御伽噺パラレル劇場・コンデレラ





あるところに、コンデレラという、とても美人で優しく爽やかで麗しい
・・・・でもって、少しばかりイイ性格をした娘(?)がいました。

そんなコンデレラの住む町に、お城の王子様からお達しが出ました。


『王子の花嫁を決める武闘大会を開く、国中の娘は必ず参加する事。』


当然、コンデレラも出るように、お城から招待状が来たのだが・・?



「たーいちょ!今度のお城で開かれる、花嫁選びの武闘大会にアンタもでるんだろう?」
コンデレラが、井戸で水汲みをしていると、幼馴染のグリエが声をかけてきた。


「何でそんなものに俺が出るんだ?第一、武闘大会?舞踏大会の書き間違いじゃないのか?」

どうやら、コンデレラは、招待状が自分の下に来たことを知らないようでした。

「いいや、武闘でいいらしい、なんでも王子様は、大の筋肉フェチらしいぞ。」
「あぁ、それで武闘大会なんだ。」

「「・・・・・・・・・・・。」」

「変わっているな。」
「あぁ、でも、ほら、人の好みは、それぞれだし。」
「高貴な身分の方のやることは、俺にはわからん。」

そういうと、コンデレラはさっさとグリエに雑巾を押し付けた。

「だが、いいところに来た、お義母さまが帰ってくるまでに、床をぴっかぴかに磨けと言われて
いたんだ。もちろん手伝うよな?」(←何気に決定事項)

ぎらりん!コンデレラが一睨み・・いや、微笑むと、グリエは真っ青になって床を磨き始めた。





一方、こちらでも真っ青になっている人物がいた。

お城の王子様である。

「花嫁選びの武闘大会!?お前なんてこと、告知してくれたんだよーー!!!」

有利王子は、自室で親友である魔法使いに向かって、なみだ目で訴えっていた。

「えーだって、有利王子が言ったんじゃないか?君が無謀にも城を一人で抜け出した挙句、街で、不良に
絡まれたところを助けてくれた娘さんに、ぜひ会いたい!って?」
「ところどころ、とげを感じるケド、確かに言いましたぁ〜、で?それが何で武闘大会なの!?」

そう、有利王子は、お忍びで街に出ることが大好きで、いつもは護衛と共に街に下るのだが、その日は
おもいっきり一人で遊ぶんだーー!と、お供を巻いて、一人町を闊歩していたのである。
が、身なりのいいお坊ちゃんが、一人でうろついていると、あっという間に不良に目をつけられ、路地に連れ込まれた。

そこに現れたのが、有利が探している人物だ。

風のように現れて、あっという間に不良どもを、蹴り上げ!殴り倒し!踏み潰して有利を助けてくれたのだ。

「きみ、だいじょうぶ?」

そうして、座り込んで呆然としていた自分に手を差し伸べてくれた。

有利は、間近でその人を見て驚いた。継ぎ接ぎだらけのドレスを身にまとっていたが、薄茶の髪をなびかせ、
優しく微笑むその人は、とても綺麗な琥珀の瞳をしていた。その上、不思議な銀色の虹彩が煌いていて、
とても美しい。

おもわず、言われるままに手を握られて、立たせてもらっても、有利はその人を見つめ続けていた。

「このあたりは危ないよ、送っていこう。君の家はどこ?」
「家?家は・・・・。」

お城です・・とは、いえない。

「えーと、大丈夫!家、そんなに遠くないし!」
「そう?でも、また絡まれるといけないし、近くでも送ってゆくよ。あ・・待った・・ここ怪我をしている。」
「え?」

言われえてみれば、有利は手にかすり傷をおっていた。きっと、不良に付き飛ばされた時に、地面でこすったのだろう。
その手を、その人が持ち上げると、自分の口元に近づけて・・

ぺろり・・・。

と、舐めた。

「え?えっえっ?」
「消毒。キレイにしないとね?」

あわてる有利を見て、フッとその人は笑った。

キレイ・・たしかに、傷についた泥とかはおとさないといけないけれど?

なんで、舐めんの?美人さん!
でもって、何でフッとか笑うんですか?美人さん!?
それでなんで、そんな流し目でおれを見るんですか、美人さん!?


