口は災いの元・猫にマタタビ・獅子に魔王 |
確かに言った。 猫にマタタビをあげたら、酔っ払って楽しいと・・・。 確かに、言いましたともさ。 猫って言えば、獅子も猫科だよな?だったら、獅子といえばコンラッドだろう?あいつも酔っ払っちゃったりして? そのうえ、猫だから陽だまりで丸くなっちゃったりしたら、笑えるよなー。 なんて、言った事は認める!ただ、だからって!! 本当に、やらなくてもいいじゃないかぁぁーーーーー!!!!! ΣΣがうんっ!? 「小僧!行き成り大声をあげては、だめではないか、コンニャートが驚いているだろう!?」 コンニャート・・名前まで変わっているよ・・。(iДi)あぅぅ〜〜。 あまりのことに、魔王陛下は、がっくりとひざを突いた。 すると、ポテポテと大きな体の獅子はやってきて、ゴロゴロ喉を鳴らしながら、有利の背中に張り付いた。 「お・・重ぉぉーーーい。」 すりすりすり・・っと、額を有利に擦り付けて、獅子が有利の背中で甘える。 そう・・獅子だ。ベースはコンラートのものだが、短く襟足までしかなかった髪は、肩まで伸びて、まるで鬣の ようだし、頭上ににょっきり生えているのは、まあるく毛がびっしり生えた耳だ。お尻で揺れているのは、 見間違いでもなんでもなく、ライオンの尻尾。 しくしく・・・この前、眞魔国から帰る時は、普通の人間・・否、魔族だったのに。 今朝、戻ってきた時は、すでにこの調子であった。魔王風呂から帰還した有利を見た途端に、このコンニャートは、 有利に向けて突進し!ジャーンプ!飛びついてくれたおかげで、二人揃って湯の中に沈みこんだ! 帰った早々に、溺れ死ぬところだったのだ! それもこれも、元をただせば自分のせいであったのだが・・・。 例によって、赤い悪魔が有利が言った言葉をきいて、魔王陛下直々の頼みならば、一肌脱ぎましょう! そういうと、魔王陛下の願いをかなえるべく昼夜を問わず実験して・・・あぁ、だからギュンターがいないんだ。 完成させた薬を、魔王の帰還にあわせてコンラートに服用させたのであった。 そして、例によって・・・ 「失敗したんだ?」 「あぁ、本当は、姿が完全に獅子になり、中身はコンラートのままのはずであったが。」 姿は、多少のオプションつきとはいえ、コンラートのものだが・・中身は、完全に獅子だ・・というより・・。 態度を見る限り、これは猫だ!でかくて男前な猫だぁぁ! 「これでは、護衛は出来ん。今回は、グリエも国外任務中だ。代わりに数人の護衛をつけるが、くれぐれも 今回は脱走などしないように・・・いい機会だから、しっかり執務に励んでもらおう。」 「うあ〜〜〜い。」 春のぽかぽか陽気・・・こんな気分のいい日に、グウェンと二人っきりで執務・・。ギュンターはまだ帰って こないし、ヴォルフラムはとっくに『もにたあ』にされて、自室にて寝込んでいるらしい。 本当なら、コンラッドにきれいな花の咲く丘まで、ピクニックに連れて行ってもらう約束をしていたのに。 ふっとみれば・・・いつもの護衛のポジションに佇むはずの彼が居なかった。 視線が段々下に行くと・・? ふるふるっと、思わず羽ペンを握った手が震えちゃうぜっ! 「コンニャットォォ・・人が一生懸命仕事している横で、丸まって眠るなーーー!!」 見れば、コンニャートは、いつもの護衛の場所には居たが、クッションを抱えて丸くなって眠っていた。 有利が怒れば、ふあぁ〜〜と欠伸をして、ちらり・・と、有利を見ると、背中を向けて また眠ってしまった。 うう・・やっぱり猫だよ・・・でっかい猫が居る・・。 コンラッドが丸まって寝ていたら笑える・・なんて、いっていたが・・・ムカツク。人が真面目に仕事をしている 横で日向ぼっこをして眠られると、むーかーつーくー。 「よせ、お前が言ったとおりに、毒を調合されているだけだ。いわば、コンニャートは被害者。それより、 体は魔族なんだ。こっちのソファーで眠らせろ。