落ちて恋 マタニティーブルー? |
祝!ウェラー卿御懐妊!毒女の魔の手が王后に迫る! と、祝っているんだか?恐怖しているのだかわからない号外が眞魔国を狂喜の渦へと駆り立てた。 毒女アニシナの毒を盛られたコンラートが、男の身で妊娠したのが発覚した。 誰もが、男同士のカップルに、子宝が恵まれるとは思っていなかっただけに、早くも眞魔国では 赤ちゃんフィーバーが巻き起こっていた。まだ生まれていないのに、魔王饅頭に変わり新商品、 ロイヤルファミリー饅頭が飛ぶように売れていた。箱の中は、大きな饅頭に、魔王と王配殿下の 顔が描かれていて、それに小さな饅頭が二つ付いていた王女グレタと品のよさ気な赤ちゃんだ。 また、早速!『生まれるのはどっちだ?王子?王女?』トトとが始まり・・眉間に皺のよった 御大が『まったく、この国の連中は、真っ先にすることがそれか?平和ボケしおって。』と、苦言を したとかしないとか?、もっとも、その御大の手元には、かぎ針が握れらていて、生まれてくる 赤ちゃんの為の洋服などが急ピッチで編まれているので、他人の事をとやかく言えないのだが・・^^; で・・・その、懐妊したコンラートはというと・・・つわりで身体がだるく、なおかつ食べ物があまり 摂取できない状態が続いていた。しかも、男なのに懐妊とういうショックもあって、情緒不安定 の様子だ。そこに・・。 「おめでとう、コンラート!さすが、あたくしの息子ね〜♪赤ちゃんができるなんて、やっぱり、 アニシナは頼りになわ〜、うふふ!」 と、毒を盛るだけ盛って、自由恋愛旅行にさっさと逃げていった母親(元凶)が帰ってきた! 「・・・・。(怒)」 思わずベットの中から、恨みがましい目線で短剣を飛ばしたとしても、仕方がないというものだろう。 今、自分は、この目の前の母親の我が儘のせいで、男なのに妊娠なんてものをさせられたのだ。 怒って当然、しかも主治医のギーゼラに、ストレスを溜め込んではいけないといわれているし、そうだ どんどん発散せねば! 三分と経たずに、上王陛下は2番目の息子の寝室から飛び出してきた。ところどころ、ドレスが 切り裂かれているのは、避け切れなかった短剣のせいだ。 「くすんくすん、あの子ったら、結婚した途端、性格が変わったわ。」 「いや、今回は、母上が悪いんですから仕方ありませんね。」 さらりと言ってのけたのは、末の息子。つい最近までは、母親べったりだったのだが、息子に子供を 産ませるなんて発想をする母親に、心底呆れたという心情もあって、声は冷たかった。なにせ、次は我が身 かもしれないのだ。何時自分も、この母親に薬を盛られて、同じ目に合うか解らないと思えば、この対応も 頷けると言うもんだ。 「母上、コンラートは重い悪阻で、苦しい時期なのです。ですから、あまり刺激をしないで頂きたい。」 「でも〜、グウェン。あたくしだって、子供を三人産んでいるのよ?あの子の力になれるとおもって、 帰ってきたのに〜。」 「現段階では、ストレス発散に短剣が飛んでくるだけです。あまり、『妊夫』を興奮させないで頂きたい。」 長男も、そっけない。自分の方は、あのアニシナと結婚させられそうになっていたと知って、こちらも怒って いた。おかげで、コンラートの妊娠が発覚するまで、アニシナはカーベルニコフに篭ってまったく顔を見せな かったのだ。で、帰ってきたかとおもえば、実験実験また実験で、グウェンダルは酷使させ続けて死ぬ思 いだった・・。生きている自分を褒めてあげたい・・。切実にそう思ったグウェンダルだった。 さて、そんな中で唯一、ツェツィーリエを大歓迎してくれたのが、現魔王であり、コンラートの夫である ユーリ陛下だ。 「おかえりなさい、ツェリ様!おかげさまで、コンラッドに子供が出来たんですよ〜。まだ、 性別は判りませんが・・あぁそうだ、コンラッドにはあいましたか・褒めてあげて下さいね!」 太陽そのものの笑顔で迎えられて、ツェリは思わず有利に抱きついた。そして、切々と息子三人の 様子を訴えると、これまでのあらましを聞いて、有利は苦笑して妻の態度をわびた。 「すみません、コンラッドの悪阻酷くて、食事も喉を通らないんです。どうにか、冷たいスープとかは食べれ るんでしのいでは、いるんですけど・・でもよかった。短剣を投げる元気が出て、ツェリ様のおかげですね!」 「陛下!ああんもう!陛下だけですわ、そんなこと言ってくださるの。」 しかし、よく考えたら、投げられたのは短剣なんだが・・それでよかったとは、けっこう酷い事を言っている。 