今日から「ママ」のつく 3
今日から「ママ」のつく 3
グレタが帰国した時、その養父であるユーリ陛下は、まだ地球から帰還されていなかった。
前回の帰国の際も、すれ違ってしまい、会えぬままカヴァルケードへと戻った事もあり、帰国した彼女が
塞ぎがちに見えるのも、そのせいだと思われていた。
しかし、3日後。待ちに待った養父との再開が出来た後もグレタの元気は戻らなかった。
有利といる時は、いつもの元気な娘ではあったが、ふとした折に寂しげな表情を滲ませていたのを、
グウェンダルは気がついていた。もちろん、二人の弟達も。
「それで、アニシナ。グレタが塞ぎがちだった理由は、今度のコンラートの女性化と関係が有るのだな?」
何時もなら、決して自分から近寄ろうとはしないアニシナの地下研究室。別名・生贄の館←血盟城の中なのに?
そこなら、誰に聞かれることも無いのでと、移動してきた二人だった。
「もちろんです!わたくしが、関係もなく由りによってコンラートに、もにたあ済みとはいえ、体を作り変えるような
荒業の毒を飲ませるわけありません!」
一応、もにたあ済み(生贄が誰だかは聞かないほうがいいだろう)と、いうところに、彼女の気遣いもあるようだが、
やはり毒なのか!?アニシナが荒業と言う程の危険物を弟に飲ませたのか!?
「何を面白おかしい顔をしているのです!もにたあは済んでいると言ったでしょう。現に女性化するときに
多少の痛みがあるだけです。コンラートも少し気を失っただけで、何とも無かったでしょう?」
その間に、着替えと化粧を施したのだ。起きた時、複雑そうな顔をしていたが、女同士なのだ、問題はない!
あの、コンラートが気絶するほどの痛みが・・・多少??
「何をガタガタ言うのです。これだから、貴方は・・・・。はぁ〜、第一、コンラートは自ら飲んだのですよ。
わたくしは、強要などしていません。」
「自分から?なんでまた!そんな危険なマネをっっ!!」
つい本音が出たグウェンダル。アニシナの眉毛がピクリと上がった。
ゴ・・ゴホン。
不自然な咳払いでごまかす男を、まぁいいでしょうと、ため息一つで許してやると、アニシナは語り始めた。
「別に今回は、コンラートを女性化するのが目的ではありません。グレタに母親を作るのが目的です。」
「母親だと!?」
どこか、かげりのあるグレタの様子に、アニシナもまた気づいていた。大好きな父親との再会を果たしても一向に
彼女の様子は改善を見せず、一昨日お茶につき合わせながら、最近の様子についてそれとなく聞いてみたのだ。
本人は隠していたつもりだったのだろう。聞かれた時は驚いて、お父様も気づいているか?と有利に心配をかける
事をしきりに気にしていたが、アニシナが陛下は気づいていないと告げると、ほっとした様子で紅茶をすすった。
「あのね?お父様達には黙っていてくれる?」
「えぇ、もちろんですよ、グレタ。ですから、気掛かりな事があれば、この毒女アニシナに話してしまいなさい。
それとも、わたくしでは、あなたの悩みは話せませんか?」
そう促されて断れないのを知っていて、聞くのはちょっとずるい言い方だが、それも可愛い弟子のためなので、
いい事としましょう。案の定、グレタはそんなこと無いよ!と、否定するとぽつぽつと話し始めたのであった。
留学先のカヴァルケードで、普通の家庭の友人宅に招かれたこと。そこで、グレタを手作りの料理やプレゼント
などでおもてなししてくれた事。それが、うれしかったこと。そして、母親についてまわって、一緒に料理や
飾りつけなどをする友人を見て、うらやましいと思ってしまった事。自分には、やさしい父親が二人もいるのに、
死んだ両親を、特に母親を恋しく思ってしまって、どうしようもなかったことを。
「グレタ、贅沢だってわかっているの。眞魔国の皆がいて、すごく幸せなの。なのに、お母様がいてくれたら、グレタ
にもお料理とか裁縫とか教えてくれたのかな?とか、ダンスが上手になったとか褒めてもらえるのかな?とか、
思っちゃうの。グレタ幸せに慣れて、わがままになっちゃったんだよ。・・・・・ごめんなさい。」
グレタがそんなことを・・・。グウェンダルは、思わず目頭が熱くなるのを、目に力をこめてやり過ごした。
「ええ、ですが、流石のわたくしにも、亡き者を蘇らす術を持ちません。したがって、別の母親を用意するとに
致しました!」
ーー いないなら・作ってみせよう・母親を!! ーー
そこで、栄えある母親にと、わたくしが熟考して選び出したのが、ウェラー卿です!
