コンラッドを口説こう
年末年始編




年末編


も〜〜いくつね〜〜ると、おしょおが〜〜つ〜〜♪

今年は、ここ眞魔国で年末年始を迎える予定のおれ!渋谷有利17歳!職業は魔王でーす!

「ふっふっふ、今回は完璧だぜ!」

見よ!この魔王部屋に再現した和室セットをーー!

じゃじゃぁぁーーーんん!!

と、効果音がつきそうな勢いで有利が自慢の和室セットを披露した。
なにせ、無駄に広すぎる魔王部屋。この中に、まるでロケセットのような和室が入るのだから
さすがは王様部屋だ! そうだな〜?マンションのリビングの一角に、三法を壁で仕切られた
和室がある感じ?

茶室を魔王部屋に持ってきたともいえるか?

一応、寒くないように、残りの一面も襖で仕切ることは可能だ。


8畳ほどの和室の中央には、でーーんと掘りごたつが用意されている。もちろん、こちらには電気が
ないから、ちゃんと中央で豆炭で火を起こしてあたためる本格派!

だから、迂闊に足を伸ばすと、靴下に穴が開きます。きをつけなくちゃねー!


この和室を再現するために、おれは多大なる犠牲を払ったんだ・・・・村田に・・。


それは、暮れも近づく11月のとある日。

「和室を作りたい?う〜〜ん、ベースはこちらの職人でも出来るけど、畳がね〜?」
「そうなんだ、出来立てのイグサの匂いっていいよな〜。あの感動、コンラッドにも
味あわせてやりたいよな〜!でそれと、もちろん掘りごたつも欲しいよな!で・・二人で
並んで入っちゃったりして!」

「狙いはそこか・・。」

「他に何が有るんだよ?(←言い切った!)じゃなかったら、快適な実家の正月をけってまで、
眞魔国で正月なんて迎えるか?式典は多いしその後のパーティーも多いし!連日忘年会の
親父並みに騒ぎやがって、ここのやつらめっ!!」

「あーーたしかに、あれはひどいよねぇ〜〜?」
村田は裸踊りに興じる王佐を思い出していしまい、些かげんなりした。

「だろだろ?まぁ、コンラッドの白い礼服が見れるのは嬉しいけど
ぽっと顔を赤らめる有利・・・まったく、その辺の女子高校生だって、今時いない可憐さだよね?
これで、何で精悍な男前を押し倒そうと考えるかなぁ?

「だから、三が日は絶対に、お休みにしてもらったの!おれは・・その三日間コンラッドと過ごすんだ!」

グレタがいれば、グレタと過ごすが・・・生憎、愛娘は留学先の友人に招待されて、南の島に
出かけてしまった。娘との家族団らんがダメなら!おれは、恋人との団欒を目指す!

「って、君、ウェラー卿と恋人じゃないじゃん!」

Σ(゚◇゚;) がぁぁぁん!

「そ・・ソレは禁句なのに・・・。」
本気でへこんだ友人に、慌てて村田も謝る。

いいんだ・・口説き続けて数ヶ月・・毎度毎度毎度ぉーー!あの爽やか色男め!いいように、
人をあしらいやがって!だが、それも、ここまでだ・・。ふふふふふ。

「ちょ・・・有利・・キミ不気味だよ?」
「名付けて!年初めは姫初め計画!これで、コンラッド、ゲットだぜ!」

「って、ネーミングそのままじゃないか・・。」
いささか、つきあい切れない大賢者様。

「その為には、どーーしても、和室が必要なんだ!」
「ふーん、どうしてもって言うなら・・協力してあげてもいいけど。」
拳を振り上げて力説する友人に、まぁ仕方ないとばかりに、大賢者は協力を申し出た。

「ほんとうか!?」
「ただし、僕の『お願い』きいてよね?」
「ほへ・・?」
キラーーンと眼鏡が光る村田大賢者様。協力を求める相手を間違えたかも?と、思ったが後の祭り。


そうして、おれは向こうに戻ってから、村田セレクションの数々のコスプレを強いられた挙句に!
写真を撮られまくったんだぁぁ〜〜!!今思い出しても、屈辱の数々!

だが、その苦労もやっと報われるのだ!

