魔王コンラート 逆転主従のある日 その2 |
一枚・・また一枚と、衣服を脱いでゆく青年。
有利は、引き締まった肢体があらわになってゆくのを、熱のこもった瞳で眺めていた。 「・・・り・・ユーリ?」 「は・・はいぃ!?」 気付けば、不思議そうな瞳で、全身から邪魔な衣服を脱ぎ去った美しい青年が、自分を見ていた。 「なんでしょうか?陛下!」 「…バスローブをくれと、いったんだけど?」 「あ、すみませ。陛下。」 ユーリは、自分の主である青年に、あわてて持っていたバスローブを渡した。 「ありがとう・・・ところで?」 「はい?」 「また陛下って云ったね?名づけ子さん?」 あ・・・ そうだった、二人っきりのときは、名前を呼ぶようにお願いされていたんだった! 「だ・・だって・・その・・。」 いえない!陛下の服を脱ぐ仕草が色っぽくって、ついつい見惚れちゃったなんて!! と、いいますか、その・・マッパでおれの前に立たないでください。なんか、いたたまれなーーい! 「まだ、仕事の時間ですから!それに、おれは一介の従者なわけですし、魔王陛下を名前でなんて!」 真っ赤になって、なにやら言いよどむ姿に、何を思ったのだろうか?目の前の青年の口の端が持ち上がり 要注意の表情がデターーー!! 「そんなに、お仕事がしたいなら、あげようか?」 「へ?・・は・・はい!なんなりと、お申し付けください、コンラート陛下。」 ピクン!と、目の前の青年こと、魔王陛下の傷のあるほうの片眉が上がる。 「では、従者ユーリ、背中を流してくれないかな?あ、お風呂なんだから、もちろん服は脱いでね。」 え・・・?? じゃぁ、待っているからヨロシク。 そういうと、魔王陛下はユーリにタオルを押し付けると、すたすたと魔王専用浴場へと入って行った。 う・・ぇぇぇぇえ!?☆◎×◎)ノ 魔王陛下と裸のお付き合い?←ビミョーにちがう! そんな恐れ多い!って、いやまて、ユーリ!背中を流すだけだ!これも、魔王専属従者たるおれの仕事なんだ! おれは、陛下のお世話係なんだから、別におかしいことではないし、そ・・それに・・男同士だし! よーし脱ぐぞ!! ユーリは気合を入れると、着ている物を脱ぎ始めた。 と・・その前に。 まずは、脱ぎ散らかした陛下の衣装をたたまなくっちゃ!ユーリは、コンラートの衣装を綺麗にハンガーにかけ、 洗濯物を洗濯籠に入れて、替えのバスローブを用意する。 タオルを数枚に、磨き袋・魔王専用石鹸・ブラシにバスタオル!でもって! 「じゃーーん!アヒル隊長!」 黄色いアヒルのおもちゃを初めとする、魔王陛下お風呂セットを持つと、ユーリはガラガラーっと魔王風呂の 扉を開けた。 「いらっしゃいユーリ。まずは湯船であったまって。」 「あ、はい。では・・お邪魔しまして・・。」 ユーリは、アヒル隊長を湯船に放つと、自分もかけ湯をして中へと入っていった。 それにしても・・・でかい・・余裕で泳げそうだ。 「そんな端にいないで、こっちにおいで。」 「いえ、そんな、めっそうもない!!」 「ほら、ユーリのお気に入りのアヒルもこっちにおいでって。」 プカプカと黄色いアヒルは、気持ちよさそうに湯船を泳いで、魔王陛下のそばでお尻を振っていた。 「アヒルとおれは違いますし!」 と、断ったものの・・・・。 ニコニコニコと、笑顔で手招きする魔王に逆らえるわけもなく・・・・。 カッポーーーン! 「いやー、いい湯だね。ユーリ。」 「本当・・お湯は、いい湯加減なんですが・・・」 ヘイカ!なんで、おれは陛下のひざの上に、座っているんでしょう?(TдT) 「昔からこうだったよ?」 「って、それは、おれが乳幼児だったときですよね?おれ・・もう、成人しているんですがぁ!!」 「うん、しっているよ。