子猫物語





おはっおはっおははははははーーー!!


珍妙な独特の笑い声と共に現れたのは、ご存知赤い悪魔こと、フォンカーベルニコフ卿アニシナ嬢であった。
卿も絶好調の彼女は、突撃いつもの執務室ーー!とばかりに、血盟城の執務室にやってくて、一つの小瓶を
陛下に向かって投げつけた。


「あぶない!ユーリー!」

護衛の男の声に有利は振り返るも、時既に遅し・・。自称婚約者とおやつのケーキの大きさでもめていた彼は
気付くのが遅れ・・・

ばしゃん!


もろに、被ってしまった。アニシナ特製のなぞの毒を!

ぼふん!!!

なんとも、間の抜けた音と共に、あたりが煙で覆われた。

「ユーリ!?ヴォルフ!?大丈夫か!?」

やがて、煙がひいて行くと、そこには二人の姿はなく、変わりに床には、彼らの着ていた服だけが残っていた。
いや、服だけではなかった、よく見れば服の下からもぞもぞと、何かが這い出てきた。

それは・・・?

「めぇ〜〜??」
「ミャ〜〜ぅ??」

小さな男の子が二人・・しかも、猫耳と尻尾のオプション付だ。

「「か・・かわいい!!♥」」


グウェンダルは、目の前の出来事に目を潤ませていた。それもそうだろう、可愛い弟と、可愛い陛下が
縮んでなおかつ、猫耳と尻尾をつけているのだ。二人とも、4つくらいの姿で、有利には黒くてピンとした
黒い耳に、長くてしなやかな同色の尻尾。対してヴォルフラムには、白いちょっとカールした耳とふさふさの
長くて白い尻尾が生えていた。

「種類の違いまでであるのか?へぇ、すごいね、アニシナ。」
対して冷静なウェラー卿コンラート。陛下の身にコレといって危険がないと判断するや、客観的な
分析をし始めていた。
「おははは、さっすがウェラー卿。そこの、可愛いものスキでボケているのとは違いますね。これは、
猊下に頼まれていた「萌え〜!!これぞ癒しの決定版!最終兵器猫耳娘。めんば〜募集中!」なるものです。
なんでも、癒されるそうですが・・・・グウェンダルが暴走しそうですね・・・。」
わきわきと両手を動かして、今にも二人を抱き絞め殺しそうな兄を見ると、コンラートはこともなげに
言い切った。爽やかな笑顔のままで。

「あぁ、すまないが、暴走前に引き取って行ってくれないか?そこの、鼻血ふいて倒れているのと一緒に・・。」

「良いでしょう、では、ごきげんよう。」
「あぁ、まって、この薬はいつ切れるのかな?」
「体に付いた薬が落ちれば戻ります。」

つまり、お風呂ね?でも・・猫がお風呂に入ってくれるだろうか??

男二人をらくらく引き摺りながら去っていく、アニシナを見送りながら、ふっとそんな事を思ったコンラートだった。



「やぁ、おじゃまするよー!」
明るい掛け声と共に入ってきたのは、諸悪の・・いやなに・・今回の(も)騒動の元凶とも言える御仁だった。
「猊下・・。」

「うわ〜、見事に縮んだね!なんだ、フォンビーレフェルト卿もかい?けっこう、付き合いが良いんだね!」
「強制参加させられたんですけど。」
所謂、巻きぞいだ。

「あははは、そう?災難だね〜。」
その災難を巻き起こした彼にだけは言われたくもナイだろう。そのコンラートの心情を察したわけでもない
だろうに、めぇ!と一声鋭く鳴いた弟が、村田のすねに噛み付いた。
「うわっ!いた・・。ちょっと、本当に痛いってば!」
痛いように噛んでいるんだから当たり前だ!とでも言うように、ヴォルフラムは、ふんぞり返って村田を睨んでいた。

「ほう・・そういう態度を取るんだね?」
きらり・・と村田の眼鏡が光ったら、要注意だ!!
「ヴォルフ!」
コンラートは咄嗟に、弟をつかまえると、膝にうつ伏せで乗せて、むき出しのお尻をパンパン!と叩いた。
俗に言う、オシリペンペンだ。
「猊下に失礼だろう!悪い子は、お仕置きだよ!」

うるっと・・ヴォルフラムの目が潤むのに少し心が傷んだが致し方ない。胸の中で謝ると、村田に向かって頭を下げた。
「弟が飛んだ失礼をいたしました。見ての通り、今は幼児となっていますので、寛大なお心でお許しいただきたく・・。」
「・・まぁ、いいよ。僕も悪かったし、今回は大目に見よう。」
「有り難うございます猊下。」
ほっとしたのも、つかも間・・。だから、僕のお願いを聞いてね?