なんでそこで、男を選ぶ?普通、グレタの周りに要る女性陣から適切なものを選ぶのではないか?・・・・・グレタの周り?
アニシナ・・は本人も立候補しないことから、自分が親向きでないことを知っているのだろう。彼女は、グレタの師匠だし。
ギーゼラ、普段の彼女なら、悪くも無いが・・鬼軍曹と化すあの裏表のある個性はいかがなものか?どちらかといえば、
おねえさんというタイプだろう。次は・・母上。・・論外だ。あとは、侍女とかになってしまう。かといって、貴族の女性から
選ぶのも無利だろう。グレタは血のつながりが無いとは言え、魔王の娘だ。彼女に取り入って、王妃の座を射止めよう
とする物は後を絶たないだろう。そうなれば、傷つくのは、グレタだ。それは、あの有利が許さないだろう。もちろん、自分達も。
その点ーーー。
ウェラー卿なら、物腰は柔らかく、料理もこなし、博識で育児経験(わがままプーの)もあり、何よりグレタが懐いている。
男ではあるが、そこは毒女にかかれば、些細なこと。さくさくと、実験体・・いや『もにたあ』を用意させ、性転換薬を
作り出したのだ。
そして、有利を執務室に送って廊下を歩いているウェラー卿を拉致・・いや確保・・いやご同行?願ったのであった。
「で、これを飲めと?」
地下研究室に連れ込まれ、目の前に三角フラスコの中に入った液体を突きつけられても、動じること無く事実確認を
する。さすが、ルッテンブルクの獅子。このくらいでは、微動だにしない。
「無論です。」
「飲むと、どうなるのかな?」
「女性になります。」
「・・・・・・・・・・なるほど。」
女性に部屋に連れ込まれたというのに、色気がないな〜。などと、呑気な感想をいれつつ、どうしようかと思う。
何で、女性にならないといけないか聞いてもいいのかな?・・断れると思わないのが、彼の達観したところだろう。
「心配はありません、この毒は、もにたあ済みの完成品です。ささ、ぐいっと飲み干すのです!」
やはり、毒なんだな。
「飲んでもいいけど、理由を聞いてもいいかな?」
「まぁ、よろしいでしょう。グレタの為です。」
「グレタの?」
そこで、アニシナは、彼女から聞き出した事を彼に説明した。
「成程?」
しばし、顎に手を当て思考をめぐらすと、ちょっと、いいかな?ときいた。
「赤茶の髪のカツラないかな?できれば、ウェーブがかかったロングの。」
どうせ化けるなら、グレタに少しでも似せたほうがいいだろう。
アニシナは、ふむ、と思う。これが、いつもの幼馴染なら何故飲まなければならないとか散々に駄々をこねるところを、
この弟のほうは、あっさりぽんと飛び越えてしまう。なんとはなく、今は亡き友人がこの男を気に入っていた訳がわかる。
「用意しましょう。他は?」
だからか?アニシナには珍しくそんなことを聞いた。
「そうだな〜、条件が少々。」
一つ二つと云わずに、少々と来た。中々くえない。
「聞くだけ聞きましょう。」
こちらも、食えない返事を返す。しかし、コンラートは気にした風も無く条件を並べていく。
「まずは、必ず男に戻して貰わないとね。さすがに、女性のままでは、陛下の護衛として些かか不安だし。」
「それは大丈夫です。だいたい、グレタが帰る頃、10日ほどで効果は自然と切れます。」
それに、流石アニシナだね。と軽く褒めると、次の条件を提示した。
「俺が女性になっている間、陛下はもちろんだけど、グウェン・ヴォルフ・ギュンターの三名の『もにたあ』使用禁止。」
「なぜです?」
「俺は、グレタの母親になるんだろう?だったら、心置きなくグレタが俺に甘えられる状況を作らなくちゃいけないとは
思わないかい?」
「ええ、それはもちろん。」
だからさ。にっこりと、ウェラー卿は続ける。自分は、陛下の護衛だ。陛下の側を離れるわけにはいかない。いつもなら、
代わりを頼むヨザックは任務でしばらく戻らない。となると、ウォルフラムに護衛役を頼まないと、グレタが気にしてしまうだろう。