この和室の奥にはもう一つ部屋がある。そこには、枕を並べた布団も用意してあるのだ。くふふ♥



「へぇ〜、これが日本のお正月ですか?」
コンラートは、初めて見るコタツに目を輝かせた。布団の中をめくると、コタツの中はちゃんと足を
下ろすように出来ている。真ん中は黒くてコロコロした物に火がついていて、赤く見えるところから
それが熱源だとわかった。

「ささ、入って。真ん中に足を伸ばすと危ないから気をつけてな?」
「はい、それでは失礼して。」

コンラッドが座ると、有利もその隣へと何気なく座った。二人で正月の料理に舌鼓を打ち、
有利は朱塗りの杯にお屠蘇を注ぐと、コンラートがぐいっと飲んだ。

やがて、ほんのりとコンラートの頬に朱がさしてくる。

「あれ・・酔ったみたいだ・・このくらいの酒で・・お恥ずかしい。」
「連日の疲れが溜まっていたんだよ。きっとそれでいつもよりお酒のまわりが早いんだね?」
「えぇ、そうかも・・・。」

コンラートは、酔いを飛ばそうかというように、二・三度頭を振る。

「あぁ、だめだよ。余計にまわっちゃうよ?それより、少し休んだほうがいい。」
有利は、コンラーとを支えるように立ち上がり、ふらつく彼を奥の部屋へと案内する。

「あ・・これは・・?」
二つ並んだ枕に、有利の意図を察したのだろうか?コンラートの目が不安に揺れる。

「ね?コンラッド・・・いいだろう?」
そっと、囁きながら布団に横たえると、恥ずかしそうに視線が外された。

「今日こそは俺のものになって?」
耳に口接けながら、熱いと息を耳に流す込むと、コンラートの体がぶるり!と震えた。
小さく、優しくして下さいね・・と、彼が囁くのを、有利は了承の意味を込めて、やさしい
口接けを贈ったのであった。




「なーーんちゃって!コンラッドったら、かわいいー!よっしゃぁ!計画は完璧だぜ!」


今度こそ、おれの本気を思い知るのだ!ウェラー卿コンラートぉぉーーー!

わっはっはっはっは!



高笑いをする少年王!はたして、本当に年初めは姫始め計画とは上手くいくのか?




12月29日UP
裏に掛かりきりになるので、合い間に こんな物を書いています。
さて、このテンションの高い陛下で、2008年を締めくくっていいものなんだろうか?



年初めの1ラウンド目


「へ〜〜、ぼっちゃんが、とうとう実力行使に打って出るわけですね?」
眞王廟の一室・村田大賢者様のお部屋では、ベットの中に横たわる恋人の腕の中に包まれて
部屋の主である少年が、まどろみの中にいた。

「うん・・そう、でもあの計画じゃね〜?相手がウェラー卿だからね〜。」
あふ・・と、眠そうな欠伸を一つすると、村田は心地よい男の胸に顔を寄せると目を閉じた。

確かにあの男が、『優しくして下さいね』なんて、有利相手に言わないだろう。
と・・いうか・・そんな事を言う幼馴染は・・不気味だ(TT)←想像したら怖かったらしい

「うん?健さん、もう眠いですか?」
「う〜〜ん・・・。」
「お休み・・よい夢を・・。」

やがて、すやすやと眠りについたらしい主を確認すると、ヨザックも目を閉じる。連日連夜の
式典続きで、魔王陛下もであるが、大賢者であるこの少年もめまぐるしい数日を過ぎしてきた。

年の変わり目を、二人だけで過ごしたいと、式典の最中に抜け出して戻ってきたが、二人だけで過ごす
うちに気持ちが盛り上げって、体を重ねている間に年が変わってしまったらしい。

年越しエッチか・・・そんな事を言ったら、この少年のことだ・・盛大に照れて憎まれ口を振るって
くれるだろうか? そこがまた可愛いのだが・・・。

さて、あちらの、お二人はどうなっている事やら?

血盟城も年越しの式典が終わり、魔王陛下もその護衛の青年も戻ってきているだろう?

「コンラッド・・アンタも、そろそろ覚悟を決めるんだな?」





で・・そのお二人は?

「コンラッド!約束だったろう?正月の三が日は、おれに付き合って、日本の正月を堪能しよって!」
「はい、ですが・・今日は式典でお疲れでしょうし、明日からね?」

案の定、新年早々もめていた。

年越しの式典が終ってすぐに、有利はコンラートをつれて魔王部屋に帰ってきていた。
ここからは、完全プライベート!約束のお正月休みだからと、有利はコンラートに一緒に和室で
まったりしようと誘ったのだが、今日はもう寝たほうが良いとコンラートは自室へ帰ろうとした。

「だっめーー!約束は約束だ!頑張ったら、おれと正月を楽しんでくれるって言ったのに・・。」

おれ・・それだけを楽しみにして・・・式典頑張ったのにな・・。

しょぼんとして、つぶやいてみせれば、仕方ないですね?といって、コンラートは魔王部屋に
泊まっていってくれる事になった。

ふふふ、ちょろいぜ・・。あいかわらず、名付け親はおれに甘いんだから・・ふっふふ。

一転して上機嫌の魔王様は、レッツ初風呂だ−−!と、名付け親をつれてお風呂へと向かった。
脱衣所に入ると、ぽいぽいっと服を脱ぐ有利。仮にも好きな人の前だというのに、恥じらいというか?
てらいがないな〜なんて、コンラートは思ってみたりする。

