10万打記念企画
逆転劇的・ある主従の日常




4000年の歴史を誇る魔族の国、眞魔国。
ここに、建国以来初めてづくしの王がいた。

第27代魔王は、初の混血の王であり、歴代の魔王に様に巨大な魔力は持たなかった。
されど、戴冠以前よりその剣技と卓越した戦術で、他国からの侵略より、この国を守った英雄であり
救世主でもあった。ゆえに彼は、国民からの絶大な支持をもつのを背景に、頭の固い上級貴族を尻目に、
次々と革新的な政策を打ち出し、戦争で荒れた国土は、見る見る再生して行った。

民は、ますます新王に厚い信頼と敬愛を深め、27代魔王を国を守る剣と称し『剣聖王』と、憧憬を持って呼んだ。

剣聖王・コンラート陛下と・・。



その・・偉大なる魔王様のはずだよな?

ユーリは、己に与えられた部屋の前で、にこにこと枕を持ってたたずむ青年を見て、軽くめまいがした。

「陛下・・・何ゆえに、このような夜半に、従者の部屋を訪ねてくるのですか?おっしゃっていただければ、
すぐにお部屋まで参上しましたのに・・・。」
「ユーリ?堅苦しいことは言わないで、今はお休みの時間だよね、完全にプライベートなんだから、
陛下って呼ばないでくれって、何度も言っただろう?名づけ子さん。」

「へ・い・か!ですから、その完全な私的である就寝時間に、何で従者の部屋の前にいらっしゃるんですか?」
「だよね?いい加減寒いよね?そろそろ中に入れてくれないかな?」
「あ!ごめん!そうだよな?廊下は寒いって・・・って・・ちがーーう!!!だから!」
「ユーリ・・・俺が来ると迷惑?」
うるるんっと、コンラートがその銀色の星をちりばめた琥珀色の瞳を潤ませた。
「うっ・・・!!」

その目は反則だぁぁーーー!!



結局、ユーリは青年を部屋に招き入れてしまった。

毎度毎度、おれって奴は・・・。
アレが、陛下の手だってわかっているのに、彼に寂しそうにされると、ついつい流されてしまう自分がいた。
今も・・・。

あ、ユーリはそこにいて、今日はいい紅茶の葉っぱが献上されたんだ。一緒に飲もうね

そういうと、止めるまもなく、魔王陛下自ら備え付けのキッチンで給仕をしてくれている。
本来それは、魔王付きの従者である自分のお仕事なのに!!


「はい、ユーリ。おなかがすくと眠れないでしょう?マフィンもおいしいよ。」
「わーい!りんごのマフィンだ!いただきまーす。」

おいしそうな匂いに誘われて、ユーリはパクっとマフィンを頬張った。

もぐもぐ・・おいしーーー♥♥

「そう、よかった。ユーリが好きそうだと思って、とっておいて正解だったね。」
にこっと、楽しそうに笑って、コンラートが紅茶を口元に運ぶ。

はっ!!って、おれのばかぁーー!!

「陛下・・あの・・。」
「コンラート、だろ?・・・私的な時間は、名前で呼んでっていっているだろう? ね?名づけ子さん。」
「あぁ、ごめん、つい・・・。じゃぁ、コンラッド。」
「はい!なぁに?ユーリ。」

ニコニコニコと、とてもうれしそうに笑う魔王陛下を見ていると、なんだか毒気が抜かれる。

「何で、おれの部屋まで来るの?呼んでくれれば、すぐ隣なんだし、おれが行くのに・・。」

そう、魔王付きの従者であるユーリは、魔王部屋のすぐとなりに居を構えていた。
本当は、もう少し離れた所に部屋を持っていたのだが、コンラートが自分付きの従者なんだから
何時でも側に控えるようにと、すぐ隣に部屋を作ってしまった。

元々、魔王部屋の一つであっただけあって、これでも一番狭いというのに・・ムチャクチャ広い。
ベットなんて3人分はある。

「だって、魔王部屋だと、ユーリはお仕事だからって、名前を呼んでくれないし、砕けた話し方もして
くれないだろう?俺は、ユーリともっと仲良くなりたいんだよ。」

「え?」
どきん♥

「だって、可愛い名づけ子だしね。」
「あ・・そ・・そうだね?名付け親だもんな、アンタ・・。」

じゃぁ、いいよね?