それに、あとの二人は、執務を担当しているので、陛下の仕事を少しでも減らすために残しておいて欲しいというのだ。
ー 仕事が減れば、陛下もグレタとの時間が増えるだろう?あの子もきっと喜ぶよ。
そう言われれば、了承するしかないだろう。なに、グレタが帰ってから、しっかりもにたあとして働いてもらえれば良いだけです。
「わかりました。条件はそれだけですね?」
言外にもう無いな?と脅し・・いや確認している。
「うん、条件はそれだけだよ。」
ひょいっと、彼女の手の中にあったフラスコを受け取ると、掲げてみた。お茶でも飲むような気軽さだ。
そう、あとは、下地作りかな?
「下地?」
「そう、例えこのまま俺が、女性になってグレタの前でお母様だから甘えて良いといっても、グレタは甘えないよ。」
それは、自分も考えなかったわけではない、しかし、ウェラー卿には、グレタもなついているからどうにかなるのでは?
と、考えていたのだが・・・やはり、人の心の部分はそう旨くはいかないのだろうか?
眞魔国王女殿下・・・それが、今のグレタだ。広く国民に愛され幸せな王女殿下。だけど少し前までの境遇は、決して
そんな温かなものではなかった。生まれは、今は無き・・廃国ゾラシア王室。その王の第三婦人の娘として生まれた。
王族ではあるが、その中では決して高くはない地位、グレタの口から生国の話は、母親の事以外でたことがない。
それで、大体の扱われ方がわかる。内戦・反乱をかかえ、他国からの侵略を防ぐ為とはいえ、母の生国スヴェレラ
で、人質として送りだされたのをみても、そんなに良い待遇ではなかったのだろう。
もちろん、スヴェレラでの待遇はもっとひどい。王にとって、己が妹の子であるにもかかわらず、衣食住は与えられる
ものの、衣服は粗末で一国の王女の着る物ではない。かたくなに心を閉ざさなければ、生きていけなかった。
彼女はずーと、何にも頼らず生きていくことを強いられて生きてきた。それでも、心の中にある渇望。彼女は言った、
『グレタは、子供になりたかった。』と、『誰かのうちの子。』になりたかった。それは、自分の居場所が欲しいということ、
自分を受け入れ愛して欲しいということ・・・・だから、有利はその望みを受け入れた。わずか6歳しか違わない子供を
自分の娘としたのだ。
それがどんなに心が震える事か・・・・。自分にはわかる。いや・・・俺にしか解らない。
だから、贅沢だとグレタは言った。欲しかったもの・・・自分の居場所・家族・愛してくれる人たちを彼女は既に与えられた。
その上、母親まで欲しがることは、彼女にとっては贅沢な我侭でしかないのだろう。これ以上は望んではいけない、
彼女はそう考える子だ。
「アニシナ・・・君が俺をグレタの母にと選んだ理由は、俺と彼女の境遇が似ていたからだろう?俺なら、彼女の思考
パターンが読める。心の中の闇も・・・・希望も・・・葛藤も・・理解できるのは、俺だけと思ったからだろう?」
その通りだ。魔王の息子として生まれながら、人間の血が流れていると、低い地位と冷遇に耐えて生きてきたウェラー卿
コンラート。彼とグレタの境遇は、根本的な部分が一緒だ。存在を踏みにじられ、それでも諦めずに生きてきたその魂が。
「だったら、ご希望に答えないとね?・・・お勧めプランが一つあるよ。」
ー 理由を与えないとね。グレタが思いっきり甘えられて、なおかつ楽しめるような。
にっこり笑って説明された内容は、アニシナにも思いつかなかった代物で。やはり、彼を見込んだ自分の目は確か
だったと、アニシナは内心ほくそ笑んだ。
「「「おままごと〜〜?」」」
有利・ヴォルフ・ギュンターの素っ頓狂な声が重なる。
「えぇ、そうです。所謂、おままごと遊びです。子供の頃、女の子が良くやる遊びですね。それぞれが、おとうさん、
おかあさん、などの役になりきって、遊ぶごっこ遊びですね。で、今回はロイヤルファミリーごっこかな?