有利が脱いだ服をたたむと、コンラートは自分も服を脱ぐ。上着をぬいでシャツのボタンを外す。
その手が、ふっと止まる。

「ユーリ・・何?」
視線を感じて振り返ると、先に風呂場に行った筈の有利が戻ってきていた。

「・・だって・・コンラッドが中々来ないから・・」
「あぁ、ごめんね?今行くから。」

そういうと、コンラートは有利に背を向けて、シャツに手をかける。有利からは、肩からずれたシャツが
綺麗に伸びた背中を滑り落ちていくのが見える。顕わになる甲冑骨や筋肉がコンラートが服を脱ぐ動作を
するたびに動くのがわかる。
シュルリとベルトが抜かれ、腰に手が触れて一気に下へ・・・おちない?

「あの・・ユーリ?・・・そんな熱い視線で見られると脱ぎにくいんですが?」
「ほぇ?・・うわぁぁぁ!ごめんなさい!」

さっぽーーんと水音がしたところを見ると、掛け湯もしないで風呂に飛び込んだようだ。

「ふふ、可愛いな。」
大胆にも服を脱ぎ、人の脱衣を見ていたかと思えば、指摘されて真っ赤になって逃げ出す彼。
くるくると変わる様子は見ていて飽きない。

「ずっと・・一番そばで見ていたいな・・。」
ポツリと、こぼされたのは、コンラートの本音。

でも・・・近づきすぎるのは危険だ。
彼なしでは生きられなくなる。そうなったら自分は、たとえ彼が泣き叫んで嫌がっても、絶対に
手放さないだろう。縛り上げても、閉じ込めても・・・・。

「ユーリ、貴方が欲しがっているのは、とても危険なケダモノなんだ・・。」

どうか・・これ以上、近寄ってこないで下さい。

この優しい距離を守らせて。


名付け親と名付け子・・この穏やかな関係を・・どうか壊さないで下さい。




「うわぁぁーー、おれってば、何、コンラッドの脱衣をじっくり見ちゃったりしたんだろう?」

それにしても、綺麗な背中だよな。いや・・傷だらけだったけど、そうじゃなく・・姿勢がとにかく
いいんだ。スっと通った背筋が凛々しくって、しなやかな筋肉が、野生の猛獣を思わせて、それに
仕草が・・男の色気?っていうのが有るんだよね?

ぶくぶくぶく・・・

「ユーリ!何しているんですか!?沈んでますよ!」

ぐいっと大きな手に腕をつかまれて、湯船に沈み込んでいた体が浮かんだ。

「え?あれ?」
「もしかして、寝ていたんですか?溺れたらどうするんですか!」

目の前には、少し怒っているコンラッドの顔。新年早々に怒られてしまった。
でも、怒った顔もカッコイイなーとか、思うおれってば・・どれだけこの人が好きなんだろう?

「ユーリ?・・本当に大丈夫ですか?」
ぼーと、していたおれを、今度は訝しげに見つめるコンラッド。

「うん大丈夫。」
「そう?ならよかった。」

ホッとしたのか、彼は小さく笑う。ほぇー至近距離で見ると、やっぱり男前は違うなー?

至近距離?あれ?なんで、コンラッドの顔がこんなに近くにあるの?

そこで、おれは、コンラッドの膝の上に座っている自分に気付いた!

どっひゃぁぁぁーーー!!!

「うわぁぁ、ごめんコンラッド!おれってば、コンラッドの上に座っちゃって!」
「別にいいですよ。それより、また眠って沈むよりマシです。」
「はぁ・・まぁ、言われれば、まったくおっしゃるとおりでーー」

おれは、恐縮しきって答えた。たしかに、正月早々に溺死はいやだ。同じ溺れるなら、シーツの海で
コンラッドに溺れたい・・なーんちゃって!おれってば、だいたーーん!

「ユーリ?本当に大丈夫?なんだか・・顔が・・。」

緩みまくっています・・・。はた・・まさか、自分の知らない間に、お酒を飲んでしまったのではないか?
ありえる・・前もジュースと間違えて飲んで酔った事がある。あの時は大変だった・・・酔った有利が
コンラートの服を剥ごうとしたのであった。

この上機嫌で緩んだ顔・・・ありえる・・だとしたら、お風呂で酒が回ってきたのではないだろうか?
コンラートは、そっと有利の口元に顔を近づけて、くん!と匂いをかいでみる?

「あれ?お酒の匂いがしない?」

おかしいな?と思いつつも、有利を見れば まっかっか!に全身を染め上げている?

