現代パラレルコンユSS






うわ〜〜んうわ〜〜ん。小さな女の子が泣いている。あぁ、これは夢だ・・。昔の・・。

「ごめんなさい、ごめんなさい!」

必死に誰かに謝っている紺色のエプロンドレスの小さな女の子。・・あれは、ニューヨークにいた頃、
4つの頃の俺だ。あぁ、そういえばあの頃って、お袋に、ドレスを着せられてたっけ?

泣くじゃくる俺の下には、少年がいた。というより、俺が下敷きにしているのか?自分たちの周辺には、
散乱するお菓子や、お皿や割れたコップに倒れた椅子?それらから守るように、俺を自分の身体の上で
抱きしめてくれた人。誰だ?丁度、勝利くらいの男の子?でも違う、兄貴じゃない。

『大丈夫だったユーリ?どこも、怪我はない?』
『ひっく・・う・・うん・・ゆーちゃんは大丈夫・・でもぉ・・ひっく!・・ゆーちゃんかばって
・・・・     の・・お目々から血が・・ひっく・・ふぇ・・・うわ〜〜ん!』
『泣かないでユーリ。ユーリが無事ならそれでいいんだよ?』

少年の右目の上には、ざっくり切れて、鮮やかな鮮血が顔半分を染めていた。
それでも、泣きじゃくる俺を優しくいたわってくれた少年。
優しく俺を包む声・・・誰だっけ?あの頃何度も遊んでもらったんだ。俺は彼が大好きで、勝利と
俺と他に数人の子供たちと一緒に遊んだっけ・・・・アレは・・アノヒトは・・・ダレ?





「綺麗なお姉さん、Aランチ大盛りでよろしく〜。」
渋谷勝利が学食のおばちゃんに、そう愛想よく注文すると、ケラケラと笑って、いい男にはおまけよ〜と
いってご飯のほかに、おかずまで大盛りにしてもらった。だから好きだよ、ここのおばさまは〜♪

大盛りランチをのせたトレーを持って空いている席に着くと、ざわざわとざわめく構内。
今日はやけに学食が騒がしいと、視線を上げれば、入り口から入ってきたのは、端正な面差しの留学生と
思われる長身の男。原因はあの男か?ソワソワと、女子学生ばかりか、講師連中までがその男に熱い視線を
送っている。大学にでもなると留学生など珍しくはないが、その男は異彩を放っていた。

何せ、ハリウッドでも通用するようないい男なうえに、少し陰のある眼差し、ちょっと人を寄せ付けない
空気を出してはいるが、それでもアレだけの美形。女が放っておいてくれるわけがなく、今も自分に
自信がありげな女が近づいていく。
おーおー、勇気のあることで。しかしというか、やはりというか、相手にはしてもらえなかったらしい、
見事なまでの無視をされ、女は怒って文句を言い始めた。すると、もう一人長身のがたいの良い留学生が現れる。

「あっれ〜騒がしいと思ったら、またアンタか。おねえさん、コイツは無理だよ。なんたって、
可愛い想い人がいるんだから。」
にっかりと笑う人好きのする笑顔に、女も毒気が抜かれたらしい。そういうことならと、学食を
出て行った。

『ヨザ、お前、余計な事を。』
『だって、本当のことだろう。初恋のあの子。忘れられなくて、日本に留学までしちゃって〜。いくら
日本がアメリカに比べて狭いからって、そううまく見つかりはしないって言うの。』
『そんなの解っている。』
憮然とする男に、ヨザックは、ケラケラと笑ってみせた。完全に面白がっている。
それに軽く足を踏んでやると、いったーい!折角助けてやったのに〜と盛大に文句を言うのを
綺麗に無視してやった。


『でも、ま・・もし会えたら・・それは運命かもな・・。』






どうやら、騒ぎは収まったらしい。やっと落ち着いて食べれそうだ・・・しかし、俺の脳みそに
何かがひっかった。なんだ?
それにしても、後から来たほうの男は、珍しい髪の色だ。夕焼けというかオレンジというか変わった金髪だな〜。
二人が二つ向うのテーブルについたので、何気はなしに目に入る。茶髪の青年はこちらに背を向けているが、
向かい合う形に座った派手な髪の男の顔は、よく見えた。おれんじ・・おれんじ・・・・・アレ?