この辺りとか大人だよね?」 って、どのあたりを触っているんだーぁ!! 「なんなら、このあたりも大人にしてあげようか?」 って、そこはケツ・・・。 「あぁぁーー!まさか、陛下!おれのおしりに、モウコハンがあると思っているでしょう!?」 「え??」 モウコハンとは、ユーリの人種にある、生まれてから幼児のころまであるお尻の青いあざのことだ。 これは、成長するにつれて自然ときえるのだ。まず、大人であるものはいない。 「心外だ!いくら、魔族にとって16歳がまだ幼児並みだからと言って、おれは混血で体も精神も見た目 どおりの成長なのにーー!いくら、名付け親だからって、どうしてそう、子ども扱いするんです!?」 ブウブウと、文句を言う可愛い子供に、コンラートの目がほころぶ。 「大人扱いしてほしい?」 「もちろんです!」 ホントウに? なんだろう?念を押したコンラート陛下の目が・・・・獅子になっている・・。 「・・・・・・・・と・・年相応に扱ってくれればぁ〜 イイ・・デス?」(←微妙に疑問形) 「ちっ・・・」 ち??今、ちっ・・て、舌打ちしましたか陛下!? なんだろう、すっげー危なかったかもしれない。なにやら、まな板の上の鯉というか? 獅子の前の兎になった気分だ。 「あのー陛下。そろそろ、お背中を流しましょうか?」 ユーリは、なにやら危険を感じて、当初の予定に軌道修正を試みる。 「そうだねー?折角だから洗いっこしようか?」 が、敵(?)もさることながら、とんでもない方向に新たな提案をしてくる。 「いやいやいや!そんな、陛下に洗っていただくなんてできません!」 「綺麗に洗ってあげるね!」 にっこり! 「だから、それは!」 「中まで洗ってあげるから!」 にっこり! はい??中・・・?? 「って、どこの??」 「えーーー?」(←超、楽しそうな声) 不思議な単語を耳にしたユーリは、自分を横抱きにしてニコニコする青年を見上げた。 なんだろう?すっげーたのしそう・・・・でもって・・ すっげーーーうんくさい笑顔だ!!(←超正解) 「いいです!力いっぱい遠慮します!それより早く出てください、思いっきり背中洗いますから!」 「ユーリは、恥ずかしがり屋さんなんだね〜。」 この際、恥ずかしがり屋でも、なんでもいい!とっとと終わらして逃げないと!次はどんな難題を 吹っかけられるかぁっ!! こくこくと最高速で頷くと、コンラートはユーリを降ろしてくれた。ユーリは、早速洗い場に上がると へちまタワシに石鹸を泡立て、ゆったりと椅子に座ったコンラートの背中を洗い始めた。 広い背中を、ごしごしと洗う。自分のと違って、大人の男の背中だと思った。この背に、眞魔国の未来を 背負っているのだと思うと感慨深い。やがて背中が終わると、肩から腕へと洗い上げてゆく。 引き締まって硬い筋肉、その流れをついつい目でおう。 陛下って、着やせするんだな・・。 ウェラー隊を、コンラートの代わりに指揮する、グリエ・ヨザック副隊長ほどではないが、コンラートの 体は、逞しい筋肉をまとっていた。 「ユーリ、後ろが終わったら、前もね?」 「はい、陛下・・・え??」 ま・・まえーーー!! 「ま・・前ですか?」 「うん?だって、順番からすると、そうだろう?」 「え・・えぇ、順番的にはそうですが・・・。」 いつもは、自分で体を洗っているのに、今日は何でまたーー! 「俺としては、自分で洗うほうが、気兼ねないんだけど?・・・ユーリがどうしても、従者の仕事が したいって言うから、俺もたまには譲らないとね。」 なにせ、従者の仕事だからねっ!!(←超ニッコリ!) 目一杯の笑顔で言い切るコンラート。もちろんこれは? 「うわぁぁ−−ん!ごめんなさいコンラッド!