観用少女・Plant Doll 漆黒の魔王・黒曜の賢者 3 |
篭る異臭・・・。瓦礫と化したビルの地下に、その男は吊るされていた。
元は明るいオレンジ色の髪であったが、今は血と泥と埃で薄汚れていた。 「あー、風呂入りてぇー・・・。」 グリエ・ヨザック。ルッテンベルクの獅子と謳われた男の右腕だった男。 その事実が、射殺される自分を救った。銃口が向けられていると気付いた時には遅く、頭を打ち抜かれて 死ぬはずであった。だが、敵兵はギリギリその銃口をずらしたのであった。 敵国においても、ルッテンベルクの獅子の名は高い。それは、畏敬の念と共に語られる。 見事な用兵術もさることながら、無駄に詐取したり、捕虜をいたぶることもしない。彼に捕まった兵は、 休戦のあと、ほとんどの者が帰ってきた。 それどころか、自国の軍よりも余程人として扱ってくれたと、彼らは言う。もっとも、他の貴族に 捕まった者は、これにあたらない。そして、この兵士もコンラートと戦い、捕まった元捕虜である。 だから、彼はヨザックを殺さなかった。獅子の横にいた右腕といわれた男の顔を覚えていたのだ。 だが、同時に普通の捕虜としては扱ってはもらえない。敵国において、獅子が再び自国に戻って参戦したら、 戦局がひっくり返るかもしれないのだ。 だから、いざという時の為に、彼の副官だったヨザックを捕らえたのだ。また、情報通である彼の口から 相手の情報を聞き出そうとしたが、さすがにそれは吐きはしなかった。また、獅子の行方についても、 彼はあの国を見捨てた。そう言ったきり、話す事はもうないとばかりに口をつぐんだ。 「グリエさん、食事ですが?できそうですか?」 持って入ってきたのは、例の敵兵だ。彼は、ヨザックを捕まえたことで褒章を貰い、最前線からも 退かせてもらえた。そして、ヨザックの世話係として一緒に、 この本部まで戻ってきたのであった。 「食う・・。」 「すいません、うちの国、捕虜の扱い悪くて・・・俺が捕まっていた時は、皆さんには良くして 頂いたのに。おかげで、怪我も治って、田舎に帰ることができました。」 「それで、また最前線に戻らされちゃ、意味ないだろう。」 「・・・・これも、国のためです。すみません。」 「お前さんが悪い訳じゃないだろう?それに、こっちの国だって、いい国じゃない。コンラッドもそれで 見限ってあの国を出たんだからな。アイツには、本当・・辛い国だったよ。何一つ報われず・・・。」 「獅子様は、王子様でしたでしょう?」 「名ばかりのな・・。純血主義のお偉いさんには、あのヒトは邪魔なのさ・・。だから、あいつはあの国 に殉じる必要もなきゃ、この戦争に関る義務もない。・・・前の戦争で充分尽くした・・もう、いいんだ」 「と、言われてもな。馬鹿な幼馴染が捕まったとなったら、見捨てるわけには行かないだろう?」 「だろうな〜、アイツは変に、苦労を背負い込む性質だからぁ?・・・あれ?」 聞き慣れすぎた・・しかし、今聞えたらおかしな声がする? 「なんだ、男前度が上がったんじゃないか?」 「た・・たたたた・・隊長?なにしてるんですかぁ?」 「・・・お前、助けに来てもらってそれを言うか?」 しッかりと銃口が、世話係の兵士に向いている。しかめっ面をしているが、その目は良く生きていたと、 彼の生存を喜んでいた。この際、多少匂うことなどはいい。コンラートは、兵士にヨザックの拘束を外す ようにと命じた。ガタガタと振るえながら、兵士がヨザックの拘束を取ると、コンラートが彼を殴ろうと するので、それをヨザックが止めた。 「まてまてまて!コイツが俺の命を助けてくれたんだ。」 「こいつが・・・あれ?・・たしか、捕虜の中にいたな?」 「お・・おぼえてくださったんですか!獅子様ぁ!!」 なにやら、感激して、目をウルウルさせる青年に、なんとはなくコンラートが引いた。 