御伽噺パラレル劇場・コンデレラ その2 |
さて、お城にある闘技場で受付に並ぼうとしていると、幼馴染が声をかけてきた。 「たいちょー!ここです、皆ここですよー!」 みれば、グリエを初めとする友人達が手を振っていた。 「あぁ、やっぱり隊長だったか?軍服のコスプレなんて、一瞬見違えましたよ〜。 で・も♥ 目立つことなら、グリエも負けてないわ〜ん。」 しなを作ってクネクネ揺れるグリエのドレスは、腕がむき出しの、背中が開いた際どいドレス。 「お前等・・なんで、こんなドレス姿を許した?」 「あはは、俺ら、もうコレになれちゃって、あまり気にしなかったんですが・・ここに来て浮いているな〜なんて?」 どうやら普段から一緒にいるせいで仲間達は感覚が麻痺していたようだ。城に来て初めて自分達の連れが 奇抜で浮いていることに気が付いたようだった。 「でも、ま、隊長が出るなら優勝は持っていかれちまうか?」 「いや、俺が狙うのは、賞金のみの2位だ!!」 「え〜〜それは、俺が狙っていたのに、一応 御伽噺なんですし、ヒロインは王子様狙いで行ってくださいよ〜ぉ。」 「馬鹿いうな、筋肉の女が好みなんて王子は、どんなマニアかわからん。いや、もしかしたら変態系かも?俺は・・」 小さくって、可愛くって、髪がさらさらの黒髪で、目がクリッとして、バラの頬に、 さくらんぼのような唇の子犬のように元気な子がいいな! 何でそんなに、具体的なんでしょう?隊長・・・。 「あー、まさか、この前、助けたって言う、隊長の超好みの子。逃げられたって言うのにまだ諦めて・・ぐほっ!!」 「あの子は、きっと!恥ずかしがり屋だったんだ!」 「はい、恥ずかしがり屋さんなんです・・。」 グリエは、肘鉄をくらいながら、言い直した。 そう、アレは今から一ヶ月ほど前、継母に掃除・洗濯・庭の草むしりなどした後に、買い物を言い渡されて、 ムシャクシャした気分で歩いていると、街のチンピラを発見した。しかも丁度、カモを捕まえたところらしい。 これは、丁度イイ。チンピラをたこ殴りにしたあと、恩を着せて礼をたんまりいただこうか? 見れば、中々いい仕立ての服を着ている。きっといい所の坊ちゃんだろう。 「貴様等!昼から悪さを働くとは見下げた根性だ。」 それはそうだが、その、チンピラから、カモを取り上げて、これからボコろうとしている人間に 言われたくはないだろう。 「あぁ〜〜なんだとぉ??」 と、チンピラは声がしたほうを振り向いて固まった。この界隈で知らぬものがいないという、 劉天辺流苦死団(るってんべるくしだん)隊長・灰かぶり姫がそこにいた。 「ぎゃぁ・・るってんべ・・」 「余計なことを言うな!」 迂闊に劉天辺流苦の名前を出されて、カモに逃げられたらどうするんだ?と、余計な事が話せないように、 いつもより念入りにチンピラを血祭りにあげた。 そして、地面に座り込んだカモを振り返って・・目を見張った! そこにちょこんと鎮座していたのは、コンデレラの好みをジャストミートに該当するような可憐な少年であった! 「もしや、この人は、俺の運命のマイスイートハニー!?」 きっとそうだ。意地悪な継母に、いびり倒されている(?)心優しい(?)俺のことを思って、神様が俺に 与えてくださったご褒美なのだ!だったら、新鮮なうちに食べなくては!(←オイ) コンデレラは瞬時に、チンピラを瞬殺した人物と同じ人物とは思えないほど、きれいに微笑んで見せた。 なるたけ、優しい声を出して、手を差し伸べて、家まで送るといってみれば、遠慮深いその子は、家は近くだからと すまなそうに言った。 そんな慎み深い所も、好みだv フッと見ると、手に血がにじんでいた、折角だしちょっと味見を・・いや、 怪我にばい菌が入るといけないしと、傷口をキレイにしてあげたら、真っ赤になって可愛かったな〜。 「そしたら、その子、急に走り出しちゃって・・・な?恥ずかしがりやさんだろう?」 いえ、それはきっと、隊長の燃える下心が怖かったからでは? と・・絶対にいえない友人達であった。 さて、話し込んでいると、受付の順番が来た。コンデレラが招待状を差し出すと、係員がリンゴン!リンゴ〜ン!っと、 ベルを鳴らした。 「オメデトウございます、貴女は、当受付444人目です。特別シードで決勝大会への出場が決まりました!」 ささ、決勝大会出場選手用の控え室へドウゾ〜。 