ〜うん、ごめんなさいね〜中々お買い物が決まらなくてぇ〜、でもグリエ、これでも急いだのよぉ?」 シナを作って、体をよじれば、悪態をついてくるはずの賢者は黙ったままだ。 内心、あちゃーーとおもう。これは、かなり心配をかけたのだろう?手痛いお説教くらいありそうだ。 ・・ばか・・・ 「はいはい、俺は確かに馬鹿ですよ。でも、そんな馬鹿を信じて待ってくれる、賢くって可愛い子がいる 限り、俺はちゃーんと帰ってきたでしょう?」 そっと、俯く華奢な体を抱きしめる。その腕に、小さな手が添えられて、二つの黒曜石をたたえた 笑顔が、大きな青年を仰ぎ見た。 「お帰りなさい。ヨザック。」 「ただいま帰りました。健ちゃん。」 にっこりと笑う笑顔は、とても可愛らしく。こうやって毎日お出迎えされたら、俺幸せ〜〜! と、改めてヨザックは帰ってきた幸せを噛み締めて・・・アレ??と思った。 「健ちゃん、今もしかして?声を出して話した?」 かぁぁ〜〜!!と真っ赤になる賢者に、もしや?練習して待っていてくれたのかと思うと、自然と口元が 緩む! 「うん、もう!健ちゃんたら、かわいいぃぃーーー!!!」 ぎゅうぅぅっと抱きしめると、賢者が逃れようと暴れる。 わぁぁ〜〜はなせーー! じたばたじたばた!! 「何をやっているんだ?ヨザック?賢者が、暴れているじゃないか?」 そこへ、ユーリをお子様抱っこをしてコンラートが現れた。 「あぁん、もう、聞いてくださいよ〜、健ちゃんったら、お帰りなさいを言えるように練習して くれてたんですよ。うんもぉぉーー!かわいいぃー!」 かいぐりぐりぐりっと、ヨザックは頬ずりする始末・・。仲がいいな〜と呑気なコンラートは、 他意はなく素直に賢者を褒め称えた。 「へぇ〜、もう声に出して話せるのか?流石は、賢者というだけある、とても利口だね。」 にっこり ぐぁぁん! ('Д';ノ)ノ sноск☆ すっかり、心で会話できるからと油断していたが・・そうだ、きっと声に出して『お帰りなさい』って 言えれば、もっと喜んでくれたに違いない!おれってば、ばかーーぁぁ!! 「うん?どうしたの?ユーリ?」 コ・・コンラッド?もしかして、お帰りなさいとか言ってほしい? 恐る恐るきいてみた・・もしかして、賢者に比べてユーリはお馬鹿だと思われたりしたら・・ いや、実際に、そんなに頭がいい方だとは思はないけど・・。やっぱり、コンラッドも頭のいい 利口な観用少女の方が良いのであろうか? ばくばくする胸を押さえて、ユーリは彼の主人である 青年の答を待つ。 「え?ユーリだって言ってくれただろう?声に出さなくてもちゃんと聞こえたし、それに俺に 見せようとあの花をきれいに咲かせてくれただろう?ユーリの心はきちんと伝わっているよ。」 「そうよ、坊ちゃん、健ちゃんは言葉という方法で、お帰りなさいを伝えたけど、坊ちゃんは あの綺麗な花で伝えたでしょう?伝え方は人それぞれ・・要はどれだけ心が篭っているかですよ?」 俺がうれしかったのは言葉を話せる事ではなく、賢者が一生懸命言葉を練習して、その心を伝えて くれたことがうれしかったんですよ。 そう言われて、賢者を見れば・・・真っ赤になってぷいっと、そっぽを向いてしまった。 そうか、おれが花を綺麗に咲かせて、コンラッドを迎えて喜ばせたかったのと同じように、賢者も 言葉で発して、ヨザックを喜ばしてあげたかったんだなぁ〜? だから、ユーリを誘うこともなく、人知れず練習していたのか? そうおもうと、賢者も可愛いな〜なんて思う。 こら!魔王!僕の事をかわいいなんて思はないでよねっ!