何かを思い出しそうなときに、携帯がなった。着信を見ると弟の有利だ。今日は午後からの講義で
提出するレポートをわすれてしまい、丁度休みで家にいる弟に食事をおごる約束で、持ってきてもらったのだ。
もちろんおごるのは、安くてうまい、ここの学食だ。
「もしもし、ゆーちゃんか?今どこだ?ああ、わかった、そこから右に200メートル行った建物の一階の
学食にいるから。俺が喰い終わらないうちに来い。じゃないと、おごらないぞ。」

電話の向うから、なにやら騒いでいる声がするが無視してきる。5分と立たないうちに、Tシャツにハーフ
パンツというラフないでたちで、弟が学食入り口に現れた。昼食の時間から少しずれていたので、人はそんなに
いないので、すぐに手を振る俺に気づいたらしい。ちょっぴり膨れ面で俺のとこまでくる。

ゆーちゃん、その顔は可愛いだけだって。

今時珍しいサラサラの黒髪、大きな黒い目、その辺の女よりも可愛いんだから気をつけろって言うの。

「勝利!はい、これ。まったく、大事なレポートなんだろう?忘れるなよ。」
そういって、かばんを渡す。勝利は、中身を確認すると、サンキューといって、頭を撫でる。
「うわー馬鹿勝利!頭ぐしゃぐしゃにするなよ。それより、俺腹ペコ〜。」
えさをねだる雛のような顔に、おもわず頬が緩む。なんでも、お兄ちゃんに言いなさい!
それじゃ同じものに、デザートも!と、元気よく答えた弟のために、勝利はランチをとりにいった。


座って待っているようにと言われ、有利は勝利の隣の席に座った。大学なんて、珍しいのでついきょろきょろと
周りを見回してしまう。すると、正面に、目立つ二人連れのいかにも欧米人ですって、感じの青年が視界に
入った。やけに派手な髪の男の腕を見て、有利はおどろいた!うわ!何あの上腕ニ頭筋は!うらやまし〜ぃ!
どんなトレーニングしていたらあんな筋肉がつくんだ?聞きたいっ!!でも、英語なんて話せないし!
悲しいかな・・帰国子女である有利は、小さい時は話していたらしいが、長じるとすっかり忘れてしまったようだ。

・・・むずむず
でも、鍛えれるものなら、おれも鍛えて筋肉欲しい〜!!
え〜〜い、男は度胸だ!
我慢できなくなった有利は、席を立つと青年達の横に立った。

「あの!すみません、その・・・えっと・・。」
「おや、可愛い子だね〜、俺に用っすか?」
派手な金髪男は、人好きのする笑顔でこちらを向いてくれた。一部、気になる単語が合ったがいい。
どうやら日本語は、話せるらしい。ほっとした有利は、勢い込んで思い切って聞いてみた。


「あのっ!どうやったら、そんな上腕二頭筋になれるんですかっ!?」

「・・・へ?」
呆気に取られている男を尻目に、近くで見た立派な筋肉に、有利のほうは釘付けだ!
「トレーニングは、なにをしてるんですか?うわ〜〜!!すげ〜〜胸筋とか大腿筋とかもしっかりしている、
やっぱ、食い物の差かな?人種の差だったらどうしよう?いいな〜〜、俺も筋肉欲しいな〜。」

心底うらやましそうな有利に、耐え切れずに向かい合って座った茶髪の青年が爆笑した。腹を抱えて笑う青年に、
さすがの有利もむっときた。それにきづいて、ごめんねと軽く謝罪されるも、その震える肩がうらめしい。
じーとにらむと、笑い終えた青年の目と目が合う。きれいな薄茶に煌めく銀の星・・・。なんだろう、今何かを
思い出した。右目の上に、残る傷跡・・・この傷は・・・。

脳裏に浮かぶのは、今朝、見た夢・・・・自分を庇って、怪我を負わせたてしまった、優しい少年。

無意識に、有利は動いた。すっと伸ばした手が、痛ましげな傷に触れる・・・。すると、するりと有利の口から
一つの名前が飛び出た。

「コンラッド?」

青年の目が大きく開かれた。震える唇が、まさかと動いた。



もし出会えたら・・・きっとそれは運命。








5月25日拍手用  8月22日SSに収納
コンユパラレルです。こんな感じの再会というか、出会いがあったらどうですか?
という、SSです。俗に言うボツ作品なんですが、何故かこれは反響の良かった作品です。
拍手から取り下げたら忘れていました・・・。えへ・・。