僭越ながら俺がグレタのお母さん役をやらせていただきますね。」
いつでも、にっこり爽やか笑顔に今は女性特有の色気までのせて、ウェラー卿コンラートは、なんでもなさそうに
のたまったが、だからといって、女性になるとは!?ヴォルフなど、− 僕の兄に・・・胸が・・やわらかい感触が・・−
などと、ブツブツ言いながら、ソファー端でひざを抱えて丸くなったままだ。さっきの、柔らかな胸にぎゅっと抱き
込まれたのが、かなりの衝撃なんだろうな。なんだかんだで、アイツはお兄ちゃんっ子だ。剣豪で獅子なお兄ちゃんを
誇りに思っている節がある。その兄から、いい匂いがしたり、胸が柔らかかったりした日には・・・・哀れ。
「でね!お仕事が出来て、家族思いのカッコイイお父さん役が有利ね。グレタは、ちょっと、甘えっ子の二人の娘役なの〜!」
きゃっきゃきゃと、はしゃいでグレタがコンラートの台詞の続きを告げる。中々、細かな設定があるようだ。
そう、これがコンラートの考えた下地作り。いくら、グレタがコンラートに懐いているからといって、いきなり、男性を女性にして、
お母様だから思う存分甘えなさいといわれても、グレタは自分の為にコンラートが女性にされたと、気に病むだけだ。
だから、いっそ、血盟城期間限定イベントという事にしてしまったのだ。期間はもちろんグレタが戻るまでの間。
有利とその側近達は、少しいつもと違った設定で与えられた役をこなす。もちろん、グレタもだ。血盟城で働く皆さんは、
役どころはそのままで、有利たちのこなす役に合わせて、いつもと違った日常を演出すればいい。
俗に言う、ごっこ遊びだとかおままごとという遊びだ。その遊びにあわせて、コンラートがいつもと違っても、グレタが気に病む
要素は無く、与えられた役をこなす事という理由で、おもいっきり甘えることができるのだ。
ちなみに、毒女プロデュースときいて、断れる勇者はこの中にはいない。
「ま・・まぁ、いいでしょう。そのくらいなら、わたくしも付き合って差し上げましょう。しかし、血盟城の常勤の者は良いとして、
出入りする者達に何と説明するのです?グレタが貴方をお母様と呼んでいたら、陛下が后を貰ったと、あっという間に
騒ぎになりますよ。」
確かにそうだ、グレタは魔王の愛娘であることは、広く知られている。その愛娘が母と呼ぶ女性が現れたら、現婚約者の
ヴォルフラムがいるのに、結婚前に側室さわぎか?はたまた、どっちが正室でSHOW?なんて騒ぎになるだろう。
しかも、それが・・・女性に変身した元男。婚約者の兄で、救国の英雄・ウェラー卿コンラートだと知れたら?
