長編パラレル   今日から『ママ』のつく 6




今日からママのつく 6

結局、俺は自己嫌悪というか、凹んだというか・・・ずーーーんと沈んだ気につられるように、風邪を悪化させて、
夜会は村田とグウェンダルに任せることとなった。いつもなら、このへなちょこ!と、怒れる天使のようなヴォルフラムも
俺の悄然たした態度に何を思ったか、夜会は僕らに任せてゆっくり休め・・・始末は僕らがやるからという、ちょっと
意味不明の言葉を残して、何やら息巻いて出ていった。なんだろう・・・まぁいいか。
そうして、有利は全てを振り切るかのように、ベットに潜り込んだが・・・胸の痛みはひいてくれず、ズキズキと
波のようにうねって、有利を苛むのであった。
「っ!・・・コンラッド・・・。」
それでも、呼ぶのは、この痛みを与えた・・・ただ一人の想い人。有利は切なさに、ぎゅっと目をつぶって、只痛みが
通り過ぎるのを、一人耐えていた。



「ふふっふっふふ・・・。」
「おかあさま〜、ヴォルフがコワイよ〜。」
スチャ!っと、剣を抜いて、不気味に笑う可愛い弟の鼻先に突きつけると、うわぁ!と悲鳴を上げて飛びのいた。
「な・・何をするんです!姉上!ひっ?」
おおげさだな〜うちの可愛い弟は、ところで、俺の愛娘を怖がらすとは、覚悟は良いかな?
表面上爽やかだが、言っている内容は物騒極まりない!かなりご機嫌は悪いようだ。それはそうだろう、結局、見合い話は
断っては貰ったもの、相手が中々諦めてくれてないらしい。それを聞いて、機嫌など良い訳がない。勝手に人を見初めないでくれ!

表向きとはいえ、体裁を整えるための設定があだとなってしまった。・・・もっとも、ツェリが余計なことさえしなければ無事終わ
ったというのに・・・。実母といえど、一度絞めてやろうかと思ったほどだ。なにやら、女性になってからというもの、コンラートは
どんどん過激になってきているようだ。同じ女性の立場として、遠慮がなくなっただけかもしれない。
「まてまてまて、僕は今日の夜会につける装飾品を持ってきたんだ!」
そういえば、ドレスが決まったら、装飾品を贈るといっていたっけ?差し出されたのは、見事な色とりどりの宝飾品がついた
腕輪とネックレスとイヤリング。・・・・はぁ、みごとだけど、やけに装飾が多くないか?じーーと、つい、恨みがましい目で見て
しまう。たしか、装飾は少なめにしてくれるといっていたのに。
「うっ!いいか、今日はこれをつけていくんだぞ!これから取り扱いを説明するからな!」

??アクセサリーに取り扱い???

まず、イヤリングだが、これはここを押してといいつつ、裏側を見せる。コンラートとグレタが覗いてみると、何やらボタンが?
「相手に投げつけると、10秒後に爆発する。」

ばくはつーー?

