今日からママのつくより ターゲットはママ!? |
カヴァルケードでは、今一人の女性の事で持ち切りだ。その女性とは、この国の友好国である 眞魔国の王女グレタ姫の母親である。 姫、曰く。 お母様は、料理が上手で・美人で・気立てがよく・剣が強く・ギャグが寒く(?)・器用で、 各国の情勢にも詳しく、貴族の身でありながら、市井にも詳しい、とても素敵な母親だと言うのだ。 その評判は、カヴァルケード内では、ちょっとした話題となっていたのだが、これを決定付けたのが、 先日行われた、第100回記念競技大会である……物々しい名前ではあるが、ぶっちゃけ、俗に言う 美人コンテストである。これに、とある理由から出場した彼女は、見事!なみいる姫君を蹴落として、 優勝したのであった!!つまりは、世界一の美女の栄冠に輝いたのであった! 姫の母、といえば、父親が眞魔国・国主である以上、その王妃であるはずだが、彼の国の王は、17歳の 少年王で、姫をとある事情で、引き取り娘として育てている。事実、親子と言えど二人の年齢差は 6・7歳くらいだ。普通なら、兄妹だろう。 また、その婚約者は、83歳だというので年齢的には、お爺ちゃんと孫だが、相手は魔族、魔族の寿命は 400年ほどで、人間の年で加算する場合、見た目で判断するので、彼もちょうど人で言えば17くらいだ。 この二人では、子育てに問題があるというので、母親として起用されたのが、かの女性だという。 つまり・・・彼女は独身(おぉぉ〜!。+。゚☆ヤッタァ(o゚∀゚从゚∀゚o)ヤッタァ☆゚。+。) その情報は、カヴァルケードならず、周辺の友好国にまで飛び火した。それはそうだ、競技会は、 お祭りのメインイベントとして、一般市民にも公開されたのだから。とうぜん、各国から集まった 民やら、参加していた貴族から優勝者の情報は広まった。 しかも、眞魔国でひっそりと売られていると言う、精巧な絵姿を手に入れた者までいて、 今や貴族の間では、その美しい女性の話題で持ち切りだ。 そして、当然と言うか、どの国の男も美女には目がない。それが、今や飛ぶ鳥落とす勢いの眞魔国の 中枢にいる女性で、それでいて貴族としては身分はそれなりにあるという。 ―― その『それなり』が曲者だった。 例え小国と言えど王族であるなら、一般市民の娘を家柄上 嫁には迎えられない。 でも、『それなり』の『身分がある』なら、『特別に王族に向かい入れれる』という淡い期待をもった。 逆に、身分はないが財産が有る者も、『それなり』の『身分しかないなら』『特別に降嫁して もらえる』かもしれないと考えた。 しかも彼女には、もれなく眞魔国との強いパイプラインが付いてくる。 まだ、友好を結べていない国では、違う意味でも色めき立った! そして、眞魔国と言えば人間の国の中でも特に親密なのが、ここカヴァルケード王室だ。 特に、次期女王のベアトリスの父で、王席から抜けたとはいえ、元王太子ヒスクライフ氏は 魔王本人から絶大な信頼を得ている。そして、彼の女性が愛娘とする、眞魔国王女(元廃国ゾラシア 王女)グレタ姫の人間世界での事実上の後見人でもある。 と、いうわけで…只今、カヴァルケード王室…というか、ヒスクライフ氏は、すんばらしい難問を 抱えている。一人の魔族の女性に対する縁談の仲介の申し込みが、世界中から押し寄せているのだ。 中には、直接謁見を申し込み、売り込んでくる者も多い。大小色々な王室やら貴族やら豪商まで、 さまざまな国のさまざまな身分の者が、我こそが!と、名乗りをあげに来るから大変だぁーー!! しかし、それは受けるわけにはいかないのだ。問題は、彼女の素性であった。 まず第一に彼女は、女性ではない! 第二に、身分はそれなりどころか、眞魔国元王太子殿下で、人間の国での身分は、真のシマロン王家・ ベラール王家の唯一の直系だ。人間の国と眞魔国の友好状態である今では、世界的に最も高貴な血筋なのだ! 第三に、これが一番問題だ。現魔王の恋人であり、彼にはもれなく溺愛している兄弟が付いてくる。 もしも、縁談など持ち込んだら、魔王の怒りを買い、中枢にいる彼の兄弟に敵意を持たれ、なおかつ 魔王にもれなく付いてくる、あの!腹黒い少年・双黒の大賢者に国ごと潰しかねられないぃぃ!! という、真、傾国の美女なのである! うんうんと、頭を悩ませていると、そこにひょっこり娘であり、次期女王であるベアトリスがやってきた。 