そして、次の瞬間・・・色々いっぱいいっぱいになった有利は・・・・。

「あ・・きみ!!」


にげた・・。





「あぁぁーー!なんで、にげちゃったんだよおれ!おかげで名前も、住所もわからねーー!」

お礼も言わずに逃げるなんて、きっと礼儀知らずな小僧だと思われたに違いない。例え探し出しても、
もう嫌われているかも?そう考えただけで、気分は、ずっどーーんっと、沈みこむ。

「だから、そのボロを纏っていても、心は錦の凄腕美人さんを探したいんだろう?」
「何気に演歌調なのは気になるが、そういうことだ。」

そうだ、自分ではどうにもならなくて、お城で一番年が近く仲が良かった、魔法使いの村田健に相談したのだ。

なのに・・・。


花嫁選びの舞踏会ならまだわかる・・・でも?武闘大会って何?一体何を基準に選ぶ気なんだ?

「だって、どうせそのお嬢さん(?)を見つけたら、お嫁さんにスカウトする気じゃなかったの?」
「え・・それは(//o//)」

もじもじと、途端に真っ赤になって・・スカウト・・って、野球じゃないんだし・・・とか、もごもご言い訳している。

「いいかい?貧乏で腕っ節に自信のある娘なら、賞金目当てにきっと来てくれるさ、副賞に王子との結婚も
くっつけといたから、賞金に釣られてきた所をゲットすればいいのだ〜。」
「俺のほうが副賞なのかよ!?」


ところで・・・

「ちょっと、聞きたいことがある?」

有利が真面目な声で、村田に向き直る。

「彼女が来てくれたとして、もし優勝まで行かなかったら?」
「その時は、あこがれの筋肉ムキムキの優勝者と、添い遂げてくれたまえ!」


「ぎゃぁぁぁ、ホントに、なんてコトしてくれたんだぁぁぁ!!!」





エー、隊長出ないんですか?

俺は、家事で忙しいんだ。

そう、コンデレラは、母親であるジュリアが急死してしまい、その後、父・アーダルベルトが再婚した
継母ポニ・継姉・ランジールとサラレギーに、こき使われていたのだ。

再婚した当初、彼等はコンデレラにも優しく接していたが、貿易商である父親が仕事で長期の出張に出た途端に、
コンデレラをそれまで使っていた自室から追い出し、階段下の物置におしこめた。そのうえ、衣服も宝石も取り上げ、
ぼろのドレスをあてがい、朝から晩まで色々な家事を押し付けて無理難題を言うのであった。

今日も、帰るまでに床をピッカピカの鏡のように磨いとけと言いつけて、自分達は買い物にいってしまった。


「でも、実際に磨いているのは俺たちなんですが・。」

不幸な境遇のコンデレラでしたが、彼女(?)には、親切な仲間達がいた。小さいころから近所での
遊び仲間であったグリエを初めとする友人達だ。友人達は、かわいそうなコンデレラを影からそっと、
支えてあげているのでした。


・・・なぁ、支えるって自発的にするものだろう?
・・・いうな!強制的にやらされているとしても、心の引き出しにしまっておけ!

「持つべきものは、友達だよな!」
「「「はい、ソーデスネ。」」」

さて、仕上げだ・・といって、コンデレラは油を取り出すと、それを玄関ホールに塗り始めた。おかげで、
玄関ホールは鏡のようにピッカピカに光り輝いていた。

「よし、これでいいだとう、言われたとおりに、まるで鏡のようにきれいになったぞ!」

確かにキレイだ・・だが塗ったのは、油だぞ?それって、すべるんじゃないだろうか?


それからしばらくした後、玄関から派手な音と共に、三人分の悲鳴が上がった。


「まったく、お前は満足に床一つ磨けないのかい!?」
継母ポニは、忌々しそうにすべって転んで打ち付けた腰をさすると、コンデレラには罰として、床を元通りに
することと、飯抜きを言い渡し外食へと出かけていった。

「あぁ、やっとうるさいのがいなくなってくれた。」

元通りにするも何も、油を塗ったのは、玄関先だけ・・ぱっぱっと油をぬぐうと、コンデレラは階段下の
部屋に戻って、ごそごそとし始めた。そうして取り出したのは、いかにも高そうな小箱。

そう、継母達はしらないが、この階段下の倉庫には、アーダルベルトが海の向うから買い集めた色々な物が
しまわれていたのだ。コンデレラの母、ジュリアは大雑把な性格で、お土産に貰ったものを全部この中に
入れていたのだ。・・・単に飾り付けるのが面倒だったに違いない。