固い床の上では、コンニャートの体が痛むだろう。」 グウェンダルは、獅子になった弟に優しい・・。やはり、素材がネコタンだからか?? 「ほら、コンニャート、ここで寝たら体が痛くなるぞ、あっちのソファーでねむるのだ。」 グウェンダルが、弟の体を持ち上げると、ソファーの上に寝かせる。 すると?お礼のつもりなのだろうか?コンニャートの手が首に回り、すりりと頬に擦り寄ると、 ぺろり・・と、舐めた。 「あーー!!」 魔王陛下は、驚いて椅子を蹴倒しながら立ち上がると、二人を引き離した。そして、訳がわからないという 顔をするコンニャートに詰め寄った! 「うわーん、だめだめ、コンニャッド!何で、グウェンにキスなんてするんだ? コンニャッドの浮気者ぉおーー!!」 ポカポカと、叩かれて、コンニャートのまあるいお耳が『ぺしょり』と垂れた。 「ばか者!今のは舐めただけだ!」 グウェンダルが、魔王の頭に拳骨を一発お見舞いした。 有利が頭を抱えると、コンニャートが素早く彼から離れて、机の下に隠れてしまった。 「ほらみろ!怒られたと思って、ネコタン・・いや、コンニャートが、あんな所に隠れてしまったではないか?」 覗いてみれば、大きな体を小さく丸めて、琥珀の瞳だけがキラリと光ってこちらを見ていた。 「う・・・・。」 その様子に、有利の中に罪悪感が生まれる。そうだ、元はといえば自分の不注意な発言のせいではないか? 「ごめん、コンニャッド、お前、今は獅子なのに・・よし、こうなったら、元に戻るまでアンタの『飼い主』として、 おれが立派にアンタの世話をしてやるからな?」 さぁ!コイ!とばかりに、両手を広げると、コンニャートは、たっと飛び出て、びょーん!と、飛びついたのであった。 この反応、うん、家で飼っている犬二匹とかわらない。だとしたら、子供の時からペットの扱いはなれている。 よーし、立派に面倒見るぞ! ぺろり・・・ 「へ??」 ぺろぺろと顔をなめられた。押し倒されたまま、コンニャートが乗り上げてきて、そのまま主人の上で 寝ようとしている。 「まてまてまて!」 「がぅ??」 「コンニャート!アンタに乗っかられたら、おれがつぶれるって!ちょっと待てよ?」 そういうと、有利はコンニャートを魔王の椅子に座らせて、自分は彼の足の間に座った。すると、コンニャートは 有利の背中にべったり張り付いて嬉しそうに、喉を鳴らすと・・ふぁ〜と欠伸一つして目を閉じた。 そのまま、有利に べったり くっついて眠りにつく。 「小僧・・それで仕事をするのか?」 「うん、うちでも犬を飼っているんだけど、よくこうして甘えてくるぜ?」 言われて見れば、有利の態度は 慣れたものだ。 しかし、飼い犬と同じ扱い・・少し弟が不憫に思ったグウェン。 だが、当人・・いや、当獅子は実に幸せそうな顔で眠っていた。有利も、コンラートの体温を感じて安心するのか? それとも起こすと、可哀相だと思うのか?黙々と目の前の書類にサインをしてゆく。 他人の幸せは、外から見ていても判りはしない。当人同士がいいのならば、放っておくか・・。 何より、仕事が進むのはイイコトだし・・・それに、視線を上げれば、丸い耳を生やし健やかな顔で眠る弟と 一生懸命に書類と格闘する魔王が、ワンセットで見れるというのは・・・なんとも可愛いではないか! 仕事命で、可愛いもの大好きな摂政閣下に、この状況に不満があるわけがなかった。 「ふ〜、お仕事完了!」 「がうがうがう。」 「うん?おなかすいたのか?おれもー。」 「そうだな、そろそろ夕飯だろう。食堂に行くか?」 摂政閣下のお許しが出て、腹ペコ大魔王様は、コンニャッドと手をつなぐと、食堂へと急いだ。 「コンニャッド!今日の夕食は何かな?楽しみだな♪」 「がうんっ!」 この、うわきものーーーー!! 「うわぁ、ヴォルフ!お前、寝込んでいたんじゃ!?」 「折角お前が帰ってきたというから、わざわざ出てきてみれば!