で、次に・・・驚く二人を尻目に、淡々と説明をするヴォルフラム・・・じつは、これは全てアニシナに頼んで作ってもらった物だ。
丁度、風邪で熱の出た有利の寝姿に、鼻血を拭いて使い物にならなくなった男がいたので、生贄に差し出したら、快く
譲ってくれた。やはり、女性にはプレゼント(?)が一番効くな!
ネックレスには閃光弾・強力睡眠薬・催涙弾などが宝石に見立てて仕込まれている物。腕輪は、美しい蔓を模した
デザインだがするりと伸びてムチに変わるという武器だ。
「良いですか姉上!男は皆、狼です!これで、撃退するんだぞ!」
「・・・・・・・・・・・・・。ヴォルフ・・・・俺も男だが?」
「それとクツですが、ハイヒールはやめてブーツにしました。踵に時限爆弾。つま先に刃を仕込んで置きましたから!」
プーは聞いちゃいない。それに、段々過激になってきてないか?弟よ、お前は一体、俺に何をさせようというんだ?
「うわ〜〜すごーーーい!ヴォルフ!ねぇ?グレタのは?」
もちろん有るぞ!
「有るのか!?」
これには、コンラートもびっくりした。こんな物騒なものを、グレタに持たせていい物なのだろうか?
「このブローチには、強力な唐辛子スプレーが仕込んである。相手の顔めがけてかけてやるんだぞ!」
「うわ〜〜、痛そうだね!わかった、おもいっきりかけるね!」
グレタ・・・・。
「コンラート姉上。今日の夜会では、僕達の側から離れないように。グレタもお母様と一緒にいるんだぞ。
変な男共に言い寄られないように、しっかりと見張るんだ!」
「うん、お母様に言い寄る男には、スプレーかけちゃう!」
「よし、その意気だ!グレタ!姉上の貞操は僕らが守るぞー!」
「おーー!」
貞操って・・・・・なんだろう、この二人。まさか、自分の貞操うんぬんを、弟と娘に心配されるとは・・・。
なんだか、倒れてしまいたいコンラートだった。

だが、この二人だけではなかった。
「た〜〜いちょ!」
フリフリのメイド服を着たお庭番には、携帯用の剣を渡され、これをドレスの下に隠しておくように言われた。
「襲われたら、こいつでばっさり切ってやってください!」
後始末は人知れずやりますから!任せてね!そんな、胸を張られても・・・・・その前に、切らないし・・。
カーキ色の軍服に身をまとった直属の部下の連中からは、会場の周りにいますから、自分達の目のつくところにいて
くださいと懇願された。・・・・・・男泣きで囲まれた時は、正直うんざりした。
兄からは、もし困るようなことが有れば、自分の婚約者という事にしろ、後はどうとでもごまかすからといわれた。
・・・・・・心なしか、赤い顔が不気味ですよ、兄さん。ヨザに貰った剣で刺しちゃおうかな?・・・それにしても。


なんなんだいったい!


「あ〜〜、ウェラー卿ったら、わかってないみたいだね〜。」
そんな、コンラートを廊下の隅から見つめるのは、大賢者とふりふりのメイドさん。
「自覚が有るなら・・・そう問題もないんですよ。なにせ、あのヒトこの国最高峰の剣技の保持者ですし。」
自覚がないので、自分に注がれている視線のイミもわからないし、それに付随する危険もわかっていない。
それが、やっかいだ。その隙に付け込まれて、まかり間違ってお手がついた場合、この国の重鎮達が一斉に何を
やらかすかがわからない。・・・いや、一番怖いのは魔王だ。腐っても魔王という格言もある(←あるのか?)!
想い人が・・・女性として他の男性に喰われたなんてことになってみろ?有利だけではない・有利の中の上様も
キレること間違いなし。・・・たかがどこぞの馬鹿の横恋慕のせいで、国が滅んだりしてみろ?もう、笑い話にさえならない!
そういう意味では、ウェラー卿コンラートという女性は、まさに傾国級の美女という事になるのか。

あはははは・・・じょーだんじゃない!

そう、冗談ではない!もしも、ウェラー卿に何かあって、渋谷が傷ついてみろ・・・その時は、馬鹿貴族だけではない・・・
眞魔国を2度も危機に貶めた罪で、フォンシュピッツヴェーグ一族もろとも始末してやる!
どうやら、恐怖の大魔神が、ここに光臨してしまったらしい。


こうして、眞魔国は、静かに存亡の危機を迎えていたのであった。


------------------------------------------------------------------------------------


4月25日UP

暴走ヴォルフは、書いていて楽しい。5が長かった分、6は短め〜。
感想などございましたら、TOPページのメールフォームか拍手または、プログにでも
お願いします。なにぶん、女性化コンの話なので、毎回反応が来ないと怖いんですよね。