ヨザックは、敵味方関係なく誑すコンラートに、いやはや隊長!ステキーと茶々を入れてどつかれいた。 戦局は思わしくない、シュットフェルや、主な貴族たちが国外逃亡をしてくれたおかげで、 グウェンダルは最高司令官として、本隊を指揮していた。 「兄上。顔色が悪いです。少しお休みになられたほうが?」 そういって、臨時に作られた司令室へと、入って来たのは末の弟であった。 「ヴォルフラム・・・戦況は悪い・・お前だけでもコンラートの元に行け。」 「嫌です。母上も城に残っていると聞きます。それに、この最終防衛線を突破されたら、王都に逃げ 込んだ幾万の民が犠牲になります!それを見殺しにして、自分だけ助かるわけには行きません!」 「ヴォルフラム・・・」 ほんの少しの間に、急激に大人になった彼に、グウェンダルは目を細めた。本来ならその成長を喜ばしい ものと、したいのだが・・・戦争によって無理やり大人になる事を、突きつけられたのだということが、 何ともいえない物を感じさせていた。 「兄上、コンラートを呼ぶことは出来ませんか?」 「だめだ!散々使うだけ使って、我が国はコンラートも、その父も使い捨てにしたんだぞ。あれは、 この国とは違う場所で、幸せになればいい。その権利が、アイツにはあるのだ。」 「でも、このままでは我が国はっ!」 「国が滅んでも、別の国が興るだけだ。そこで生きていく事もできよう。だが、失われた命だけは 取り返しがつかぬのだ!」 「あに・・うえ・・。」 「元々、コンラートがいなければ、もっと前にわが国は滅亡していた。最初から負け戦であったのを アイツが命がけで、ひっくり返してくれたのだ・・・あれには十分してもらった。」 グウェンダルは、すぐ下の弟を思う。そう、お前はよくしてくれた。どうか、自分達が死んでも責任を 感じないでくれ。 「せめて、我等が盾となり、民達の脱出くらいの間を稼ごう。」 「はい、兄上。」 「すまない。」 「いいえ、でも、一つだけ心残りが・・・小ちゃい兄上に、己の愚かさを・・謝り・・たかった。 コンラート兄上は、いつもこんな戦いを強いられてきたかと思うと、何も知らず城で安穏と 暮らしていた自分が・・とても・・とても恥ずかしいです。」 彼はいつも、こんな危険と隣り合わせの場所で戦っていた。自分がふかふかのベットの中で寝ている時も 夜の闇を駆け抜けて、城では貴族達がお茶会と称して、贅沢な菓子や酒を飲んでいる時に、携帯食を齧り ながら、粗末なテントで次々と変わる戦況を読んで、次の一手を打ち出してきた。 彼は国の為にそこまでしていてくれたというのに・・・国は決して彼を認めはしなかった。 少し戦場に出ただけ、それも後方で国の誇りだ名誉だを振りかざして、幾多の自分の兵士を無駄に 死なせるようなやつが、武勲を褒め称えられていた。それを、どんな思いであの兄は、見て いたのであろうか? そんな連中も、コンラートがいなくなり戦場に出て、どこかの瓦礫のしたで埃にまみれていよう。 それとも、兵士を捨てて逃げ出したか?こんな事態になって、彼の天才的な力量を認める事となるとは 皮肉なことだ。 「ヴォルフラム・・・その心だけでも、いつかコンラートの元に届くと良いな。」 「・・・はい・・兄上。」 王都は、周りをくるっと高い城壁に囲まれている。砲弾を喰らえばそれも吹き飛ぶであろうが? だが、この中には数万の市民が逃げ込んでいる。また、城には女王である母が、いざとなれば自分の首で 彼らを守る覚悟をしてあの中にいた。 母は、魅力的な女性ではあるが、王としての才能はどうかといえば、決して高くはなかったであろう。 それでも、この決断を見る限り、彼女がもし自分で王としての政をしていれば、ここまでひどくは なかったかもしれない。