??・・・なにが??



「ほら、ユーリもっとこっちにおいで。」
「いや・・おれ壁側が好きだから!」
ビッタリ!!とベットの一番端っこで、小さくなるユーリにコンラートが声をかける。

「でも、それだと、狭いだろう?」
「いえ、おかまいなく!狭い方が落ち着くしっ!」

冗談じゃない。いくら名付け親と名づけ子だからって、ただの従者が魔王陛下と一緒に同衾だなんて!
ソファーで寝るといえば、ここはユーリの部屋なんだし、部屋の主を追い出してまでベットを占拠は
出来ないという。だったら、部屋に戻ってくださいといえば、部屋のベットは冷たくなってしまったから
戻りたくないと、ダダをこねられた。

結局、再び うるるんっと瞳を潤ませた魔王陛下の泣き落としに、ユーリはあえなく落とされたわけで・・。

「そ?」
「そうそう!!」


じゃぁ、俺がそっちに行くね?


「ぎゃぁぁぁ!!待ってコンラッド!近い近い!!」
すぐ目の前に、美しくも端正な青年の顔があって、ユーリは じたばたと騒いだ。
「しぃ〜、黙って?」
そういうと、コンラートは、さっさとユーリを腕の中に閉じ込めると、その髪に擦り寄って目を閉じた。

「人の体温って・・やっぱり落ち着くな・・。」
「コンラッド??」

この偉大なる魔王陛下は、なぜだか自分を気に入ってくれて、こうして心を許してくれている。
普段は、優秀で隙もなく、凛々しい王なのだが、彼と一緒の時にだけ、こんな風に我が侭を言ったり
甘えてきたりするのだ。

なんだか、人慣れない猫に懐かれている気分。
それも大きな猫だ・・いや、ルッテンべルクの獅子だったな?

すりりと、体を寄せてくる大きな体。こうして、体を密着させていると、細身でしなやかな印象の
彼が、逞しい筋肉に包まれているのがわかる。

いいな〜、筋肉・・おれもほしいな〜。

ユーリだって養母に拳闘を手ほどきされ、それなりに扱えるというのに、すっぽりと抱き込まれて
身じろぎも出来ないとは!?やはり、コレは筋肉量の差かっ!?

く・・屈辱!!
ぜったい!明日からのロードワークを増やしてやるぅ!!

その為には、コンラッドより早く起きなくちゃ!よーし、寝るぞー!

くすー ぴすー (←はやっ!!)

すぐに聞こえた寝息に、コンラートはくすりと微笑むと、つん・・と、頬をつついた。

「う〜みゅ〜〜。」

寝ぼけた声が上がるが、すっかり寝いいったようだ。しめしめとコンラートは、その唇に己のを寄せる。
ユーリは一度寝ると、朝までに起きないのだ。コンラートは、この時間を楽しみにしていた。

可愛い俺のユーリ。

昔・・人の国を旅していた時に、偶然助けた赤ちゃん。ミルクにおしめにと久々の子育てに忙殺されて、
気が付けば、生きる事に絶望していたのに・・楽しく彼を育てている自分がいた。

その後、自分が魔王に指名され、彼を手放すことになった時は、身を切り裂かれるような痛みを感じた。
それでも・・混血の未来のため・・幼児の未来の為に、コンラートは王になったのだ。


その子が、成長して自分の役に立ちたいとやってきた。
彼と再会してから再び色づいた世界。今度は・・・

「手放して、あげないからね。」

ちゅっっと、小さくキスをすると、そうだ!と、なにやら思いついたように
彼はニヤリ・・と哂った。




エンギワルー!!