「こ・・ココココ・・」

呂律も回っていない・・これはやはり!

「ユーリ!また、お酒を飲んじゃいましたね?」
匂いをしないし、きっと少量飲んだのだろう。連日の式典で疲れているからだが、普段は酔わない量で
酔ってしまったに違いない!
「え・・ち・・ちが・・」
「あぁ、飲んでないって?酔っ払いは、皆そう言いますよ。きっと、ジュースか何かと間違われて
飲んでしまわれたんですね?」

失礼。

そう一言断ると、コンラートは湯船から上がる。酔った者を、風呂に入れておくのは まずい!

だが、本当に有利はお酒は飲んでいなかった。どちらかというと、コンラートの方が連日飲んでいる
はずだが、ザルの異名を持つ彼は、あれしきの事では、酔ったりはしない。

手早く有利の体をバスタオルでくるむと、自身もさっと水気を取って、着替えを済まそうとして困った?
有利が用意しておいた物なのだろうか?日本の着物というものだろう?

着方がわからないので、それをさっと肩から羽織ると、有利の分は手に持ち、バスタオルに包んだ主を、
そのまま寝室の暖炉の前まで連れて来る。流石に髪が濡れたまま眠っては、かぜをひいてしまう。
優秀な保護者に早代わりしたコンラートは、毛足の長いラグの上に、有利を抱いたまま座り込むと、
手早く別のタオルで髪を拭き始めた。

「ユーリ?」

されるままになっている有利がヤケに大人しいので、顔を覗き込むと、かわいい名付け子は、全身真っ赤
になったまま、百面相をしていた。・・なんだ??これは本格的に酒が回ったかな?

が、先程も述べたように、この少年は一滴たりとも飲んでいないのだ。ただ単、風呂場でコンラートが
顔を近づけたときに

うわぁぁ−−!コンラッドが顔を近づけてきた・・・も・もももしかして?お誘い?つーか、目元が
色っぽいですコンラッドさん!
とか?

脱衣所で、さっと浴衣を羽織るしぐさが

うきゃぁぁ、何かマントを羽織る王子様みてーー!ちょーーカッコイイ!!
とか?

暖炉の前に座って有利の髪を拭くのに超接近している、裸の胸とかに

い・・今すぐ、この肌に食いついたりしてみたら・・どうかなぁ?って、うひょーーおれって、何をぉ!!
とか?

考えていたのが、顔に全部出ていただけであった。(←正直)

しかし、その挙動不信さは、コンラートの勘違いを益々深め、優秀な保護者が手早く用意した
いつものパジャマに着替えさせられると、あっという間にベットに寝かしつけられてしまった。

「あ・・あれ?」

「ユーリ、少量のお酒なら一晩寝れば、抜けますからね?今日はゆっくり寝てください。」

慈愛の笑みで・・でも、絶対に言う事を聞かせる声色で、そういわれて、はた!と有利は自分の
妄想から戻ってきた。

「いい、いや!コンラッドさん!おれってば、酒なんか飲んでないし!」
「ダメですよユーリ。ちゃんと抜かないと、折角の年初めをベットで過ごしたくないでしょう?」
「抜く・・」


『いや、ユーリ抜かないで!』
『コンラッド、このままもう一回していい?・・』
『あ・・ユーリ・・もっと・・』

イイ!゚+。:.゚(b゚д゚*)☆ 年初めをベットで過ごすのサイコー!

ツーーーと、突然生暖かい感触がしたと思ったら?

「あ・・・?」
一歩遅れて口奥に鉄の味が広がった。

「ユーリ!大変だ。鼻血が・・ほら、やっぱり気がついてないだけで、お酒を飲んでいるんですよ!」
すぐに、コンラートの大きなてが、タオルを押し付けてきた。

「いいですか?今日はもう何があっても寝てください!じゃないと、明日もベットに縛り付けますからね!
もちろん、正月だからって浮かれさせませんよ?ちゃんと養生させます!」

がぁぁぁぁん!!

優秀な保護者の顔になったコンラートは、こうなると絶対に譲ってはくれはしない。
今までの経験で重々承知している有利は、泣く泣くベットで寝ることになった。


お・・おれのばかぁぁあ!