少なくとも、伯父シュットフェルに任せなければ・・コンラートの力を 存分にい発揮でき、停戦条約も守られたままであっただろうに・・・。悔んでも悔みきれない・・。 自分がもし、あと5年でいい年高であったら、伯父をモット早く失墜させれたものを。 刻々とこの国の最後が近づいてこようとしていた。 朝、これが最後の朝日かもしれない・・・その日、彼らが朝日と共に視界に入れたのは、最終防衛線の 前を埋め尽くす、敵・主力部隊であった。先頭には、機動兵器。 「兄上ぇ!!」 「わかっている、砲撃用意!目標!敵機動兵器部隊!撃てぇぇーー!!」 こうして、最後の戦いが始まった。 「右舷出すぎだ狙われるぞ!足並みをそろえよ!」 本部には、刻々と戦況が伝わってくるも、はなはだかんばしい物ではない。 「兄上!左・シュミット隊が崩れかかっています。僕が応援に出ます!」 「まて、ヴォルフラム!」 「他に出れる部隊はいません。行かせて下さい。」 「・・・死ぬなよ。」 「もちろんです。」 鮮やかに笑って、出て行く弟を、グウエンダルは苦渋の表情で見送る。 そして、とうとうーー 右 ゲルツァー隊、突破されましたぁぁ! 通信兵が悲鳴のような声が聞こえ、本部は騒然となる。最早此処までか・・。 「これ以上は無理だな・・・・降伏しよう・・・。」 「グウェンダル様!」 「王都の中の民の避難もそろそろ完了しただろう。・・大丈夫だ、王子である我らの首と、王である 母上の首を差し出せば、お前達にまで危害はなかろう。・・・・みな・・今まで有り難う。」 「殿下!」 「非常用回線を開け!敵司令部へ繋ぐんだ・・・・降伏する。」 「く・・でんか・・。」 その時、司令部に非常用回線から、通信が入った。敵司令部からであった。 「降伏勧告か・・ちょうどいい、開け。」 グウェンダルは、指示を出すとゆっくりと椅子に座りモニターを見た。最後は、最高司令官として また、王太子として恥じないようにと・・。 「通信繋がります!」 通信兵に声が司令部に響くと、どよめきが走る。 やがて、メインモニターに一人の男が映し出された。 「!!」 薄茶色の髪・同色の目そしてモニターでは解りづらいだろうが、きっとその瞳には銀色の星が、輝いて いる事だろう。 「コ・・コンラート?」 「やぁ。^^」 にこやかに手を振るのは、何とすぐ下の弟!? 「な・・なにをしているんだ?」 「うん?いやだな、俺は用兵だよ?もちろんミッションさ。」 どよどよと、司令部がどよめいた!まさか、あのルッテンベルクの獅子が、敵国についていた? 「あれ?ヴォルフは?」 「前線に出ている。」 「そう、だったら、そのまま敵本国王城にまで来るように言ってくれる?」 「コ・・コンラート!?」 まさか、弟の首を差し出せと言うのか? 「まて、行くならまずは私がっ!」 「でも、グウェンは、そこをまとめないと。だから、ヴォルフに取りに来るように言って?」 「??取りに・・なにを?」 「敵総司令官ベラール2世殿下とベラール4世陛下の身柄^^b」 「「「は???」」」 「あ、この回線、全軍に開いているから聞えるよね?というわけで、シマロンは直ちに戦闘を 中止して、武装を解除してもらおうかな?」 いっそ、爽やかな程、にこやかに・・しかし目が全く笑っていない・・。 (||゜Д゜)ヒィィィ(゜Д゜||) 「あれ・まだ動いているな・・いけない子達だ。聞えているだろう?シマロン本国は 我らの手におちた! 速やかに投降しろっ!!」 ビリビリッ・・!と回線を震わして、獅子の咆哮が両軍に響き渡る! さもないと、お前らの王と閣僚を城ごと始末するよ? 獅子の殺気を込めた怒声と、つづいて流れた冷徹な脅し・・ ぴた・り・・・ シマロンだけではない、眞魔国側も打ち合うのをやめて、首をすくめて各自、自分の司令官を仰ぎ見る。 