今度から二人っきりの時は、仕事の時間でも ちゃんと名前で呼ぶからぁぁーー!!」 血の気の引いた顔で号泣し、コンラートに謝るユーリ。そう、先程からの羞恥プレイは、名前を 呼ばなかったことへの報復に違いなかった! 「じゃぁ、ユーリ。もちろん、敬語もなしだよ。」 コクコクとうなづくユーリは可愛い。そのまま、自分の腕の中に閉じ込めると、涙の溜まった目じりに 口付けるのであった。すると、瞬間真っ赤になるユーリ!さっきまで、血の気のなかった顔に、一気に 血が戻ってきたみたいだ。 「ぎゃぁぁぁ!!コンラッド!目にチュウって!」 「目じりに雫があったから、ぬぐっただけだよ?」 他意はないよーーという、コンラートにむかって、ユーリは叫んだ! 「だったら、手を使えばいいじゃんか!何で唇を寄せるんだぁぁー!」(←もっともだ) 「だって、腕はユーリを抱きしめるために使っているから、空いてなかったんだよ。」 さらりと、とんでもないせりふを言うコンラートに、ユーリの思考は、恥ずかしさのあまりぶっ飛んで・・・ ブラックアウトした。 「あれ?湯あたりしちゃったかな?」(←正確には、この男にあたった) 突如、ぐってりと気を失ってしまった愛し子を腕に抱いたまま、コンラートは思考をめぐらした。 「気を失っているってことは?・・・何しても良いんだよね!?」 にやり・・・・ 翌朝、目を開けたユーリは、全裸で男の腕の中に抱きしめられて眠る自分を発見して、再び気を 失いそうになった。 「あれ?また気を失うと、もっと色々しちゃうよ?」 なんていう、男のせりふで、一気に息を吹き返したのだが・・。 「おはよう、ユーリ。」 「あ、おはよう。コンラッドって、呑気に挨拶している場合じゃないぞ!」 「ユーリ、朝の挨拶は基本だよ。」 そんなことより、何でおれは全裸なの?というか、もしかして、コンラッドも全裸? 「あぁ、そんなこと?」 「そんなことって!」 これは、あたらしい健康法だよ? 「健康法?」 そうと、コンラートは指を一本立てると、神妙に頷いた。 体を締め付ける物を一切省いて眠ると、リラックス効果で体の疲れが取れて、体と精神の健康につながると いうことなんだそうだ。 「ちょっと試してみたくなって、効果は自分だけでは、わかりにくいからユーリにも付き合って もらっただけだよ。」 たしかに、ゴムの締め付けがないのは、良さ気だ 「あ、そういえば聞いたことあるかも?ノーパン健康法だね?なーんだ、そうなんだ?」 あっさり、納得した名づけ子は、内心Vサインをだすコンラートの心のうちがわかるわけがなく。 「うん、そうなんだよ。」 と、厚顔無恥にも、いいのけた名付け親の言うことを信じてしまった。 さぁ、わかったら、まだ起きるには早いから、もう少し寝ようね。 コンラートが、ユーリを抱き寄せて、目をとじる。釣られるように、ユーリも目を閉じれば・・・ 人肌の心地いい熱が、全身を満たすのがわかる。 うん、たしかに、これは気持ちいいかも・・・。 すっかり、丸め込まれたユーリ。たしかに、その名前の健康法は実在する。 だが・・男二人で同じベットで抱き合って眠らなくてもいいはずなのだが? それには、まったく気が付いていないユーリであった。 一つ、またひとつと、まんまと獅子の罠にハマって行くユーリ。食べられる日も近い・・ の、かもしれない? 2009年3月6日拍手に掲載・3月12日MEINに再録 やりたい放題の魔王・コンラート陛下と従者ユーリのお話でした。ちょっと、このゆーちゃん? 素直過ぎなのは、コンラートに絶対の信頼を寄せているからなのでしょう。赤子の時に絶体絶命の中を 助けてくれた人で、何の関係もない自分を育てたのが彼ですから、それを覚えているのです。 今となっては、危険なすり込みだと思いませんか? |