犬も食わない ユコン的日常茶飯時 |
【注意・陛下21歳・・コンラートを5年越しで口説いて、只今新婚です。】 その一 さぁ、渋谷有利原宿不利! お前は、この眞魔国の国主なんだ!それも、泣く子も黙る魔王なんだぞ! この国におれより偉い奴なんていないんだ!なんたって、王様だからな! だから、ビシッと言ってやるんだ!! 毅然とした態度でビシッと!! バンッと!勢い良く扉を開け放った魔王陛下は、ズンズンっとベットの側まで やってくると、腰に手を当てふんぞり返って、ビシィ!!っと、相手を指差した。 「コンラッド!!」 「・・・・。じろり」←思いっきり不機嫌な顔 「ごめんなさぁぁい!!」 ビシッと、どころか?ガバァ!!っと、床に手を付いて謝る有利陛下。 「・・・・」 「ごめんなさい!もうしませんから!どうか機嫌を直してくださぁぁい!」 ヘコヘコヘコヘコ・・赤べこの張子のように、ヘコヘコと頭を下げ続けるこの国の最高権力者・・・。 廊下でこの様子を見ていた大賢者と陛下の護衛であるフォンビーレフェルト卿は、 ヤレヤレまたか・・・。と、いつもの魔王夫妻の喧嘩に、首を振った。 「で?今回は、何で喧嘩したの?って、一応聞いていい?」 「いつもの事だ・・・・。有利がやりすぎて、コンラートの腰が立たなくなった・・。」 「またか・・・・。それにしても、今回のお后さまの怒り具合は、尋常じゃないけど?」 そう、いつもなら、怒ってはいても、口くらいはきいてあげているのに、ベットの中から 獅子の殺気を込めた視線で、夫である有利を睨みつけていた。 さすがに、怖くて、ヴォルフラムと村田は廊下から入れないでいた。 「あぁ、本当は、今日は久々に昔の知り合いが王都に来ているから、皆で飲みに行く 予定だったんだ。」 そういえば、ヨザックが昔なじみと今日会うって言っていたな。あぁ、アレか〜。 「つまり・・・嫉妬?」 「ふ〜〜まったく、あの、へなちょこめ!」 すっかり拗ねた妻に向かって、我らが魔王陛下は、必死で謝っているも、当の奥さんの 方は、体ごと反対を向いて、肌掛けの中へと潜ってしまっている。まるで蓑虫・・。 今回は、長期戦のようだ。 「「・・・・。」」 「・・・・・・・・・・・5日に地球産高級チョコレート一箱。」 それを見たまま、ボソリ・・と、村田ダイケンジャーがのたまった。 「・・・ふむ、いいだろう。では僕は、ビーレフェルトの薔薇ジャムを1週間に。」 それに、ヴォルフラムが心得たように応える。 「いいね〜、スコーンにつけて食べたいね〜。」 「スコーンといえば、お茶にしないか?」 「そうだね、痴話げんかのせいで、魔王が使い物にならない分、王佐と摂政が 大変そうだし、労ってあげよう。」 「こら、村田!ヴォルフ!今、見捨てようとしているだろう!?友達だろう!少しは 助けろよぉぉ!!」 「だめだ、その前に僕はコンラート兄上の弟だからな。加勢するなら兄上に 加勢するぞ。」 「僕も、ヨザックが一緒に出かけるのを楽しみにしていたのに、邪魔した君に 加勢するわけにはいかないんだよ。おかげで一人寂しく出かけたんだからね〜。」 あぁ、かわいそうなヨザック・・と、白々しくも嘆いてみせる。 「そ・・そんな〜。」 「渋谷」「ユーり」 「「自力でがんばれ!」」 「うわ〜〜ん、薄情者どもめー!」 その2 実家に帰らせてもらいます! そう一言置手紙を残して、妻(男)が姿を消しました。 「実家??実家って?生まれた家?だとしたら、コンラッドってば血盟城生まれじゃん! この場合は、ルッテンベルクか?あそこなのか??馬で飛ばせば間にあうかな?」 「まて、ばか者!!」 今にも走り出しそうな魔王陛下を、摂政閣下が首根っこを捕まえて止めた。 「どうやら、ヴォルフラムが付いていったらしい。危険はないから落ち着け。」 「落ち着けって、妻が家・・いや、この場合城出しちゃったんだぞ!夫であるおれが 迎えに行かないでどうする!」 「その夫であるお前が原因だろう!」 ビシリ!と、魔王より魔王らしい男の威厳に満ちた声が静止する。 「コンラートから、執務を放り出してきたら離婚だと伝言を言付かった。」 「り・・りりりりこーん!?」 <(゚ロ゚;)>ノォオオオオオ!! かつてない危機に、魔王陛下はムンクのように叫んだのであった。 さて、当の妻こと、コンラート・ウェラー・シブヤさんはというと・・。 「聞いてくださいよ、ジェニファーこの前もユーリったらですね!」 「まぁ、コンラッドさんったら、そんなことが?まったく、ゆーちゃんったら、 ヤキモチ焼きさんなんだから〜。」 