年始第一ラウンド・・

結果・・コンラート閣下の色気により、有利陛下の自滅負け



12月30日UP
ちわ〜〜。大晦日から元旦にかけてです。がんばれ有利!まだ、元旦は始まったばかりだ!
初夢編

爽やかな新年の朝は、爽やかな男前によって始まった。

「新年おめでとうございます。ユーリ、朝だよ?」
「むにゃぁ〜、あけましておめでとうございましゅ・・こんらっど?」
「はい?」
「何で羽織袴なの?」

寝ぼけ眼でおきあがってみれば、彼の護衛で・名付け親で・想い人でもあるウェラー卿コンラートは、
白の羽織と着物に、グレーの袴を見事に着付けていた。

「はい、美子さんから届け物でして、着付けの本と共に、部屋に帰ったら、猊下が届けて下さって
いたようです。もちろん、ユーリの着物もあるよ。」
「ほえ?」
「日本のお正月を、満喫するんでしたよね?お休みの間、ご一緒させて下さいね?」

にっこりと爽やかな笑顔で微笑まれて、有利は彼が何を言わんとしているか理解すると、パァァ!っと
顔を輝かせた!つまり彼は、約束どおり有利と3日間を過ごしてくれるらしいのだ!

「だから、コンラッド大好き!」

ひょん!と、飛び起きたユーリが、コンラートの首筋に抱きつく。

そうだ!一晩くらいたいしたことはない!元旦は始まったばかり、そ・れ・に!初夢は、今夜だし!
姫初めは二日の夜だ。今夜コンラッドと一緒に寝て、彼の夢をみて、明日は・・・くふふ!

よっしゃぁぁ−−−!俺にもまだまだチャンスはあるぜぇぇ!!゚+。:.゚(*・`∀・)v ピース♪


一人、ガッツポーズを決める名付け子を、名付け親のほうはさくさくとパジャマを取り去って、襦袢を
着せて足袋をはかせてっと、着々に着付けていく。有利のほうも、思考がどっか明後日の方向に、行って
いた事も有り、自分の格好に気付いたのは、帯が締まる頃だった。

「ねぇ?コンラッド?なんで、俺の着物が女物なの?」

てっきり、コンラートと同じ羽織袴かと思いきや?有利が着せられたのは、黒地に可愛い 桜と白猫の
刺繍が入った小紋だ。帯と飾り襟は色違いの桜色で、帯揚げと帯紐は赤。

「?女物なんですか?でも、これを着せるようにって・・。」
と、いいつつ、コンラートは有利の髪に髪留めをぱちんととめた。

「うん!かわいい!」

何やら、大変!ご満足気な名付け親さん・・・え〜〜と、だからですね?なんで、おれの着物がコレ?


その時、コンコンと扉が叩かれた。コンラートが、素早く扉を開けてむかえたのは、村田大賢者!

「あめおめ〜ことよろ〜!」
「新年おめでとうございます猊下。今年も宜しくお願いいたします。」

チャラら〜〜ンと入ってきた村田は・・・何と着物ドレス!

「って、この着物は貴様の趣味かぁーー!?」
「いやだな〜、これはママさんの趣味だよ。本当は振袖がよかったんだけど、着付けする人間が
初心者だから、あの難しい振袖の帯の絞め方は難しいだろう?だから、小紋にしてみたよ。」
「あ、・・これ小紋って言うんだ〜。」
「ワリと普段着だね。あと、ちょっと出かけるときなんかにいいよね?で、僕は君のとばっちり。」
「え?・・あれ?」
「感謝してよね?付き合いの良い僕に!」

そういうと、スタスタと和室スペースに上がりこむと、コタツの布団をめくった。
そこに丁度、これまた着慣れない軍服姿のヨザックが入ってきた。手には、火起しに入った豆炭の追加分。

「明けましておめでとうございます。陛下に隊長。今年も宜しくお願いしま〜す。」
にこやかに入ってくると、火箸で豆炭を灰の中に数個おいて、灰を少し戻してから、その上にも置いた。

「本当にこれで一日中暖かいんですか?」
「うん、そうだよ。ヨザ、それは暖炉のところにおいて、お餅を焼いてよ!」
「はーい、この竈もどき面白いですね?」
「それは七里って言うんだ。あ。、ウェラー卿は朝食の準備してね。」
「はい猊下、この御節とお雑煮を、おわんによそるんですね?」

村田は幼馴染達に指示を飛ばして、着々に朝飯の準備をしてゆく。それを、半ば呆然と見送る有利。

「何ボ〜としているんだい?君は、こっちに座る。」
言われて、有利はあわてて指定された上座に座った。長方形のコタツの片面に有利が座ると、
その向かいに村田が座る。

「おい村田、どういうつもりだよ。おれはコンラッドと二人っきりで正月を満喫するつもりだったのに!」
コンラートとヨザックに聞こえないように、そっと小声で話しかける。

「だから、協力してあげているんじゃないか?。じゃぁ、聞くけれど?コタツの使い方も満足に
出来ない君に、段取りよく朝食の準備が出来たかい?」
「う・・・!」
「彼の和服姿がみれたのは誰のおかげ?」
「ぐぐ!!」
「大体酔い潰すにしても、お酒に薬を君が混ぜれるのかい?あの、ウェラー卿の目を盗んで?」
「ぬぐぐぐ!」
「ね?僕に任せれば、今日一日、ウェラー卿と正月を満喫しつつ、夜には君の思い通りに・・。」
「なに?マジか!」

「さて、僕に言う事はあるかい?」
にっこりと、村田が小首を傾げて言えば?

