| 今日からママシリーズ 番外・If・・ もしも地球にコンママがきちゃったら? その2−3 嵐の学園祭 |
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10万打企画・リクエスト
そして、やってきました!学園祭当日! 体育館には、学園祭ということでPTAやOB、それに近隣の学生や地元の人たちなどで結構にぎわっていた。 有利は、衣装に着替えてスタンバイするも・・イマイチ不安が隠しきれない。 それもそのはず、新しい台本を与えられたのが三日前!流れだけ覚えればいいといわれたその台本 ・・何かがおかしい。 詳しい台詞は、ほぼ前の台本と一緒なのだが、登場人物の設定が変わり、主役が王子と姫から、もう一人 なぞの騎士というのが増えているのだが・・。 「謎の騎士は謎のまま、シークレットなんだ!」 という、演出家の意向でなぜか有利は主役なのに、教えてもらえなかった・・そして、その演出家であるが・・ 「なぜ、埼玉県立のおれの学校のクラスの劇に、都内進学校生のお前がいるんだ村田健!!」 「あっはっはっはっは、それは、中学の同級生に助っ人を頼まれたからさ!」 「仙道!なんで、村田に頼むんだ。コイツは頭は良いけど!趣味はこれなんだぞ!!」 といって、有利は衣装を摘んで見せた!たしか、ロングドレスのネズミーな国ののシ○デレラのようであった 衣装は、今は黒を基調としたゴシックなフリフリのリボンも多いミニスカートドレスへと変わってしまった!! しかも、オーバーニーソックスという太ももまであるソックスに、絶対領域といわれるスカートとソックスの間の 素肌もまぶしいその衣装に・・有利は泣きそうになった。 「まぁまぁ、こういう非常事態には、非常識な男で対応しようという思い切った作戦なんだから!」 「常識で対応してくれーーー!!」 「ふふ、常識だと、対応しきれない敵なんだから、仕方ないだろう?」 村田は、きらりと眼鏡を光らせた。 「えぇ、そうですね。では、会長・・・どうやら、王子役が到着しました。」 同じく不適な笑みを浮かべて、クラスメイトの一人の女子がくすりと笑う。 「明日葉くん、準備は出来ているかね?」 「えぇ、皆やる気満々、はっ倒す気凛々です。」 「ほう?それは頼もしい。」 ほへ??と、一人わからない様子の有利の周りでは、同じ笑いをしたクラスメイトが・・ 「では、作戦開始だ。大根役者・・いや、うちの姫はひとまず隠せ!元王子役スタンバイはいいか!」 「誰が大根だぁぁ!!もが・・もがぐがあががが・・・」 女子が数人、姫君を反対側の舞台袖へと連れてゆく。 「OKです会長!」 「偽王子役は?」 「そちらもスタンバイOKです。」 「衣装班やメイク班は?」 「会長・鳥篭班と持ち上げ班、全員所定位置につきました。準備OKです!」 「では、伊東君を呼びたまえ!」 僕らの劇の初まりだ!! 「上久保さん、ようこそおいでくださいました。先日は、失礼な態度をとってスミマセンでした。」 ペコリと、体育館の裏の出入り口から、出迎えたクラス委員の伊東が挨拶をする。 「やぁ、俺は別に気にしていないから。今日は、皆さんの応援にきたんだけど、ちょっと挨拶していいかい?」 差し入れも持ってきたんだよといって、箱を示す。中は紙パックのジュースだ。 「それが・・実はトラブルが発生しまして・・ちょっと、今、楽屋裏は立て込んでいて・・」 伊東がすまなそうにいうと、上久保の目が光る。 「トラブル?何かあったのかい?俺でよければ力になるよ?」 すると、やはり一緒にやってきた学年主任が、伊東を促す。 「なんだ?何があったんだ?伊東、上久保はこの道のプロだし、相談してみろ。」 先生にまでそういわれて、実はと伊東は、体育館袖のドアを開けた。 「駄目です!俺にはできません!!」 三人が中に入ると同時に、男子生徒の悲壮な声がした。 「何を言っているんだ!大丈夫だ、台詞は舞台袖からコッソリ教えるから!」 「だって、三日ですよ?他の皆は一ヶ月以上練習しているのに、僕はこの三日で主役をやれといわれても!」 そう、訴えるのは、王子の衣装を着た仙道君であった。 「すまない・・俺が怪我なんてしたばかりに・・・」 そういって、一人の生徒が皆に謝る。腕には包帯が巻かれ、松葉杖をつくのは練習の時は王子をやっていた生徒だ。 「あれは?」 「はい、実は王子役の生徒が怪我をして、急遽 別の代役を立てたのですが・・三日しかなかったので、自分には 出来ないと ここにきて言い出しまして、今 必死で皆で説得している最中なんです。」 「それは大変だね。」 よし、代役には、この差し入れのジュースに仕込んだ下剤で、トイレにでも こもってもらおうと思っていたが、 丁度自分から降板してくれるとはありがたい。 しめしめと、上久保は心の中でほくそえむ。 「はい、なにせ王子の台詞は舞台袖から教える事もできるのですが、全体的な流れはわかっていても、細かな 段取りなどは、覚え切れなかったようで・・・そこはアドリブでと言ったんですが。」 「伊東!なぁ、僕には無理だ。アドリブだなんてそんなの、バスケット一本でやってきた僕にそんなことが 出来るわけがないだろう?」 -- あの仙道君って言うのは、迫真の演技だね?