長編パラレル ママシリーズ 狂想曲 |
狂想曲 第一幕 還ってきたママ その日、カヴァルケードに眞魔国から一隻の船が付いた。その船から降り立ったのは、薄茶の髪に同色の瞳という よくある色彩を持ちながらも、瞳に銀の虹彩を煌めかした美しい魔族。 カーキ色の軍服に身を包んだ彼の魔族は、部下と思われる者が引いて来たハシバミ色の愛馬の手綱を受け取ると 颯爽とまたがり、見とれている観衆達を尻目に去っていった。目指すは、この国の王城! 馬は、街中を超え、人通りが少なくなる街道に出ると、一気にスピードを上げてその日の夕方には、王城の城門 前へとたどり着いた。王城前では、門番の兵士たちがぽかーんと口を開けてその人物が、乗り付けたのを見た。 黄昏色の光を受けて、長い髪は淡く光り、まるで天使が舞い降りたのではないかというくらいに、美しい女性。 「カヴァルケードの方に申し上げる!私は眞魔国より、ウェラー卿の代理としてきた者、カヴァルケード国王代理! ヒスクライフ殿下にお目通りを願う!」 凛とした声が、カヴァルケードの城前に響く。これが、女性の形をした嵐の到来だった。 「なにぃ!コンラートが単身カヴァルケードに乗り込んだぁ!?」 あまりの内容に、フォンビーレフェルト卿ヴォルフラムは、手にしていたクッキーを握りつぶしてしまった。 「どういうことだ?アニシナ!?」 グウェンダルも、ありえない内容に、驚きを隠しきれない。しかし、その報をもたらした人物こと、毒女アニシナは、 平然とお茶を楽しんでいる。 「どうもこうもありません、コンラートは昨日のうちに旅立ち、今頃はカヴァルケードに着いたころでしょう。大丈 夫ですよ、あなた方の分もお土産は頼んでおきました。」 「誰も土産の心配などしておらん!!」 「では何だというのです?行ってしまったのですから、今更こんな所でを、何言っても無駄です!」 ニヤリ・・と、アニシナが笑う。間違いない、今回の事は、毒女の手引きで行われたのだろう。しかし、何故わざわざ アニシナの手引きなどを借りたのだ?彼独りで行くなら、いつものように旅人に扮していけば良いだけの事。 「アニシナ・・何を企んでいる?」 「企んでいるなんてとんでもない。わたくしは、可愛い弟子のために一肌脱いだだけの事・・。」 「・・・・・グレタか?」 「何?グレタ?だったら、僕も行くぞ!今からコンラートを追う!グレタは僕の娘だからな!」 「まて、ヴォルフ!」 「そうだよ〜僕らをおいてっちゃ駄目だよ〜。」 「猊下!?」 「当然、俺も行くぞ!」 「・・と、小僧!?」 「ちょっと、グウェン?なんで、村田が猊下で俺が小僧なの!?しかも、俺はおまけかよ!」 「あっはっは、格の違いだよ渋谷!僕のこのオーラがそうさせるのさ!」 「・・・オーラっていうより、オラオラ!っていう感じで脅しているんじゃ?・・」 ボソッと言った有利に、村田のオラオラ!オーラが・・ひぃ!ごめんなさーい! そんな、漫才コンビに、摂政のこめかみが、ピクリ・ピクリと引きつる。 「それで?二人とも、何時こちらに来たのだ?」 そう、陛下と猊下は二人揃って、5日前に地球に戻ったばかりだ、いくらなんでも帰ってくるのが早すぎる。しかも・・。 「20分くらい前?」 「それで・・なんでっ!?しっかり旅装束なんだ貴様ら〜〜!!」 そう、摂政閣下が怒るのも無理は無い。突然現れた陛下と猊下はそろって、髪を染め目にはコンタクトも入り ついでに旅装束にに着替えているのだ。 「あぁ、だって今回は、ウェラー卿に頼まれて、こっちに来たんだもの。」 しれっと答えたのは猊下。 「うんだから、今回は、王様業をしに来たわけじゃないから!」 堂々とそんな事を言ってのけるのは、陛下。 「おまちください、陛下と猊下!?ま・・まさか、お二人揃って?」 折角、双黒二人が揃って早々と帰国したと喜んでいた王佐の顔が引きつる。まさか?まさかなのかー? 「うん、そう!カヴァルケードにグレタの父親として行って来るよ。」 「僕は、ウェラー卿のサポーターとしてね?」 そそんなーーぁぁ!あぁ、へいくぁ〜、へいかと猊下揃ってどうしてコンラートとばかり〜〜。 またもや、嫉妬にとち狂った汁王佐を無視して、有利はアニシナに向き直る。 「こんにちは、アニシナさん。もう、うちの奥さんは、グレタの元に行った?締め切りに間に合いそう?」 「えぇ、今日がその締切日、彼も、もうそろそろ着いたころ、きっと今頃、早速申し込みをしている頃でしょう。 陛下と猊下もお早くお発ち下さい。向うで二人が待っているはずです。」 「ちょっと、お待ち下さい陛下?どういうことですか?コンラートとグレタがどうかしたのですか?」 王佐の質問を、アニシナサンに聞いてと、スルーすると村田と連れ立って、港へと向かう。 「あ、フォンビーレフェルト卿もきてもらうよ、向うで君の『姉上』を、男共から守らないといけないからね。」 ・・・姉??うえ?? 「・・・あねうえ・・・って、まままま・まさか!!!」 「そう、ウェラー卿は、今、アニシナさんの新薬を飲んで、女性化してカヴァルケードにいるはずだ。」 「「なにぃぃ!!女性化だと(だってぇ)」」 「なんですってー!?新薬?また恐ろしいものをぉ〜!」 兄弟二人と王佐・・微妙に驚くポイントが違う。 途端に、コンラートの兄弟二人の顔つきが代わった。今まで、行かせるのを渋っていたのがウソのように、グウェンダルは 末の弟を、一刻でも早く行くように急かす!しかも、港に停泊中の高速船を使うようにと、素早く許可書を発行までした。 「ヴォルフラム!早く、コンラートの元に行け!いいか、狼どもを『うちの妹』に近づけるな!」 「判っています兄上!『うちの姉上』の事は、お任せ下さい!いくぞ、へなちょこ共!」 靴音も高く、ヴォルフラムは先頭切って行く! 今、行きますからね!あねうえ〜!うえぇーうぇ〜(←エコーw) ・・・あいかわらず、シスコンだね・・アノ兄弟・・。 「でも、おかげでノセ易いではないですか?彼も行って貰わなくてはなりませんし。」 呆れた様に呟く村田に、アニシナがそっと囁く。 「まぁね・・。じゃぁ、アニシナさん、僕らも失礼するよ。」 「はい、いってらっしゃいませ。グレタを頼みます。」 「うん、任せて!」 こうして、コンラートの後を追って、魔王一行がカヴァルケードに向かった。 7月4日UP 狂想曲始めました。ラプソディーじゃなくcapriccioの方です。混同した居た私。 さて、また女性化しているよ。再びママ化下コンラート閣下!今度は、カヴァルケードで 活躍予定です。しかし、このシリーズおおいので、サブメニューが満杯です。 |