なにせ、船荷の箱のまま、ここに突っ込むので、この箱の中身が高級品であることなど、あの者達には
判りはしなかった。

コンデレラは、その箱をパシリ・・いや友人のグリエに頼んで換金してもらい、食料を買い込んできて
もらった。おかげで、飯抜きのほうが好きなものを食べれてありがたい。

「そういえば?お城の武闘大会に賞金が出るって言っていたな?」

だったら、それに出て、三位くらいを狙ってみようか?その賞金と、ここにある物をすべてうっぱらったお金で、
かねてから行ってみたかった、諸国漫遊・・じゃない、剣の修業の旅にでてみようか?

別にこんな生活は、苦でもなんでもないが、そろそろ、この生活も飽きたコンデレラであった。





「お義母さま、俺もお城の武闘大会に出てみたいんですが?」
コンデレラは、早速、継母に直談判してみた。

「馬鹿いうんじゃない、お前などが出れるわけがないだろう?」
「でも、全ての娘が参加することって、お城からの命令ですよね?逆らっていいのかな?」
「う・・なぜそれを?」
痛い所をつかれて、意地悪な継母ポニは、答えに窮した。

「ちょっとー、お母様に口答えをする気なの?生意気だわよ〜コンデレラ!」
「ランジールお姉さま。」
「大体、大会に出てどうするのさ?武闘大会だぞ。お前には剣も何もないだろう?」
「サラレギーお姉さま。」

そうです、コンデレラには、武闘大会に持ってゆく剣も、その身を守る鎧もありません。

「そんなことより、僕等の支度の手伝いをしなさい。」
「・・は〜〜い」

コンデレラは、継母にお城の舞踏会・・武闘大会に連れて行ってくれるように頼みましたが、意地悪な継母は
行かしてはくれませんでした。それどころか、二人の姉は参加するそうなのです。その支度を手伝わなければ
ならないコンデレラは、思わず失意の為に、ランジールのコルセットの紐をきつく縛りすぎてくびり殺すところ
だったり、サラレギーの髪についうっかり簪を刺してしまったりと、そんな失敗ばかりしてしまいました。


「コンデレラ!お前は、支度の手伝いくらいまともに出来ないのか!?」
「すみません、自分不器用ですから・・。」


かわいそうなコンデレラ・・楽しそうに、でかける継母と継姉を見送ると、一人ベットに泣き崩れてしまいました。


「まぁ、仕方ない、確かに俺には剣もないし、まぁ、ここの高級品を売り払うだけでもそれなりの金になるし
いいか?それに、うるさいのがいないうちに、まったりのんびり、昼寝でもしてすごそう。」

だがその時・・。ぴんぽーんっと、玄関のチャイムが鳴った。
訪問販売だったら、殴って物だけ置いていかせよう。なーんて、物騒なことを考えながら、コンデレラが出てみれば?

「呼ばれて飛び出てジャジャジャじゃぁぁ〜〜〜ん!!魔法使いのムラケンでーーす!」


ばたん!!!


コンデレラは、真っ黒い衣装の自称魔法使いの少年を見るや否や?思いっきりドアを閉めた!


かかわっちゃいけない!!アレは、よくないものだ!

「ちょっと、ウェラー卿!キミって失礼だよ!」
「何をおしゃっているのやら?俺の名前はコンデレラ、ウェラー卿なんて知りません。」
「なんでもいいからあけてー!!」
ドンドン!とドアが叩かれるが、コンデレラは逆に鍵をかけてしまった。

「すいません、うちは押し売りお断りです!」
「こんな可愛い押し売りがいるか!」
「うわぁ!!」
突然、後ろの扉ではなく、目の前に現れた少年に、コンデレラは思いっきり驚いた!

「なんで?鍵をかけたはずなのに!?」
「あっはっはっは、だって僕は魔法使いだよ?移動の魔法くらい朝飯前さ。」
「ちっ・・だったら、最初から魔法で入ればいいじゃないか、ものぐさだな。」


つくづく、キミって失礼だよね?まぁいい話を進めよう。キミはお城の武闘大会にいきたいんだね?

えぇ・・まぁ・・。
なんとなく、ここで頷くといやな感じがしたので、コンデレラは曖昧に答えた。

「なんだい、ノリが悪いな〜、ここで普通なら、お城に着ていくドレスがないの?助けて魔法使いさん
くらい言いなよ。」

って、どこにいくんだい!?