係員らしき男性に案内されて、コンデレラは、友人達に、ニッコリ笑って手を振った。 「へ〜、そんなのがあるんだ?じゃぁ、俺は先に決勝にいっている、お前等は予選がんばれ!」 「「「エ〜隊長ずるーーい!」」」 「はうぁ〜、どうしよう?いよいよ決勝だ。ところで決勝って何やるの?」 有利王子は、そわそわと、闘技場の上にある貴賓席の裏から眺めます。 「何だ、ゆーちゃん?お前、自分の結婚が掛かっているのに、呑気すぎるぞ?まったく、その おばかチンのところが、また可愛いんだが、おにーちゃんは心配だよ。」 「誰が、おばかチンだ!!」 「まぁまぁ、勝利陛下、有利王子のおばかちんなところは、愛すべき資質ですから。」 「ムラケンまでなんだーー!」 なにせ、国中の娘達を集めたからねぇ〜。決勝まで残った者も結構な数だから、またここでふるい落とすんだ。 予選と一緒で総当りして、残った上位2名で勝負して勝ったほうが優勝さ〜。」 そう、魔法使いの少年が説明すると、ファンファーレがなり、選手の入場です。 有利王子は、ドキドキして選手たちが入ってくるのを見守ります。 「「ヴっ!!」」 選手達を見て、流石に勝利陛下と有利王子は、言葉に詰まりました。流石国中の娘達の中から選びぬかれた 娘達です・・見事なまでに・・・逞しい・・というか? -- オッサン?あれって本当にお嬢さんなわけ?どうみても、あの639なんてひげが生えてね? -- ねぇ、あの811の人・・ムチャクチャすごい筋肉!いや〜有利王子の憧れのマッチョだね〜。ほら、縦横共に 王子の2倍はあるよ〜ぉ。 「ゆーちゃん・・・お前、本当にあんな怪物と結婚するのか?はっ!まてよ、するとアレが俺の義理の妹に?」 思わず蒼白になる勝利陛下。一方、当事者である有利王子は、もはや、涙目になって、どうやって逃走しようか 考え始めていた。そう、入ってくる選手・・皆、ムキッキムキーのマッチョなオッサン・・いや、 ゴホゴホ・・お嬢さん(?)達ばかりであった。 「筋肉はスキだ・・だけどそれは、自分についた場合であって、お嫁についてほしくはないかな〜?」 あははははと、笑う声もむなしい。 「あぁ、でもほら、あそこにいる金髪の眼鏡っ娘なんて、有利王子と同じ位の体格じゃないかい?」 いわれてみれば、中々の美少女である。 でも、肝心要の有利の探し人らしき人は見つからない。 「いない・・・そんな・・・。」 「ゆーちゃん、顔色が悪いぞ?やっぱり、こんな大会やめるか?」 有利は、そのまま倒れそうになった。だが、ここで、逃げるわけにはいかない。彼女等は、有利のために 集まってくれたのだ。それを、目当ての人がいないからと無下に帰すわけにもいかない。 だいたい、この大会は公式な物である。ここで、やめましたーなんてことになったら、兄である王の体面に 傷がつく。有利とて王子、王家の一員として、自分のことは自分で責任を取らなくては。 「ううん、元はといえば、俺のわがままからだもの。勝利に責任を押し付けるようなことはしないよ。」 そう、もとはといえば、自分が一番最初に逃げ出したからいけないのだ。あの時、キチンとお礼を言って、 あの娘さんの名前と住所くらい聞き出していれば!こんな皆に迷惑をかけることもなかったんだ。 「ねぇ、有利王子?ドレスの中に、シンプルな軍服の人がいるよ。」 「へ〜、目に痛いドレスよりはいいんじゃ・・・・あれ??」 今まで群がるマッチョの間にいて見えなかったが、あの薄茶の髪・・ドレスじゃないからわかりづらいけど? アノヒトの髪の色と同じだし、体型も同じくらいだ。まさか、まさか!? アノヒトなのかーー!? 「おい、隊長・・何で、俺の陰に隠れるんだよ?」 「しっ!!あそこを見ろ、ランジール姉さまと、サラレギー姉さまだ。おどろいたな?まさか二人とも 決勝まで進むとは?一体、どんなあくどい手を使ったんだ?」 みれば、中央で、王子と結婚して玉の輿に乗るのはこの私だーー!と、自信満々に豪語しているのは、確かに コンデレラの上の義姉・ランジールと、僕としては、有利を手に入れて、足がかりにして、あの邪魔な兄王を 蹴落として、有利を王にしてあげたいな〜なんて、恐ろしい策略を練っているのは、下の義姉のサラレギーだ。 「まずい、見つかったら、後でまた、豆をより分けろとか、天井まで磨けとか、無理難題を言われて いびられるんだ!」 