本当にバスケ部? -- 本当ですよ。神経が図太くって本番に強いタイプなんで、やらせてみたんですがビンゴでしたね。 -- アドリブでよくあそこまでできるもんだ。大体、さっきまで俺だったのに、急に僕って? 気弱な少年設定の演出なのだろうか? -- 会長、そろそろですね。 -- わかった、持ち上げ班出番だ! 「伊東、仙道はシャイだし、これ以上は無理にやらせてもかわいそうじゃないか?」 「でも、越野・・だったら誰が出来るって言うんだ?」 伊東が頭を抱えていると、女子のグループが、すがりつくように上久保に走りよった! 「あの・・上久保さん、こういったときはどうすればいいのでしょうか?」 「お願いです!上久保さん、アドバイスをお願いします。」 「もうあと三十分で開演なんです、上久保さん助けて!!」 うるうると、女子がこぞって上久保の周りにあつまり、瞳を潤ませて縋り付く。 「わかった・・どうにかしよう。俺に任せてくれないか?」 「上久保さん、本当ですか?」 「あぁ、伊東くん、王子役は俺がやろうじゃないか?」 「えぇ!ですが、台詞は?」 「オイオイ俺を誰だと思っているんだい?プロの俳優だぜ?君達の練習はみていたし、大体の台詞も頭に 入っている、流れはわかるし、いざとなればアドリブで乗り切ってみせるさ。」 どんと、胸を叩く上久保に、女子から黄色い声援が飛ぶ。 「「「きゃぁ!さすがは、今一番光っている芸能人!上久保健也様ってば、やっぱりかっこいい!!」」」 「え?そうなのかい?まぁ、ここはプロに任せておきなさい。」 祭り上げられ、上機嫌の上久保に、伊東の目が一瞬きらりと光る。 「先生、上久保さんが、こうおしゃっていますが、『学生以外のご協力』は、大丈夫でしょうか?」 「まぁ、大丈夫だ。俺から校長に話しをしておこう、上久保ありがとうな!」 「いえいえ、先生。俺も母校に恩返しが出来て嬉しいですよ。」 どうやら3人の中で話しは、まとまったようだ。そのまま学園主任は、校長の所へといった。 「じゃぁ、先輩?こちらで衣装を合わせてもらえますか?所々直したいですから?」 教師がいなくなると、村田がそそくさと出てきて、上久保を案内すると、衣装係の別働隊が既に仙道から衣装を うけとって、待機して待っていた。さっさと着せると裾直しテープで簡単に直してゆく。 メイクの担当者が、ささっとメイクをしてゆく。 そして開演のブザーが鳴った!! このクラスの劇は、よくある童話のパターンで、小さな国のお姫様が悪い魔法使いに見初められ、自分の 息子の嫁にと連れ去られる。だが、姫には思い交わした王子がいて、彼は姫を助けるために魔法使いと対峙、 見事打ち破って姫を助けて、めでたしめでたし!のハッピーエンドストーリーだ。 「ふふ、それだけ、からみがあれば、その間にキスの一つや二つ奪うこともできるしな・・。」 あんな初心そうな少女など、上久保が大人の色気でせまれば、ころりと落ちるに決まっている。 舞台では、丁度、有利姫が魔法使いに攫われるシーンである。 新しいドレスになって、より彼女の可愛らしさが強調されている。この前のロングもいいが、今日の乙女チックな ミニドレスも中々イイ。あれだけ短ければ、ドサクサに色々触っても大丈夫だろう。(←注・猥褻罪) そして、とうとう王子の登場だ。姫が攫われ泣き暮らす王は、もしも姫を助け出したらば、姫との結婚を許すという お触れを出して、国中の騎士を集めた。その中に上久保扮する王子もいるわけである。 「王よ、心配なされるな。ユーリ姫は、必ずお助けしてみせましょう。」 集められた騎士役らしい一人が、台詞を言うのをおや?と思ってみる。どうやら女性らしいが、中々の心に 染み入るような美声だ。それに仮面に隠れてよく見えないが、その横顔は凛としてかなりの美人と見た。 はて?練習の時、こんな女の子は居ただろうか? 「おお、勇敢な騎士たちよ。どうかわが姫を助けてくだされ!」 「お任せあれ、王よ!きっと姫はこの僕が、助けてみせましょう!」 ぱっと、スポットライトが当たり、観客に向かって決めポーズをとれば、王子役の正体に気がついて、 観客席がざわめく。 「きゃぁ、あれ!上久保健也よ。」 「えぇ、なんでいるの?つーか、生健也ってかっこいーー!」 「うちのOBだとは聞いていたけど、学祭の劇に出てくれるなんてすごーい。」 黄色い声があちこちから湧き上がり、学生劇の舞台とはいえ、いい気分だ。 さて、この後、王子は魔女と対決して、見事魔女を退治するのだ。有利扮する姫が、バルコニーのセットから、 見ていた。殺陣は前のテレビドラマでしたことがある、きっと、彼女も自分の雄姿に感動しているだろう。 「あの人、動きが雑だな・・アンなんじゃ普通切られちゃうよね?つーか、何であんなに一々 俺の方見るんだと思う?」 「まぁ、渋谷は、ウェラー卿の剣技を知っているからね。彼に比べる方が酷だろう?渋谷流に言えば、 メジャーリーガーと、リトルリーガーを比べるようなものさ。あ、次の台詞は・・」 有利は、台詞補助に入った村田と小声で会話をしながら、舞台の様子をみている。王子が魔女の手下を 剣で切り伏せ、魔法使いと対峙する所であった。 「あれ?あの手下役の人たち・・クラスの奴じゃないな?」 「あぁ、よりリアル感を出したいから、剣道部の人に頼んだんだよ。」 