「あぁ、その点は大丈夫。血盟城限定のイベントだって言ったろ?一応、この中だけのイベントだから、外部には漏らさないように
言い含めてある(アニシナが)。ばれても、イベントだと言い切ればいいし、表向き、俺はグレタ付きの新しい侍女という事に
なっている。侍女を母と呼んでも小さい子がふざけて呼んだことにすれば問題ないだろう?それに、魔王の居住であるこんな
奥津宮まではいってくる者は、そんなに数がいるわけではないだろうしね。」
たった10日だ。騒ぎになる頃には、コンラートの薬が切れて、元の姿に戻る。あとは、知らぬ存ぜぬで通してしまえばいいだけだ。
魔王とその側近が口裏合わせれば、それを正面きって探りを入れる貴族もいまい。しかも、裏にいるのは毒女だ。
「なるほど、それで僕のところ(眞王廟)まで、話が来なかったわけね。」
大賢者も納得。赤い悪魔の口止めでは、そうそう漏れる事は無いだろ。誰だって、報復が怖い。
ー しかし、こんな面白いことに僕を混ぜてくれないなんてひどいな。
「いや〜〜、敵を騙すには、まず味方からっていうし〜〜。」
あははは、と笑いながら見当違いな事を言ってごまかした。実際は、清楚な美人と化したコンラートを
なるべく他の男の目に触れさせたくは無いという、独占欲なのだが。
ー ライバルをこれ以上増やしてたまるかーー!!
そうなのだ、ドレス姿のコンラートは、兵士の皆さんからラブ光線浴びまくり状態なのだ。これでは、いつ物陰に引き摺り
込まれるて、押し倒されるか心配で仕方ない。男の時だって、危なかったのに〜〜><。
こうなったら、仕事をとっとこ終わらして、可愛い愛娘と共に、美しい妻を守らなければ!既に、美人妻の貞操を守る
番犬夫のような有利だった。まさか、そんな理由で、ここ数日の執務のスピードがあがっているとは誰も思うまい。
「あれ?そういえば、フォンビーレフェルト卿は?お兄ちゃんのこの姿にショックで泣いているとか?」
ぴくり・・・有利の肩が揺れる。うん?
「姉上ぇーーー!」
ばーーんと扉を開け放ったのは、今噂をされていた主だ。あねうえ・・・って、やはりこの人?それにしても、
ここの人たちは扉をばーーんって開け放つ人ばかりだね。
「ヴォルフ・・その、姉上って言うのはいい加減・・・。」
「何をいうのだ。僕は、有利の護衛でグレタの叔父上役だろう。コンラートは母親・・つまり僕の姉上で合っているではないか!」
「・・・そうなんだけど・・。」
少々複雑なコンラート、そして有利もこのヴォルフラムの変わり身には、密かに警戒を強めていた。
「ところで、明後日の夜会の衣装を数点用意した。コレを見てくれ。」
後ろから付き従ってきた侍女がついたてに吊るされたドレスを運び込んだ。一目で質の良さがわかる逸品ぞろいだ。
「うわ〜〜きれい。どれも、お母様に似合うよ。さすが、ヴォルフだね!」
「もちろん、グレタとのおそろいだからな。グレタも、どれがいいかよく選んでくれ。」
「わ〜〜い」
うれしそうに、ドレスの周りをまわると、手にとって色々見比べている。やはり、こういうところは女の子だな。
ほら、コンラート。そういって、いつの間にかさり気なく横まで来ると、グウェンが手を差し出しす。
それに、コンラートのほうも自然な流れで手を預けてソファーから立ち上がる。なんて自然なエスコートだ。そのまま、ドレス
のところまで連れ立って歩く。やはり、元プリ。只の野球小僧にはまねできん・・・・・。
「ほぅ、どれも中々素晴しいドレスだな、さすがビーレフェルト御用達の仕立て屋だ。繊細なつくりだ。」
「有難うヴォルフ。俺は、衣装の見立てとかイマイチ苦手でね。ヴォルフに頼んでよかったよ。」
「こ・・これくらいなんともない。それより、衣装が決まったら、姉上に似合いそうな装飾品を贈るから、きちんとつけるのだぞ!」
「うーん、装飾品とか苦手なんだけどね?」
「わかっている、ちゃんとそのあたりはわきまえている。僕に任せろ。」
「うん、たのんだよ。ヴォルフ。」
あーー、アンタ!何、綺麗に笑ってるんだよ!ほら、ヴォルフの奴が目に見えてうろたえている。顔も真っ赤だし・・。
グウェンだって、なんか目元が潤んでるようなぁぁ?なー、あれって兄弟愛?本当に兄弟愛なんですかぁ?