「お父様、コンスタンツェお姉さま(=コンラート)への、縁談の申し込みにまたこんなに書状が 届きましてよ?」 という、娘の後ろには、高く積まれた書状を持ってかしずく文官が数名。 「・・・・・・・。」 もうやっていられないっっ!!正直げっそりとした父親に、心底同情したように娘が憐れみの 視線を向けて、こういった。 「お父様、午後からの謁見ですが、縁談のものはすべて私が変わりましょう。お父様は、 少しお休みください。」 「有難うベアトリス」 このところの、縁談の仲介依頼の殺到で、通常業務とあわせて仕事に忙殺されていたヒスクライフ氏は、 娘の気遣いに、涙腺がつい緩みそうになる。あぁ、なんて優しい娘に育って……。 「麗しのお姉さまにコナ掛けよなんて、身の程知らずは、この私が自ら成敗をっ――」 「まてまてまて!!いやいい、例え内容はくだらなくとも(←案外正直)、一国の使者の相手を するのだ。やはりこここは私が行こう!!」 半分目が据わっている娘に、うっかりホロリ・・としかけた父親は、慌てて止めに入った! 「まぁ、お父様、そんな無理をなされなくとも」 「いやいい、いいから、お前はグレタ様と遊んでなさい」 まだ何か言いたそうなベアトリスを下がらせて、ヒスクライフ氏はふかくふかぁ〜〜くタメ息をついた。 危うく娘によって、今まで築いてきた国際社会での地位を失う所だった。うっかりしていた、うちの 娘が競技会以来、あのウェラー卿を将来の目標として崇拝していたことを・・・。 「閣下、もう眞魔国に正直に話された方がよろしいのでは?」 文官の一人が、苦悩する上司にそう進言する。 魔王陛下には、並々ならぬ恩義がある。その為に、防波堤になりたかったのだが・・・。 「わかった。眞魔国に鳩を」 しかし・・もう、これ以上は、ヒスクライフ氏も限界である・・・仕方なく、彼は現状をそのまま、 眞魔国へと鳩でもって報告したのであった。 そして、時同じくして、同じ内容の鳩を飛ばした人物がいる。フリン・ギルビット。元小シマロン 属国である彼の国は、魔王陛下の活躍で独立を果たした後は、その友好国としてカヴァルケードと 並ぶ重要国である。領主のフリンは女性ではあるが、魔王・賢者・三男閣下のよき友人であり、 少年達の良きお姉さんといったポジションにいる。 当然と言うか、この彼女の元にも、魔王息女の母親たる女性について、縁談の仲介を求める話が 多量に持ち込まれたのであった。ただ、彼女の方は、その女性の事をよくは知らなかった。 よもや実は男性です・・なんて事も知らないわけなので、うち、何人かお眼鏡のかなった男性を 勧めてきたりしている。 その上、こんな事を伝えてきた。 「結婚って、女の幸せを左右する人生の大事よねっ!?よろしければ、コンスタンツェ様の好み なんて教えていただけないかしら?(uдu*)ウフ 結婚の先輩として、私が厳選してさしあげますわ!!」 という、なんというか・・・興奮した鼻息が聞こえそうなメッセージだ。 やはり、フリンも年頃の女性、恋のお話には敏感なのだろう?当事者よりも、盛り上げって居る 様子が見れる・・・なんなら、厳選した男性に、見合い権をかけて争わせましょうか?と、なにか 勘違いしているような提案までついていた、あぁ、そうだ、あの国も娯楽が少なそうだもんな〜・・・。 多少、おもしろがっている節もあるが、純然たる好意なのだろが…… 「うわぁぁん、フリンの馬鹿ぁぁ〜〜!」 逆効果である・・ ^^; 「落ち着けよ有利。フリンさんは、何も知らないんだから仕方ないだろう?まさか、かの競技会 優勝者が実は男です。しかも、正体は、君の護衛であるウェラー卿コンラート閣下だなんてねぇ〜?」 「ユーリ…フリンにいって、その縁談とやらをもってきた連中の名簿を全部よこすように言え! 僕がけっちょんけっちょん!に、切り刻んでやるわぁぁ!!」 「うわ〜でたよ、シスコンプー!」 ヴォルフラムは、コンラートが女性化すると、何故かシスコンに早代わりする。男性の時は、 そうでもないのに…? 「まぁまぁ、縁談がいくらきたって、受けれるわけがないんですから、とにかく皆断りましょう。」 と、穏やかに言ったのは、当事者であるコンラートだ。 