悪魔の笑顔であった。




「うわ〜良く似合うね〜二人とも!!」
「「・・・・・。」」
「あ、本当ですね、けっこう似合うよユーリにヴォルフも。」

お願いというのは、小さくなった二人に村田の持ち込んだ服を着せるというもので・・・・。
その服というのは、有利にはコンのドレスにハイソックス・白いエプロンにエナメルの黒い靴。
ヴォルフラムには、同じ形の色違いのドレスで、パステルブルーのドレスに、白いハイソックス
後はユーリとおそろいだ。

そして二人とも、頭をツインテールに結ばれ、白いレースのリボンまで結ばれている。
もちろんコレをしたのは・・。
「いやん、そう思いますぅ〜。お二人とも可愛いから、グリエがんばっちゃったうふ
猊下の専属護衛の、グリエ氏である。さすが、女装暦数十年のベテラン。着せる方もうまいのだな。

とってててーっと、チビ有利がコンラートの元まで走ってくると、くるんと一回転してみて、じっとコンラートを
見あげた。
「・・?ユーリ、どうしまし・・・」
「こんらっど?ゆーちゃん可愛いニャン?
頬を淡く染め上げ、きゅるん!と、漆黒の瞳を輝かせて、有利はコンラートの言葉を待った。

かわいいにゃん?にゃんって・・。

だが、コンラートといえば、あまりの有利の可愛らしい悩殺光線を浴びてしまい・・・2の句のつけない
状態で固まった。

「猊下!『萌え』って、凄い破壊力ですね、あの、元祖悩殺フェロモン男を、こうも簡単に瞬殺するとはっ!!」
「あっはっはっは、これぞ、日本の生んだ最終兵器だからね。今のが正当派の萌え、デレデレだが、もう1つ
攻撃があるんだよ。」

「ちっちゃい兄上!僕は、こんな格好は好きではないが・・どうしてもと言うなら褒めてくれても・・いいめぇ・・・・。」

褒めても良いめぇ・・めぇ??

腕を組んでふんぞり返って、ツンツンと言い張るものの、褒めてほしいらしい弟・・。ちょっと、頬が
染まっているのが、照れている証拠だろう。

「ふ・・どうだい・・これがいわゆる、ツンデレだよ。この二代萌えに君は耐えれるかい?」

震える手で口を押さえると、天を仰ぐコンラート。どうやら、本当に何かに耐えているようだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・猊下・・・・すみません、この可愛らしいものは一体なんでしょう?」
「ウェラー卿、君もやっとこの良さがが、わかるようになったかい?」

これが、日本の発祥の文化!萌えと言うものだよっ!!

「これが!そうなんですか!?素晴しいですね。こんなに可愛いヴォルフと有利にあえるなんて、
可愛いすぎてどうしましょう!!」

ひしっと、有利とヴォルフラムをむぎゅーーと抱きしめると、男のネジが一本取れてしまったようだ。
可愛いかわいい!を連発しながら、二人を抱きしめている。

「ゲイカー。なんつーか、二人を抱きしめて頬を染めている隊長もかわいいですけど・・?自然に
天然ボケフェロモンも炸裂させてますねアイツ・・。」


「・・・・・・・・・・。」
「猊下?」

「・・・・・・・・・・・ヨザ・・本当にウェラー卿って100歳?」
「はい、そうですよ。ちょっと超えているはずですけど?」
「・・アノヒト、よくあんなに、かわいくって世の中渡ってこれたよね。」
「俺たちのおかげですよ・・・マジで。」

そう、あの無自覚に男心を煽るフェロモンを撒き散らす彼を狙う輩は、ほんとーーーに多かった!!
そんな彼を、影から守っていたのが、ヨザックを筆頭とするルッテンベルク出身者が作る影の組織だ。
通称羊班・・正式名称「コンラート閣下の恋路を邪魔する奴は、羊に蹴られてタコなぐり!班」
ちなみに、この世界の羊は凶暴である・・。詳しい内容は、ヒ・ミ・ツ♪だ。だが、構成者が
ウェラー卿コンラートの熱烈な支持者であり、アルノルド帰りが複数含まれている事実から、穏便な
組織ではないとだけ付け加えておこう。

「・・これ売ったら、羊班・・どうなると思う?」
と・・みせたのは、地球から持ち込んだでデジタルカメラ・・。いつの間にか、写真を撮っていたらしい。

「過労死ですね・・俺を含めて。」
「・・・そう、じゃ、可哀相だから止めてあげるよ。」
「有り難うございます。ケン。」
「〜〜・・・いっとくけれど、羊班がかわいそうだからだよ!」
「はい、猊下がやさしいのは知っています。」
「・・・・・なら、いいさ。」

ヨザックは、心の中で自分は絶対、ツンデレ派だな〜とおもったのでした。




7月24日UP
久々の短編ですが、悩殺コンビ・生贄の羊・とある組織の・などから繋がってもいます。
羊班は、オリジナルです。本当はありません。詳しくは、悩殺コンビなどをご覧下さい。