「って、アンタ、それ皆、俺たちにやらせているでしょー?」 大体、この大会で賞金をもらって、あの家を飛び出しちゃえば、関係ないじゃないんですかい? 「あ・・そうか?そうだった!」 当初の予定を思いだしたコンデレラは、筋肉の後ろから出てきた。フッと視線を感じて、コンデレラが 貴賓席を見上げる。 「どーしたんですか?隊長?」 「・・いや・・今、熱い視線を感じたんだが?」 「ビンゴーーー!アノヒトだ!やっぱり来てくれたんだ!ゼッケン444の人!ムラケン!あれだ! あの人が俺が探していた人だ。うわぁぁ〜〜、軍服姿も凛々しいし、カッコイイー!。」 「よかったね、有利王子。」 「うん、やっぱり、持つべきものは、親友だよな!有難う。ムラケン!」 有利王子は、カーテンから嬉しそうに、ただ一人を見つめていた。 そう、この笑顔が見たかった。城下に脱走してからというもの、有利王子は落ち込んでしまって大変だった。 どうにか丸め込んで事情を聞きだして相手の素性を調べた。そう、村田はとっくの昔に、コンデレラを探し 出していたのだ。 色々調べた結果、それなりの苦労をしているが、わりと伸び伸び・・というか、自由に生きている人物で あることが判明。なおかつ、一筋縄ではいきそうもない。実際会ってみて、マイペース過ぎてこの自分でさえ、 手を焼いたほどだ。あれが、有利王子の手に負えるか?といえば・・ちょっと疑問だが、コレだけ惚れ込んで いる以上、コンデレラには、彼に会うだけっあってもらい・・それで、有利の熱が冷めればよし、余計に気に 入るようだったら迎え入れようと思っている。 「どれどれ?あれか?・・・ゆーちゃん?美人は美人だが・・アレは男じゃ?いや、他のムキムキも 女というよりオッサンだが?俺としては、もっとゆーちゃんには、小さくてきゃわゆいお嬢さんと結婚して、 ゆーちゃんそっくりの女の子を産んで欲しいのだよ!」 勝利陛下、ちょっとご不満だ。といっても、この中の誰が勝ち残っても、勝利的には不満だらけ! だが、そもそも、武闘大会に勝利の好みのお嬢さんが勝ち残れるわけがない。 「うるさいな、結婚するのはおれ!大体おれは母親似なんだから、同じ母親から生まれた勝利の娘だって、 十分お袋の遺伝子を得た子供が生まれるだろう!そんなに欲しいなら、嫁さんをもらって産んでもらえ!」 脳筋族の有利王子にしては、痛恨の仕返しがきまった。言い負かされた勝利王は放っておいてっと。 さて、いよいよ決勝が始まる、最初はここに残ったもので、一気に総当りのサバイバルデスマッチだ。 ファンファーレが高らかに鳴り、王と王子が入場すると、闘技場の娘達がお辞儀を一斉にする。 そんな彼女等に、王から言葉がかけられた。 「武闘大会決勝まで残った者達よ、あなた達の健闘をまずは称えよう。この後の決勝でも、素晴らしい試合を 期待している。」 そして、王子からも。 「今日は、俺の為に集まってくださって有難う。」 そういうと、ユーリはお辞儀をしている、カーキ色の軍服を着たコンデレラを見つめる。 「どうぞ、怪我にきをつけてください。」 そして、二人が席に着くと、試合の準備がされた。 「へ〜王子様って中々可愛かったな?」 「そうか?」 「なんだ、隊長、見てなかったのか?」 「あぁ、さっきからランジールお姉さまが、人のことをジロジロ見てやがってね。どうやら俺に気が付いたらしい。」 と、いいながらも、コンデレラは、ランジールから目を離さない。 「何二人でメンチきりあっているんですか!?」 「ふっふっふ。この数年間の恨み・・どうやって晴らそうかな〜?」 「隊長・・何、ウキウキしているんですか?もう、この人怖いデスーーぅ!グリエ逃げたいわ〜。 だってか弱い乙女だもん。て・・いでででで!!」 「か弱くなりたいなら、今すぐこの筋肉をそげ落としてやろう?」 「ぎゃぁぁーー!か弱くなくてイイデスー!だから、腕を離してーーぇぇ!」 一方こちらは、意地悪な継義姉たち。 「あぁ、ユーリ王子は、やっぱり可愛いな。ますます気に入っちゃった。あの、素直そうな所が操りがいが ありそうですよね?あれ、ランジールお姉さま?どうしたんですか?」 「サラレギー、みてよ!あそこに、コンデレラがいやがるわ!ちょっと、いつの間にあんな服や 立派な剣なんて揃えたのかしら?」 「あれ?