眞魔国国主の専属護衛で、眞魔国王女が帰国滞在中は、フェラー卿コンスタンツェこと、彼女の 母親にパパッとかわる。それはもう見事だ。彼は、愛娘が関る時のみママスイッチが入り…それが 一旦入ると、見事な母親に変身するのだ。なお、それは脳内の話で、実際に姿を女性に変えるには、 赤い悪魔特製の妖しい薬を飲む事になっている。それにしても、不思議なのは、何一つ男性の頃と 口調なども変わらないのに…ナチュラルに女性に見える事である。やはり、元から穏やかな性格 (?)と、品のある仕草のおかげか? 「何を呑気に言っているんだ!大体、コンラート!お前は昔から男にも色目を使われているじゃないかっ! その内、男でも子持ち昆布でもいいからって、しつこいのが来たらどうするんだぁ!?」 プー・・子持ち昆布って・・・・ヾ(−−;) 「いやだな〜〜、その時は断ってくれるんでしょう?」 くりんと、振り向いた先にいるのは、兄であるフォンヴォルテール卿グウェンダルだ。ここで、陛下を 見ないところがミソ。厄介ごとは、陛下に煩わせずに、兄を使おうと言う・・この男の本心が垣間見える。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぁな‥」 それでも、弟想いである兄は、理不尽な物を感じつつも承諾する。もとより、可愛い弟二人に悪い虫 などつける気などはない。そう 二人 に……実は、ヴォルフラムにも、縁談がごっそりきているのだ。 「でもさ、ビーレフェルト卿にも、縁談が来ているんだろう?」 「何を馬鹿な?僕は、ユーリの婚約者だぞ?来るわけがなかろう?」 「え〜?でも、ヨザックの話だと、君にも ごそッりきているって?…あぁ、お兄ちゃんは大変だね〜?」 意味深な視線を、摂政閣下に向ける賢者さま…が、絶対に此処で間違えていけないのは、この振りは 同情でもなく、楽しんでいるに違いないと言うことだ。 つーか、人が隠していたのをわざわざ此処でいうなーー! と、内心言いたいことは山ほどあるが、懸命にも摂政は口をつぐんでいた。 「そうなのですか?兄上?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぁな。」 その不自然な間に、何かを感じ取った次男。忘れてはいけない・・今は有利やグレタに構いっきりだが、 元々はこの次男、末の弟である三男を猫かわいがりしていた、生っっ粋! の ブラコンなのである。 「へェ・・誰ですか?グウェン……その縁談とやらの資料、俺にも見せてくださいよ?」 「いやだ。」 が、長男は、今度は すかさず断った。次男の性格は、把握済みである。 「何でですか?俺だって兄として、把握する権利はあるでしょう?」 「してどうする?」 「そうですね〜?ヴォルフが望んだなら話は違いますが……。」 「僕は、縁談なんて嫌だぞっ!」 「と言っていますし、お断りの使者に立とうかなっと?」 一見、至極まとものな意見だ…が‥ヒシヒシと彼から殺気のような気配が漂ってくる。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、行かないでいい。」 「でも、相手はそれ相応の国や、貴族でしょう?紙切れ一枚ですまない場合も‥。」 「あっても、お前はだめだっ!……お前、何かするつもりだろう?」 「あははは、何って?可愛い弟のために、丁寧に断りを入れるだけでしょう?」 その『丁寧に』が曲者である事を熟知している長兄は、その手には乗らなかった。 「まずは、お前は、自分に来る縁談の始末を考えろ!ヴォルフラムのは、私が断る!」 ちっ・・・ 「ちッ、じゃなーーい!」 「いやぁー、面白い兄弟だね〜。」 「ムラケン・・・あの三兄弟で遊ぶのは、やめてやってくれ」 魔王陛下がげっそりと騒ぎを見ながら、呟いた。 2009年11月10日UP 久々の、今日からママのつくシリーズです。うーと、本当は連載だったんですが。短編で出しました。 このシリーズだけはチョコチョコネタがあるんですよね。書く暇がないだけで・・・。 さて、この後、どうなるのでしょうね?次男と末弟が最近似て来たと思う長男。彼だけが苦労を 背負っているような?このシリーズの長男は、ちょっと不憫かもしれない??(ξ^∇^ξ) ホホホホホ |