抱っこされている、君のほうが よっぽど可愛い姿じゃないか!? しまった・・この距離だと、思考がただれ漏れだった!・・・てへ? てへって・・そんなことで、ごまかせるとても?? え〜〜いいじゃん、怒るなよ〜。おまえだって、おれの事可愛いってゆったろ? あれ?ところで、お前ソレなぁに? そう言われて。賢者は自分の首にかかったペンダントの事を思い出す。 よく見れば、羽のような変わった形のペンダントトップとプレートが掛かっていた。そのプレートには 愛の言葉が刻まれていて、ヨザックからへと健と刻まれていた。 「可愛いでしょう?これ、俺とのペアペンダントなんですよ〜。ほら、この羽二つあわせると ハートになるんですよー!」 ほれみて!と、ヨザックは、自分の胸元に飾るペンダントを見せびらかした。ユーリがほぇ〜〜と しきりに感心している。 「・・・ねぇ・・ヨザ・・健って?」 「うん、賢者ちゃんたち東洋人モデルだから、漢字っているの?向こうの文字ね。一生懸命探したのよ〜。 何時までも健やかにって、願いを込めて、健ちゃんね?どうかしら?嫌?」 健・・健やかに・・健か・・・ 賢く知恵者たる彼に、知識ではなく、健やかな成長を願う純粋な祈りを込めた名前をー。 「いつまでも、俺と一緒に健やかに暮らして生きましょうね?」 CHU♥っと軽い音がして、唇を啄まれた。ぎゅうっと、抱きしめた腕が小さく震えていた。 青空色の瞳が、それまでの軽口がうそのように、真摯に腕の中の大事な者を見つめていた。 拷問をうけても、諦めなかったのは・・・彼が待つと言ってくれたから・・やっと彼の元に戻れた幸せ。 「もう、離しませんからー。」 「・・ッ!!ヨザ・・ヨザック・・もh、離さないで!」 再び二人の唇が重なり、健の閉じた瞳から、コツンー と、天使の涙が一つこぼれた。 コンラートは、二人が良い雰囲気をかもし出したところで、回れ右!をして、素早くその場を離れたの だが、やはりというか?最初のヨザックから仕掛けたキスの様子は、バッチリ!ユーリが見てしまった。 くいくい・・! あ・・嫌な予感〜〜〜・・・ 見れば、きらきらっと期待に満ちた目をしたユーリ。 ねぇねぇ、おれもコンラッドとの『おそろい』欲しいぃ〜! しかし、コンラートの予想と反して、ユーリはペンダントの方に興味が行ったようだ。内心ほっとして、 かわいいお願いをコンラートは聞くことにする。 「良いですよ、ユーリがいい子で待っていてくれたご褒美に、明日にでも二人で買い物に行きましょう?」 わ〜〜い!大好きコンラッド!! ぎゅうっ!と、ユーリが首に抱きついた。まるで仔猫のようで、本当にかわいいな〜などと、ほわほわ 考えていると、でねでね?と、ユーリは、可愛らしく小首を傾げて、コンラートに甘える。 「うん?なぁに?」 おれにも、ちゅーして♥♥? `。*:`( ゚д゚*)ガハッ!! (←時間差攻撃をくらった!) 「ゴホゴホッ!ケホッ!ゴボッ!」 コンラッド?どうしたの??大丈夫?? ユーリはいきなりむせたコンラートを心配そうに、一生懸命背中に腕を伸ばしてさすってくれる。 そんなところは、とても優しく良い子なんだけれどーー。 「いや・・けほっけほ!な・・なんでも・・大丈夫だから・・。」 コンラートはようやく息を整えると、ユーリを見る。じっと、餌を待つ子犬の目だ。 「〜〜〜〜〜〜。」 兎に角どうにか、ごまかさないと!!コンラートは、ユーリの頬を捕まえると、ちゅっ♥♥と 可愛いプニプニほっぺに、キスをした。 