が、両国ともこの、急展開については来れないでいた。 「はいはーーい、あんた等ルッテンベルクの獅子様の言うことを聞いた方が身のためよ〜〜ん。」 モニターが切り替わり、オレンジ髪の男が、マッシュルームカットの40代の王と、70代のそのおじを 締め上げているのがうつった。 「ほら、アンタも早く投降するようにいいな。」 ちょいっと、手首をねじりあげると、いたぁぁい!と王様がいたがった。・・・なんか、今この オッサンから、可憐何少女のような声がしなかったか?? 「うわぁん、いたいよ〜、全軍・・進軍は中止して・・投降してぇ〜、じゃないと、朕も叔父上も ころされちゃうよぉぉ〜〜。」 泣き喚く王に、ヤレヤレと言う目を向けると。コンラートはもう一度、全軍に向け言い放つ。 「たった今、この戦争は、侵略国シマロンの敗退でおわった。全軍速やかに武装を解除し、眞魔国軍に 投降されたし、なお、眞魔国軍にも告ぐ。投降した兵士にむやみに危害を与えないこと。兵士の扱いは 国際ルールにのっとり行うこと。また、一切の略奪は禁止!暴力、強姦などはもってのほか!違反した 者は、国際法廷で裁き厳罰に処す!いいな?」 なぜか、シマロンだけではなく、眞魔国側も脅されていないか? 「さて・・それと、徴収された末端兵は、一ヶ月以内に返してくれないかな?」 「一ヶ月??」 「うん、シマロン北部でぶどうの収穫が始めるんで、徴兵された農民が帰らないと、困るんだって?」 「・・・・・ぶどう・・・ワインか・・・。」 「そう、徴収兵の皆さんも帰りたいだろうし、よろしくね?《兄さん》♪」 兄さん・・そう呼ばれたのは、十年ぶりくらいであろうか?でも、喜べないのは何故だ? 「・・・・わかった。捕虜の扱いは、国際ルールにのっとり行おう。」 「葡萄・・・・。^^」 「コンラート・・だがしかしな?」 「葡・萄・・シマロンの白ワインは、おいしいよ?」 「・・・・・・・。」 「ぶ・ど・う。もう、仕方ないですね、赤もつけますよ・・。」 赤好きなんだから〜と、ぶつくさいう弟に、ピクピクと長男のこめかみが動く。 「・・・・くっ・・わかった・・徴収の末端兵に関しては、収穫が間に合うように返す!」 だから、余計なことはこれ以上言うな!とは、心の声だ。なんで、戦争の真っ只中、非常回線を開いて 弟に脅されなくてはならんのだぁ!?それも、内容は葡萄だ・・それも、オマケで釣ろうとは?なにが、 ワインをつけるだ!お前は、ジャパ○ットた○だかっ!? 「・・・・ありがとう。兄さん^^v」 が、その弟はというと、交渉が上手く言ってご機嫌で、回線を切るのであった。 プチン! 「あ、こら、コンラート!!」 いわゆる、いい逃げ・・・グウェンダルは、ぐってりと司令官の椅子にくずれ込んだのであった。 みな、どういって声をかけていいのか、困っていると、通信兵が大変です!と、グウェンダルを 振り返った。 「何事だ!?」 「敵が・・・敵兵がどんどん武装を解除して投降してきています!」 その通信が切れた途端に、シマロンに動きが出た。徴兵された末端兵が、どんどん武装解除して、投 降しはじめたのだ。こうなってしまえば、軍もどうにもなりはしない。 なにせ、彼らの王国の支配者が、既に敵の手に落ちたのである・・。自分達は負けた・・・なまじ勝利を 目前にしていたが為に彼らの落胆は酷かった。 そのまま、敵軍本部は、ヴォルフラム率いる眞魔国軍に抵抗もなく捕まった。 こうして、侵略戦争は終った・・・流された血は多いが、それでも守られた物も多い。 シマロンは、敗戦したと言っても、捕まったのは貴族や軍関係者であり、徴兵されていた農民たちなど は速やかに返された上に、彼らによって、敵国人でありながら、温情あふれるコンラートの交渉術と、 そのいきさつが広く広まった。