お見合い大作戦 |
コンユばーじょん
「お見合い?」 「そうなのよ、ゆーちゃん、相手の方はね?友達の息子さんで、爽やか好青年なのよ〜!るん♪」 「爽やか好青年って!おとこーーー!???」 お母様・・息子に男との見合いを持ってくるってどういうつもりですか? 「え〜だって、あの子、ゆーちゃんの名付け親なのよ?覚えていない?ゆーちゃん、大きくなったら 彼をお嫁さんにするって言っていたのよ?」 えぇ!って・・・・・・まてよ?それって、ちなみにおれがいくつの時? 「4つ♪」 覚えているわけがないだろう!おふくろのばかーー!ばか〜ばか〜。(虚しいこだま) そうこうしているうちに、俺は見合いの席に借り出されてしまった。だって、デート先が西武ドームで 愛するライオンズの試合観戦つきなんだよ!それも、ボックス席で見れると聞いて、俺は一も二もなく 頷いた・・だって、ボックスシートなんて、年間予約席だから普段販売されないんだぜ! 何、見合いなんだから、断ればいいんだ!そう結論付けて、おれは意気揚々と『試合観戦』に出かけた。 本日の試合は、18時から対オリックス戦だ!でも、一応見合いなんでいつものラフな格好ではなく、 シャツに麻のパンツに革靴を履かされたけど、ボックスシート観戦の為なら、そのくらいは許容範囲です! しかしすごいな〜、さすがボックスシート!入り口から違ったよ。しかも、お姉さんにエスコートされて席まで ご案内されちゃうし入ってみれば、エメラルドグリーンのシートは革張りのふかふか!座り心地満点! しかも、メニューをくれたのにはびっくりした。この上に、ボックスシートのお客さん専用のオーナーズレス トランが有るのは知っていたが、お姉さんが注文すれば持ってきてくれるのか?へぇえ〜、なんか王様気分♪ 「うへ〜ステーキセット4000円以上するの?。ライオンズ季節の味わい弁当はちょっといいかも・・。」 そんな風に感心していると、上からクスクスという笑い声が振ってきた。気持ちのいいテノール。 ふっとメニューに影が落ちて、おれは釣られるようにその人を仰ぎ見た。 長身のその人は、少しかがんで有利を覗き込んでいた。ふわりと風が前髪を攫うと、薄茶の髪が日に透けて 淡い金色に輝いた。琥珀に輝く瞳は、優しげに細められて、有利を見つめていた。 ドクッ! 胸の中心で、何かが弾けたのがわかった。そして広がるのは、とても懐かしい・・とても大切な・・。 「コン・・ラッド?」 そうだ、思い出した!小さい頃少しだけ住んでいたアメリカのボストン。そこのアパートの隣部屋にいた4つ上の少年。 コンラート・ウェラー。通称・コンラッドと呼んでいたんだっけ?小さかったおれはとても彼に懐いていて、 よく遊んでもらたんだった。 「ユーリ、俺を覚えていてくれた?」 「うん、ごめん、今思い出した。」 「それでも、いいよ。思い出してくれたなら。」 そう言うと、コンラッドは俺の横の席に座った。淡い色の上質のスーツをカジュアルに着こなし、軽く足を 組むと、まるでモデルのようだ。掛け値なしにカッコイイ!その証拠に、エスコートガールのお姉さんが うっとりとコンラッドを見ていた。ムッ!だめだぞ、コンラッドは俺の・・・・って・・あれ?? おれ・・今・・・・何か・・変な事思いマセンデシタカ?? 「それで?ユーリはどれにするの?」 「ふへ?」 思わず変な答えになったおれに、クスリと笑ってコンラッドがトントンと、俺の持つメニューを長い指で叩いた。 そんな姿も、カッコイイ〜♥・・・って、おれ!何ハートなんてつけてるんだぁぁ! 「食べたいんでしょう?