これで、勘弁してほしいな〜と、ユーリを見ると・・・ご不満な顔だ。 コンラッド?さっき、健は口にしていたよね? その顔は、健は口で何で自分は頬なのかと訴えていた・・が・・いくらなんでも、10歳前後の容姿の 少年と昼間からそんなことをするなんて・・・・ちょっと避けたいな〜。(←ちょっと?) 「いや、ほっぺたじゃないかな?」 「口だった!」 「ユーリの見間違いだよ?ほっぺだったよ?」 「本当?」 納得がいかないユーリに、コンラートは少し悲しい顔をして、『ユーリは、俺の事信じてくれないの?』 といえば、途端にぶんぶん!!と、ユーリは首を振りった。 ううん、おれの見間違えだね!ほっぺだったよ!うんうん! ユーリの反応に、内心ガッツポーズで、それでも悲しい顔を崩さないコンラート。それを真に受けた ユーリは、どうにかコンラートの機嫌を直そうとやっきだ。 「じゃぁ、俺を信じてくれる?」 もちろんだよ、おれ、コンラッドの事は信じるよ! 「有り難うユーリ^^」 にっこりと笑えば、真っ赤になって口ごもるユーリ。この技は使えるな〜と、心にメモったコンラート。 何かごまかすときはこの手で行こう!(←きたねー)。ついでに、ヨザックをしばくことも、きっちりと 心のメモ帳に書き留めた彼であった。 ねぇねぇ、コンラッド、お仕事終わりでしょう?今度はずーーと、ここにいてくれる? 「そうだね。これからは、ずっとユーリと一緒だね。」 よっと、ユーリを抱いたまま、庭の花壇の縁に腰掛ける。美青年の膝に横座りですわる、美少女とも みえる可愛い少年。たまたま通りかかった近所の主婦らしき夫人が、ほぉーと、うっとりとしたため息を ついてその様子を暫らく見とれていた。きっと、数日中に、この界隈で二人をうわさが持ちきりになる だろうが、まだそのことに彼は気付いてはいない。 ねぇねぇ、コンラッド!今度は、球根植えようよ!此花も、お友達のお花が一杯合った方が 楽しいよ、きっと!」 「そうだね、じゃぁ、明日は街に出て、人形屋さんに挨拶に行って、ペンダントを買って、球根を買って」 その後、庭でキャッチボール!あとあと、お昼寝もしよ! 「はいはい、わかったよ。いっぱい一緒にいようね?」 うん!!!コンラッド! 「なに?」 だぁぁーーいすき!! ♥ ♥ 綺麗な満面な笑顔!この笑顔をずっと求めてきたような気がする。自分だけを見てくれて、自分だけを 愛してくれて、自分の愛を受け入れてくれる・・そんな神様みたいな存在を・・。 でも、神様なんて・・・自分が育った世界には、いる訳が無いと知っていた。 それでも、心のどこかで・・ずっと、求め続けていたーー 渇いたこの心を潤してくれる・・そんな存在を。 そして、自分はやっと彼に巡り会えた。 「うん・・ありがとうユーリ。俺も、ユーリが大好きだよ。」 あの日、灰色の街の中で、聞きかじった弟とその店の話を思い出し、ほんの少しだけ足を止めた。 その先に開けた未来。そこにいたのは神様ではなく、魔王と言う恐ろしい名のかわいい観用少女。 残酷な神様より・・ずっとずっと自分の心を潤してくれた存在。 今、コンラートの心には、小さな花が咲いている ユーリという魔王がくれた、幸せという花が・・・。 11月29日UP 観用少女コンユ編・・か・・書き終わった・・。2話か予定が・・4??倍!? すいません。なお、私、これは文庫本サイズで2巻までしか持っていません。補うために 眞魔国設定も捏造してあります。色々違うところもあるでしょうが、笑ってスルーしてください。 神咲さんからの、マジなお願いです。(T▽T)ノ |