本当だ?予選では気が付かなかったのに?」 僕が見落とすなんて、めずらしいな? 「でも、いいじゃないですか、ついでにコンデレラをドサクサ紛れに始末して、アーダルベルトの財産は、僕等で いただきましょう。なにせ、サバイバルデスマッチですからね?事故で死亡者が出ても、かまいませんよね?」 「・・・・サラ・・アンタ相変わらず、そのきれいな顔に反して怖い子よね・・・。」 「お姉さまは、顔どおりの腹黒さですよね?クスクス♪」 「キーぃぃ!余計なお世話だ!!」 「なーんていってますよ・流石、隊長の義理のお姉さま方・・お腹の中は、純黒ですね・・・。」 少し離れた場所から、グリエに読唇術で二人の会話を聞いたコンデレラは、ふむ・・と考えた。 「グリエ・・サラレギー姉さまの試合はみたか?」 「いいえ、でも、うちの死団の連中の一人が同じ組でしたよ。なんでも、始まりの合図はおぼえていたのだけど、 気が付いたら目の前に光がはじけて・・つぎは、医務室にいたそうです。」 「ほう?・・・わかった・・ヨザック、あの二人からなるべく離れるぞ。」 「?なんかわかりませんが、わかりました。」 それと・・。 「おいそこの、布を巻いた横幅2倍女!」 「た・・たいちょう!?」 何を言い出すのだ?この、おヒトは?よりによって、出場者の中でも一番縦横のサイズが大きい出場者に 食って掛かり始めた。突然、見ず知らずの者から罵倒されたその娘(?)さんは、ゆっくりと二人を振り返る。 「まさかそれって、あだすのごとか?」 なんか怒りの為に、言葉が震えていらっしゃらないか?が、振り返ったその女性(?)は、コンデレラを見ると、 フン・・と鼻でえ笑った。 「なんだ、アンタ自分が貧弱だからって、人に文句つけようって言うんだな?王子様はな、筋肉がお好きなんだ。 アンタみたいなのは、お好みではないんだから、さっさと尻尾を巻いて逃げるがいいわよ。ほほほほほーー。」 すると、その騒ぎを聞きつけた周りの出場者も、あざけるようにコンデレラを見た。そんな貧弱な筋肉でよくも 王子様の前に出れたわね〜〜?という、あざけりの表情だ。 が、当然、コンデレラは頓着しない。目的はあくまで賞金!王子なんてどうでもいいのだ。 「仮にも、一国の王の前に出るというのに、布切れ一枚で出るというのはいただけないと、親切にも忠告 してやっているんだ。周りを見ろ、どの出場者も節度あるドレスだ。そんな破廉恥なドレスは、お前と この馬鹿だけだ!」 「え〜隊長、ひど〜〜い。グリエ、あそこまで趣味悪くないわ。」 「同じだ同じ!」 まぁ、たしかに、大きく開いた胸元、腰まで入ったスリットで筋肉を強調したスタイルは、見るに耐えないものがある。 「なんだと〜。おれが、そのオレンジと同じ扱いだとぉ〜?」 「ちょっと、それはこっちの台詞よ!」 流石に返す返すもの言いがかりに、大女(?)も、腹に据えかねたような感じで迫ってくるのを、コンデレラは、 少しづつ下がる。ついでにグリエも腕を掴まれて、一緒に下がるしかなかった。 じりじりと、端まで追い詰められたとき、試合開始の合図がなった。 ちゅっどーーーーん!! その開始の合図と共に、闘技場の真ん中で爆発が起こった! 中央付近にいた十数名が飛んでいった。 「ごほごほっ!た・・隊長・・一体何が?」 「サラレギーだ・・さっき、イヤリングを一つ中央に落としたんだ。おかしいと思った。あの、神経質な義姉が 入場してきたときに、耳飾が片方しかなかった。予選の時に落ちしたのなら、本選の間までに新しい耳飾に 付け替えるはずだ。ドレスは着替えたらしいのに、アレだけそのままだったから怪しいとふんだんだ。」 そう、出かける義姉の支度を手伝ったのは、コンデレラだ。出て行ったときと、ドレスも宝飾品も変わって いるのは、予選で服が汚れたのだろう?なのに、耳飾りだけはそのままだった。 つまり、それでなくてはならいと言うこと。 「やはり、何かを仕込んでいたのか?盾がなかったら、俺達も爆風で傷を負っていたかもしれない。」 そういう、コンデレラの視線の先を見れば、彼等と反対側に、義姉二人が無傷で立っていた。 危ない、丁度盾があったおかげで、爆風の直撃からも逃れられた。・・うん?盾になるような物なんてあったっけ? ふと、みれば?自分達の足元に、先ほどまで迫ってきていた大女が爆風をもろに受け、背中どころか 尻丸出しで倒れていた。