コンラッドを口説こう!






「俺を男にしてくれ!!


折り入って話があると、主が夜、わざわざ自分の部屋まで訪ねてきたので、コンラートはその時から
嫌な予感はしたのだ。この主、名を渋谷有利といい、見目可愛く(男にカワイイ言うなー!BY有利)
性格素直で、優しく、思いやりもあり、しかも名付け子であり、コンラートの一番大事な者である。
が・・一つだけ困った事があり、それはこちらが思いもしない、突拍子もない事をしでかす事で
あった。その度に、彼の護衛であり、この世界での保護者でもあるコンラートが主に被害に遭うのだ
が・・・その度重なる経験が、有利センサーとでも言うのか?それに、ビシバシ何かを訴えてきた。


その主・有利が、非常に可愛らしく、少し頬を染めて、もじもじしている。

あぁ、すっごくカワイイ!可愛いのだが、こういう顔をする有利は、大体とんでもない事を言う
前兆であった。


で、うながしてみれば、冒頭の台詞を、力いっぱい叫んでくれたのであった。


「??ユーリは、充分男前ですよ?」
これは心底本心からの台詞である。いつもなら、その台詞に喜ぶ有利であったが、本日は
その答えが気に入らないようだ。ぷっくぅ〜と膨れてしまった。


「じゃなくてー。」
「??剣術でも教えろってことですか?」
「違う!・・って、あの・・その・・コココ・・コンラッド!」
「はい?」



おれの、ドーテー貰って下さい!!



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「コンラッド?」
有利は、恥ずかしいのを堪えて言い切ったのに、とうの相手から返事どころか、何の反応も返って
来ないのに訝しむと、トテトテと立ち尽くす彼に近づいて行く。
「コンラッドさんや〜い。」
コンラートの前で掌をひらひら〜〜と振ってみる。それに、はっと気付いたコンラート、
どうやらあまりの事に、意識を飛ばしてしまったらしい。

「あぁ、よかった・・で・・あの・・返事は?」

ようやく意識を吹き返したコンラートに、有利は早速、先程の返事を促す、何分二人とも既に寝る前
だけあって、寝巻きに着替えていた。有利としては、このままベットに彼を押し倒したいのだがっ!



やっぱり〜初めては、ちゃんと同意の上でしたいし〜ぃ (〃▽〃)エヘ♪


どうやら、それなりに夢があるらしい。・・・最もやろうとしていることは、80歳以上年上の
名付け親を押し倒そうとしているのだが。コンラートにも、言われた意味は解っていた、
解っていたが解りたくない物もあるのだ。なので、つい、もしかしたら、自分の聞き間違いだと、
有利に確認を取ってしまった。

「・・・・・・・。ユーリ・それは・・・。」
だが、当然、ヤル気満々の有利からは、コンラートが期待した答えが返ってくるわけはナッシング!hey!

「だから、コンラッドで 筆おろし させてください!」


くらり・・・。


「ユーリ・・ユーリは、もしかして?俺を抱きたいの?」

コクン

「えっと、俺男ですよ?」

コクコク

「・・・・・はぁ〜3 それは、夜伽の命令ですか、陛下?」



がーーーーんん!!!Σ(|li゜Д゜ノ)ノ


完全なプライベートな時間に『陛下』と呼ばれ、あまつさえ『命令』と受け取られた事に、有利は
ショックを受けた。


しゅ〜〜〜ん


まるで、叱られた仔犬のように、項垂れた有利に、おや?とコンラートは思う。

「もしかして、命令じゃないの?」

コクン

「なんだ、良かった。」

ん?もしかして?

有利は期待に項垂れた頭をあげた。

「俺には拒否権があるんですねっ♪」
にっこり♥


がぁぁぁぁん!ガ――(TДT|||)――ン


すっかり、床にへたり込んでしまった有利に、コンラートは名付け親として、有利を諭した。



「いいですか?ユーリ。そういうのは、女性とするのです。」

もっともだ・・もっともなんだけど・・ちょっと酷くないかい?コンラートさん?
なので、ついつい、反抗的な態度をとる有利であった。

「知らない女性となんて嫌だ!」
「じゃぁ、彼女作ってください。」
にっこり♥

有利の反撃、あえなく撃墜。しかも、爽やかスマイル付(くっそーー!)


「ムリ!おれはもう、コンラッド一筋だもん!!」(←勢い込む有利)
「はいはい、俺もユーリ一筋ですよ。」(←軽くあしらうコンラッド)

「うわぁぁぁん、むちゃくちゃ軽く言われたぁぁ〜!」
「あはははは、ホントですってばー。」
「その笑顔がうそ臭いー!!」


「まぁ、冗談はさておき。」
「冗談かよっ!アンタの冗談はよくわからねーよ。」
流石に、半泣きの有利。所詮16歳の新米魔王が、100歳過ぎの護衛に叶うワケが無かったのだ。
がっくし・・。

何時までも、床に座らせておくと、身体が冷えてしまうので、コンラートは有利を立たせると、
ベットに腰掛けさせた。

「それで?ユーリは、男性の抱き方は知ってらっしゃるんで?」
ふいに近くなったコンラートの体温に、有利はドギマギしつつも、もしや?ヤラせてくれるのか?
と、期待に胸を膨らまし始めた。

「うん!もちろん!ちゃーんと、グリエちゃんに、教えてもらったよ!」

ピクッ

今度は違う意味で固まったコンラート。ユーリ・・そう問いかけた声も心なし低い。

「まさか、御身を奴ごときに与えたんじゃ?」
「おんみ??・・・・・うわぁ!してませんしてません!!!」
「そうですか、ならいいです。」
「そうだよ!だっておれは!初めてはコンラッドって決めているもん!!」
「あははは、勝手に決めないで下さい。」


ズバッ!!