「へぇ・・だから衣装が魔女の手下なのに忍者・・・。」 「いや、木刀と、かぼちゃパンツが似あわなくってさ〜。」 「それ、木刀の問題じゃねーよ。」 やはりこいつの演出はわからん!有利は、友人の趣味だけは一生わからないような気がした瞬間だった。 その、忍者が ばたばたと周りに倒れている中、とうとう王子が魔女をやっつけて、魔女が捨て台詞をはいて 退場した。なお、忍者も地味に匍匐後進(−−;)して、舞台袖に消えてゆく。 さて、ここからが有利も出番だ。バルコニ−から舞台へと降りた有利は、王子の待つ舞台中央へと移動する。 「有利姫、ご無事で何よりです!」 「王子様!助けてくださって有難うございます。」 「いいのです、愛しの姫よ。美しい貴方が無事なら、茨の道も越えて見せましょう。」 がばり!!と、上久保王子は、有利姫を突然抱き込んだ! きゃぁあ ♥ ♥ 会場からは、なぜか喜ぶ女性陣の声が。 「ちょっと上久保さん、ここ!そんなシーンないですよ。」 有利は抱きしめられながら、こそっと上久保に小声で訴えた。 「あれそうだった、ごめんまちがえみたいだ。俺に合わせてアドリブで乗りきろう・ね?」 すると、上久保は有利の耳元に唇を寄せ、息を吹き込むように囁く、ポイントは最後の『ね』だ。 そこを吐息で切なくいえば、たいていの女はうっとりと・・ 「げぇ〜」 有利は、不満たらたらの声を上げた。アドリブなんて芸当できるかーーというところだ。 うっとりと・・・?・・・あれ? 「・・・・・・・。」 おかしい、いつもならこれで女の子は上久保の言うことを聞くようになるのに。もしや、この子不感症じゃあ?(←失礼) いや、ちょっと大人の技過ぎただけかもしれない。こうなれば、このままキスに持ち込んでしまえ! 「姫、魔法使いも倒しましたし、二人で城に戻りましょう。そして、末永く幸せに暮らしましょうね。」 「王子様・・?」 上久保は、がしっと!!有利の腰を引き寄せると顎に手をやり、にこりと微笑んで有利の唇に己のを近づけてゆく。 「・・え・・ちょっと・・上久保さん?」 あわてた有利が、身を引こうとするも。がっしりつかまれて身動き取れない。ぐんぐん迫る唇に、有利は蒼白となる。 このままでは、男に唇を奪われてしまう!そんなのいやだ!!だけれど、自分の力ではこのピンチから脱出は難しい! ひぃぃーーー!! 「た・・・助けてーーー!!コンラッドーーー!!!」 思わず、有利は無意識に、いつものように絶対的守護者を呼んでしまった。 すると? ぱかーーん!!と、客席から飛んできたものが上久保王子の顔にクリーンヒットした! 「ぶ??な・・・なんだ!?」 それは愛らしい編みぐるみの豚。 -- 子猫タンだ!! おや?今ドコからか、眉間に皺のある御大の声が聞こえたような気がした有利姫。が、・・その前に、有利には この微妙なデザインの編みぐるみに心当たりがあった。 すると、体育館の照明が全て落ち真っ暗になったと思ったら、パッ!!っと、舞台ではなく、客席の中央に 四方からスポットライトがあたり、そこにはマスクで顔を隠し、羽のついた帽子にマントを翻した騎士が一人。 そして、有利たちのほうにもスポットライトが当たる。 「このエロ王子が、俺のユーリに許可無く触るんじゃない!」(←ドサクサ紛れで言いたい放題) 「な・・なんだと!?」 低く抑えられた女性の声ではあったが、それでも有利はその人が誰だかわかった。 「王子、お前の悪巧みはわかっている。魔法使いに金を握らせ姫を攫い、助け出すと見せかけてユーリを自分のものに しようなどと、姑息で汚い男め!ユーリは俺の恋人だ、返してもらおう!」 「は??」 上久保は、身に覚えの無い展開に、どうなっているのかと目をテンにした。 「ふはははは!気がついたか。さすがは、王国一の騎士。そうだ。王子は姫にお前という恋人がいることが わかり、我が『魔法結社・報酬次第で何でもやりまっせ!魔法使いのサカイ♪』へ、ユーリ姫の誘拐を依頼してきたのだ!」 すると体育館の2階通路に、さっき退場した魔法使いが悪役ヨロシクのけぞって笑っていた。 ケッコウノリノリな魔法使いだ。 「え〜?結社って何?サカイっていったら引越しじゃないのかよ?」 有利がいつもの調子で、ツッコミを入れている。ボケられると、突っ込まずにはいられない性分らしい。 「さぁ!手下達!王国の騎士を懲らしめてやりなさい!!」 って・・!微妙に水戸○門が入っているのはなんで? 「「「あらほらさっさーー!!」」」 でもって、手下は昔懐かしいアニメ風の掛け声なのは、何でなんだよっ!? 暗闇に紛れていた先程の忍者達が、生徒達の間から飛び出すと、うわぁ凝った演出だな〜と歓声が沸く。 まずは、二人が飛び出して、騎士に向かって木刀を振り上げた。 この二人、剣道部の部長と副部長だ。騎士は彼らとアイコンタクトを取ると、まずは副部長が突きの体勢で つっこんできて騎士の右脇の下に木刀をつきたて、その切っ先がマントを引っ掛けると騎士が体を左捩って、 忍者が右に木刀を振っるとマントだけが派手に飛ばされた。 そこに、次の部長が面に向かって下から掬う様に斜めになぎ払う! きゃぁぁ!という女子の悲鳴が聞こえるが、木刀がその横顔を張り飛ばす前に、騎士の体が沈み込んだ。 