お前という奴は、婚約者の見舞いにも来ないで、 コンラートと浮気をしているなんて何事だぁぁ!!」 食堂に入るなり、沸点の低い美少年に捕まってしまった。その後は、お決まりのシェイクタイム! 「うわぁぁ!今日はいつもよりまわるぉぉ〜、たすけて、コンニャッドぉ!」 「がるるる!!」 「なに!?」 爛々とコンニャットの瞳が輝く、良く見れば、瞳孔が縦にアーモンド形をしていて、完全に猫科と化していた。 ぱしーーん!! 「なに??」 コンニャートの左手が、ヴォルフラムの左頬を叩いた。いわゆるこれは? 「あ・・猫パンチ・・」 「・・これは古式ゆかしい求婚の儀式!?・・コンラート・・気は確かか?僕らは兄弟で・・。」 がっぶり!! ヴォルフラムが、呆然とすぐ上の兄にちかよると、間髪いれず腕をかまれた。 「うわぁぁ〜〜!何をする!?口で相手の右腕をかむとは!?コレは古式ゆかしい、永遠の愛を誓う儀式! 一体コンラートがどうして僕にぃぃ〜〜。」 ムッ・・・!! 「コンニャート!こっちにおいでっ!!」 有利がむくれて、コンニャートを呼べば、すぐさま噛み付いていたヴォルフラムの腕を放して、まっしぐらに 飼い主に飛びついた。 ゴロゴロゴロゴロ・・・かなりの上機嫌のご様子だ。 「コンラート!これはなんだ!?僕に永遠の愛を誓っていながら、すぐ他の男の元に飛び込むとは! ユーリもユーリだ!この尻軽!浮気ものぉぉーーー!!」 なにやら錯乱して、言うことが少々おかしくなったヴォルフラムだが、その騒がしさに機嫌を損ねたコンニャートの 尻尾が鞭となって襲った! 「相手の腰をしっぽで叩くのは・・なに?しっぽだと??」 そこでようやく、ヴォルフラムも周りが見えてきたようだ。なぜか、コンラートの頭の上に丸くて毛が ふっさふさ!な耳と、お尻からしなやかな尻尾が生えているではないか!? 「うわぁぁ!!コンラート、それはもしや?アニシナか?」 「気が付くのが遅いぞ、それより、食事に着け。」 やっと、冷静さを取り戻したろう末弟に、グウェンダルが食事の再開を促した。 あ、コンニャートは、ここに座るんだぞ。 そういうと、有利は、自分のすぐ脇に椅子を持ってきて、コンラニャートを座らせた。 「ユーリ、・・お・・おまえ・・なにをしている・・。」 ブルブルと震えながら、ヴォルフラムがようやく声を絞り出す。 「なにって?餌やり?」 そうか、餌なのだな?完全に猫扱いか? グウェンダルも、その様子に眉間のしわを増やしたが、それでも もくもくと食事を続ける。 そんな二人の前では、お行儀良く座らせたコンニャートに、自分の皿から食事を分け与える有利がいた。 なにせ、姿かたちは人間でも、中身は獅子だ。獅子に先割れスプーンを操ることは出来まい。 「こら、だめだぞコンニャッド、いくら中身が獅子でも身体は人間なんだから、ちゃんと野菜も食べるんだ。」 有利が差し出す、紫色の菜っ葉を顔を背けてイラナイとアピールするコンニャートを叱っている。 すると、飼い主に怒られて、しょぼくれた獅子が、仕方なさそうに口をあけると、ぱくっとその野菜を食べた。 「よしよし、いい子いい子。」 頭を撫でてやれば、ゴロゴロと喉を鳴らすコンニャート・・。 ヴォルフラムは、唖然としてその様子を暫し見つめてしまった。 あの、すぐ上に兄が、子供のように扱われて喜んでいる・・いや、只今中身は獅子なのだから、アレは兄ではない。 ふっとみると、自分のお皿には、デザートが残っていた。小さい頃は、コンラートはよく自分にこのデザートを くれたものだ。コンラートだって好きなくせに、それを隠して、ヴォルフラムに食べさせてくれたのだ。 いつでも、自分には兄の顔を見せていたコンラートのこんな姿は見たことが無い。 すっと、デザートの載った皿を、有利たちのほうへと差し出す。 「そいつに食わしてやれ、これは、コンラートの好きなものだ。」 「え?まじ?