元々彼が前の戦争の時も、人道あふれる行いをしていたことも有り、 眞魔国側が、シマロン王宮を占拠し、治安のためにと軍を送り込んではきたが、対して混乱もなく 受け入れられた。 眞魔国側も、救国の英雄からのお達しである。シマロン人に無体を働くこともなく、平穏な?占領生活を していた。 「いやぁ、獅子様有り難うございます。おかげさまで、俺も田舎に帰ることが出来ます。」 そういて、ぺこりと頭を下げるのは、ヨザックを助けてくれた元敵兵である。彼は、コンラートが 戦争を終らせに来たと知ると、シマロン人に危害を与えないという約束で、こちら側につき、 王宮占拠の手助けをしてくれた。 「いいや、俺は約束を守っただけだし、こちらこそ、ヨザックを助けてくれて有り難う。」 にっこりコンラートが笑えば、ぽわ〜〜ん!と夢見がちになる青年。 「はぅ〜〜やっぱり、獅子様はカッコイイ〜〜!」 「あ・・ありがとう??」 青年は、退職金も貰え、何度も頭を下げると帰っていった。 「それにしても、まさか、俺を助けに来ただけではなく、戦争まで終わらすとはね〜、さすが隊長。 奴らが、アンタを恐れて、国にいる間、戦争を仕掛けるのを躊躇したわけだ。」 そう、コンラートはただ、ヨザックを助けに来た訳ではなかった。戦争を終らすために、彼は昔の 父親の用兵仲間に声をかけ、この時代のTOPクラスの傭兵ばかりをあつめ、5人づつのチームに 分けて王宮の要所要所を制圧した。その間、わずか1時間・・・少ない人数の利点である機動力を 最大に駆使して、殆どの人間が気付かぬうちに制圧してしまったのだ。 これは、コンラートの卓越した指揮と練りこまれた戦略と戦術。それに、一流の男達が集まって 初めて出来た偉業である。彼らは口々に言う・・もう一度やれと云われても無理だなと・・。 「結局は、この国はまた、ウェラー父子に助けられたと言うわけだな・・。」 しみじみと、グウェンダルが呟く。 ーーが、コレでめでたしと言うわけではなかった。 旧シマロンは、眞魔国の統治下におかれた。何だかんだで忙しく立ち回っているうちに、なんと眞魔国を 捨てた貴族達が帰国してきたのである。 しかも、厚顔無恥な彼らは、新たに増えた領土を、どう分割するかと言う算段まで始めた。 でもって、呑気に戦勝パーティーまで開く始末・・・お前らがいったい何をしたというのだ!? 怒りをあらわにするグウェンダルとヴォルフラム。しかし、 「でも、グウェン?お兄様たちも、反省しているのだし許してあげて?」 そう、母親であるツェツィーリエにいわれてしまえば、グウェンもヴォルフも言葉に詰まるしかない。 「という事は、フォンシュピッツヴェーグ卿がシマロン統治責任者になるんですか?」 そこに、にこやかに口をはさんだのは、今回の立役者であるウェラー卿コンラートである。 「なんだ?文句があるのか?」 「いいえ、ありません。」 パチンー☆ コンラートが指を鳴らせば、城の大広間を迷彩服の男達が囲むように現れた。 「こ・・これは!」 うろたえる伯父に事も無げに、コンラートは言ってのける。 「今回の、シマロン国陥落をさせた用兵達ですよ。いわば、救国の英雄ですねっ!^^」 「そ・・それで?」 「まだ、彼らには、報酬を払っていないんです。もちろん、救国の英雄達です、払ってくれますよね?」 にこにこ・・ 「な・・なんだそんなことか、払ってやる!それでよかろう?」 「はい、では、コレ・・請求書です。」 ぴらりん コンラートが寄こした請求書をふん!とばかりにうけとると、シュットフェルの目ん玉が飛び出た! 「なななな・・なんじゃこりゃぁぁ!!! ёё≡ Σ(ω |||)」 請求書には00・ゼロ・零と0がいっぱいだよ、わっほい! 「いやだな〜・掛かった費用ですよ?今この世界で集められるだけの一流の傭兵に、機材を 使いましたから、結構な金額ですね〜。」 