実は有利は何処までも、妻本位の男なのだ。幸い、二人して気付いていないからいいだろう。 「それにしても、あの子の悪阻はそんなに酷いんですの?あたくしの時は、ヴォルフの時に少し酷かった くらいで、そこまでは行きませんでしたのに。」 「はぁ、やはり男ですから・・。胃が圧迫されて、胸焼けや吐き気がひどいんですよ。」 「そうですか・・。」 なにやら、ツェリは考え込むと、ちょっと失礼といって、執務室をでていった。 コンコン!その人の割には控えめなノックで扉が叩かれた。コンラートは気配で誰が訪ねてきたか わかったが、そのままベットに横になっていた。 「コンラート?入るわよ?」 そーと、扉が開かれ、するりと母親が入ってきた。手にはトレーがあった。ツェツィーリエは、手にした トレーをベットサイドに置くと、目をつぶるコンラートの髪をやさしく梳く。 「コンラート。悪阻がひどいんですってね?あたくしの時に、良かった物を作ってみたんだけど? 口に入れてみない?」 コンラートがパチリと目を開いた。みれば、皿にはレモンがスライスされて並べられていた。水差しには、 ハーブティーらしきものが入り、小鉢にはシャーベット?? 「カモミールティーよ、少しずつ飲むといいわ。それと、レモンを蜂蜜で漬けてみたのだけど? あたくしの時は、口の中が気持ち悪くなる時があって、レモンや氷をよく口に含んでいたのよ。」 「これは・・母上が作ったのですか?」 みると、レモンの厚さがバラバラだ。小鉢の中は、削られた氷と果実であったが、果実も大きさが不揃いだ。 血盟城の厨房で、こんな不恰好なものを作る者はいない。すると、少し恥ずかしそうに、ツェリは頷いた。 驚いた・・・母が包丁を持ったところなど、見た事がなかった気がする。それはそうだろう、コンラートが 生まれた時は、すでに彼女は魔王だった。厨房に出入する魔王なんて、有利が来る前はいなかったのだから。 コンラートは起き上がって、母の手の中から小鉢を受け取ると、一口食べてみた。 「・・! おいしい・・。」 あれ程、固形物を受け入れなかったのに、小鉢に入ったカキ氷と果物は、するりと喉を通っていった。 「あぁ、よかったわ〜!食べれないんでは、貴方の体が持たないものね。」 「母上・・。」 「本当に、ごめんなさいね・・貴方が、幸せになってくれたのは嬉しいのよ。でも、ダンヒーリーの血が途絶え ると思うと、あの人に申し訳なくて・・。」 あぁ、そうか・・この人は寂しかったのだ。唐突にコンラートは理解した。ウェラーの血を引く者は、実は地球 にもいる。だから、自分としては、ウェラーの血が途絶えるわけではないので気にしていなかったが、確かに ダンヒーリーの遺伝子を継ぐ者は自分一人なのだ。自分が死んだ後、ダンヒーリーを記憶に留める者も、 血を引く者もイナクナルという事は、ツェリにしてみれば愛する人が永遠に失われる様な喪失感があったの だろう・・だから、あんな無茶なお願い事をしてきたのだ。 そう思うと、逆に申し訳がないような気がする。 「いいんですよ、母上。たしかに・・男の身で懐妊というのは・・その、正直抵抗はありますが、ユーリの 子供を授かったのは・嬉しくもありますから////。」 「本当?」 「えぇ、それは本当です。」 息子が爽やかに笑うのを見て、やっとツェリも笑顔になった。 それからというもの、少しづつではあるが、コンラートも食べれるようになり、次第に悪阻も収まっていった。 ほっとしたのもつかの間、今度は何でも食べれるようになり・・。 「うわ〜〜!アンタまだ食うのかよ!いい加減にしろよ〜、今度は太るぞ。」 「だって、ユーリお腹がすくんですよ?二人分なんだし、仕方ないじゃないですか!?」 「だからって、兄上!そんなに食べていいのか?なんだか、見ている僕のほうが・・・うぷっ!」 「うわー、ヴォルフ!吐くな!たえろーーー!!!!」 その見事なまでの食べっぷりで、周りの者が見ただけで胸焼けを起したそうだ。 9月9日 UP どんなに食べてもきっと太らないのよ彼は!厨房も妊夫向けメニューの開発に勤しんでいたりして? それまで、陛下の好み〜とかいっていたのが、妊夫が食べれそうなものに変わり、その後、妊婦用の 栄養摂取を主としたメニューにかわり・・妊夫がたべてすぎても太らないように低カロリーのケーキとか 開発させていくのよね!城が妊夫中心に回ってゆく・・・なんてのどかな国だ!! |