「村田大明神様!本日は、ようこそおいでくださいましたぁぁ!」
「うむ、くるしゅうないぞ!はっはっはっはっは!」

魔王陛下が、へこへこ頭を下げたかと思えば、大賢者猊下が高笑いをしている。
その様子を、餅を焼きながらヨザックが首をかしげた。

「なぁ、坊ちゃん達のあれは何だ?」
「さぁ?日本の正月の挨拶かな?」
「へ〜〜そうなんですか?」

なにやら、日本の正月が曲解されてゆく瞬間。



カン!カッ!カツ!かん!カカン!カッ!カッ!

「なぁ〜〜むらたぁ〜?」
「なんだい渋谷?」
「羽つきって・・こんなにすさまじぃ物だったっけ?」
「う〜〜ん、もっと優雅というか・・少なくとも・・」

壁に穴があく競技ではないね・・

そう、先程から、かれこれ15分ほどラリーが続いているのは、幼馴染達による羽つきだ。

最初は、村田が持ち込んだ羽と綺麗に押し絵のついた羽子板に、眞魔国人である彼らの護衛たちは、
関心しきりに見ていただけだった。それから、折角だから、庭に出て羽つきをしようと言う事になり、
まずは見本という事で、有利と村田で、か〜〜ん!こ〜〜ん!と羽を打ち合っていただけだった。

そのうち、麗しい姿の魔王陛下と、大賢者猊下の姿にギャラリーが集まり始め、折角だからと
負けたほうが顔に墨を塗ろうと言う話になった。

そんな二人の顔に墨で黒く塗るなどとは!と、止めたのが護衛の二人。だったら、村田の代打に
ヨザックが、有利の代打にコンラートがやると言う事になった。

そして第一回戦は、慣れない袴と草履に、コンラートが苦戦して、見事ヨザックの勝ち!
コンラートの顔に、猊下が面白がって頬に○を書いた。

よほど悔しいのか?憮然とする顔のコンラートというのが可愛い。もう一回だ!と、食って掛かり、
ヨザックがその顔を真っ黒にしたくなかったらやめろといわれたのが、よほど癇に障ったのだろう?

「よし、次ぎ負けたら、お前のいう事を何でも聞いてやろう!」
そんな事を言い出した。

「だったら、チューの一つもしてくれるのかしら?」
ヨザックとしては、そんな事を言い出せばやめると思ったのだろう?が、予想に反して、コンラートは
それを了承してしまった!さて、こうなると黙っていられないのは有利だ。

ちょーーとまった!と、いうと、着付け用の紐を部屋から持ち出し、コンラートの羽織を脱がすと、
着物の袂を動きやすいように、たすきがけにして括った。それと、コンラートのブーツまで持ち出して、
草履と履き替えさせた。なんとしても、コンラッドの唇は守る!(←陛下趣旨が変わっています)

そして、またもやギャラリーの集まる中庭で2回戦目がはじまり、今度はコンラートが豪快なスマッシュを
決めて勝利を飾った。その際に、とんだ羽が壁に未だにめり込んでいる・・一体、あのスリムな体で
どんな力を出すというのだ!?

そして、有利は墨汁でヨザックの頬に大きく×を書いた。

一勝一敗・・・となれば、当然三回戦だ。今度は、勝った方が負けた方に一つ命令ができると言うもの。
もちろん、この場合、ヨザックとコンラートではなく、有利と村田の間でだ。どうせなら三本勝負で
いこうと言う話になりお互いムキになった幼馴染達は、主そっちのけで羽つき・・というか?
ほぼテニス?というよりも器物破損活動?に乗じた。

一本勝負目は、ヨザックが中庭のオブジェ踏み台にして破壊しつつ、スマッシュを決めて勝利し、
2本勝負目は、中庭を打ちながら駆け抜けるという・・・なんでそんなこと出来んだぁぁ−−!
と、思うような息のあった二人による打ち合いの結果、辛くもコンラートが勝利した。
やはり、着慣れない着物は、コンラートにとって不利である。

「隊長!いい加減観念したら?息・・上がってます・・よっ!っと!」
植え込みを綺麗にジャンプでかわして、ヨザックが打ち返す。その見事な跳躍にギャラリーから
拍手が巻き起こった。

「さすが、お庭番。ヨザック凄いな〜。」
思わず有利も感心して手を叩いた。が・・それが、コンラートの目の端に映った。

≡☆ェ☆≡ギラリ! 獅子が正月早々目覚めた!