剣豪は口先も、よく切れるらしい。一層両断にされた有利は、だがしかし、こんなトコでは
めげなかった!相手は、眞魔国一のモテ男ウェラー卿だ!ヨザックにも散々止められたけど、
好きになっちゃったもんは、すきなんだぁぁ!!


「コンラッド!おれの事キライ?」
目元をウルウルさせて、上目遣いで敵を篭絡に掛かった有利。ギュンターなら一発で落ちるのだが、
この時点で有利はコンラートの落とし方を間違えている事に気づいていない。
かりにも、押し倒そうとしている相手に、しかも男性相手に使う手ではあるまい。

「まさか、世界で一番大切な主ですよ。」
「・・・あるじ〜〜〜ぃぃ?」
「あれ、お嫌ですか?」

コクコク

「では、一番大切な名付け子だよ。」
「もう一声!!♪+゚(〃∇〃人)゚.:。+」

「市場で値切っているんじゃないですから・・。」
「もう、恋人で良いじゃん!」
「あははは、名付け親と名付け子で、いいじゃないですか?」
「うにゅ・・コンラッドの意地悪!」
「主を嗜めるのも、臣下の務めですから。」
「また主って言った!」
「じゃぁ、ユーリを窘めるのも、親の務め?」
「こ・・恋人は甘やかす物だぞ!」
「恋人ではないからいいんですよ。」(←さらり)


うるうるうる・・・


コンラッドの意地悪ぅぅ〜〜〜!!!!








「だから、坊ちゃん、隊長は無理だって言ったでしょう?あのヒト口説かれ慣れているから、
坊ちゃんを《あしらう》なんて朝飯前です。」

朝も早くから、わざわざ兵宿舎にある一兵士の一室に、飛び込んできた魔王陛下。
寝ぼけ眼で対応するヨザックは、ほとほと困り顔だ。

あれだけ止めたのに、どうやら昨晩、この魔王は、御自分の護衛兼保護者に、一夜の契りを頼んで
すげなく断られてしまったらしい。

それはそうだ、コンラートは細身でしなやかな体つきをしているとはいえ、立派な軍人でしかも、
国一番の剣豪なのである。それに対して、絶大な魔力を持つとはいえ、この少年は、彼に比べたら
華奢としか言いようがない。それに、押し倒されるようでは、魔王の護衛など勤まるわけもナイの
だが・・・。

「だってだって、おれはコンラッドがいいの〜!」

ここまで、すっぱりと断るとは思わなかった。

あのっ!有利至上主義のコンラートである。もしかしたら、この少年の頼みなら、身体くらい
差し出すのではと、ちょーーっと、期待してみたヨザックだった。

「じゃぁ、夜伽の命令出して下さいよ、そうすればコンラッドだって断りませんから。」
「いや!そんな無理やりはダメ!」
とりあえず、妥協案を出すが、すげなくお断りされた。

「じゃぁ、諦めなさいって・・。」
「うわぁぁん、そんなのできたら、最初から口説きません。」
そりゃそうだ・・。


「はぁ、もうこうなったら、口説き続けるしかないですね。」
「・・・よざっく?」
「だってそうでしょう?諦められないなら、口説きまくってものにするしかないですよ。じゃないと
・・あのヒト、老若男女にもてますから・・・陛下の知らない所で、誰かに押し倒されて・・・。」

「ぎゃぁぁ、だめーー!コンラッドを押し倒すのは、おれなのぉーーー!!!」


どどどどどどどど!!!!


勢い良く立ち上がると、走り出した魔王陛下。この分だと、朝食の席に飛び込むのだろう。
そこで巻き起こされる騒動を思って、にんっまりとするヨザックだった。


散々、有利の相談で振り回されたのだ。少しくらい、コンラートにも、はたまた、有利自身にも
こっちの受けた被害分は苦労して貰はなくては。

なにせ、何だかんだであの二人は相思相愛なのだ。有利が、コンラートを抱くという事に拘らなけ
れば、すぐにでもくっつくだろう。つまり、有利が抱かれるほうに回れば・・。


「絶対に、その場で喰うよな、隊長だもんね〜〜ぇ。」
でも、すぐにくっつけるのも癪だわね〜?と、独り身の我が身を思って、しばし考える。


「そうだ!猊下に報告してこよっと!きっと、眞王廟でお退屈されているから、喜ぶわん!」
くねくねとシナを作ると、早速愛しの大賢者の元へと向かった。

きっと、ヨザックの想い人の彼の少年なら、面白おかしく引っ掻き回して、くれるに違いない。
そして、その情報を持ってきたヨザックの好感度も上がるだろう。



うっふっふ〜


ヨザックは、いそいそと身支度を整えると、これからの面白おかしい毎日を想像して、浮きだつ足で
眞王廟へと向かったのであった。




10月4日UP
朝から急いで書きました。サイト開設半年記念(?)に、たまには、迫る有利にかわす
コンラートでお送りしました!きっと、この後、コンラートに迫りまくる陛下と、
それを見事にかわす次男、嫉妬に燃える三男、苦労を背負い込む長男の騒がしい朝食が
繰り広げられるでしょう。(●'д'●)b