気が付けば、コンデレラは、ムラケンを残して自室へと戻ろうとしていた。

「いや、なんか、めんどくさくなっちゃって、部屋に戻ってのんびり寝ようかな〜なんて。」
「武闘大会は?」
「え?折角、うるさいのがいて羽を伸ばせるのに、そこまでして出ることもないでしょう。俺は
今日は寝ることにしました。」

だから、帰ってくださいね。

バタンと階段下の扉が閉まり、どうやら本当に寝てしまうようです。


「ちょっと、ウェラー卿!主役がここで寝るなよ!話が進まないじゃないか!?」

すると、中から『ぐーーー!』と、わかりやすい返事が。

「こうなったら仕方ない!出てくれるなら、魔剣モルギフを差し上げよう。」

ばたん!!

「魔剣って?一体どんな素晴らしい・・・・。」
『ヴぅ〜〜〜

コンデレラは、魔剣ときいて、どんなすごい剣かと期待して出てきてみれば、なにやら柄に不気味な顔が
蠢いている一振りの剣が、魔法使いの手に握られていた。

『ラヴ〜〜〜ぅぅ♥ ♥

どうやら、コンデレラを気に入ったようだ。目をハート型にして、唇を突き出している。キスでも
ねだっているのか?

「・・・いりません・・帰ってください。」

Σがーーーん!!

「魔剣でもだめなのかい?けっこう、わがままだね〜。」
「よくよく考えたら、俺には魔力はありませんし、それに俺は実践向きの剣のほうがいいです。」
「じゃぁ、こんなのはどう?『名剣・風の咆哮』コレの元の持ち主が、腕利きの剣士でね。あまりの剣速に
真空の刃が相手に襲い掛かったと言うんだ。だから、風の咆哮っていうんだよ?どう?」

その剣は、美しい刃紋をもった少し大きめの剣であった。刃の根元には、獅子が雄たけびを上げている様が
彫られていて、柄には異国の言葉が掘り込まれていた。

「へ〜、これはいい。持った感じが手にしっくり来るし、本当にコレをいただけるんですか?」
「魔法使いに二言はないよ。武闘大会に出てくれるかな?」
「いいですよ、でましょう。」

『ぶーーーッぶーー!』
モルギフが、何やら文句を言っているが、この際、気にしない。
「もう、モルギフ静かにしなよ、お前、女性(?)の趣味までご主人様と一緒かい・・。」
「ご主人様?」
「イヤなんでもない。でも、そのドレス姿ではだめだね?」

チチンプイの姫系ドレスでちんとんしゃーーん!!

ちょっと脱力系の呪文を唱えると、コンデレラは、上半身は真っ白い軍服を基調としたタイトなつくりで、
それでも腰から広がるのは見事な刺繍とフリルのお姫様のようなドレスを着ていました。
「白は汚れが目立ちそうなんで、他の色にしてくれませんか?それと、戦うのにフリルのドレスはちょっと?
TPOをかんがえると、シンプルな軍服がいいな〜。」
「もう、注文の多いお客さんだな〜。というか、女性ならキレイなドレスじゃないの?王子様の目に
留まらなくちゃだめなんじゃないのかい?」
「王子?あぁ、あの、筋肉マニアていう、王子ですか?」

ごめん王子、キミの思い人に、変な印象を植え付けちゃったよ。
村田は、心の中で親友に謝る。

俺、筋肉に興味ないですから、王子の好みじゃないでしょう?それより、賞金を狙うには、
実質一番の服装がいいんです。

しかも、王子に何の興味もないことが判明。ますます、王子に謝る村田さん。

「もう、出てくれればなんでもいいよ。それ、ちんとんしゃ〜ん!!」(←色々疲れた魔法使い)

今度は、カーキ色のシンプルな軍服のようだ。うん、コレなら動きやすい。

「外に馬も用意してある、あ・・それとこれ、招待状だ。コレがないと受け付けてくれないからね。
では楽しんでくれたまえ!」(←ヤケ)


そういうと、魔法使いは、その場から消えた。


こうして、親切な魔法使いのおかげで、コンデレラは、王子様の待つお城の武闘大会に
出かける事が出来たのでした。



2009・3・19UP
かきたかったんだもーーん。(←こら)