「ひぃ!!Σ(T∀T;) 」

つい、条件反射で、ヨザックの体が強張る。思わず打ちそこなった羽は、かこーーん!と噴水のほうに
放物線を描いて飛んでいった。

「いけねっ!しまったぁ!!」

高くがった羽はスマッシュチャンス!コンラートは走ると、噴水の縁に飛び乗って、スマッシュを
すべく飛びあがろうとして

つるり〜〜ん!!

「「「あ・・・」」」

・・・すべった!?



ざっぱーーーんん!!!

派手な水音と共に、コンラートが噴水に突っ込んだ。一瞬何が起こったか解らない様に、呆然と
本水の中に座り込むコンラート。・・と・・いうことは?

「あれ?もしかして、俺の勝ち?」

そう、勝者はグリエ・ヨザックとなった! つまりは?

「あ、僕の勝だね渋谷?」

何してもらおうかなぁ〜?ふふふと、村田さんの眼鏡が光る。

「げっ!!」

思わず後退りをはじめた有利は助けを求めて、コンラートを振り返った。丁度コンラートは水の中から
立ち上がるところで、ポタポタと水滴が落ちる前髪をその大きな手が掻き揚げた。

ほぉぉ〜〜とため息が周囲から沸きおこる。着物の前が肌蹴けて覗く胸元の筋肉。くっきりとした鎖骨と
首筋から項のライン・・・笑みを浮かべている時は爽やかである彼の顔も、負けた悔しさに険を帯びて、
美しくも精悍な青年がそこにいた。

思わず見とれる老若男女・・と、魔王陛下。特に魔王陛下は、夢見るように彼を見つめたまま、
ぽわ〜んと、両手を胸で組んで見とれている。

完全に恋する乙女だ・・。

これで、何で姫初め計画なんて思いつくんだろう?いや、思考からすれば、健全な男子高校生のそれで
あるが、対象がかわいい女の子ではなく、精悍な青年なのだから、真っ当過ぎる思考からずれた方が良く
ないか?と、老婆心ながら、心配してしまう村田猊下であった。

コンラートが、視界に愛しの名付け子を見つけると、フッと苦笑し、いつもの柔らかな笑みを見せる。
それにまた魅せられるギャラリーと魔王陛下。

二人の間に、飛び散るハートが見える・・。ウェラー卿も、あんな幸せそうな顔を見せるのは
ただ一人の癖して、そうして、彼の想いに答えないのだろう? 自分の恋人に言わせれば、それは
彼の育った環境による性格だと言う。

まぁ、迂闊にこたえれば、ヤル気満々な魔王陛下に喰われるは彼なんだから・・そう迂闊にはいけないか?

「・・・あぁ、そうか・・これは使えるな?」
ポツリと呟かれた不穏な台詞。

「うん?」
「何がです?」


二人仲良く台詞まで分けちゃって・・熟年夫婦も裸足で逃げ出すツーカーぶりじゃないの?
「さて、楽しい罰ゲームをしようか?」

きらりん!ヤケに楽しそうな大賢者様に、名付け親子は揃って引きつった!




「あ・・ああああアナタ、はい、お茶デス。」
「ありがとう、ユーリ。」

ギクシャクとコタツに座る旦那様コンラートに、お茶とお菓子を出す若妻ユーリ。

「しっぶやくーん!そんなことで、どもらないでよ〜。(ニヤニヤ)」
「そうですよ、坊ちゃん!どうせなら、お茶にします?みかんいします?それとも、あ・た・し?
くらいいってくださいよぉ〜(ニヤニヤ)」


「いうか、ぼけェーー!」

一同和室に戻ると、コンラートは浴衣にとりあえず着替え、コタツに入った。

そこで、村田から、羽つきで負けた二人への罰ゲームとして提示されたのが・・今の状況だ。

『可愛らしい渋谷の新妻ぶりがみたいな〜僕♥』

そこで、コンラートが夫で有利が幼な妻役で、この3日間新婚ごっこをすることになってしまったのだ!
ちなみに、演出の村田監督は結構うるさい。

「チッチッチ!だめだよ、奥さん。そんながさつな幼な妻がいるかい?もっと可憐にできないのかな?」
「ムラタ・・・なに野球小僧に可憐さなんて求めるんだよ。」
「大丈夫よ坊ちゃん!恋する乙女は充分可憐よん♥グリエ応援しちゃう♥」

誰が乙女だ!<< o(>へ<)o >>ウッキー

「渋谷渋谷?」
「なんだ!」
ぐいっと、村田は有利の顔を、愛する旦那様に向ける。すると・・・ぽっ!と、頬を赤らめると、
もじもじとフリフリエプロンの裾を弄り始めた。

