落ちて恋 3
2番目の贈り物





さて、すっかり悪阻も治ったある日、地球に帰っていた夫が分厚い本を持って帰ってきた。

「ユーリ?それは??」
「あぁ、これ?命名辞典だよ。赤ちゃんに付けるな名前の本なんだ。親父達が買ってきていたのを
奪ってきたんだ〜♪」
「勝馬たちが?」
「あぁ、なぜか勝利まで、おれ達の子供の名前を考えているんだぜ、おれ達の子供はおれ達で
つけるからいいの!って、怒って取り上げてきたんだ〜。」
「名前か・・そういえば、考えないとね?」
「うん、おれも名前では苦労した口だから〜、アンタが折角、いい名前付けてくれたのに、親父が
変な漢字つけるから!渋谷有利、じゃぁ、原宿は不利なのか?って・・推定5万回は聞いたよね・・。」
「あははは^^;」


では早速と・・。二人は顔を突き合わせて、(もっともコンラートには漢字は読めないので、有利が
読み聞かせた。)本を読み始めた。

「えっと、男の子で1位が大翔でヒロト。女の子が陽菜と書いてヒナちゃんか〜。」
「大きく翔ぶに、太陽の菜ですか?日本人は、ロマンチストですね?」
「でも、最近めちゃくちゃに読ませる親とかいて、大変なんだぞ。変わった漢字や名前を付けられると
周りが読めなくて、コンプレックスになったり、小学生が書けない様な漢字使って、苦労させたりとか
親のほうも出産後でハイになっている状態でつけちゃって後悔するとかね〜。うーん、でもこっちで
生活するなら、こっちの名前のほうがいいかな?」
「でも、日本名も欲しいですよね?どうせなら、ミドルネームにして、二つ付けます?」
「うん、そうだな!おれ達の子供だしな、こっちと向うの名前が有ってもいいよな!」
「何個か考えておいて、生まれてからその子にあわせて絞り込みましょうか?」
「だな、アンタの遺伝子だから大丈夫だと思うけど、名前負けだっていって、悩んでいたクラス
メイトもいたしな・・。」

あっさり過ぎても、凝っていても、あまりたいそうな何前を付けられても、子供は苦労するのだ。
そう考えると、名づけって大変だ。

「でも、こうやって悩むのはいいですね。それだけ、この子の名前には愛情が含まれるのですし。」
ふふふと、嬉しそうにコンラートが笑ってお腹をなでた。
「だよな、なにせ、うちは愛情だけは自信が有りますから!グレタもすくすく育っているし。」
「そうそう、グレタの意見も聞きたいな〜。早速、鳩を飛ばしましょうよ。」
「だな、どうせなら、三人でつけたいしね?」
「ですね!」


さて、そうして鳩が飛ばされたわけだが・・・3日後、カヴァルケードから何故か鳩が10羽もとんできた。
何事だと思うと、グレタ作の名前の一覧だった。どうやら、手紙を受け取った先で、丁度ベアトリスも
いたらしく、そこからヒスクライフへと波及し、学校の級友などから自国の素晴しい由来ある名前などが
グレタの下に集まったもようだ。

「凄い量・・あははは。」
「鳩10羽ぶんですからね・・。」

しかし、運が悪いことに、この鳩を受け取ったのが執務室であり・・これを聞きつけた王佐が騒ぎ
始めてしまった。

「陛下とコンラートの子供、即ちこの眞魔国の王子か王女殿下に、他国の名前を付けろとは!
なんですか、この名前は、これは西の国の初代国王の名前ではないですか、たった200年そこらの国の
名前なんぞ付けれますか!えぇ、こうなったらわたくしが、すばらしい眞魔国の名前をつけてごらんにいれます!」
と、汁を飛ばして図書室に走っていった。きっと、文献を紐解いて、長ったらしくも美辞麗句ののついた名前
など考え出すのだろう・・。  おーい、ちょっとまてー、それより仕事してくれよ〜。


「まて、コンラート兄上の子供といえば、僕の甥か姪だぞ?何でギュンターがつけるんだ!
こうなったら、僕が麗しい名前をを考えてやる。いいか、へなちょこどもめ、ギュンターのつける
名前なんぞ採用してはだめだぞ!」
と、靴音荒くでていった・・おい・・なんでヴォルフまで。


「私としては、可愛らしい名前のほうが・・・。」
ボソッと聞こえた方を見れば、少し頬を紅くしたグウェンダルがいた。・・・・・・まさか・あんたまで?