木刀はマスクと帽子をなぎ払った!! この間、わずか10秒有ったか無いかだ。上久保の時の殺陣とはまったく違う。これは本気の打合いだから出来た ことだった。最初のマントはまだ簡単だ、突きの攻撃は一直線だし、互いに体をひねればいいだけだ。 だが、次の帽子とマスクは小さい上に顔の近くでこれを剣速を緩めないでするには、互いの息が合わないと無理だ。 剣道部の者達は、その間合いを見事に合わせてきたコンラートの体裁きに思わず目を見張った。 演出の村田いわく、彼女コンスタンツェは元職業軍人と聞いていたが、やはり本物は違うのか!? 部長と副部長の二人は、思わずごくりと喉を鳴らした。 この後は、演出なしで本気で打ち込めと言われている。それを彼女なら全て捌いてくれるだろうからと。 言われた時は、半信半疑であったが・・今の十数秒で本当にすごい人だと、対峙した彼らにはわかった。 「皆、気を抜くな!相手は本当に強いぞ!」 二人の緊張が、忍者達こと剣道部員に伝わる。 「「「はい!」」」 この時、忍者達は役のことを忘れて、ただ強い人に思いっきり挑めることに、興奮を覚えていた。 この息も尽かさぬ演出は村田の発案だが、伊東は舌を巻く思いだ。最初は危ないと反対した伊東だが、観客と渋谷の 心を掴むには、このくらい派手なアクション演出でないと、むりだという。そう、この劇は、ここからが本番なのだ。 上久保の計画を知った村田は、伊東の協力を得て、それを逆手に取った裏シナリオを作ったのだ。 魔法使いを退治してお姫様と王子が結婚してめでたしというストーリーを、実は黒幕が王子で、しかも有利王子 には将来を誓い合った騎士がついていたという。身分によって打ち明けられない恋心。秘密の恋人なんて、 乙女が喜びそうな内容だ。 それが、3日前に渡されたシナリオだ。有利には流れだけ覚えさせて、あえて全ての演出を教えなかったのには、 彼は演技をさせるよりも・・そのままでいいからであった。だって、有利のナイトといえば・・当然この人しか いなかったからだ。 マントや帽子がひらりと飛んでゆくと、そこには長い髪を後ろで細いリボンでまとめ、いつものカーキ色の 軍服を着込んだ・・イヤ違う、上着はいつもの軍服だが、その下に着ているのはフリルのブラウスで、首元は 大きなリボンが飾られているし、袖口から手の甲に掛かったフリルに、その上着からすらりと伸びるおみ足は 編みタイツに覆われていて、膝下のロングブーツはいつものではなく編み上げだし、極めつけは白のフリルの ミニスカート。それが堅い上着の下からふわりとみえていて、軍服のストイックさと、フリルの甘さが絶妙な 有利の絶対守護者(女性バージョン)が、余裕の笑みで立っていた。 突然現れた凛々しい女騎士に、会場は一様にうっとりだ。麗人は、舞台上の有利王子に向かって優しく微笑んだ。 「ユーリ王子、今助けるから、ちょっと待っていてね?」 「コンラッド!うん、まっている ♥ 」 有利は、恋人の登場で、すっかりぽーん!と、ここが舞台の上であることも忘れて、うっとりと両手を胸の前で 組んで乙女の祈りのようなポーズで、コンラートだけを見つめている。 「王子??」 あれ、舞台にいるのは姫のはず?すると、どこからともなく黒子がやってきて、乙女の祈りポーズの有利の 後ろに回ってリボンをはずせば、ささっとスカートが外れて、下には黒いショートパンツが。 そして、鬘もとってしまい、変わりに猫耳(←村田の趣味)をつければ、そこには女の子のように可愛い猫王子がいた。 「お・・男の子・・なのか?」 「む・・なんだよ、俺は正真正銘男だっつーの!」 プンスカ!っと、拳を固める仕草が・・むちゃっ!可愛いじゃねー?こ・・これでマジ男? 「な・・なんだと、大体あの美人は何だ?それと、どうなっているんだこの劇は?」 とにかく舞台袖に!と、上久保が動くと、カーーン!という音と共に、木刀が舞台まで飛んできた! 危うくぶつかる所だった上久保は、自然にその飛んできた方を非難めいた目で見た。 そこには・・・絶対に逃さないという目をした騎士がいた。そう、彼女が木刀を狙いすまして飛ばしたのだ。 それも、自分のではなく、相手の木刀をだ。なんだ?あの女?・・そこでハッとなった。 あの美人・・見覚えがある!そうだ、彼女こそ、上久保が追っていた都市伝説の女性ではないか!? 『上久保が逃げる、鳥篭班!舞台に上がれ!!』 村田が舞台袖から、携帯を使って指示を出した!すると、舞台に複数の男子生徒が現れた!彼らは舞台中央に集まると、 上久保を取り囲むように円陣を汲んでしまった!彼らは、本来魔法使いの手下役をする事になっていたクラスの男子達だ。 「大丈夫ですか王子?ここは、我等がお守りしますので・・」 ニコニコと笑う彼らだが、その目はまったく笑っていない。 舞台に縫いとめられた上久保は、最後までこの劇に付き合うことを余儀なくされた。 その間、剣道部とコンラートの間で真剣勝負が繰り広げられていた。最初の二檄の他は本気で打ち合え!という 指示しかでていないからである。あの二劇で十分相手の力量はわかった。どうみても、軽く自分達より上を行く人だ。 忍者達は次々と木刀を繰り出していくも、彼女によって良い様にあしらわれていく。 こちらは複数、対して彼女は一人。