そういえば、開始の合図と共に、コンデレラが相手の胸元を掴んで引き寄せていたっけ? まさか?この大女を挑発したのはわざとか? わざと、挑発して追い詰められるふりをして、闘技場の隅まで逃げて、爆発が起こると同時に、咄嗟に彼女(?)を 盾にして、爆風や飛んでくるものから身を守ったというのか? 「怖い人だ。」 「本当にな、サラレギー姉様は、あこぎな手を使う・・まったくこわいな。」 いや、怖いのは、アンタです。たいちょーー!!(←でも、心の中で叫ぶだけ) でも、一応は、グリエも一緒にかばってもらったので、まだこの人のほうがいいか?と、自分を納得させてみるグリエ。 どうやら、あっという間に、闘技場から人は消え、残っているのは、ランジールとサラレギー、それにコンデレラに グリエと、他数名・・全部で7・8名というところか? 「グリエ、いくぞ!」 コンデレラの瞳は、爛々と輝いて二人の義姉を見つめていた。どうやら、ここで思う存分叩きのめすつもりらしい。 「はーいはいっと、じゃぁ、久しぶりに組んで暴れますかい?」 幼馴染コンビは、互いに背中を預けて、にやり・・と、不敵に笑った。 「カッコイイーー!かっこいいかっこいい!!」 有利王子は、闘技場で繰り広げられる死闘を見て、興奮で身を乗り出していた。 「うわぁ、確かにカッコイイね、あの二人。息がぴったりで、周りのマッチョを次々のしているよ。」 まったく危な気なく、コンデレラとオレンジの髪のお嬢さん(?)は、軽い身のこなしで、次々と爆風から 残った出場者を倒していった。 グリエが相手に突っ込んでゆくと、その後ろからコンデレラがグリエの肩を踏み台にして飛んで、相手の死角 から襲い掛かる。見ていて、華麗としか言いようのない動きだ。これには、魔法使いも、王様も文句のつけようの ないものである。 対して、ランジールといえば、大きな剣を振り回して、力技で相手を倒している。サラレギーはといえば? そうして、ランジールが吹き飛ばした相手の止めを入れている。こちらも連携プレイといえよう? そして、とうとう4人に絞られた。 「やはり、その瞳の色、コンデレラか?こんな所に、どうやって潜り込んだかは知らないが、アンタには ココで死んでもらおう。」 「ふふ、そう簡単に俺が殺されるとでも?積年の恨み・・こちらこそ晴らさせてもらいますよ。」 バチバチ!!っと、二人の間に火花が散る。 「じゃぁ、グリエは、こっちの腹黒いお人の相手をしましょうかね?」 「キミみたいな、下品な輩は僕の趣味じゃないが、仕方ない・・相手してやるよ。」 「あら〜、言うじゃない。」 バチバチ!!っと、こちらでも、火花が散った。 「グリエ!サラレギーは、魅了の目の持ち主だ。目を見ると、操られるから気をつけろ!」 コンデレラが、グリエに向かって、注意を呼びかけた。 「ほらほら、余所見をするんじゃないよー!!」 その一瞬の隙を、ランジールの大剣が旋風を持って襲う。それを、間一髪横に飛びのいて避ける。 「へ〜〜ぇ、魅了の目ね?でも、見なければいいんですよね?」 「そう、うまくいくかな?」 サラレギーの瞳が妖しく光り始める。 「あぁ〜!あの人大丈夫かな?やけに大柄で力のありそうな人と戦って・・怪我しないかな?」 ハラハラと、有利は、コンデレラを見守る。村田が見る分、確かにあのコンデレラの剣は、タイミングと スピードをあわせて、最小限の力で戦う剣術だ。それに比べて相手は、力任せにガンガン攻め込む型の 剣を使う。あの大剣を振り回せるだけでも、相手の力量はそれなりにあるはず、それに対してよくも あのスレンダーな体で対応している。 「大丈夫だろう、ほら見ろ、相手はあの大剣を振り回しているんだぞ。先に疲れるのは、当然相手だ。長引けば 断然お前の想い人の方が有利だろう。」 勝利も同じように分析したらしい。流石、兄弟といえども、頭脳明晰と王子時代から評判だった王は違う。 「へ〜そうなんだ。」 その通り、段々疲れてきたランジールは、肩で息をし始め、剣の軌跡も乱れ始めた。 「おりゃぁぁ!!」 ガンッ!と、大降りしたランジールの剣が地面にめり込むと、コンデレラの目がキラリと光った! ヒュン!! 空気を切る音がしたとおもったら、ランジールの周りでコンデレラの剣が舞った! シャキン!