「う〜ん、アレ・・今の声??」
しまった、もう二番目ざまし鳥が鳴いているじゃんかぁーー!
朝一番にロードワークをしようと思っていたのに、それどころではないらしい。

「コンラッド起きろ!寝坊だーー!」
「うーん、もうちょっと。」

あわてて起きようとしたユーリは、耳元で聞こえた声に硬直した。
その上、なにやら温かいうえに適度な硬さのあるマットレスの感触に違和感を覚えた。

「な・・なんで、下からコンラッドの声が?って・・・あれ??何この体勢!?」

きづけば、ユーリはコンラートの体に乗り上げて眠っていたらしい。しかも、ちゃっかり腰を
逞しくも長い腕に抱きしめられているので、動けないではないかぁーー!

「ぎゃぁぁぁ!なんでこんな体勢で寝ているのおれ?でもって、なんで起きれないんだぁー!」
「うーん、ユーリは朝から元気だな〜?おはよ。」
「おはよう、じゃねー!」
寝起きも爽やかな男の笑顔に、ユーリは思わず怒鳴りつけた。何でこの状況で普通でいられるんだ!?

「あれ?何でユーリが俺の上に乗っているの?というか、俺は押し倒されているよね?」
心底不思議そうな目で、コンラートは自分に圧し掛かっているユーリに問いかけてきた。

「押し倒していなーい!」
反射的に返してから、ユーリは居た堪れなさに赤くなった。なぜなら、完全に密着しているせいで、
なんというか・・変な気になりそうなのだ。
その、胸の鼓動だとか、髪にかかる吐息だとか?キラキラ光る瞳だとか?それが、至近距離にあるのだ!
相手は男性だというのに、ドキドキが止まらない上に、なにやら・・・変な所に熱が集まりそうだ。

「もしかして、ユーリ・・・俺に欲情した?」
「な!なななな!?」
「ふーん、朝からダイタンだね。でも、ユーリがその気なら、お付き合いしてもいいよ。」

折角だから、しよっか?

ぎゃぁぁ、そんな色気ムンムンの声を出すな!これ以上。変に反応したらどうしてくれるんだ!?

「朝から、男を押し倒している人に、言われたくないな〜?」
「それ誤解!朝起きたら、この体勢だったんだよぉぉー?」
もはや泣きの入るユーリ。

「起きたら?ってことは、寝ている間に押し倒されたのか?」
「いい加減、押し倒したって言う考えを捨ててくれー!」

なんだ、起こしてくれれば、イイコトのお付き合い位してあげたのに。

「・・イイコト??」
目を白黒させるユーリに、コンラートは楽しそうに囁く。

「そう、ユーリが気持ち良くって、天国が見えるくらいイイコトだよ。」
ニッコリと微笑む男前美人に、ユーリはついつい見惚れてしまう。何だかんだいって、この男は美しい。
その上、迫力のある色気があるのだ。

混血で、成長が早いユーリは、見た目と精神は魔族で言う80歳くらいにまで成長していたが、年齢はまだ16歳だ。
成人は迎えてはいたが、魔族としてはまだ幼い子供といえる年齢である。現にユーリと同じ年の純血魔族は、
人間で言うなら4歳くらいから10歳くらいまでの成長しかしていない。

その年齢のせいだろうか?名付け親である彼は、ユーリをこうやって子供だと思ってからかうのだ。

人の気も知らないで〜〜!!ムカ・・・(--メ)

確かに、年齢だとユーリは、子供だ。だけれど、人間ペースで成長しているユーリの精神は、すでに
年頃を迎えているのだ。思春期である彼にとって、この名付け親の色気は、刺激が強すぎて身体に悪すぎる!

「もう、からかうのはやめろよ!コンラッドの意地悪っ!」

「意地悪?ふーーん。」

はっ!!


しまった、おれとした事が、つい迂闊な事を口走ってしまったようだ。名付け親の目が妖しく光り始めて
ユーリは慌てた。この人のがこんな風に口の端を持ち上げたら要注意なのだ!