のほほ〜〜んといった、コンラートにシュットフェルが噛み付くが、それを笑顔で受け流す。 「でも、国二つ分の値段ですよ?安いものだと思いますが?」 「なんだと?」 「おや、そうですか?払いませんか?」 「こんな国家予算の半分もいきそうな値段なんて、誰が払うか!」 そうですか・・まぁ、いいですけどね・・。俺達を買ってくれるところはいくらでもあるし・・ ピッピッピ、コンラートはどこかに連絡を入れた。 「Hey、Hello、This is conrad 〜・・」 「コ・・コンラート何処に電話はかけているのだ?」 ヴォルフラムが、兄の突然の行動に戸惑う? 「sorry, Hold the line , please?」 「はい、国連ですよ?シマロンはこれより国連の管轄化に入ります。もちろん、戦争は両方の責任ですし、 こちらにも来ますので、戦犯の皆さん、此処から動かないで下さいね。」 カチャっと一斉に男達が銃を身構えた。 と、いうわけで〜っと、コンラートは、胸から腕章を取り出すと、腕につけた。 「そ・・それは、国連の!」 「はい、シマロン眞魔国両方は、国連監視下に入り、適切な処分を受けていただきます。」 「コ・・コンラート!貴様!!」 「故国を統治能力の無い、貴方方兄妹に任せる訳にはいきません。両国は、国連監視の元これから 再出発していただきます。陛下・・国を思い城に残った貴女に、俺も一縷の希望を持ったのですが・・」 再び、奸臣どもに国を任せようなどと・・・何度も同じ過ちを繰り返すことは国のトップとしては 許されることではありません! 「コンラート・・あなたは・・一体・・。」 ツェツィーリエは、震える唇で、己が生んだ息子を見た。 「俺は、3つの団体から頼まれてきたんです。まず一つ目が、世界各国の美術館や文化庁で組織された 団体。シマロンでは、2世殿下が美術館から盗まれている盗品をもコレクションしていると、有名でしてね。 できれば、それを無傷で買い取りたいと、戦禍でそれらが焼けるのは、世界の損失ですからね。(^^)b」 「そして、次にここの依頼を受けてきたんです。はい、兄さん。国連総長からです。どうぞ・・」 コンラートは、電話を兄である王太子に渡した。ここといって、指差したのは国連のマーク。 そう、彼は世界から、この戦争を止めるように派遣されたのであった。 何故世界がこの地域に注目するかと言えば?此処から産出される物が、彼らの関心を引いたのだ。 眞魔国は、魔石という自然界から受けた力が結晶した珍しい石が取れる産地で有名であり、その石は 色々なものに使われると言う・・一説には、観用少女もこれを使用して形成されると言う噂だ。 それはとても高価な値で取引され、シマロンも魔石を狙って、侵攻してきたのであった。 「まったく、のこのこと帰ってきて・・・国賊であり、戦犯である自覚もないんですね?貴方方は?」 コンラートの目が獅子の殺気を帯びる。 「この国を滅茶苦茶にし、多くの自国民を殺して己だけ逃げたにも拘らず、国の重要な文化財や 資源(魔石)まで持ち逃げして・・魔石の取引には、国際協定で決められた量を決められた手続きを経て 売られることくらい知っているでしょう?それを、持ち出した魔石を、マフィアを使って売るなどと! 国際警察からも、貴方方に用があるということです。あぁ、隠した口座も金庫も凍結させてあります。 ここから逃げようなんて思わないことです。金もなく逃げても、民衆が貴方達を殺すだけですよ。」 冷徹な仮面を被ったコンラート・・・その本物の男だけが持ちえる人を従えさす気迫。 ヴルフラムは、これが長年国を支えてきた兄の一つの顔なのだと、戦慄で震えながら知った。 スッーと細められた瞳が、銀の刃のごとく国賊たちを睨みつける。