なのに、息が上がっているのは、忍者達の方だ。 「そろそろ、終わりにさせてもらうよ?」 はっときがつくと、舞台のすぐ下まで追い詰められてしまっていた。一体いつの間に、押し返されていたのだろう? ここまできたら、もう終わりだ。もう少し打ち合いたかったが、それはまた今度、できれば稽古という形でして いただきたい。 彼女がにこっと笑った。口がお疲れ様と声に出さずに告げている。 忍者達は、これで最後だと一人、また一人うちにって、木刀を全てはじかれ飛ばされると舞台の左右に散った。 舞台の袖では、裏方の女子達が待っていて、戻ってきた剣道部の皆さん一人一人にタオルとつめたい ドリンクを渡してゆく。クラス委員の伊東が、剣道部の先輩に頭を下げる。 「有難うございました。おかげで、すごい緊迫感が出せましたよ。」 「いや、伊東、こちらこそ彼女と打ち合わせて頂いて感謝する。あんなすごい人、はじめてだよ。 ぜひ今度稽古つけてくれるように頼みたいのだが・・。」 ピクリ!! 「コンスタンツェお姉さまの剣道の胴着姿か?そ・・それもかっこいいな。」 「ねぇ、カガリ?そうなったら、お姉さまにタオルの差し入れとか、僕したいなー!」 「ずるいぞ、キラ!じゃあ・・じゃあ!私はドリンクの差し入れだ!」 きゃっきゃっ!とクラスの女子が喜ぶ横で・・いや、まだ決まってないしと、伊東は一人ごちた。 「じゃぁ、あとで、コンスタンツェさんに伝えておきます。」 「よろしく頼む!」 舞台では、まだ劇は続いている。それに合わせて舞台裏も忙しくなる。村田は舞台で起きる事全てに対処するべく 目を離さずにいるので、伊東が実際には裏で忙しく立ち回っている。さぁ、ここまで来れば後は終劇に向けて 一気に畳み掛ける。 「がんばってください、コンスタンツェさん。」 あとの、仕上げは彼女に掛かっていた。 その騎士は、とうとう舞台に上がった。 舞台には、一見、王子と王女を守るように囲む魔法使いの手下達だが、その実、上久保を舞台から下ろさないように 鳥篭の役目をしていた。 「ど・・どういうことだ!?」 つい、訳がわからずにあげた言葉は、この状況を示す問いだったはずだ。だがそれは、彼の悪事を暴く きっかけになってしまった。 「どういうこと?あぁ、俺がこの場にいることですか?確かに不思議でしょうね?姫奪還に動いた他の騎士や 剣士たちは、貴方が命じた者たちが、始末したから?でも、残念でした。貴方の手下はこれこの通り?」 パチン!と、騎士が指を鳴らすと、引きずられるように縛られた男たちが出てきた。 こちらは今風のチャラ男達、それを見た上久保の様子が一変した。それは、自分の後輩達、例の王子役の少年と クラス委員の伊東を襲わせた奴等がなぜここに!? 「ぬはははは!この卑怯者たちは、この桜木様が捕まえてやったのよ!」 腰に手を当て、ふんぞりかえって自慢するのは、公園前のおじいちゃん。赤い髪の坊主で名物になっている おじいさんの登場に、まぁ、地域の方も出演しているなんて、この学校は地元の人と交流が出来ているのね。 などと、観客席の父兄から声が上がり、校長たちは、学生以外の協力って、上久保君一人ではなかったのか?と、 学年主任に問いただしていた。 「うわ〜、おじいちゃん、かっこいいーー!」 有利も手放しで褒め称えるのだが・・・渋谷・・君・・この不自然さに、まったく気がついていないんだねと、 その大物ぶりに、村田はやれやれと、肩をすくめた。 なお、可愛い王子にまで褒められて、ぬははは!!と高笑いをしていた桜木のおじいちゃんは、お隣の流川の おじいさんに『調子に乗るな、どあほう』と、叩かれて袖に引きずられていってしまった。 「ぬぬぬ、もはやこれまでだな・・王子これ以上は契約外なので我等はここで手を引かせてもらいます。」 「なに?」 「私が受けおったのは、姫の誘拐と、一芝居売っての姫の引渡しのみ、手下もこれだけ痛めつけられては 治療費で前金は、パァ!・・まぁ、ぶっちゃけ?割が合いそうもないんで、ほな、さいならーー!」 「「ばっははーーーい!!」」 金〜〜のきれめ〜〜は縁の切れ目〜〜っとくりゃ♪ と、一体誰が作ったのだか?学生劇にしては、せちがない内容の歌を歌いながら彼らは踊って左右に分かれる。 だから、なんでこいつら、微妙に昔風なの?やはり演出が村田だからか? と、有利の心の突っ込みをさておき、魔法使いと愉快な手下たちは、明るく退場してしまった。 舞台に残ったのは、縛られてトホホーな青年達と、微妙なツッコミを入れる人質の姫と顔面蒼白な王子と ・・殺る気満々の麗しの騎士だけであった。 綺麗に微笑んでみせる、正真正銘の美人!が、その瞳が見事に笑っていない。 「ひぃー、何このヒト?綺麗な笑顔が・・なんでこんなにも命の危機を感じなくてはいけないんだー!?」 王子は、きょろきょろと周りを見回し、逃げ道を探したが両脇は、忍者達が木刀片手に待ち構え、舞台の下へと おもっても、笑顔の騎士がそれを許すはずもなく、ならば後ろか?と、緞帳を上げてみれば、ずらりと並んだ 伊東くんを初めとするクラスの面々が、このクズがっ!!と、あからさまな侮蔑の視線で並んでいた。 「く・・くるな!」 はっとした上久保は、ボケラッっと舞台に立つ有利に目をつけた。