と、コンデレラの剣が柄に収まると? はらり・・・と、ランジールのドレスのリボンが落ち?ハラハラハラと、ドレスが布切れとなって落ちた。 「あーれー ♥ いやん ♥ 」 「「「げぇ、こっちが いやんだ!!」」」 貴賓席ではいっせいに口元を押さえて、目をそらした。ムキムキ、油ギッシュなオッサンが紐パン一ちょで 恥らう姿など、誰が見たいものかぁー!! ランジールは、股間を押さえて、えっちらおっちら逃げ帰った。 「フ・・つまらぬものを切ってしまった・・・。」 「「「そう、思ったら切るなーー!!」」」(←勝利・有利・村田・心からのツッコミ!) ハッ!と、コンデレラは、その場から横に飛んだ。先程までいた場所には、剣の切っ先が埋まっていた。 その剣の持ち主は? 「グリエ・・・だから、見るなって言ったのに・・。」 そう、それは、グリエであった。普段は、お調子者であるグリエが、一切の表情をそげ落として、 コンデレラに対峙する。 「さぁ、グリエ。コンデレラを殺すんだ。」 キラーーン!と、サラレギーの眼鏡が光る。命令を受けたグリエの剣が、コンデレラを襲う!コンデレラは 次々と繰り出される剣を、ただ避けているだけだ。 「ねぇ、あのオレンジの人どうしたの?さっきまで、一緒に戦っていたあの人を襲うなんて、それにあの人も 防戦一方で、全然戦おうとしないし。」 「法術だ・・あの金髪の眼鏡っ娘、法術使いだったんだ!」 法術とは、神族とよばれる者達に伝わる技術です。村田たち魔法使いが使う魔術とは、似ていて否なる力なのです。 「じゃぁなに?あのオレンジの人、操られているの?友達同士を争わせるなんて酷い!だからあの人、友達が 操られているから、手を出さないんだね?なんて優しいんだ。」 うるうると、有利王子は、感動した面持ちで、コンデレラを見つめた。 美人で、かっこよくって、強くて、優しいなんて・・なんて素敵な人なんだろう! と、有利王子は考えているに違いない。村田は友人の横顔を見ながら、彼の頭の中を想像した。 だが、村田は、魔法使いの自分を手玉に取ったコンデレラが、そんなに甘い性格ではないことに気が付いていた。 では、この時コンデレラは何を考えていたのだろうか? それは? 「ここで、グリエとサラレギーをまとめて始末することも可能だが、そうすると優勝しちゃうしな〜。 マニアな王子と結婚はイヤダし・・・でも、ここでわざと負けて、三位の賞金だけ貰うとしても?」 自分に逆らったコンデレラを、サラレギーが放っておくとも思えない。地の果てまでも追ってきて、 息の根を完全に止めてなおかつ、灰にして海にまくまでやりそうだ・・。 と・・、あくまでも賞金の算段である。なにせ、すでにランジールは切り捨ててしまったし、帰るに帰れない 身の上では、この優勝賞金がこれからの生活の支えになるのだから、それはとても重要なことだった。 「ふふ、コンデレラ!親友であるグリエとは、流石に戦えないよね?ふふふ♪」 勝ち誇ったように、サラレギーが笑う。 むかっ・・・・! コンデレラの脳裏に、これまで散々いびってくれたこの義姉の仕打ちを思い出す。 やれ、底に穴の開いた桶で水を汲んで、水がめを一杯にしろだとか?掃除をしたそばから、暖炉の灰を まいてくれたりとか、色々してくれた。その灰をかぶったようすから、自分は灰かぶりとい名前までつけられて しまったではないか!? ゆらり〜。 コンデレラから、殺気が立ち上る。すると、それまで無表情に剣を繰り出していたグリエの様子が変わった! 段々青ざめてきて、額に汗をかいている。そう、伊達に幼馴染をしてきたわけではない。 コンデレラの本気は、グリエに染み付いた、『恐怖』を呼び覚ましたのだ。 ギラリッ! コンデレラの背後に、牙を向いた百獣の王の幻影が見えた!! 「ひぃぃーー!!たいちょー、おたすけぇぇ〜〜〜」 グリエは、思わず頭を抱えて、その場にうずくまった!魅了の術より、コンデレラに植えつけられた恐怖が 勝った瞬間だ! 「なに?僕の魅了術が破られただって!?」 「ふふ、残念でしたね?グリエには、幼い頃から、俺には絶対に逆らわないように調教してあるんですよ。」 コンデレラは、剣の柄で思いっきり、そのきれいな横顔を張り倒した! きゅ〜〜ぅぅ! サラレギーはその場で倒れ付し、どうやらこれで戦いは終わったようだ。 「グリエ、立て。」 「ひぃ!