だって、いつもこれ、コンラッド俺にくれるぜ?」 どうやら、コンラートは今でもそんな所は、変わってないらしい。 コンニャートは、くんくんと、その匂いをかぐと、好物だとわかったらしい。瞳の瞳孔が開いて、真ん丸くして 有利が食べさせてくれるのを待っている。これは、本当に好きなんだろう。 早速、有利はデザートをスプーンですくうと、口に持ってゆく。すると、ぱくっと食べたコンニャートの瞳がキラキラだ! 「すげー、本当に好物だったんだ・・おれ今まで知らないで、コンラッドの分も食っちゃって悪かったな。」 「そうだな、ユーリは、食い意地を少し抑えたほうがいい。」 「うーーぅ・・。」 「そういえば、ヴォルフって、もにたぁに、されたんじゃなかったけ?」 「訳がわからないものを飲まされて、すぐに気絶してしまったからな・・まさか、そんな毒だとは思わなかった。」 一歩間違えれば、自分に耳だの尻尾だのが生えていたかと思うと、失敗してくれて良かったと思う。 食事が終わって、手を舐めながら、キレイに顔を洗い始めたコンニャートと、それを必死で止める有利を見つつ ヴォルフラムは、そう思ったのであった。 「さて、食事も終わったし、やっぱ、後はお風呂だよな?コンニャッド!風呂に入れてやるからな!」 「な・・なにぃぃ!!!」 「なんだよ、ヴォルフ。」 「き・・きさま、コンラートと風呂にはいるだと?」 「だって、コンニャッドだけじゃ、風呂になんて入れないだろう?第一身体も洗えないジャン。」 「ユーリ!コンラートの身体も洗う気か!」 「任せろ!俺は家でも犬2匹の身体を洗ってやっているんだぜ!獅子くらい朝飯前だぜっ!」 なぜか、腰に手を当てて胸を張るユーリ。 「犬・・獅子・・・ユーリお前・・。」 完全に動物扱いの兄に、少し憐れむ視線を向けてしまった弟であった。 結局、有利とコンラートだけお風呂に入れるのは、納得できないと、ヴォルフラムも一緒に入ることになった。 「こらー!な・・何、コンラートの服を脱がそうと!?ユーリ!お前には、慎みというものが無いのか!?」 「服のまま、風呂に入れるかぁーー!!」 そういうと、有利はコンラートの軍服をテキパキと脱がしてゆく。 その横でしぶしぶとヴォルフラムも服を脱ぐ。有利は、コンラートの服を脱がすと、バスタオルを巻いてやり、 自分もぱぱっと、脱いでゆく。ヴルフラムが、湯殿にむかおうとすると、コンニャートも連れて行くように 言われてしまう。 「何で僕がっ!」 「だって、おれまだ服脱いでないし、服も片付けなくちゃ。コンニャッドは、放っておくとまずいし、 つーか、手伝わないなら、何で一緒に入るんだよ?」 「わかった・・連れてゆくだけだぞ。」 ヴォルフラムは、コンニャートの手を引こうとする。が、・・く〜〜〜〜ん と、有利のほうを向いて、 コンニャートが鳴く。 「すぐ行くからな、ヴォルフラムの言う事を聞くんだぞ。」 「くーぅぅん。」 ドナドナと、引かれてゆく子牛の様に、コンニャートは風呂場へと向かわされた。 さて、コンニャートを連れてはきたが、ヴォルフラムも困った。コンニャートは、閉められた扉の向うにいるだろう 有利の気配を追って、先ほどから耳を扉に向けて、じ・・っと、待っているのだ。まるで忠犬だ。 「コ・・コンラート?」 「・・・・・・。」 無反応・・。 「・・・・・・・・こ・・コンニャート?」 「がうん??」 なに?という風に振り向いた兄に、微妙な気持ちになる弟・・そうか、コレはコンニャートなんだな。 わかっていたが解かりたくない弟心・・・。 しかしもって、余計わからない。一体獅子にどう接しろというのだ?人間でさえどうしてやったら良いのか わからないというのに? そこに、有利がやっとやってきた。 「あれ?まだ湯船に入ってないのかよ?おいで、コンニャッド!」 お待ちかねの飼い主の呼びかけに、コンニャートは、手招きされるまま寄っていった。 ざばーーん!!! 