たしか、この子は騎士役の女性の名づけ子! ぐいっと、有利をつかまえると、後ろ手に手首をひねりあげた! 「い・・いたっ!!」 ぴたり・・と、近づいていた女騎士が止まる。よし!このまま・・はっ!いや、ここでこいつ等を放って置いては まずい。上久保は、縛られている後輩達を残していくわけには行かないと、まずは彼らの縄を解くように要求した。 コンラートは、スタスタと男たちに近づくと、ザシュ!!見事に縄を手にした木刀で切った。 一体どうやってぇぇえ〜〜?? 「剣圧だろうね。あぁ、こまったな、渋谷を苦しめるものは、絶対に許さないヒトだからな・・怒りで今、グツグツ 煮え立っているね・・あれは・・。」 見守っていた村田が、コンラートの変化にきがついて、舞台裏にいる者たちに避難勧告を出した。 みな、左右にあるはしご階段から、2階の通路にむかって登る。 コンラートのことだ、観客席に向かっては攻撃の余波が行かないようには出来るだろうが・・舞台裏まで気を使えば 思いっきりは出来なくなる。そうなれば、有利が怪我の一つもする可能性がある。 「それは・・僕も許せないんだよね?」 コンラートは、ヒトの気配が舞台裏からなくなったことに気がついているはずだ。 「さぁ、ウェラー卿・ルッテンベルクの獅子の力・・存分に出してくれたまえ。」 解放されたチャラ男達が上久保の周りに集まる。 「おい・・その方の戒めを解け・・。」 超低空飛行のコンラートの声が、上久保たちに絡みつく。 「う・・うるさい、その木刀をこちらに抛れ!何で木刀で縄が切れるんだよ!マジ、アンタおかしいよ。」 うろたえながらも、コンラートの腕が生半可でないことは悟ったらしい。コンラートは、ぽいっと木刀を 彼らに向かって投げた。カラカラと音を立てて木刀が転がるのを、上久保が目に捉えたのを、コンラートは 見逃さなかった! 「ユーリ!動かないで!」 コンラートの腕から、金色の線が走った。それは、波打ちながら伸びてきて、有利を戒めていた上久保の腕に 当たった!思わず有利の腕をひねりあげていた手がはずれ、その隙に有利はコンラートに向かって走った! 「あ、待てこの野郎!」 チャラ男の一人が、有利に手を伸ばすが、再び襲った金の閃光が男の手を叩く! 「コンラッド!」 「ユーリ!」 腕を広げる美しい騎士の胸に、可愛い王子様が飛び込むと、観客席からは、一斉にシャッター音が!! バシバシっと、フラッシュがたかれ、携帯やらカメラやらに、麗しのワンシーンはしっかり保存された。 「さぁ、ユーリ。俺の後ろでちょっと待っていてね?俺は悪い男たちを退治しちゃいますから。」 「うん!がんばってねコンラッド!そいつ等早くさばいちゃってね!」 捌くってナンデスカーー!!?オレラ魚じゃないんだからー! 人質に去られ、男たちは不穏な王子の言葉の節々に、自分達にこれから起こるだろうことに恐怖した。 「たしか、貴方は芸能人でしたね?でしたら、お客さんたちを 楽しませて もらわなくっちゃいけませんね?」 ふふふっと、美しいヒトが取り出したのは、なんと金色の鞭!! それがさっきまで、女性の腕を飾っていた茨のブレスレットだとは、誰も気がつくまい。 なお、これをコンラートにプレゼントしたのは、彼の弟のヴォルフラムである。 「これで、言い寄る男をしばいてくださいね!」 そういって渡された時は、コンラートも弟は自分に何をさせたいんだろうと思ったのだが、いざ使ってみると 中々面白い武器であった。 「ヴォルフには感謝しなくちゃ・・中々面白い使い方が出来るしね?」 たとえばこんな? 「さぁ、It`s Show Time!! 」 ばしっ!!っと一回鞭を叩くと、それ!!っと、しなった金色の閃光が男たちの足元にビシッ!!と一回はねた! 「「うわっ!」」 飛びのく男たち!それに合わせて、鞭を数回足元で跳ねさせる。その度に、わっ!ひっ!あたっ!っと不恰好な ステップが踏まれていくのを、見ていた村田が、裏の放送室に戻って軽妙な音楽をかけてみた。 その音楽に合わせて、コンラートの鞭がしなる!音楽に合わせえ踊らせる妙技に、村田が面白がって有利も踊れる 夏の盆踊りの定番ソングをかけ始めた! 最初は足のステップだけだったのが、手が叩かれ、腰を叩かれ、尻を叩かれて あ、ほれ?あ、やれ?あ、ちょいちょい!と、なにやら秩父音頭を踊らされ始めた上久保たちに、 観客たちはどっと沸いた! 「あははは、なにあれ!健也が秩父音頭踊っているーー!」 「中々、面白い演出ね〜。学生劇って聞いていたけど、その辺の劇団より面白いわ〜。」 「ねぇねぇ。あれってば、コンスタンツェお姉さまよね?いつの間に、来日していたのかしら?」 既に在校生の中では、彼女は2年の渋谷有利の名づけ親として、有名な人物である。 その女性が、鮮やかな鞭裁きで舞台で男たちを、しばき倒していく様子に、女生徒はうっとりだ。 そんな女子に、ちょっと、男子生徒のほうは引き気味だが・・・。 「では、Finish といきましょうか?」 ビシバシビシバシ!!ビビッビビビッビ!!バシバシバシ!! っと、鞭がしなって、金色の旋風が巻き起こった!そして・・・ 「「「うわぁぁぁぁ!!!」」」 舞台上では、鞭で服を微塵にされた男達がいた。手で胸を隠して、内股のまま、驚いた男たちに、コンラートの 足が一閃して蹴落とした!