あ・・あの・・その・・・」 行き成り声をかけられて、グリエがびくりとおびえた。それでも、命令なので恐る恐る立ち上がる。 あぁ、気をつけろといわれたのに、まんまと術にハマって、コンデレラに剣を向けたのだ。一体どんなお仕置きを されるかとおもうと、思わず涙目になるのであった。 「怪我はないか?すまないな。一応義理とはいえ義姉だ。お前には迷惑をかけたな。」 「へ・・??」 てっきり、張り飛ばされた上に、細切れに切られるくらいはされそうだと怯えていたグリエは、目をぱちくり見開いた。 「義姉にかわって、俺が謝る。すまなかった。」 「いえ、隊長のせいではありませんよ!それに、最初の爆発のとき、俺も一緒にかばってくれたじゃないですか!?」 だが、しおしおと、うなだれるコンデレラ。 「それでは俺の気がすまない。グリエ、俺を一発殴ってくれ。」 「へ?」 今殴れって言いました?ばかな、そんなことをしたら、後でどんな報復をする気なんですかぁ!? 闘技場での熱い友情のやり取りに、有利王子もうんうんと頷く。 「そうだよな、親友ってそういうものだよな!?」 「ほう、意外に義理堅い性格なんだな・・。」 勝利陛下も、コレには好感触である。 ただ、魔法使いだけは、なんかおかしいな?なんて思っていたりする。 もちろん、グリエもおかしいと感じていた。だが、警戒するグリエに向かって、コンデレラの目がうるるんっと潤んだ。 「たのむ、俺と友達でいてくれるなら、一発殴ってくれ。そうしないと、俺はっ・・・!」 声を詰まらせ、俯くコンデレラ。さすがに、幼馴染にそこまで言われると、グリエとて、つい気を許してしまう。 「わかった、じゃあ・・いくぞ!」 「あぁ・・。」 やがて、目をつぶって覚悟を決めるコンデレラの頬に、ぺち・・と、かぁぁ〜〜るくビンタがはいった。 「あぁっ・・・」 なのに、よれよれ〜〜っと、コンデレラはふらついて、打たれた頬を押さえながらペタンと座り込んでしまった。 「た・・たいちょう??」 え?だって、今、むちゃくちゃ軽く叩いたのに?? 「グリエ・・・負けたよ。」 「へ???」 「武闘大会、優勝オメデトウ。」 「げぇぇーーー!!!」 やられた!!と、グリエが気が付いたときには遅かった!今の一発で、優勝はグリエに決まってしまった。 「さて、俺の剣も まだまだだな。あ、グリエ、賞金はお前が責任もって、俺の口座に入れておいてくれよ?」 じゃぁ、あとよろしくーーー!! と言い残すと、コンデレラは風のように去っていってしまった。 義姉二人を、コテンパンにしてしまったのだ。今更あの家にはもどれはしない。そこで、コンデレラはこのまま 旅に出ることにしたのだ。丁度、魔法使いにもらった馬もいるし〜♪ それに、もしかしたら、旅の空の下で、自分好みのあの子のような子に会えるかもしれない。 コンデレラは、友人の幸せを祈りつつ、生まれ故郷を後にしたのであった。 「って、隊長の馬鹿!俺に面倒なことは全部押し付けていってぇぇーー!」 グリエは、コンデレラが去った方角にむかって思いっきり叫んでいた。 一方、こちらも茫然自失だ。だって、コンデレラが優勝したものだとばかりに思っていたら、最後の最後に 見事な策略で、コンデレラは優勝を友人に譲ってしまった。 つまり・・・?? 有利王子は、振られたのであった。 「そ・・そんなに、おれとの結婚がイヤってこと?それとも、やっぱり、おれが逃げたこと怒っているとか?」 がーん がーーん がーん。 だが、とにかく、約束は約束である。有利王子は、優勝者のグリエ嬢を お嫁さんにしなくてはならなかった。 「あの〜〜??ひとつ、ご提案があるんですが?」 「なんだ?言ってみろ。」 ショックから立ち直れない有利に変わって、勝利陛下がこたえる。 「副賞を 変えていただくことは可能ですか?」 「なに!?」 「できれば、他の副賞がいいかな〜なんて・・だめっすか?」 「つまり、お前は、ゆーちゃんと結婚したくないんだな?」 「え?いや、王子に不満があるわけでは・・・・。」 「よし、ゆるす!ゆーちゃん以外なら、まったく持って問題なし!!」 「本当ですか?きゃぁ〜グリエ嬉しい!だったら、グリエ〜ぇ、王子の隣の〜眼鏡の可愛い人がいいな〜。」 王子の隣って?? それは、魔法使いの村田健君ではないかい? 「弟のお友達か?いいぞ、優勝者に、村田健との結婚を許そう!」 