猫にマタタビ・獅子に魔王・後日談





その日、コンラートは意外な場所で目覚めた。魔王部屋のベットの中である。しかも・・
隣で眠っているのは地球に帰ったはずのユーリだ。

「一体いつ、お戻りに?」
「う・・ん・・。」

すると、ユーリの腕が伸びてきて、ぱたぱたとコンラートが先程まで寝ていた場所を叩く。

これは、自分を探しているのか?

「ユーリ?」
顔を近づけてみれば、有利の手がコンラートの身体を探し当てると、彼の頭を抱えこんでしまった。

「え・・と、ユーリ??」
「う〜〜こんにゃっど・・・。ちゃんと・・・ねてないと・・だめだぞ・・くーーー。」

-- 寝ぼけているのか??

まだ一番鳥が鳴いたくらいだろう・・・2番鳥がないたら、ユーリを起こして一緒におきよう。
せっかく気持ちよさそうに眠る主を起こすのも忍びないと、コンラートは暖かなそのぬくもりに目を閉じた。




「あれ?」
「おはようございます、・・陛下?」

まつげが震えて漆黒の瞳が現れるのを、すぐ間近でみつめていると、目を覚ました有利が不思議そうに俺の
頭をもぞもぞ触っている?その上・・・

「ユーリ・・ちょっと、どこを触って!なんで、尻をっ!!」

その上、普段恥ずかしがり屋の彼には珍しくも、コンラートの体中を触りまくって・・なんとお尻を
さわりまくり始めた。

流石に、コンラートもそれには驚く。

「ないないない!アンタ耳は?」
「ちゃんとありますよ?」
あるに決まっている、じゃなければ、俺は有利の可愛い声を聞けるわけがないのだ。

「じゃなくって、・・あぁ、戻っちゃったのか??」

-- なんで、がっくりきているのかな?

訳がわからないコンラートは、とりあえず有利に起きるように促す。

「あぁ、そうだな〜〜。」
といいつつ、有利は俺の手をとり、洗面所に一緒に連れてゆこうとする。

-- なぜ??

そして、お湯をためた洗面器にタオルを入れると、固く絞って俺の顔を拭き始めた。

-- え????

それも慣れた手つきで・・???

「ユーリ・・。」
「はーい、コンニャッド、あばれるなー?」


コンニャッド??俺はコンラッドですよ。もしかして、有利?まだ寝ぼけていませんか??

その上、今度は歯ブラシを持って、俺の口に突っ込もうとする。

「待ってユーリ!何しているんですか?歯磨きくらい自分でっ!」

-- と、まてよ?何故、魔王部屋に俺の歯ブラシやコップがあるんだ??

すると、ぱちりと目を見開いた有利が、あ・・という感じに口を動かした。

「ごめん、ついくせで・・。」

-- くせって?それは、いつもの俺の台詞・・。

二人の間に微妙な間が流れる。とりあえず、二人して無言で並んで歯を磨いた。




「なぜ、ここに俺の服が?」
それに何故、ズボンに大きな穴が開いているんだろう??コンラートは何かおかしいな?と思いつつも、
一旦自室に辞去した。

自室で穴の開いていない軍服のズボンを探し出し、着替えて朝食へと向かう。

扉を開けたら、なぜか残念そうな兄の顔・・ぐうぇんだる?なんですか??目だけで聞いてみれば目を伏せられた。

むか・・・

その上、いつもは兄の隣である、俺の席がない。変わりに有利のすぐ隣に椅子があり、有利の前には明らかに
二人前の食事量が置いてあった。

「あ、こんにゃ・・いや、コンラッドこっちこっち、連絡が間に合わないで、いつもどおりに用意してくれてさ。」

-- いつも?

とりあえず、言われるままに有利の隣の席に着くも、・・おかしい、ここで、いつもならば弟が、やれ尻軽だとか
絡んでくるのに、平気な顔をしてオレンジジュースを口にしている。

「はい、あーん。」
反射的にパクリと、食べてしまってから、あわててコンラートは有利を見た。い・・今?俺にユーリが
食べさせましたか?

