落ちて恋
我が子は小悪魔ちゃん♥





ふぁ〜〜と、執務室のソファーで、妻が欠伸をしている。
「コンラッド、眠いならそこで横になっちゃいな。」
「すいません、ユーリ・・なんだか、赤ちゃんが出来てから眠くて・・。」
そういいつつ、あふ・・と小さくあくびする。
コンラートの変りに有利の護衛に付いたヴォルフラムが、すかさずクッションを数個差し出す。

「大丈夫なのか?もしかして疲れているんじゃ?」
「有難う・・ちがうんだ・・妊娠すると眠くなるものらしい・・。」
コンラートは、クッションに埋もれるように横になると、ふにゃ〜と、そのまま眠りに付く。
軍人として何時もキビキビしていた兄しか記憶になかったヴォルフラムは、その変わりように
心配気だ。グウェンダルも、引き出しから手編みのひざ掛けを取り出すと、そっと眠って
しまった弟にかけてやる。


「そう心配しなくてもいいよ。赤ちゃんが出来ると身体のホルモンバランスが変わるんだよ。
それで眠気が出てくる人が多いんだ。」

そう言ったのは、4000年分の記憶を持つ男、大賢者村田健。4000年分の中には、女性だった記憶も
出産の記憶もあるし、2代前はフランス人医師だったというので、医学的な知識も豊富である。
おかげで、男同士で妊娠出産の相談が出来るということで、コンラートの心強い味方となっている。


「ほるもん?」
「何て言えば良いかな?体内調節物質?えーと、ウェラー卿の場合。妊娠した事で、体が妊娠に
適した身体に変わろうとしているんだよ。それも短期間で激変するわけだから、それに慣らそう
と体が自身を調節しようと働くわけだ。そうやって分泌される物質の中に、睡眠を誘発する物質が
入っていて、眠くなるというわけさ。」

「つまり、体が激変する負担を減らそうとして、眠りを誘っている?ということですか?」
「う〜〜ん、そんな感じかな?」
ギュンターが、村田の説明をかなり噛み砕いていうのを、村田も曖昧に答える。癒しの手の一族が
いるせいか?医学はあまり発達していない。そこに、、地球の最先端医学知識を説明するというのは
かなり難しいのだ。なのでいつも、そんな感じ〜〜程度に理解してくれたら良いという感じだ。

マァ、同じく地球出身の有利も??マークをとばしているので、そんなものだ。

「つまり、そういう事も有るって程度に覚えておいて。眠そうにしていたら無理をさせず眠らせて
あげれば良いよ。人それぞれだけど、初期で終る人もいれば、後期に入っても眠い人もいるし、
ウェラー卿は、5ヶ月で中期だしもう終るかもね。」

「わかりました、猊下。」


その時、ピクリ・・とコンラートが動くと、ぽけ〜〜と目を覚ました。
「起きたのか?コンラッド?」
有利が声をかけても、ボケらっとして、小首を傾げるとお腹に手をやった。
「??」
コンラートはお腹を押さえて、不思議そうにしている。

「おなか?おなかがどうかしたのか??」
有利が机から飛び出ると、ソファーのそばまで駆け寄る。

「いえ・・なんか・・すごく下のほうでニョコニョコっと・・したような?」

「「「ニョコニョコ??」」」

「??・・・・いえ・・なんでもありません?」


ぽふん、とクッションに埋まると、再びスヤスヤと眠ってしまった。




その次の日。

「あれ?」

ベランダでいつものメンバーでお茶をしている時、再び、お腹を押さえて不思議そうなコンラート?
「・・お腹の中に骨魚どん(稚魚)がいる?」

「はぁっ?」


骨魚どんって??あの金魚みたいな奴??

みんな揃って、??マークを飛ばしていると、渦中のコンラートが何かを思い当たったらしく。

パァァッ!っと、嬉しそうな顔をした。

「ユーリ!!」
がばっと、隣に座る夫に抱きつくと、でれれっとするユーリ。
「コンラッド、も〜人前で大胆だな〜
「たいどう!」
「大道?」
「赤ちゃんの胎動!今、動いたんです!」
「あぁ、その胎動・・って!えぇ!マジ?赤ちゃんが動いた?」


有利はすぐにピッタリと、お腹に耳をつけた。


「有利、そんなに度々は動きませんよ。俺だってまだ良くわからないんですから。」
「ちぇ〜。」
「昨日から、お腹の下のほうで、ムミュっていうか、ニョコっていうかポコっていうか?
そんな感じが有ったんですが、胎動だとは思わなくて・・。」


「「「ムニュ・ニョコ・ポコ?」」」


なんかビミョーな表現だなと、そこにいた全員が思ったが、感動している夫婦に水を差すのもなん
だと思って黙っていたのだった。


「えぇっと、ずっと下のお腹の中空気がポコってうごくというか、今のは昨日のより元気で小魚が
尾っぽを振った感じ?」

「あぁ、だから骨魚どん(稚魚)・・。」

その表現も微妙だな〜と思った面々・・だが感動している(以下略)・・。


「まぁ、5ヶ月の赤ちゃんって言ったら20センチ位だしね。そんなに力強く蹴るわけないし、これから
一気に大きくなるから、そしたら外からでもわかるようになるし、お楽しみは、それからじゃない?」