突然、頭かけられたお湯に、コンニャートの耳と尻尾をびーんと立った!目なんて驚いてまん丸である。 「何やっているユーリ!」 「あっはっは、大丈夫大丈夫!大げさだな、ヴォルフは?」 ・・しらなかった。普段小心なくせに、こういうところは大雑把なのだな。 「そんなに乱暴にかけるな!ちゃんと、こうして、少しずつ肩からかけてやるんだ。」 ヴォルフラムは、コンニャートの頭を乾いたタオルで拭いてやる。特に、耳は丁寧に拭いた。幸い水は 入ってないようだ。それから、有利から湯桶を取り上げると、静かに気をつけてかける。 すると、暖かくて気持ちいいのだろう?開いていた瞳孔が、少し閉じてアーモンド形になる。 ふと、自分は何でこんなことが出来るかと思い当たって・・そうか、この兄が昔してくれていたことだ。 まだ、小さかった頃、母はあの通りだし、父は自分の子供とはいえ、魔王の王子である息子に遠慮気味であった。 また、長兄は憧れはしたが、遠い存在で・・いつも、すぐ上の兄である、コンラートが自分の子育てをしてくれたのだ。 聞いた話では、オムツ替えはもちろん、ミルクに離乳食まで作って与えてくれたのも、遊んでくれたのも、 お風呂も、寝るときでさえ、全部やっていたのはこの兄だった。 ちょっと、しんみりと昔を思い出していると? 「よし、かけ湯をしたら、風呂に入るぞ〜♪」 「がうーん♥」 有利に腕を引かれて、コンニャートは、湯船にざぱざぱっと入ってゆく。 すると?獅子の本能なのだろうか?なんと、コンニャートは犬掻きで泳ぎ始めた。 「お、いいね!・・じゃぁ、おれも〜。」 すると、今度は有利までもが、スイーーっと、平泳ぎで泳ぎ始める! 魔王とその護衛が、大浴場で犬かきと平泳ぎで泳いでゆく・・・・なんて、ノーテンキな図柄だ・・。 「このばかものーー!風呂で泳ぐな!静かに入れっ!!」 おもわず、三男は、長男そっくりの怒声を上げてしまった。 ヴォルフラムに、怒られてしまい。仕方なく、魔王と獅子は揃って肩まで浸かって、100数える羽目になる。 そういえば、わすれていたが、こと、マナーとか立ち振る舞いとかには、この三男は厳しい性格であった。 「いいか、ユーリ。コンニャートの飼い主を名乗るならば、お前は良い模範でいなければならない。コンニャートに 悪い見本ばかりみせて、ちゃんと悪いことをしたら叱る!良い事をしたら褒める。ちゃんと、しつけないと! トイレと食事と散歩は、お前がキチンとさせるんだぞ。」 とうとう、弟にまで動物認定がされてしまったコンニャート・・・本人が解かってなさそうだからいいが。 「しつけは大事だぞ。きちんとできないと、痛い目にあっても知らないからなっ!」 「はい・・すいません。でも痛い目って?」 「たとえばだな、散歩中に、イキナリ走り出したりして、目の届かない所に行ってしまい、迷子になったり するかもしれないだろう?」 「あ、それ、おれがこの前、王都でやったんだ。つい、パレードの前の方で見たくてさ。そしたら、人並みに 飲まれちゃって、流された先で途方にくれたよ。」 どうやら、しつけが必要なのは、飼い主の方らしい。 その後、身体を洗おうとしたら、コンニャートがくすぐったがって逃げ回るのを、ヴォルフラムと二人して捕縛! お座りを言いつけて、どうにか洗い終える頃には、二人とも疲労困憊だった。 その上、浴槽に入るとまた泳いでいるし・・・、獅子って案外泳げるんだな。ネコは水が嫌いなんだけれど 獅子は大丈夫そうだ。 その後、お風呂から出たときも大変だった。 コンニャートは、そのまま、出て行こうとするのだ。あわてて、また二人で止めて、バスタオルでぐるぐる巻きにしてやった! 「はぁ、何で疲れをとる風呂で、ここまで疲れなくっちゃいけないんだ。」 現在、疲れの原因はといえば?すっぽりと、寝巻き(ロングTシャツのような?)を、きせられて暖炉の前で丸くなって 転がっている・・・あぁ、ネコだよ。 