綺麗にしなる白い足!翻るフリルのスカート、ちらりとみえた白い布におおおーー!! と、野郎どもが吠えたーーー! 「うぉぉ〜〜目にもまぶしいおみ足が!!」 「よかった!俺生きていて良かった!」 なにやら、感激している男子生徒たち!ここで既に、満場総立ち状態だ!その中をけり落とされた男たちは、 一目散に外に向かって逃げていった!! 外への扉をあけて、逃げ出すと・・そこには、複数の背広を着た男性たちがいた。そして、赤い坊主頭の派手な頭の おじいさんと怪我をした男子生徒・・。そして、クラス委員の伊東も。 「上久保健也だな。ここにいる男子生徒達への傷害未遂事件のについて、署までご同行してもらいたい。 もちろん・・彼らもだ。」 刑事達に囲まれて、彼らはその場へとヘナヘナと座り込んだ。 「さあ、ユーリ王子、悪い王子は退治しました。俺と一緒に城に帰りましょうね。」 「コンラッド!助けてくれて有難う。」 いつの間にか、BGMはロマンチックな音楽に変わる。村田のちょっとした二人へのご褒美だ。 上に逃げていた生徒達も舞台袖に戻ってきて、最後のシーンにむけて、背景などを急いで変える! そして、暗転しシーンは再び王城へ。 「よくやった。王国の騎士コンラートよ。約束どおり、有利王子をそなたの嫁にやろう。末永く 二人一緒に仲良く暮らすがいい!」 王様達が二人を迎えて、高らかに二人を祝福する。 「え?ちょっと待てお前等!おれ王子なんだろう?普通はコンラッドがお嫁入りするんじゃ?」 なにやらあわてる有利。いや、そこは劇なんだから、合わせようよ渋谷?という、クラスの視線。 すると、すっとコンラートが有利の耳元に顔を近付けると、 「ユーリ、俺のところに、お嫁に来てくれないの、おれ・・ユーリの花嫁姿みたいな・・ね?」 っと、吐息で口説いた。とたんに真っ赤になる有利王子!そして、コクコクと高速で頷いた! だが、この声は当然劇であるから、胸元のピンマイクが拾っているわけで・・? しまった!!と、村田があわててボリュームを下げたが後の祭り・・。 その声をマイクで聞いた男子生徒が、ブシューー!と鼻血を撒き散らし倒れこんだ!数人が保健室送りになり、 騒然とした。そんな中で逆に男子学生の数人が前を押さえてその場から動けなくなってしまったり、女生徒の方も、 ぽわ〜〜んとなってなぜか有利と一緒に頷いているし、見詰め合う二人を画像に収めようと息巻く一部が舞台の 下に押しかけたりと、とにかく舞台の下は大変なことになった!! 村田があわてて、舞台上の王様達に、とにかく終わらせるように指示を出した! 「ど・・どうやら、話はまとまったようだな!イヤーめでたしめでたし!!」(←ヤケ) 皆のもの、二人を祝福するんのだ!(←そしてやっぱり、時代劇調) 舞台上のクラスメイトもそれで我を取り戻し、拍手をして口々に祝福して・・裏では大急ぎで幕を下ろした。 とにかくこれ以上、衆目の前にこの二人をさらしちゃいけない!! 微妙に猥褻物扱いの二人・・。主役なのに・・・。 さて、有利を狙う悪い男たちの始末は、こうして無事つけられたのだが・・。 「まったく、キミタチは、TPOというものをもっとわきまえないか!」 最後の二人の悶着に、演出家・村田さんから、こっぴごく二人は怒られた! 「ウェラー卿!あんな所で、無駄に夜の帝王の声を出さない!お客さんたちが大変なことになっちゃった じゃないかーー!」 「はい、スイマセン猊下。」 正座をしつつ、コンラートは項垂れて素直にあやまる。 「渋谷、君も変な所で、変なツッコミをしない!あそこで、余計なことを言わなければ、よかったんだからね!」 「はい、ごめんなさい村田様。」 右に習って、有利も素直に謝る。 「なぁ、なんであの二人、あんなに村田君に弱いの?」 「渋谷はともかく、あの!名づけ親さんまで下手に出るなんて・・アイツ何者?」 こそこそと、級友達が囁きあう。 そこに、コンコンっと、扉が叩かれ眼鏡をかけた大学生が入ってきた。 「ゆーちゃん、コンスタンツェ?お前等なんでそんな所に正座しているんだ?」 「あ、ショーリ。」 「あ、兄貴」 二人が同時に、勝利をふりかえる。うるうると二人に目で助けてと訴えられて、うっ!っと勝利が引く。 見れば仁王立ちの大賢者が、二人の前に立ちはだかっていた。それで、大体のことは察した勝利。 「あー村田、そろそろ帰りたいんだが・・家でよく聞かせるから、その二人、許してくれないか?」 「・・・・・・わかりました、お兄さんがそういうなら、ここはお譲りしましょう。」 さすがに、いつまでも説教をしているのも、なんだと思う・・何せ、彼にはまだ、することもある。 「すげー、あれが渋谷の兄さんか?なんか、秀才っぽい。」 「村田が譲るなんて・・。」 もしや?このお兄さんが最強キャラ? 「あ、おれ着替えなくっちゃ。」 「じゃぁ、俺も・・。」 二人は、おのれ等がまだ、衣装であったことに気がついた。村田の気が変わらないうちに着替えようとすると、 ちょーーーと、待った!!と、勝利に止められた。 「罰としてそのままの恰好で帰るんだ。」 「「えぇーー!!」」 「外でおふくろ達が二人と写真を撮りたいそうだ・・・逆らったら?」 きらりーーん、と、勝利の眼鏡が輝く。