「えーっと、陛下?そろそろ、この腕を離して下さいませんか・・・起きる時間ですよ〜?」
「そうだね。元気な有利は起きる時間かもね!」

*:..。o○☆゚+。*゚¨゚キラキラキラ〜〜゚・*:..。o○☆゚+。*゚

うわ〜〜ん、無駄にまぶしい笑顔です陛下!!・゚・(。>д<。)・゚


コンラートは、泣きの入ったユーリを可愛いな〜なんて思いながら、腰に回した手をズボンの
ウエストから入り込ませた。

「ぎゃぁぁーー!へ・・へいか・・そこケツです!何でさわっているんですか!?」

「ユーリの肌は、きめが細かくって、さわり心地が良いな〜。」
「そんなこときいてねーー!!」

「ユーリ、騒ぐと衛兵さんが来ちゃうよ?こんな濡れ場を見られたら大変だよ?」
「そうおもうなら、この腕を解いてクレ・・。」
「う〜ん、どうしようかな?」
「えっと、何卒、お願いいたします、陛下。」
「また陛下って言ったね?だからだめかな?」

げっ!

そういうと、にっこり笑ったコンラートは、ジタバタ暴れるユーリの隙をついて、手を前に回して・・。

「コ・・・コンラ・・ド・・、な・・何を握って!」
「うん?朝だからね?ユーリの可愛い息子さんを起してあげようかなっとおもってね?」
さわやかな笑顔に騙されそうになるが、ユーリの股間にある彼自身を、この男はその大きな手で、包み込むように
握っていた。そして、ユーリがなおも言い募ろうとすると、徐に手を動かし始めたのだ!

「ヤァッ!・・こ・・コン・・やめっ・・・。」

「ユーリ、一つ教えてあげる。そんなに可愛い声でやめてって言っても、男を煽るだけだよ?」

そ・・そんなーーーー!!!(号泣)





ぐったり・・・。

「ユーリ、早くお風呂に入って着替えないと、朝食の時間だよ。」
涼しい顔で、コンラートは、そう言うとユーリに早く着替えるように促す。
「朝から疲れているのは、一体誰のせいだと・・・。」
ついつい、先程までの無体に、恨み言を云いたくなる。

あんな・・・

カァァァアーー!!

っと、ユーリは、自分がされていた事を思い出してしまって、全身を真っ赤に染めた!

「俺のせいかな?でも、元を正せば、俺を押し倒したのが原因だよね?」
「押し倒してなーーい!偶然そうなっただけだぁぁーー!」

ダァッー!と、ユーリは風呂場に向かってダッシュしてかけこんだ。これ以上、コンラートとの会話が
耐えられなかったようだ。

「偶然ねー、偶然であんた体勢になるわけがないんだけどね?」

くすり・・と、コンラートは、人の悪い笑みを浮かべる。

そう、偶然寝返りをうったくらいで、人の体の上に乗っかるわけがない、あれはコンラートが、寝る前に
ユーリの体をあの体制で抱きこんで眠ったのだった。

ちょっと、起きた時の驚く姿が見たかっただけなのだが、思わぬ収穫があった。

「さ〜て、次はどんなネタで、ユーリで楽しもうかな〜♪」


そう、不吉きわまりない事をいうと、魔王陛下は上機嫌では自室に戻っていった。





27代魔王陛下は、国民からも慕われ、国を守る剣と称され剣聖王と謳われている素晴らしい王だ。
ただちょーーーと、約一名が絡むと、ネジが緩む傾向があるようであるのだが、それはそれで、
彼らが楽しそうなので、よしとしようというのが、血盟城の皆さんのご意見だった。

よって?

「なんで、朝から、あんな羞恥PLAYを?(T△T)」


約一名の受難については・・・全く問題がないとされていた・・ええっと・・ご愁傷様です。





2月21日UP
えっと、コンラートが魔王になったら、こんな感じかな?アンケートによって一位になった
組み合わせでお話を書いてみました。魔王がコンで従者がユーリです。
コンラートはとても優秀な魔王様になるとおもいます。獅子王が、歴代にいるので、異名はそのまま
剣聖王にしてみました。魔王に聖の字入れたぜ。きっと、ユーリ当たりには、あそこは悪の字でもいれて
おけや!っと、思われているのに違いない。また、きっとムラケンは現れないと思います。必要性を感じないから?