だが、驚いているのは本人のみだ。有利は、次は何にしようかな?と、自分も同じスプーンで、同じ皿に
よそってあるポテトサラダを食べている。そして、ソーセージをさすと、再びコンラートの前にスプーンを
差し出す。だが流石に俺も、食べたりはしない。

「あれ?」
「ユ・・ユーリ、いったい何をしているんですか?」
「あ・・・あーーー!!!」

何かに思い当たったらしく、有利はスプーンをもう一本頼むと、コンラートに渡してくれた。

「・・・・・あの・・・本当に、今日はどうしたのですか?大体いつお帰りになられたのですか?陛下?」


「へ??」
「なに?」
「まさか?」

-- なにが、へ?で、なに?で、まさか?なんだ??

「「「覚えてないのか?コンニャート(ッド)!?」」」


-- だから、俺の名前はコンラート・・なんで兄弟と名づけ子が揃って間違えるんですか!?

ぱちくりと、驚いた様子の俺に、まぁ、アニシナだからな・・と、まずは長男が冷静を取り戻し、
なんだ、つまらん・・しばらくそれでからかえると思ったのにな・・とは弟だ。ヴォルフ・・猊下の影響を
受けないように、お兄ちゃんは悲しいよ?

そして最後に、有利は・・・かなり不機嫌だ。

「マジで覚えてないの?ここ数日のこと?」
「え・・あの?ここ数日って?・・もしかして、俺に記憶がないだけで日にちがたっているとか?」
そんな馬鹿なとおもいつつも、コンラートは、兄に視線を向ける。
「コンラート・・最後の記憶があるのはいつだ。」
「昨日ですよ。たしか、夕方・・ダガスコスによばれて・・・・あれ??」

その後の記憶がない・・・そういえば、どうやって自分は魔王部屋に行って、眠ってしまったんだろう?
「それは、1週間前だ・・コンラート、お前はアニシナの『もにたあ』にされたのだ。」
「もにたあ?まさか、俺には魔力がないのに!?」
「だから、ギュンターの魔力を吸い取ったのだろう、それでお前は、獅子に変えられていたのだ。」


な・・なんだって!?






衝撃の朝食が済んで、魔王部屋に戻った二人。

その間、有利の護衛氏は、ずーーと落ち込んだままだ。

コンラートは話を聞いて、眩暈がしそうだった。というか、実際にさっきから視界が回って、グラグラしている。

よりによって、獅子にされたコンラートは、有利に飼われていたらしいのだ。だから、朝から有利と一緒に
いたのか?そして、自分をかまい倒す彼の行動もわかった・・。
ここずっと、彼は食事から風呂まで 自分の面倒をしていたのだという。

「すいません、ユーリ。長らくご迷惑をかけてしまって・・。」
「・・・コンラッド・・本当に覚えてないのかよ?」
なにやら不機嫌そうに有利が唸る。それはそうだろう、かなり迷惑をかけたはずだ。それを覚えていないのだから。

「面目ありません。俺は、陛下にどれだけご迷惑を・・。」
「陛下言うな、名付け親!・・・絶対に覚えてないな?」

-- 何でそんなに念を押すのだろう?

「あ・・の、俺は何か陛下にしたんでしょうか?」

ただならぬものを感じて、コンラートは恐る恐る聞いてみた。

「あ?え〜・・な・・なーんにもなーーい、うんうん、ないない。」
何をあわてているんですか?それでは俺が何かしたんだと、いっているようなものですよ・・?

「陛下、俺は何をしたんですか?」
「覚えてないなら、いいってばっ!!」

-- そんなに怒らなくても・・・。

しょげたコンラートに、有利もわるいかな〜とはおもうのだが、コンニャッドの時に、色々されちゃいました
なんて、有利だっていえない。しかも、相手は何も覚えていないのだ。

-- ここは仕方ない・・なかったことに。

「若さゆえの過ちか?・・ふぅ〜3」
「え?」

なにやら、変な単語が聞こえた気がして、コンラートが聞き返すも、やけにふっ切れた笑顔で有利が微笑む。

「うん、気にするなコンラッド!アンタ見かけはコスプレ野郎でも、中身は獅子だったんだから、たとえ、
執務中床にクッションを抱いて丸まって寝ていたり、お風呂で犬掻きをして泳いだり、ヴォルフと二人で
手を焼いたとしても、それは獅子がやったことだ。アンタは何も気にしないでいいぞ!」

Σヾ('д';)ノ ガーン!!!

そ・・そんな迷惑を?