ヴォルフラムは、もう流石に付き合いきれないのか?珍しくも自室に戻って眠るようだ。 「こら、コンニャート、こんなところで眠ったら風邪をひくぞ?」 すると、尻尾を軽く振って、コンニャートが答える・・だが、起きる気配は無い。 「こら、おきろ!!」 有利は、つい、その尻尾を引っ張って、起こしたら? 「きゃうん!!」 「あっ・・。」 やはり痛かったのだろう?飛び起きたコンニャートは、ベットに飛び込んで布団の中に隠れてしまった。 「こ・・こんにゃーと?」 声をかけると、すすすすすーーーっと、布団なの中の山が離れてゆく。 「ご・・ごめんな?」 近寄ると、またすすすすーーと今度は逆方向に・・そして、キラーン!と、布団の中から光る目玉が二つ 有利を見ていた。 「うっ・・・・!!」 「ぐるるるる・・・。」 なんか、唸っているし。 「コンニャッドさーん。おーい」 「ぐるるるる・・・。」 「えっと〜怒ってイラッシャイマス?」 「がうーぅ。」 あー、そうなの?やっぱり怒っているんだ。 「えーと、ほら、尻尾を見せてみな?もう痛くしないから?な?」 すると、そろそろと、コンニャートが出てきた。そして、有利に前にぺたんと座る。寝巻きからのぞく 尻尾がしゅるんと有利の腕に絡まる。それを丁寧につかんで、みてみると、別段赤く腫れたりはしていなかった。 じ〜〜ぃっと、有利を見つめる二つの琥珀。有利は、ことさら、コンラートに見えるように、尻尾の房の根元辺りを いい子いい子となで上げると、 「痛いのいたいの飛んでゆけ〜〜!」 と、大きく痛みを放り投げる仕草をした。すると、コンニャートは、投げた方向をじっと見ている。 「ほら、コレで痛くは無いからな?」 ついでと、ばかりにぺろりと舐めあげた。 ビーーン!!!と、再びコンラートの尻尾が棒のように固くなった! 「あれ・もしかして、傷でもあって染みた??」 「がぁう〜〜ん♥」 「え?」 がばりと、コンニャートが有利の背中に覆いかぶさる。 「こら、コンニャッド重いって!」 暴れようとする有利の首筋に歯を立てられて、有利は驚いた。びくりと、固く身を強張らせる有利の首に、 コンニャートの舌が這う。 「ちょ・・ちょっと、コンニャートさん?えっとなんで舐めているの、つーか、なんか 下方に、当たるものがありますよ?」 まさかまさか!そういえば、獅子とかネコ科って、たしか春が発情期なんでは?でもって、なんか雄が雌の首に 噛み付いて動けないようにして、こ・ここ交尾をするとか?前にテレビで見たような? 「まて、コンニャッド!おれは雄だ!良く見ろ?お前と同じものがついているだろう!」(←お下品) 「がうん?」 いわれて、コンニャートさんは、ユーリの下の方を見た・・・が、有利の寝巻きはパジャマの上下・・ わかるはずが無い。が、わからないなりにも、この布が邪魔なことは、わかった模様。 すると獅子は、逞しい前足・・ではなく手で有利の肩を縫いとめると、顔を近づけて有利の胸の辺りの 寝巻きに噛み付き、一気に食いちぎった!! パジャマの上着のボタンがはじけ飛ぶのを、獅子が面白そうに目を細めた。 「コン・・ラッド?」 そこでようやく、有利は彼がコンラートであることを思い出す。可愛いペットのコンニャッドは、美しくも 危険な魔族の男であり、雄々しくも逞しい野生の獣なのである。 獅子は、顕になった有利の肌に舌を這わしてゆき、その胸に色づく果実に気が付くと、それをおいしそうに 舐め始めた。 「・・うぅっ・・、はぁん・・・・コ・・ン・・・。」 思わず有利の唇からは、淡く色がついたような声が漏れてしまう。それに、誘われて、獅子は有利の唇に 喰らいつくようなキスをする。 大きく開けた口内を、縦横無尽に、したい放題に暴れてゆく獅子の舌。有利の舌は逃げを打つも絡めとられて、 しまう。そうこうするうちに、有利の身体にも欲望の火種がついてしまう。 