それとも、上のオーナーズレストランに行く?」 もちろん、俺のおごりだから安心して? 「えぇっ!?そんなっ悪いよ!」 あわてて、辞退するおれに、コンラッドはいいからと言って、少し耳元に唇を寄せてくると、小声で囁いた。 「遠慮はナシだよ、だってこれは初デートだからね。俺にかっこつけさせて?ね、ユーリお願い。」 デデデ・・デートぉ?!いや、確かに見合いだとは聞いていたけど・・つーか、耳元で話さないで!しかも 甘い声で『お願い』・・なんていわれたら・・・おれは真っ赤になって頷くしかなかった。 お見合いなんて断ればいいと思っていた。 おれは、野球を観戦しに来たはずなのに! おれってば、愛するライオンズを見ないで、隣の男ばかりを見ている。 コンラッドは、おれの方を見るとニコリ、と笑ってくれる。それに、思わずうっとりしかけるおれ・・って!まてまて! まて、渋谷有利!確かに見合いにきたんだけど、そんなに相手の顔ばかり見ちゃだめだろう! おれは俯いて、買ってもらったライオンズのお弁当を食べていた。うう・・はっきりいって、味なんてわからん。 だって・・だって・・隣の男ってば・・・ジーとおればかり見ているんだもの。 「コンラッド・・あまり見られていると、食べづらいんだけど・・。」 「うん?気にしないで。14年ぶりに会えたんだし、少し成長したユーリをみせて?・・だめ?」 だめって?そんな、切なげな声だされたら・・・・再び頷くしかないおれ・・なんか、おれってもしかしなくても コンラッドの声に弱いかも・・?うう〜〜。 ふしゅ〜っと耳から湯気を出しそうなほど真っ赤になる有利を、コンラートは楽しそうに見やる。 あれはまだ、コンラートが父親と住んでいた時だった。父親の会社の同僚が日本から赴任してくると いって、引越しの手伝いにいった。それが渋谷家の皆さんだった。7ヶ月のお腹をさすりながら、元気に 指示を出す奥さんの号令の下、父ダンヒーリーと友人でこの家の主、勝馬。息子で自分と同じ年の 勝利と共に春なのに汗をかきながら、働いたっけ。それがきっかけで、父子家庭のコンラートは、朝 から隣に預けられ、勝利と共に育てられた。7月も終わりの頃、勝利が風邪をひき、勝馬に病院に 連れて行っていた間に、美子さんが産気づいてしまった。コンラートは、必死に美子を支え、病院まで タクシーをはしらせ、連絡の付かない彼らに代わって、お産にまで立ち会ったのだ。 そうして、生まれたのがこの有利だ。だが、その時自分がポロリと話した話から、この子の名前がユーリに 決まり、自分が名付け親になるとは思ってもいなかった。 そのせいか、ユーリは誰よりもコンラートに懐いた。おかげで、勝利には敵視されてしまったほどだ。 一言目には、コン・コンと自分を呼ぶ赤ちゃん。おかげで、齢5歳で育児書を完全読破してしまった。 大きくなると、勝利と自分の間に入って、手を繋いでもらうのが大好きで、ちょっと隣の部屋に 行くにも、手を繋いでいた。可愛いかわいい弟のような子。 それが有利だった。 やがて兄とコンラート小学校に通い始めると、(学校は別々勝利はアメリカの学校だと一学遅れる ので日系の学校に通っている)スクールバスで戻ってくるのを、いつも美子さんと待ってくれていた。 きっと寂しかったんだろう、兄達は学校で友達も出来て行動範囲も増えるが、有利は小さく、 遊んでくれるのは家族と自分だけなのだから。帰ってくると、べったり張り付くので宿題をする間だけ 離れてもらっていた。そんなある日、二人が2学年になってすぐだった。何時ものように、宿題を先に 終わらせようとしている彼らの元に、有利がお気に入りのアヒルのおもちゃを持ってきた。 