渋谷家の陰の実力者・・ジェニファーに逆らったらどうなるかは、二人とも 見に染みている。 「「わかりました。」」 がっくりと、項垂れる二人・・。なお、有利は最初のお姫様姿にされてしまった。母のリクエストだという。 どうやら、力関係は・・渋谷母が最強らしい。 「なにはともあれ、ケッコウ楽しかったな。」 「そうそう、やっぱりコンスタンツェお姉さまがいらっしゃると、活気がでるわよね!」 いや・・彼女の場合、活気というより殺気・・伊東君はそう思ったが、今回は助けてもらったので、 そこは言わないでおいた。それにたしかに、色々あるが、彼女がかかわると、面白いことは面白い。 その只者ではないぶりは、有利とセットにすればするほど面白いのだ。 「コンスタンツェさん!」 「あぁ、伊東くん、今回は色々有難う。」 にっこりと、裏表のない笑顔で微笑みかけられれば、やはり伊東も健全な男の子だ、おもわず頬が赤くなる。 「いえ、こちらこそ危ない所を助けていただきましたし、有難うございます。それで、剣道部から伝言が、 ぜひ、一度稽古をつけて、いただきたいとの事です。」 それには、ちょっと困った顔のコンスタンツェ・・・あれ・こういう顔をするとこの人可愛いんだな? 「う〜〜ん、実は、剣道は知らないんだよ。俺のは、実践の剣術で、日本の道とかスポーツという概念がないんだ。 だから、剣道という健全な精神を剣で育てるというには、俺のは邪道過ぎるんだよ?わかるかな?」 そうか・・・このヒトは、本物の職業軍人だって言ってたっけ? 「わかりました。では、向うにはそう伝えておきます。お疲れ様でした!」 「うん、きみもお疲れ。じゃあ、またね。」 「はい!」 「皆さんもまた!」 コンスタンツェは、有利のクラスメイトにも、惜しみない笑顔を向ける。彼らも、有利を守ってくれた 人たちだ。おかげで、有利は何が起こったか知らずに、学園祭を楽しむことが出来た。 きっと、彼にとっては、この学園祭は、ひたすら楽しい思い出となったのだろう。それは、近い将来・・ この世界を捨てて、向うの世界に渡らねばならない彼にとって、きっと後々思い出しても、キラキラとした 想い出として残るに違いない。そうしてくれた、この友人達に、コンラートは、心から感謝した。 「「「はい、コンスタンツェお姉さまも、またいらしてくださいね!!ぜひ!!」」」 「えぇ、また寄らせて貰います。」 にっこりと、微笑んだ彼女の周りに、爽やかな風が吹く。 こうして、美人さんは、おだやかな風と共に去っていった。 「さて、二人もいなくなったし・・撮影班は、どうなった?」 「うわ、む・・村田君、まだいたの?」 伊東はてっきり、有利たちと一緒に帰っていったと思っていた村田健が、ひょっこりとまだいたことに 驚いた! 「やだな〜、僕の仕事は、まだこれからなんだよ。」 ・・・一体、仕事って?村田様何をなさる気でしょうか?? ついつい、及び腰になるのは、同じ年とは思えない彼の底知れなさのせいだ。 「会長!各種撮影できました!」 「明日葉・・。お前撮影って??」 そんなの聞いてはいないぞ?と、伊東は首をかしげた。 「あぁ、ちがう、これはクラスのではなく・・我が!CFC(コンスタンツェお姉さまファンクラブ)日本支部の 会員向けのDVDなんだ。これから、会長と一緒に監修してメイキングビデオとしても作り上げるんだ。」 な・・なにーー!!そんな組織活動をしていたのかよ!! 「あ、皆さん、これは本人非公式・本国公認の団体なもので、えぇ、本人には言わないでくださいね!」 本人非公認なのに、本国公認??国ってどこだそれーーー!! 「大丈夫、もちろん渋谷も知っているし、彼も協力者だから・・こんなこと、もし本人に知れると 彼も困るんですよ〜♥ ですから皆さん?本人にだけは言わないでくださいね!」 どうやら、名づけ子にまで、売られている様子。ちょっと可哀相だな〜アノヒトもと、おもいつつ、伊東は村田に聞いた。 「ねぇ、そのCFCって、どうやって入るの?」 この日、眞魔国国主公認・本人非公認の団体は、日本にて大きく育とうとしていた。 そんなことを知る良しもない、本人は、可愛い名づけ子の愛らしい様子に、今回は色々あったけど、きてよかった♪ と、内心ホクホクである。村田がしていることを知ったら、もう二度と来るもんかーーー!!と、泣きながら 帰っちゃいそうだが・・まぁ、知らないことは、いいことだ。 また後日、この団体の存在を知った某渋谷家影の実力者は、さすが我が家の嫁ね!と、我が事のように喜んだという。 そして当然のように、名誉会長の座に座ってしまった。さすがだ・・・。 本人の意思とは別に初まったヨメ業は、これまた本人の知らないところで大きく発展していってしまった!! どうやら今度は、ママドルまで始めてしまったらしい・・。 イケイケ、コンラート!君のママのつく自由業は、ホントーに、自由気ママに発展していっているぞ!!(合掌) 5月4日UP はい、10万HIT企画より、今日からママのつくの番外です。ママがつくには違いないのですが、別の職業に つかされちゃっていますね。さすがは村田様です。え〜クラスメイトをあわせてのドタバタ・・こんな感じで よかったのかな〜?とりあえず、番外は今の所これで終わりです。ありがとうございました。 |