「ちょっ!勝利陛下!勝手に決めないで下さい!」 「いや、もう約束したし、宣言したし・・元々この大会の発案者は、だれだっけな?弟のお友達?」 「ぼくです。・・でもしかし!」 「勝利!村田に無理強いはよくないよ。ここはやっぱり・・俺が・・・。」 と、いいつつ、有利王子の目には、大粒の涙が・・・。 うわ〜〜ん、やっぱり、おれ。あの人がいい!街で助けてもらった時から、ずっとスキだったんだもん! 「街で?もしかして王子?街で不良にからまれて、うちの隊長に助けられたことあります?」 「ひっくぅ・・うん、あるよ。でも、おれ・・恥ずかしくって逃げちゃったんだ・・。」 それを聞いて、グリエは、あちゃ〜〜と、天を仰いだ。 「実は、隊長も街で助けた少年を探していたんですよ?なんでも、一目ぼれだったとか?」 「え?」 「でも、近くに住んでいるはずだけど、探してもみつからなかったって・・確かにお城の王子様では 見つけられるはずはないですよね〜?」 そ・・そんな!? 「ちょっとまて、だったら、なんで有利との結婚を他人に譲るようなマネを?」 勝利陛下が、至極もっともな質問をした。 「あぁ、隊長、有利王子の顔を見てませんから・・きっと、気が付かなかったんではないでしょうか?」 そう、唯一、お声がかけられたとき、コンデレラはお辞儀をしながら、ランジールとメンチの 切り合いをしていたのだ。そのあと、座ってしまわれた王子の姿は、バルコニーが邪魔をして、下からは 見えなかったりしたのだった。 「そ・・そんなっ・・。」 Σがーーーん! あの人も自分をスキだったなんて。きっと、王子が自分だと知らなくって、有利の為に王子との結婚から 逃げてくれたに違いない。そこまでしてくれたコンデレラ・・それに比べて自分は? 「きめた!!おれは、あの人を探して旅に出ます!そして、二人で帰ってくるまで、国には戻らないから!」 待っていてくれコンデレラ! 「あ、そうそう、隊長の名前ですが、コンデレラじゃないですよ?それは、意地悪な義姉につけられたあだ名で、 本当はコンラートっていうんです。でも、おれ達は、コンラッドって、呼んでますが。」 「コンラッド?」 なんかそれって、男の名前のような気がする? 「えぇ、俺も隊長も男ですから。」 グリエは、グリエ・ヨザックでぇーす。ヨザックが名前よん♥ な・・なんですとぉぉーーー!? 「あの街の風習なんです。男は生まれながら弱い固体だから、成人するまで女の恰好をさせて、 無事育つようにって。だから、あの周辺でドレスを着ているのは、娘ではなく野郎です。で・・逆に 淑やかに育つようにって、女の子は男の恰好で育てられます。」 そ・・そんな風習があるだなんて・・。 「まぁ、大体は成人前に衣装を変えちまいますが、コンラッドは継母に服から何から取り上げられて、 つぎはぎだらけの服しか与えられなかったんで、女装のままなんです。で、グリエはそれに付き合って いたんですよ〜。」 男・・・コンデレラが男・・・ 「・・・イイ、男でもいい!だったら、おれが嫁に行く!!」 そうだ、だって好きなんだ。男だったからって何だ!大体おれだって男だし(←だから問題なのでは?) 人のこと言えないじゃないか?(←そういう問題でもない) 「ひゅ−王子ってば、見かけによらず男前!相思相愛なんだから、見つけさえすれば、すぐに帰ってこれますよ。」 「有利王子。僕も協力するよ。」 「村田。グリエちゃん・・ありがとう。でもごめんな?村田の結婚式に出れなくって。」 「うん??」 「だいじょうぶですよ坊ちゃん。なんなら、二組合同でしましょうよ?コンラッドと戻ってくるまで、式は延期しておくわ。」 がしっ!!っと、グリエ・ヨザックは、可愛い魔法使いの腰を抱いた。 「本当?有難うグリエちゃん!」 「ちょっと、勝手に話を進めないでよっ!」 「王子、コンラッドのことをよろしくお願いしますね〜v^^」 こうして、コンデレラに続いて、有利王子も旅に出たのでした。 はたして、無事、王子はコンデレラ改め、コンラートを探し出せるのか? 物語は混迷のまま・・続いてしまう。以下次号!!(←こらっ!) 2009・3・25UP アンケートで下位だった御伽噺ですが、なぜか?気に入って下さる方が多くて嬉しいです。 忙しいときに隙間で書くには、このくらい軽いものが楽ですね。 |