しかし、騒ぎはここで収まらなかった。ギュンターが城の廊下を騒ぎながら走って行った為、この事が
知れ渡り、我も我もと皆が、王子または王女殿下の名前を考え始めてしまった。

ついには、眞日が特集を組むに到って、国中が命名にハマってしまった。


「どうする、コンラッド?」
「どうしましょうか?」

国中から届いた名前候補の手紙に埋めつくされた執務室では、魔王と王配殿下がそろって
うず高く積まれたその山を眺めて途方にくれていた。

そこに。やぁ!といって現れたのは、村田ダイケンジャーとヨザックと仲間のマッチョなお庭番の皆さんだ。

「さぁ、撤収だ!」
村田の掛け声と共に、マッチョによって名前の候補たちは取り払われた。どうするのかと聞くと、一応
集計などするらしいが、君たちは気にしないで良いよと言われた。

「だって、子供の名前は、親が決めるものだろう?君達が将来子供が後悔するような名前をつける
というなら止めるけど?ほら、名前は子供が受け取るべき親からの2番目の贈り物だろう?だから
皆、大切にするわけだしね。」
「2番目?一番目だろう?」
「一番目は、自分自身さ。親から貰った体と命、一番大切にすべき贈り物さ。」

「猊下・・。」
「村田・・お前・・。」


じーんと、感動する国王夫妻だったが・・・。

でも、参考にする分には、人の意見も取り入れてもいいよ〜。

そういって、村田に渡された一枚の紙を見て、その感動もどこかに行ってしまった!
そこに書かれていたのは、女の子の名前の一覧だった!何で女の子限定?しかも20個ほど有るし!
見れば、萌(モエ)ちゃんとか、村田の趣味を表す内容だった!

「あの野郎、自分の考えた名前を候補を入れるために、手紙を没収していきやがったな・・(−−)」
「・・・みたいですね^^;」
「さてと・・・。」
有利は、大きな紙を取り出すと、どこからか筆を出し、そこに力強い字で、なにやら書き始めた。
「これでOK?」
「ぷっ!そうですね。」

有利は、そのまま扉を開けると、廊下に出て、ぺたりと、その紙を貼り付けた。扉一面に張られた
其の紙には、こう書かれていた。


『わたくし達、渋谷有利とウェラー卿コンラートの子供の名前は、
自分達でつけるので、ほっておけ!』



さすがに、これを見た側近をはじめとする城の者達は、黙るしかなかった。
どう考えても、有利たちの主張のほうが正しいのだから、しかしあきらめ切れない一部の者(某王佐)が
参考にだけでもと渡された紙は、やはり長ったらしい名前で・・。


「コンラッド、たまには動かないとダメだよね?」
といって、魔王陛下が ぽーい と紙を王配殿下に投げれば、
「はい、ユーリ。」
と、スッパッとこの国最高峰と謳われた剣技で、紙ふぶきを化した。大喜びでユーリが手を叩くと
お粗末さまです、といって、コンラートが照れる。ほのぼのとした国王夫妻と反対に、2週間不眠不休で作った
リストを粉々にされて真っ白に燃え尽きた王佐がいたという。



コンラートのお腹に、子供が宿って5ヶ月。ベビーパニックは、まだまだ続く様子を見せていた。






9月10日
これにて一件落着〜。このシリーズは一応此処までです。元々プレゼント用に書いたので本編と関りないですが
妊夫コンというのも面白かったです。また、ネタを拾えたら増えるかもしれません。
って、拾ってくる先は、某次男サイトの妊婦さんのところなんです、だってBLOGが面白いのよーー!
ついつい、創作意欲を刺激されてしまって、妊婦三部作が出来てしまいました!

えっと、コンユの皆さん笑って許してね( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄(ェ) ̄ ̄ ̄ ̄ ̄;;)