「いや〜、仲良しだね〜あそこの兄弟は。でも、ああしていると兄弟って言うより、恋人ってかんじだよね〜ぇ?」
ややや、やはりそうか?らいばる??あいつらも、ライバルなのか?
「ねーねー!ビーレフェルト卿。しってる?女性に服を贈るのは、その服を脱がしたいからだって。」
これみよがしに、そんな事を大きな声でいってみるダイケンジャー。
ぎゃーーなんですと??脱がす?ぬがすって、コンラッドの服を?脱がしてどうするんだーー!
「やだな、服を脱がしてヤル事っていったら、ナニでしょう〜ねぇ?」
にやりと言葉の爆弾を落とす猊下。やはり、のけ者にされたことを静かにお怒りでしたか?
「ななな、何を言っている!大賢者!コンラートと僕は、兄弟だぞ!」
「えー?でも、兄弟だってスルでしょう?」
「なに?するの?さすが魔物の国!男同士だけでなく、兄弟もOKなのか?そうなのかぁぁ??」
村田の言葉に踊らされて、有利がヴォルフラムの首根っこをつかまえて、ガクガクゆらす。
あぁ、あれはいつも、陛下がヴォルフにやられている、脳みそシェイクだな〜。いつも冷静なコンラートでさえも、あまりの展開に、
脳が一時思考を放棄したようだ。その間に、ヴォルフはすっかり目が回ってしまった。慌てて、二人を引き剥がす。
「落ち着いて、陛下、ヴォルフ。猊下・・反応が面白いのはわかりますが、あまり二人で遊ばないでください。」
言っても無理だと思いつつも、一応苦言だけは呈しておく・・が、やはり、この4000年の記憶を持つ少年には通じていない。
「えー、僕は、お風呂の事を言ったまでだよ?兄弟だって、一緒に風呂くらいスルよねー?グレタ?変なおじちゃんたちだね?」
「うん、お風呂は、グレタもお母様と入るよ。お母様はね、脱ぐとすごいんだよ〜。」
!!!脱ぐとすごいって、なんなんですか?グレタさん/////!!
あまり、いたいけな青少年の妄想をかきたてるようなことを言わないでクダサイ。おとーさんは、お年頃ナンデス。
「なんか、面白くなってきたな〜。」
こうなったら、僕も当分、こっち(血盟城)に居るね。・・あれ?そういえば、ヨザックどうしたんだろう?
はたっと、気づいたが・・自分の護衛が帰ってこない?
「ヨザックだったら、お母様見て・・呆然として泣いちゃったよ〜。きっと、お母様がすっごく綺麗で感動したんだよね!」
どうやら、コンラートの姿を見て、色々ショックが大き過ぎたらしい。まぁ、長年、彼について副官を務めていた戦友でもあるし、
一度は命を預けた男が、綺麗な女性として、目の前にたったら、色々思うところがあるのだろう。きっと、物陰で泣いているに
違いない。うん、(めんどくさいから)そっとしておいてやろう。あー、僕ってなんて話のわかる上司だろう〜。♪えへ。
新たに大賢者という参加者を得て、血盟城は今日も騒がしくも平和な一日が過ぎていった。はてさて、どうなることやら?
3です。回想終わり〜。ちょっと、説明ばかりで進まなかったわ。
ヴォルフ・・・めでたく有利の恋のライバル認定。グウェンは・・・認定前か?
2008.4.12UP