「「充分、乙女だよ(ですよ)」」


さて、充分に二人を弄り倒すと、村田大賢者様は、お供のポチ・・いやヨザックをつれて帰っていった。

「お疲れ様ユーリ。猊下もお帰りになりましたし、もう良いですよ。」
コンラートは、有利の締めているエプロンを外そうと、手を伸ばしたのだが、有利はそれを拒否。
「ダメだぞコンラッド!見てないからってズルしちゃ!ちゃんと、フェアプレイ精神で、
3日間新婚ごっこするぞ!」

こんな所でも、スポ根を出す有利・・まんまと村田の思うつぼなんだが、それが有利の良い所なので、
コンラートは困った。

はっきりいって、幼な妻ユーリはかわいい。

こんなことを3日間もされた日には、自分の理性が焦げ付くほどに・・。

「と、いうわけで、今日はおれが、コンラッドの背中を流すからな!」

ふんぬ!っと、力いっぱい拳を握りしめて何やら誓う有利。

「・・・・お手柔らかにお願いします。」

並々ならぬ決意の彼に、コンラートはそれしかいえなかった。

そして、お風呂タイムも無事終わり(←色々大変だったコンラート氏)、有利念願の
『お布団で枕を並べて』の床入れだ!ただし、自分は妻役だが・・・。

「ユーリ、肩が出ると風邪を引くよ。」
コンラートが掛け布団と毛布を引き上げて、有利が寒くないようにと掛け直してくれる。

「・・・まぁ、いいっか。」
自然にその胸の中へと抱き込まれた有利は、その居心地のよさにうっとりと目を閉じた。
多少、妻という役どころには、不満があるものの。こうして、コンラートと自然にくっついていれる
理由にはなる。多分、あの友人も、それを見越して罰ゲームと称して提案してくれたのだろう。
何だかんだで、村田健は、面倒見の良い少年なのである。

「なんか、いい初夢が見られそう・・。」
「初夢って・・?」
ウトウトとし始める有利の頭上から、コンラートの優しい声が聞こえる。

うにゃ〜、ごくらくぅ〜

「う〜、今日の夜見る夢だよ?夢は、一富士2鷹3なすびが縁起のいいものなんだぞ〜。」
「へ〜有利は物知りですね。」
「えへへ・・・きょうこそ・・・いいゆめ・・みるぞ・・」
「そう・・お休みユーリ・・。」
「う・・おやすみ・・また・・・夢・・で・・な・・。」

「え・・?」

すぅすぅと、健やかな寝息を立て始めた少年の最後の言葉・・。

また、夢で・・それは、初夢に自分のことをみたいと望んでくれたのだろうか?

コンラートは、そっと自分の宝物を抱きしめる。

願わくば・・・彼の夢の中でも、一緒にいられますようにーー





翌朝・・・

「うわぁぁん、コンラッドの馬鹿ぁぁ−−!」

昨日と同じに、コタツ用の豆炭を持ってきた主従がみた物は、ポカポカと夫の胸を叩く幼な妻。

「そんなこと言われましても・・。」
少々困惑気味の夫・コンラートは、妻のをどうにか宥めようとするも、中々怒りは収まらないようで。

「ちょっと、どうしたんだい?有利。」
「あ、村田!聞いてくれよ!コンラッド効果のせいで、初夢がみられなかったんだ!」

コンラッド効果ってなに??

(○'ω'○)What??と、村田とヨザックが揃って首をかしげる??

「だって、コンラッドの胸の中って、硬さが適度で気持ち良いし!匂いもいい匂いがするし、しっかりと
まわった腕が安心感を呼び起こすって言うの?その上、声がまた気持ち良いんだーーぁぁ!!」

「しぶやく〜〜ん・・何が言いたいんだい?」

ノロケなら僕は聞きたくないよ。

「何処がノロケなんだぁー!?おれは文句をいっているんだ!」

文句に聞こえたかいヨザ?
いいえ、ノロケだと思われますが?

「おかげでぐっすり熟睡して!初夢見損なっちゃったんだよぁぁ!!」

もう!コンラッドのバカバカ!!何でアンタの側は、そんなに気持ち良いんだぁぁ〜〜!!
ぽかすか!っと、再び夫に殴りかかる有利。

「のろけだろ?」
「のろけですね?」

付き合いきれないと、ヨザックはさっさとコタツの準備にかかり、村田は七里の上に網を乗せて
朝食の準備をし始めた。


お正月第2ラウンド

結果・旦那様コンラートの包容力に再び負けた、有利の自滅であった・・・・。



なんとはなく、今年一年の二人の様子が見えたな・・・そう思った村田とヨザであった。





2009・1・5UP
元日から2日にかけてのコンユでした。皆さんはいい夢を見れましたか?私は怖い夢でした(TT)