なにやら、もじもじと可愛いく頬を染めている様子に、勝利のブラコンが炸裂した。 「ゆーちゃん、かわいい!!!」 ぎゅうぅぅ!!と抱きしめると、 「いやぁぁ、しょーちゃんじゃないの!コンなの!」 ピコリ!と音と共に有利の持っているアヒルが、勝利の頭を突くと、有利は慌ててコンラートの方に かけ寄ってきた。はい!といって、アヒルを渡す有利に、コンラートが反射的に受け取ってしまうとー 「あのね、コンラッドゆーちゃんの嫁さんになってくれるよね?」 「・・・(たっぷり10秒)・・・はい??」 「ぬぁにぃ!?こんらーとぉぉ〜!おのれ・・名付け子に手を出すとはどうゆうことだぁぁ!!」 「この場合、俺が手を出されているんじゃ・・。」 「えぇ!?ゆーちゃん、コンラッド君と結婚するの?」 おどろく、母と兄を尻目に、有利は『けっこんーー!』と大はしゃぎだ。 「ちょっと、待ってユーリ。そういう事は、大きくなって大人になってから・・!」 よくよく考えれば、相手は3歳児だ。そんな慌てる事も無かったのだが、この時のコンラートは、 名付け子に求婚されるという、想定外の事態に軽く混乱していた。 「だって、コンラッド美人だもん、大きくなるまで待っていたら、他にお嫁にいっちゃうもん! 前にしょーちゃんがおしえてくれたのー♪先行投資って奴だもんね〜?」 あぁ、それで、この黄色いアヒルが自分の手に・・。 ね〜しょーちゃん?と可愛らしく小首を傾げる有利に、勝利は色々な意味でいっぱいいっぱいだ。 3歳で、先行投資を覚えるなんて、ゆーちゃんは、さすがウマちゃんの子ね〜と、母親のジェニファー にほめられて、益々勢いづいた有利は、その後毎日求婚をし続け、根負けしたコンラートが 結婚できる年まで気持ちが変わらなければ、その時改めて求婚と言う条件を出して、納得して もらったのだ。 それが、今年18歳になった有利の元に、この見合いが持ち込まれた背景だった。 「ってことは?コレは、おれがしでかした事?生まれる前からお世話になり続け、なおかつ 14年の歳月を経て、また迷惑をかけたのか・・アンタわざわざそんな事に律儀に付き合わなく ても、どうとでもごまかせるだろう?ホント、コンラッドって人がよすぎ・・つーか、おれに甘すぎ!」 ビシリ!と、思わず箸で人を指しちゃった。いけねいけね。 「だって、ユーリがどう成長したか見たかったんだ。なにせ、4つの時に日本に戻っちゃったし。」 そうなのだ、4つの時、渋谷家は日本に帰還命令が出て、以来コンラッドとは会えないままに なっていたのだ。あの頃は、隣にいないコンラッドを探してよく泣いていたっけ。 「それに、アヒル貰っちゃったしね。あんなにユーリが大切にしていたのに。あぁ、ちゃんと 今でも部屋にあるから、今度見に来る?」 「見に来るって・・ボストンまで行けってか?」 「え?聞いてなかった?俺、勝馬と同じ会社に就職したんだ。それで、日本に転勤に なったんだよ?同じ部署だから、またよろしくね?」 「ふへ?・・まじ?」 「うん、だからいつでも遊びにおいで。何なら今からでも来る?」 琥珀の瞳が、熱っぽく誘う。おれは、魅せられた様に彼から目が離せなくなり・・コクンと頷いた。 「うわーすげー・・・見事に何も無い・・。」 「引っ越してきたばかりだからね。」 コンラートに連れられてきたのは、高層マンションの最上階。通された部屋は、持ち主の性格を 表すように、シックで落ち着いた部屋だった。しかし・生活感という物が何も無い。 あるのは、TV・オーディオセット・キングサイズのベットだけだった。