悲しいかな・・有利は、まっとうな思春期の男子高校生で、彼を襲う獅子は・・元を正せば、彼の一番大事な人で、 大好きなヒトでもある。でもって・・・密かに、キレイだな〜なんて、思ったこともしばしばある相手なのだ。 って、まずい!まずいよおれ!流されているよ、おれ!!気をしっかり持つんだおれ!! なにせ、おれ達男同士じゃんか!! なのに・・ 「アァァン・・・。」 -- って、今のおれの声!?ナニ甘い声なんてだしちゃってんの、おれぇぇーーー!! -- というけど、おれよ!だって、この人、触り方がエロくてしかも、気持ちいいって!経験0のおれが 抵抗なんて、出来る訳じゃないじゃん!! -- そうだそうだ!大体、この男、なんか変な電波出しているんじゃぁ? と、一人で自分会議だ。そんな事をしている間に、コンラートは器用に、ズボンを口と前足(手)で 下げてしまっていた。おかげで、反応しているおれの息子さんが、獅子の目の前に〜〜! すると、何を思ったか、獅子は前足で息子さんをつんつんとじゃれ付き始めたではないか? な・・なにをしている、コンニャッド!!?? さわるな、遊ぶな!これこれ、そこのでかいネコ!それは遊ぶモノではありません。 「がう???」 おお!?どうやらやっと、メスではないことに気がついてくれたか? 【この時の、コンニャッドの思考】 ユーリをお嫁さんにしよう→と、おもったら、どうやらユーリは自分と同じ雄らしい =ユーリはお嫁さんにはできない 「よし、コンニャッド、気がついてくれたか?だったら、今すぐどけーー!!」 デモ、ユーリは大好き→それに、ユーリほどお可愛いメスはいない =だったら、雄でもいいじゃん!! 以上の自分会議を持ちまして、コンニャートさんは、このまま行為の続行を決議した。 「がうんがうん♪」 やけに嬉しそうに、尻尾が揺れて、再びコンニャートが有利の上に覆いかぶさると、なんと有利の息子さんを舐め始めた! 「うわぁぁん、なんでーーー!?」 下着に恥ずかしいシミが広がると、有利の息子さんは、黒い布を押し上げるように持ち上がってきてしまった。 当然というか、獅子はその邪魔な布を食いちぎる。そして、出てきたモノを咥えると、口内に招き入れて舌で 唇で‥丹念に愛撫を施す。 もう、こうなってしまえば、有利にあがなう術は無い。なにせ、経験値は0なのだ。こうなってしまった熱を黙らせる 方法なんて、彼には無かった・・だとしたらもう・・全てをこの獅子に預けるしかないのだ。 あぁ、ヴォルフラムの言うとおり・・しつけは重要だ。せめて『待て』は教えておくべきだったと後悔しても後の祭り。 有利はその日、獅子においしく召し上がれてしまったのであった。 翌日・・痛む腰とかお尻とかを気にしながらも、執務をこなす有利は、理不尽なものを感じていた。 あいかわらず、べったりと自分の後ろには、でっかいネコがぐーすかねているのだ。 「大体、でかいからいけないんだ、どうせなら手乗りサイズとかならもっと可愛いのに・・。」 ぶつくさと文句を言えば? 「おはっおはっおははははーーー!わかりました陛下、その依頼、確かに この毒女アニシナが承りました!」 突然、グウェンダルの机が開いて、今回の騒動の元凶の女性がでてきた。 「小僧!余計なことを言うな!!」 「ぎゃぁぁ、たのんでなーい!!!」 と、あわててみても後の祭り。 他人の話を聞くということをしらない、赤い悪魔は、意気揚々と研究室に戻っていった。 当然、その腕には、『もにたあ』であるグウェンダルが引きずられてゆく。 どうやら、次の騒動の種をまいてしまったらしい魔王陛下・・その場合、犠牲になるのは、コンラートだろうか? それともまた・・・。 戦々恐々の魔王陛下であった。 2009年4月4日UP 2009、獅子の日記念小説。おかげさまで、サイトも一周年です。 わ〜い\(^o^)/\(^o^)/(*'(ェ)'*)\(^o^)/\(^o^)/わ〜い |