その視線に縫いとめられて、 貴族たちはその場から動けないでいた。 「今まで失われた国民の分も、お前ら国賊は、きっと厳罰に処す!覚悟するがいいっ!」 がくり・・と、貴族達がその場でくずれ落ちた。 そこに、電話を終えたグウェンダルが眉間に皺を寄せつつも、やって来て携帯電話を弟に返した。 「まったく国連総長とお前は何時、友達になったんだ?」 そう、その携帯電話の番号は、彼のプライベートNOにかけられた物であった。 「つい最近だよ。いうなれば、観用少女が取り持つ縁かな?」 「観用少女・・というと、ヨザックが報酬にと言ったアレか?」 アレとはひどいな・・彼の持つ観用少女と俺のユーリの作者が同じなんだよ。 「ユーリ?」 「あぁ、ヴォルフは知っているよね?観用少女・漆黒の魔王かれが、俺のプランツで、黒曜の大賢者が ヨザックのプランツなんだよ。」 「あ・・ぁぁあ!あの。目も開かなかった気難しがり屋の観用少女か!?」 「・・・いや、あれは、ヴォルフに問題があるんじゃ・・・・。」 確か、余りにも気が短く、愛情を必要とする観用少女のどれもが彼に反応をしなかったと 店長である青年が言っていたような気がする。 コンラートは、声をひそめて、兄にまるで悪戯の種明かしをするように、一つのヒントをくれた。 「知っている?観用少女はどうやって作られるかは、職人以外誰も知らない・・でもね?どの過程か わからないけど、魔石が使われているらしい・・なぜなら職人達は一様に魔石を買い求めるって?」 まさかとおもうが・・国連のお偉いさん達が挙ってこの戦争に介入した訳は・・・。 「よかったね、眞魔国はグウェンを王として再出発が決まったでしょう?此処で一気に民主化なんて 話もあったんだけど・・・魔王と賢者が俺の家族だからって、姉の観用少女を通じて説得してくれた みたいだ。皆、自分の少女(プランツ)には、甘いんだよ?」 くすくす笑う弟は、とても穏やかな顔をしている。先ほどの殺気は微塵にも無い。 いつから、こんない幸せな表情をするようになったのであろう?グェンダルは、弟の固い殻を破った 観用少女に、感謝をしたいと思った。国の事はもちろんであるが、この弟に、こんな表情をさせて くれたことに・・。 「早く帰りたいよ、あの街に・・あの家に・・あそこで、彼らが待っているからね」 きっと、今日もあの郊外の一軒家で、夢見るように美しい少年たちが、自分達を待っているのだろう? もうすぐだ、もうすぐ帰るから・・・ 待っていておくれ。 ふわり〜甘いような声がしたと思った。 「コンラッド??」 キョロキョロと、ユーリは周りを見渡す。だが、辺りに人影はなかった。 「どうしたんだい?魔王?」 「賢者・・・ううん、あのさっ!コンラッドもうすぐ帰ってくるよね!」 太陽のような笑顔でを、一緒に生まれた友人に向ける。 「うん、そうだな。あまり嫌な感じはないし、もしかしたら・・そろそろ、帰ってくるかもね?」 「だよなっ!」 有利は、ジョウロを持つとトテトテと、庭に向かう。コンラートが出かける前に蒔いて行った花の種。 彼が好きだといった、青い華をう〜〜んと綺麗に咲かせて、迎えてあげるんだ! シャワワ〜〜と水をあげると、一つの苗に、まだ小さいが蕾がついていた。 「うわぁぁ!やったぁ!」 つん!と、蕾をつつくとプルンとゆれた。 コンラッド、花が蕾をつけたよ。帰ってくる頃は、一杯咲かせて上げるからね! 「よーーし、頑張ってお世話するぞ!」 「わぁぁ!魔王ったら!水のあげ過ぎもいけないんだよっ!」 バケツで水をかけようとする魔王を、賢者が止める。 きゃぁきゃぁと騒ぐ二人の少年たち、この風景に、それを見守るように微笑む青年達が加わるのも きっと、もうすぐーー 11月23日UP で・・できた・・。でも、おわらんかったぁぁ〜〜。グスン (ノ(ェ)'。) |