あとは、備え付けの家具が あるが、棚にはこれといって並んでいるものが無い中・・寝室のベットの上の棚に、ちょこんと 黄色のアヒルが鎮座していた。 「こ・・れ・・もしかして。」 「うん、ユーリの宝物だった、アヒルだよ。」 はいっといって、14年ぶりにアヒルが有利の手の中に戻った。ほこりも被らず奇麗なままだ。 コンラートが大事にしていてくれたのは、見ただけでわかる。それが、なんだか嬉しい有利だった。 「久し振り、アヒル隊長、元気でしたか?ふむふむ、新しい持ち主がとても大事にしてくれたから 元気一杯ですか?そーですか、それは俺も嬉しいですねー。」 「プッ!・・ククッ・・ユーリ・・・相変わらず可愛いね・・・。」 どうやら、この男のツボに入ったようで、クツクツと笑われてしまった。 「かわいいゆうなー!」 棒読みになったおれに、ごめんごめんと笑いながら男が謝る、まぁ、本当に怒ったわけでない からいいけどね。 「でも、びっくりしたな。いきなり先行投資とかお嫁さんになってとか・・3歳の子にそんな事 言われるとは思わなかったよ。その後も、顔を合わせれば結婚結婚って・・。」 「いや・・本当にご迷惑をおかけしてスミマセンでした。」 「それで、どうするの?」 「へ?何が?」 「け・っ・こ・ん♪」 「ふへ・・あぁ、そういえば、お見合いだった!!」 「酷いなユーリ。あれだけ求婚しておいて、忘れていたなんて。」 「そんな事言っても、おれ4つだぞ!覚えているわけ無いだろう!!」 「ふうん、じゃ、それ持って帰っていいよ。」 「ふえ?アヒル。」 「そう、先行投資なんでしょう?必要がなくなったんだから、これはユーリの物だよ。」 「あ・・・・。」 必要がない・・・そうだ・・でも・・そんな・・。 「それは、俺が預かっていただけだしね。」 「だけって・・・・」 それは、もとから俺に返すつもりだったって事?最初から・・・。 ピコリ!! アヒル隊長の嘴アタックがコンラートの額にヒットした。 「ユーリ?」 ピコリ!ピコリ!ピコリ!・・・ 「ちょ!ユーリ!流石に痛いって・・・ユーリ。」 ピコ・・・・・・。 俯いた有利の頬には、透明な雫が流れていた。そっと近づいて、腕の中に閉じ込めても 有利は逃げていかなかった。それどころか、拾い胸に自分から擦り寄ると、きゅっとその胸に 縋りついた。 「まったく、こんなところまで変わっていない・・。」 ひょいっと、有利の手からアヒルを奪うと、コンラートは手を伸ばしてべットサイドに置いた。 「もうしばらく、ここに置いておこうか?」 「・・ずっと、おいとけ・・。」 「はいはい、いいよ。俺はユーリに甘いからね・・。」 必死に言った一言は、アッサリスルーされた。 アヒルを返すと言われて、気付いてしまった。最初から相手にされてなかったと思ったら急に 胸が苦しくなってしまった。たとえ、記憶に無くても俺の心が覚えていたんだな。 この人が、とても好きだってーー。 でも、どうやら、あまり相手にされてないらしい。 こうなったら、追加投資してやる!! 後日、コンラートの部屋には、黄色いアヒルの横に、有利の現在のお気に入りである、愛する球団の 白いライオンが鎮座していた。 8月14日UP コンユで見合い話です。実はコレ、ユコンバージョンも有ったりして・・。あはは^^; さて、この二人・・無事結婚まで行くんでしょうかね?当然、花嫁はユーリです。うっふっふ。 なお、ユコンバージョンは差し上げてしまいましたので、こちらで掲載してないどころか、 ファイルもない HSSD 様 に掲載していただきましたので、そちらでどうぞー! |