なにやら、ショックで落ち込む護衛氏。

そうそう、あれは獅子がしたこと・・・実は毎日夜になると、けだもの全開の彼に、色々されちゃったのだが、
この名付け親は知らなくていい。

おれも、ついつい・・ながされちゃったし・・。

そうだ、流されただけだ。

ちらっと、落ち込む姿も麗しい男を見る。
これは俺の胸にだけ仕舞ってやろう。名づけ子に手を出してしまったとしれば、コンラートのことだ、護衛を
やめるとか言うかもしれないし・・。

それは、絶・対・に・だめ!!

ここは、心優しい飼い主であるおれが、黙っていてやるか?



「大丈夫だぞコンラッド、例え、また獅子になったとしても、俺がきちんと飼ってやるからな!」
「飼うんですか・・・。って、待ってください?まさか、また俺を獅子にするような薬の開発を頼んだのではっ!?」
「え?たのんだというか・・ちょっと呟いた事を聞かれたといいますか?」

そういえば、元凶は赤い悪魔だが、発端はこの人だ!!

「ち・・・気がついたか?恩だけ売っとこうと思ったのに。」
「気がつきますよ!今聞いたばかりじゃないですか!?本当に勘弁してください!今すぐアニシナを止めてくださいよ。」
「え〜〜〜、アンタやグウェンが止めて無理なのに、おれにとめれるわけがないじゃん。」
「陛下!おねがいします。」
「だいじょうぶ、今度は手乗り獅子が良いって言っただけだし、きっと愛らしいからグウェンもヴォルフも
可愛がってくれるさ!」

-- なんだって!!!

四面楚歌とは、まさにこのことか!どうやら、自分の手乗り獅子化は免れないらしい。

「普通に獅子を捕まえて、手乗りにしたほうが早いじゃないですか!?」←もっともだ
「ばか、普通の獅子じゃ、手乗りにしても危険じゃないか!ほら、その点アンタはおれに危害なんて加えないし!」

その絶対の信頼を喜んで良いのか?それとも、呪わしく思ったほうが良いのか?
めずらしくも、コンラートは悩んだのであった。


-- ふふん、悩んでいるな。俺にしたことを忘れた意趣返しだもんね。大いに悩め!

どうやら、陛下は忘れられたことを、それなりに怒っていらした。

「でもいいか、ユーリが飼ってくれるんなら・・。」
「うん?」

やがて、散々悩んだ護衛氏は、結論を出したらしい。

「だって、貴方とずっと一緒にいられるんでしょう?だったら・・・獅子にされても良いかな?」

・・ボンっっ!!!

瞬間!真っ赤になった有利を、護衛はいつもの笑顔で見つめる。

まったくこの男はっ!!

記憶も何もないくせに、どうしておれを喜ばすこというかなっ!?

それが本心からなのだから、たちが悪い・・・。

「おう!もちろん、誰にも渡さないから安心しろ!」
「男前だね、ユーリは。」

だから、好きだよ。

「なっ!」
「では、ご主人様、そろそろ執務に出かけましょうか?それで、早く終わらして、青空の下で
キャッチボールなどいかがですか?」
「・・・きれいな花の咲く丘で?」
「えぇ、お弁当を持ってね。」
「うん!いくいく!」

コンラッド、だーいすき!!ぴょーんと飛びつくと、しっかりとして、安心できる腕が、有利を優しく
受け止めてくれた。

うん、やっぱり、抱きついてもらうより、抱きつくほうが好きかも?

手乗り獅子の薬は、ヤッパリやめてもらおう。と、有利は、後でアニシナに頼みに行こうと思った。
自分は、このいつもの獅子が一番好きらしい。


「よーし!執務がんばるぞー!」
「そのいきですユーリ。ではおれは、部屋まで御送りしてから、お弁当を作りますね。」
「おう、アンタがいない間に、仕事を終わらすから、おいしいのを頼むな。」
「はい、ユーリ。」


うん、いつものこの獅子が一番だ!





2009年4月6日UP
どうも〜、コンニャッドからコンラッドに戻った獅子です。うちの陛下は男前だから
そう、うだうだ悩みません。一応、次男を好きな自分を自覚しているからね?
と、いうか、毎晩か!さすが、ケダモノ!って、わたし次男FANですよ〜、いやだな〜信じて信じてv