実家は実家でも、夫の実家に帰ってきていた。 「すまないな、コンラッド。うちの息子のせいで苦労かけて。」 勝馬は、数奇な巡り会わせで、息子の嫁になってしまった昔なじみに頭を下げる。 いきなり異世界出してきた嫁を、なぜかナチュラルに受け入れている渋谷夫妻。 さすが、地球と眞魔国、二つの世界の魔王を輩出した夫婦は、ちょっと・・いや? かなり違う! 「つーか!何、ナチャラルに、うちに溶け込んでるんだ!弟の嫁!そもそも 何で夫の実家に家出してくるんだぁぁ!」 普通、実家といえば、自分の生家か領地だろうが!! と、至極まともな意見を言ったのは、この家の長男こと、地球の魔王(修行中)の 勝利だ。 「あぁ、それはですね。俺の生家が血盟城ですし、ルッテンベルクまで馬に 揺られて帰るには、体が辛かったからです。あなたの弟さんのせいで!!」 「う・すまん。」 そこで素直に謝るのが、勝利のイジリがいの有る所・・じゃなく良い所である。 「しかも、寝室でベットで休もうとする度に、襲おうとする人が一人いまして ・・・えぇ、もちろん貴方の弟さんです。」 「うう・・すみません。うちの、愚弟がご迷惑をおかけしています。」 なにやら、弟の嫁から放たれる空気が怖かった、地球の魔王陛下(修行中)だった。 ちなみに、手引きしたのはこの方。 「まぁまぁ、王配殿下。勝利さんに当たらないで。」 にこやかに、リビングでお茶をすすっているのは、双黒・いや三黒の大賢者村田猊下。 もちろん意味は、髪と瞳どころか腹まで黒い!で有る。 「そうだぞ、コンラート兄上、仮にも彼は地球の魔王だ。敬意を表して程ほどにな。」 同じく、兄の警護にくっついてきた元プリのヴォルフラムが、せんべいを齧りながら そんな事を言う。敬意を表すなら、やるな!と、言いたい勝利であった。 さて、何故ここに家出してきたかというと・・・后の不満が大爆発しそうな兆候が見られ たので、軽くガス抜きに来たのだ。 眞魔国において、一番慕われ尊ばれているのは、もちろん魔王陛下であるが、一番恐 れられているのは、大賢者である村田猊下である。 だが、もう一人、最強といわれているのが、この王配殿下である。なにせ、魔王陛下は 彼にベタ惚れで、5年かかってやっと結婚までこぎつけたという曰く付き。 それゆえか、渋谷家の特徴かは知らないが、この夫夫では、実のところ妻である コンラートの方が力関係は上なのだ。だからといって、出来た妻であり臣下である彼が 政治にでしゃばる事は無く、常に縁の下から支えているので、眞魔国の政情は極めて のどかであった。 ・・・つい、8日前までは・・・・。 そう、8日前、コンラートは。魔王陛下の子供じみた独占欲というか、ぶっちゃけ嫉妬に より、久々の友人との邂逅をだめにされ・・その手段が夜の営みを激しくして、彼が 動けないようにしたわけであり・・・この事が随分、后の感に触った。 しかも、愁傷だったのは、最初の3日くらいまでで、4日目からは隙あらば、襲って 来ようとする夫に、妻の堪忍袋が切れ掛かっていた。さすがに、村田とヴォルフが 賭けた日にちよりも、彼らの喧嘩が長引いてくると、側近達も慌て始めた。 何故なら、まず、魔王の執務の手が止まったからだ。 彼の持病であるコンラート欠乏症が、5日目になるころ発症したのだ! 今回は、口も聞いてもらえずにいたので、魔王陛下は、茶色の獅子のヌイグルミに 向かって会話する始末。はっきりいって、情けない! 仕方ナシに、摂政がお后さまにご機嫌伺いに行ったところ・・逆に有利をどうにかして くれと、泣きつかれた。グウェンダルにとって、執務も大事だが、二人の弟はもっと 大事なわけで、こうしてお兄ちゃんは今度は大賢者にお知恵を拝借しに行ったのだ。 すると、大賢者はこう云う時は、夫を懲らしめるため伝家の宝刀を抜くに限ると言い出した。 「伝家の宝刀ですか?猊下それは何でしょうか?」 お后さまは、興味津々でその伝家の宝刀とやらの教えを乞うた。 「実家に帰らせてもらいます!と、置手紙を投げつけて、荷物をまとめて出て行くんだよ。 これは、離婚も辞さないという妻の強い意思の表れだね〜。しかも、実家には妻の 両親がいるだろう?迎えに行くにも、夫の方は勇気がいってね〜、そうすると懲りる から同じ過ちは繰り返さないようになるのさ〜。」 「だがしかし、コンラートはこの血盟城で生まれましたし・・領地という意味ではルッテン ベルクですが?そこに帰っても、母上は自由恋愛旅行中ですから、小僧を懲らしめる ことには難しいのでは?」 グウェンダルが至極最もな意見を入れる。