さすが、過去の自分で出産経験のある大賢者様。なるほど〜と、魔王夫妻のみならず一同が感心
している。コンラートなど先輩ママを見る目でキラっキラっと見ている。

「いや、ウェラー卿・・僕自体は生んでないから!そんなキラキラした目で見ないでくれる?」
流石に居心地悪そうに、村田も首をすくめる。

「一応僕、男なんだからね〜。」
「猊下、俺も男ですが・。」
「だったね〜、あはは。あ、それにしても凄いね〜。普通初産だと胎動に気付くのって、18から
21週位なんだけど経産婦並みの16週で気付くなんて、やっぱり剣豪のウェラー卿だから感覚が
鋭いのかな〜?」

明らかな話題転換だったが、コンラートはそうなんですか?と話に乗ってくる。
「そうそう、案外、渋谷に似た元気な子だったりしてねっ!」
「ユーリ似ですかっ!」
しかも、予想以上に食いついてきた!あれれ・・??
「え?うん、胎児もけっこう個性有るし・・お腹の中で元気な子は、生まれてからも寝相も元気
だとかあるよ。あと、出産間近なのに寝ていたりする子だとか、そんな子はおっとりだとか、
お風呂から出ようとすると、もっと入りたいって蹴る子だとか、食事の時によく動くとか・・・。」

「そういえば、ツェリ様がヴォルフのときはつわりが酷かったとか、ちょっと大変だったって
いっていたな〜。」

一同、彼の寝相を思い浮かべて納得!

「なんだと!だったら、ユーリの子だからな。きっとご飯の時は催促して動くぞ。」
「大丈夫だ!半分はコンラッドの遺伝子だから、きっと上品に育つからっ!」
「え〜、俺としては、ユーリ似の元気いっぱいな子がほしいな
「え〜、おれはコンラッド似の優しい子がいいな


いちゃいちゃ!♥♥♥


ムカッときたプーの反撃だったが、そこから魔王夫妻のノロケに変わってしまい
やれやれ〜と、皆は仕事に戻っていった。もう、つきあってられるか!ということだ。


さて、大賢者の言うとおり、それからというもの、日に日に胎動はしっかり感じられるようになり、
特に寝ている時は、よく動くようだった。

何でも赤ちゃんは、母体が動いている昼間は、ゆりかご効果でよく眠り、夜母体が活動を停止すると
起きて動くから?らしい。我が子ながら、よく動く子だと、有利は思った・・動くことはいい・・元気
なんだから・・だけど・・。


「あん

隣で眠っているコンラートのお腹の中で我が子がくるりと出も動いたのだろう。くすぐったそうに
ピクンっ!と跳ねた身体。そして

「・・ンン?・ァ・・・」

アンタ!なんでそんなに色っぽい声出すんだよぁぁ!!


コンラートの妊娠発覚後!酷い悪阻と本人の希望で、まったく夜の生活を止められている有利には、
毎夜胎動が有る度に、悩ましい寝言を言う妻は、自分を煽っているのか!と、泣きたくなるので
あった。


たのむ、わが子よ!お父さんを煽らすようなマネはやめてぇぇ〜〜!


「やん・・くすぐ・・た・・ンン・・」


寝ながらクスクス笑うコンラートに、再び有利の中心に血液が集まり始める。同時にムクムクと
目の前に無防備に横たわる肢体を貪りたい衝動が起こる。



いっそ、襲っちゃおうか?


「いやまて、渋谷有利原宿フーリ!って、フーリって何だよ!・・いやはや、自己ツッコミしている
場合ではないぞ!そもそも、コンラッドのお腹の中には愛の結晶である、俺とコンラッドの子供が
いるんだぞ。只でさえ、超高齢出産なんだ!(魔族では若い方です!BY妻)つーか、100歳って地球
だったらギネスにのれるな?」


うわ〜〜ん、話がずれた!そうそう、超高齢出産(だから、俺は魔族では若造なんです!!BY 妻)
のうえに、多分魔族史上初の男の出産!身体に負担が掛かりまくりなんだ。そこへ、俺が襲っちゃ
ったら・・折角授かった子供に何か有ったら・・そう、そうだよな!俺だって父親になるんだ。
よし!ここは、がまん


「ゥ・・ン やん


だぁぁぁ!!!てめーー!わが子よ!子供だからって甘えてんじゃネーーぞ!
お父さんの息子さんが元気に、お勃ちあそばしているじゃないかっ!!



有利さん、まだ見ぬわが子にプチ?切れ中。

なんてこった、まだ生まれる前から、男を手玉に取るなんて(?)さすが、愛の狩人ツェツィーリエ
様の孫娘だ!・・いや、コンラッドの遺伝子だしな・・案外男かも・・こわっ!無自覚フェロモンで
次々に男を陥落させる魔少年!いやぁぁ!俺はどうやって、この子を野郎どもから守ればいいんだぁっっ!?


何やら、性別もわかっていないわが子の事で悩む有利。

でも、確かなことが一つだけわかった・・確信もって有利は呟く。

「うちの子は小悪魔だ。」


その後も、小悪魔なわが子の悪戯か?悩ましい声が上がる度に、喰いつきたくなるのを、
天使の寝顔で眠る妻を見ては、必死に自制心を呼び戻し・・また納まったかという時に、
お腹で動く小悪魔に

「・・アァ・・」

とか、コンラートが色っぽい声を上げるものだから・・有利は欲望と理性のハザマを行ったり
来たりする羽目となった、。
結局、安らかに眠る天使の寝顔の妻と、時折悪戯を仕掛ける小悪魔なわが子に、魔王陛下は
悶々・ぐるぐるしつつ、見事朝を迎えましたトサ。



めでたしめでたし・・?





9月15日UP
元ネタ・花菜さま  ということで、花菜さんに捧げる 胎動ネタです。妊婦に関しては
ネットで調べましたが、あまり信じないように!!詳しくは、お近くの経産婦に聞いてね!