たしかに、ルッテンベルクでは、意味はない。 「ふっふっふ。だから、実家は実家でも、渋谷家に行くのさ。ママさんなら、きっと ウェラー卿の味方になってくれるさ。」 キラリ・・と、村田の眼鏡が底光る。 すると、がばり・・と、コンラートが起きた。 「猊下!!それ使わせてもらいます!俺は(夫の)実家に帰らせてもらいます!」 「じゃぁ、僕が兄上と猊下の護衛でいこう。僕も、今回のユーリのやり方は好きじゃない。」 こうして、三人は渋谷家に城出し、今現在、義理の母である美子にコンラートはこれまで の経緯を話したのであった。美子は、先輩妻として立場からまた母親としての立場 からも、コンラートに色々入れ知恵・・いや教えをしてくれ、コンラートは目を輝かせて その教えを聞きいてっいた。おかげで、すっかりコンラートの機嫌は良くなり、夫に 襲われる心配なく体を休められたので、疲れも一気に取れたのだった。 さて、リフレッシュしているコンラートとは反対に、こちらは日々精彩を欠いていく魔王陛下。 執務室の上には、小さな写真立て、中は最愛の妻の写真だ。隣には茶色の獅子のヌイグルミ。 ここ数日で、この獅子の名前が、レオからコンに変っている。この2点セットをいつでも持ち歩く ことによって、どうにか働いてはいるもののギュンター曰く、 「陛下の美しい黒曜石の瞳が、陸に上がった魚人殿のような目にぃ!」 それでも、執務の質は落とさない所は、さすがといえよう。まぁ、落としたことがバレタ日には 摂政閣下から、コンラートとの離婚を言い渡されそうな兆しがみえるので、落とせないとも いえようが・・。 「ぼっちゃ〜〜ん、大丈夫ですか?少し休みます?」 村田とヴォルフラムまで連れ立って出て行ったので、魔王陛下の護衛には、ヨザックが ついている。 「・・なぁ、ヨザック・・コンラッド達どこに行ったか、本当に知らないのか?」 急ぎ、ルッテンベルクに鳩を飛ばしたものの、コンラートが帰ってきた様子はなく、逆に領主で ある彼に何事が会ったのかと、ルッテンベルクから早馬が来た程だ。 「う〜〜ん、知らないことは知らないんですが〜。」 「が!!??」 歯切れの悪い台詞に、ギン!!と魔王の瞳が光る!うへ〜〜ぼっちゃんこわーーい! 「え・・あの、猊下が執務が終われば解るようなことをおしゃっていましたけど・・。」 「村田が??」 やはり、村田が一枚かんでいるのか?だとしたら一筋縄ではいかないかもしれない、ヴォルフが 一緒ならビーレフェルト・・いや、グウェンが噛んでる可能性も入れたらヴォルテールもクライストも カーベルニコフも怪しいと言えば怪しい! 「兎に角、執務を終わらせれば解るって言ったんだな?」 「はぁ、たしかに・・。」 村田の事だ、何か考えが有るのかもしれない。よし! 「兎に角、この書類の束を全部やってみるか!」 妻の消息のヒントが解っただけでも、気分が全然違う。気合を入れて、次の一枚を手に取ると。 『お疲れ様ですユーリ。きちんと休憩は取っていますか?お仕事頑張って下さいね。コンラート』 と、書いてあった。 「コココ・・コンラッド!なんで、コンラッドの手紙がこの束の中に?」 「そういえば、猊下が陛下のやる気が出るように、プレゼントを仕込んだと仰ってましたよ〜。」 まさか、この膨大な書類の中に、コンラッドからのラブレター(←いや、ただのメッセージだよ、渋谷) が、紛れ込んでいるのか?と、すると、もしや、コンラッドの行き先も、この中に隠されているんじゃ? 思い当たった途端に、おもしろがる村田の嘲笑が聞こえた気がした。 メラメラと、負けず嫌いの性格がもたげてくる。 「そうか・・これは、コンラッドへの愛の試練なんだな!」 「いや、通常執務です。陛下。」 そんな、ヨザックの正確なツッコミも、コンラートへの愛に燃えたこの人には聞こえてない! 「村田め!よっしゃーー、どんどん書類もってこーーい!全部こなして、コンラッドを迎えに行くぞ!」 うぉぉぉ!!と凄い勢いで決済をこなしていく魔王に、ヨザックは遠い異世界にいるだろう恋人の 事を思った。 ー結局、坊ちゃん、ケンちゃんの思惑通りに動いているんだから (;^_^A この分だと、コンンラートの帰還は、意外に早くなるかもしれなかった。 9月2日 これは、別館のBLOG小説・堕ちて来いの後、結婚後の二人の日常です。 村田・ヴォルフラムコンビは、けっこうバランスの取れた友人関係です。この二人も好き! 結婚前は、ユーリのリードでしたが、結婚後はコンラートが手綱を持った模様。 王配殿下ばんざ〜〜い! |